重要 2022/4/18追記
紫電改の実物大模型と、新たに作られた九七式艦上攻撃機の実物大模型は、防災備蓄倉庫の北にオープンした「soraかさい」で常設展示されることになりました。
かつて兵庫県加西市に存在した姫路海軍航空隊。
その滑走路は、鶉野(うずらの)飛行場跡として今もその形を留めています。
鶉野(うずらの)飛行場とは
「鶉野飛行場」は昭和18年10月、兵庫県加西市(当時は加西郡)の南東部、鶉野台地にパイロットを養成するための「姫路海軍航空隊」が開設されたことに始まります。翌年、川西航空機鶉野工場が併設され、局地戦闘機「紫電」「紫電改」が生産されました。昭和20年には神風特別攻撃隊「白鷺隊」が編成され、沖縄戦のために出撃し、前途有望な若者が大空に散っていきました。終戦までのわずか2年に満たない時間の中で、青春をかけた多くの若者の姿があったのです。
戦後、地元の人々は総称して「鶉野飛行場」と呼んでおり、現在も長さ1200メートルの滑走路跡をはじめ防空壕、対空機銃座など数多くの戦争遺跡が残されている全国でも珍しい場所です。
(後略)
(出典:パンフレット「鶉野飛行場」一般社団法人鶉野平和祈念の碑苑保存会)
▲鶉野飛行場跡(滑走路跡を北から撮影)
戦時中は滑走路に隣接して川西航空機鶉野工場が作られ、川西航空機姫路製作所(1945年6月22日の姫路空襲で破壊された)で作られた局地戦闘機「紫電(しでん)」や「紫電改(しでんかい)」の最終組立て作業が行われていました。
ちなみに、川西航空機姫路製作所などが攻撃目標になった1回目の姫路空襲(姫路は2回の空襲に遭い、1回目は川西航空機、2回目は姫路市街地が攻撃目標になりました)については、以下の記事でご覧いただけます。
鶉野飛行場と深い関わりのある「紫電改」ですが、その精巧な実物大模型が滑走路跡北端に建つ防災備蓄倉庫で一般公開されることになり、戦闘機が大好きな私は公開初日に見学しました。
その時の様子は、以下の記事でご覧いただけます。
2019年6月以降、定期的な一般公開を見に行った人に話を聞くと、紫電改は防災備蓄倉庫から外に出され、屋外で展示されていたとのこと。
青空の下で滑走路に佇む紫電改の姿を見たくなり、本日は3ヶ月ぶりに鶉野飛行場跡に出かけてきました。
▲紫電改実物大模型展示の様子
「紫電改」実物大模型公開
日時:毎月第1・第3日曜 10:00~15:00
場所:鶉野飛行場跡 防災備蓄倉庫南側
https://goo.gl/maps/UTzWmNNGG2x5Tg389
▲紫電改の実物大模型が展示される防災備蓄倉庫の位置
08:20
姫路市街の自宅を車で出発。
国道372号線を東へ進み、北条鉄道の線路を越えて200mほどのところにある「鶉野南」交差点を左折。
「鶉野南」交差点から2.3kmほど道なりに北上したところに建っているのが、防災備蓄倉庫。
駐車場は防災備蓄倉庫の北側にあります。
2020年9月追記
現在は、防災備蓄倉庫の南側に、舗装された駐車場が整備されています。
追記ここまで
防災備蓄倉庫は当時の日本軍の建築物をモデルにした木造トラス構造で、外観が特徴的。
▲防災備蓄倉庫
▲駐車場の案内看板
09:00
防災備蓄倉庫北側の駐車場に到着しました。
▲防災備蓄倉庫北にある駐車場
展示の開始時刻は10時ですから、紫電改の実物大模型(以下単に「紫電改」)はまだ防災備蓄倉庫の中に入ったままで、紫電改の維持管理にあたるボランティアの皆さんが展示準備の真っ最中。(なぜこんなに早く来たのか、理由は後述。)
▲防災備蓄倉庫内に格納されている紫電改(倉庫が木造トラス構造になっているのが分かる)
しかし、物販コーナーでは買い物ができそうだったので、僅かな金額ですが寄付をし、紫電改の展示に関する記事が掲載された雑誌「丸」を3種類(各1冊)購入しました。
▲物販コーナーで購入した雑誌「丸」(左から2018年9月号、2019年7月号、2019年8月号)
関係者によると、展示開始時刻になったら紫電改を倉庫から外に出すとのこと。
展示開始までまだまだ時間があるのに、車やオートバイ、自転車が続々とやってきます。
中には、防災備蓄倉庫の中に置かれた紫電改の姿をちらっと見るだけで帰ってしまう人もいました。もったいないなぁ。
今日は陽差しが強かったので、私は展示が始まるまで日陰で休憩することにしました。
09:50
そろそろ紫電改を外へ出す頃かなと思って紫電改の前に戻ってくると、ボランティアの方が「立入禁止のプラチェーンとポールを動かすのを手伝ってください」とおっしゃっていたので、私は喜んでその作業に参加。
何人もの見学者が協力し合って、紫電改が設置される予定の位置を囲むようにポールとプラチェーンが配置されました。
▲まずはポールとプラチェーンを展示位置に移動させる
続いて、倉庫内の紫電改がボランティアの方々によって引っ張り出されました。
重そうに見えますが、紫電改は非常になめらかに動きます。
倉庫からまっすぐ出すのは難しいらしく、棒で尾輪を動かして方向を調整しつつ、紫電改を適切な位置へ動かすのは大変そうでした。
▲紫電改を倉庫から引っ張り出す様子
10時から公開が始まることを分かっていて9時に到着したのは、この準備作業を見たかったからなのです。
09:53頃
紫電改に車輪止めを噛ませてからプラチェーンとポールの位置を調整し、展示準備が完了。
青空の下、直射日光に照らされた紫電改の姿からは、公開初日に薄暗い倉庫内で見たのとは全く違う印象を受けました。
▲防災備蓄倉庫前の屋外に展示された紫電改
▲屋外に展示された紫電改を左後ろから見る
▲屋外に展示された紫電改を真後ろから見る
▲車輪止は当時のものを再現したもの(木製)
明るい中で見ると、紫電改の実物大模型の表面の質感がよく分かります。
私は本物を見たことはありませんが、おそらく非常にリアルな仕上がりなのだと思います。
▲屋外に展示された紫電改のコクピット左側の様子(パネルの質感やマーキングがよく分かる)
展示が始まるまでは「暑い~」と日陰にこもっていたのに、紫電改を眺めている間は暑さなんて忘れてしまいます。
紫電改の周囲を何度もグルグルと回り、隅から隅までじっくりと紫電改の姿を堪能しました。
https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/uzurano20190915/virtualtour.html
▲紫電改実物大模型公開の様子を撮影した全天球パノラマ(リコーのTHETA Z1で撮影)
2019年6月9日の公開初日は防災備蓄倉庫の中に自由に出入りでき、2階から紫電改を眺められましたが、その後の定期公開では2階は立入禁止になっています。
防災備蓄倉庫は名前の通り倉庫であるため、消火設備が不十分。
そのため、紫電改の見学者を2階に入らせることについて、消防署の許可が下りなかったとのこと(消火設備がなく、螺旋階段が避難に不向きなため、万一の火災発生時に危険とされたという話を伺いました)。
▲防災備蓄倉庫の中は、関係者以外立入禁止(2階通路や螺旋階段には入れません)
紫電改以外には、B-29爆撃機とそれを迎撃した紫電改の大きさを比較するための、同一縮尺の模型が展示されていました。
▲B-29と紫電改の大きさを比較するための模型
ちなみに、上の画像で模型が乗っているのは、紫電改などを整備するときに実際に使われていた整備台です。
▲整備台
紫電改を見学に行かれる方へ
- 駐車場は、未舗装の不整地です。雨や雪の後はぬかるんでいる可能性が高いため、履き物や服選びにご注意ください。
- お手洗いは、防災備蓄倉庫の北東隅に男女別に設置されています。洋式便器があります。
▲防災備蓄倉庫北東隅にあるお手洗い
- 飲み物は、防災備蓄倉庫前のテントで販売されている場合があります。売られていない場合は、200m南にある鶉野飛行場資料館(後述)横の自動販売機で購入できます。
- 防災備蓄倉庫の周囲と紫電改を屋外展示するための場所は、セメントで平らに舗装されているため、(視点は低くなってしまいますが)車いすでも紫電改を見学できます(実際に電動車いすで見学されている方がおられました)。
- 防災備蓄倉庫から200mほど南にある十字路には、「鶉野飛行場資料館」があります。紫電改の公開日にのみ開館しています。戦闘機の実物部品や鶉野飛行場についてのパネル展示があるので、紫電改を見に来られる際は併せてご覧ください(入館料:大人ひとり¥200)。鶉野飛行場資料館で受け取った入館券は、隣接する「cafe de 70」で海軍風カレー(¥900)を注文する際、¥100分の割引クーポンとして使えます。
▲鶉野飛行場資料館(南側)
▲鶉野飛行場資料館の北側にある出入口
https://goo.gl/maps/c2GewN2ysbRsbAEx8
▲鶉野飛行場資料館の位置
鶉野飛行場跡の周辺には、様々な戦争遺構が残されています。興味と時間がある方は、是非それらも見て回って下さい。