警告!今回紹介するルートの内、往路の一部は道が分かりにくくなっていますし、薮もあります。
山歩きの経験が長くても整備されたルートしか歩かない方や、航法装備(GPS、地形図、コンパス)が不十分な方にはお勧めしません。
概要
兵庫県西部を南に流れる千種川(ちくさがわ)。その左岸*1で、JR有年駅(赤穂市)と山陽新幹線の間に広がる山塊の西部は「赤穂ふれあいの森」として整備されました。
2024年3月3日、「赤穂ふれあいの森」の最高峰である川向山(かわむかいやま)に北の験行寺から登ったのですが、整備が完了したのが平成11年度(1999年度)で、当初は展望が良かったであろう場所は木々に囲まれ、遊歩道の丸太階段は朽ち、木製の道標も根元が腐って倒れているという状況であることがその時に分かりました。
それでも遊歩道はしっかり残っていて、山歩きに慣れており、地形図から進路を判断できる人であれば、多少道が荒れていようと、道標が無かろうとも問題はなさそうな場所です。
川向山を歩いた記事はこちら。
下草が少ない雰囲気の良い森林だったため、前回の山歩きで「赤穂ふれあいの森」が好きになり、川向山以外のルートも歩いてみたいという気持ちが出てきました。
そこで、今回は次のような行程で歩くことに決定。
(1)赤穂ふれあいの森南端付近、高雄山荘近くの駐車場に車を置く
(2)車道を歩いて下り、県道を北に進んで送電線巡視路の入口を目指す
(3)巡視路の入口から遊歩道を兼ねた送電線巡視路で北西に登る
(4)験行寺の南東400mほどのあずまやに出る
(5)あずまやの南にある鞍部から、川向山の東側の山腹を南北に通る遊歩道を南へ進む
(6)車を置いた駐車場を通り過ぎ、高雄山を経て御蔵山(みくらやま)山頂で昼食
(7)駐車場に戻る
結局(3)と(4)は失敗でしたが、大半の目的は達成できました。
▲南側に木々が無く展望が良い御蔵山山頂の様子
この行程にしたのは「前回歩かなかった道を歩きたい」「展望が良い御蔵山で昼食を食べたい」「食事後はとっとと帰りたい」という理由からです。
上記の行程を決めるにあたっては、前に川向山を歩いた際に撮影した「赤穂ふれあいの森案内図」(験行寺に設置)と、Googleストリートビューを参考にしました。
▲対応する地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図「相生」
▲カシミール3Dで作成したルートの断面図
姫路市街から駐車場へ
08:45
姫路市街の自宅を車で出発。
国道2号線(姫路バイパス)を西進し、JR有年駅の南にある「有年駅前(うねえきまえ)」交差点を左折。
ここからは県道457号線です。
県道を南下し、峠(周世坂=すせざか)を越えてさらに南へ下ると、「有年駅前」交差点からおよそ2.4kmで「赤穂ふれあいの森 →1.5km」と書かれた標識の立つ分岐に出会うので、それを右折します。
分岐から1kmほど登ったところで広い駐車場に出会いました。
ここが本日の駐車場です。
県道457号線と、県道から駐車場への道路は1~1.5車線幅しかありませんが対面通行になっているため、大きな車に乗っている方はご注意ください。
https://maps.app.goo.gl/puz5VQuiAA1x5GX58
▲駐車場の位置
09:45
あずまやのある駐車場に到着(地図中「P」)。
▲駐車場の様子
駐車場から登山口へ
09:52
準備が整ったので出発。
車で登って来た車道を下ります。
10:06
県道まで下りてきました(地図中「県道出会い」)。
▲県道に突き当たったら左折して北へ向かう
県道は場所によって1~1.5車線幅しかありませんが、ここを通る車はみんな飛ばしています。
対向車とすれ違いたくないから、早く通り抜けたいんでしょうか。
▲県道457号線の様子
10:12
送電線巡視路の入口に到着(地図中「巡視路入口」)。
▲巡視路入口の様子(赤い標識が目印)
巡視路標識(火の用心プレート)に残る数字の痕跡を見ると、この巡視路は25番と26番の鉄塔に通じているようです。
ただ、この辺りの送電塔のことを詳しく書いた山行記録を見たことが無いため、Googleマップで送電塔の位置は把握しているものの、どれが何番なのかは分かりません。
とりあえず、この時点では「西の尾根にある送電塔の番号は25番や26番なのか」という認識です。
▲巡視路標識にはうっすらと「25」「26」の数字が見える
地形図に描かれた破線道を登る予定でしたが、良い道(一部ガレています)が西へ続いて行くものの、いつまで経っても北へ登る道は見当たりません。
10:23
諦めて引き返すことにしました(地図中「引き返し地点」)。
県道に戻り、バックアップとして考えていた地蔵堂からの巡視路に入ることにします。
登山口から御蔵山へ
10:37
峠にある地蔵堂に到着(地図中「地蔵堂」)。
地蔵堂の背後に、巡視路標識が立っています。
▲地蔵堂
▲地蔵堂の背後にある巡視路標識(色褪せていて何も読み取れない)
先週、川向山を歩いた時に験行寺で撮影した案内図によると、地蔵堂から展望台を経て稜線上の遊歩道に合流できるはずです。
▲2024年3月3日に験行寺で撮影した案内図(右が北。当ブログ管理人が地名を描き加えた。)
定期的に送電塔を検査するための巡視路ですから、しっかりと整備された良い道が鉄塔へ続いています。
▲地蔵堂から送電塔に向けて登る
10:48
赤穂火力線27番鉄塔に到着(地図中「赤穂火力線27番鉄塔」)。
送電塔の銘板を見てこれが27番だと分かりました。
ということで、県道沿いの巡視路標識に書かれた番号から、ここから南西250mほどの送電塔が26番、さらにその南西600mほどの送電塔が25番ということが判明。
送電塔から先も良い道が続きます。
27番鉄塔から小ピークに登り、南西へ下った鞍部には巡視路標識が立っていました。
この道は27番と26番鉄塔をつなぐ巡視路ということです。
▲鞍部近くの巡視路標識(巡視路はここで左へ曲がる)
10:57
巡視路は斜面をトラバースするように南へ延び、赤穂火力線26番鉄塔に到着しました(地図中「赤穂火力線26番鉄塔」)。
▲赤穂火力線26番鉄塔下の様子
ここで困ったことになりました。
地形図では西の小ピークに四角い建造物が描かれているし、赤穂ふれあいの森案内図でも展望台があってそこへ続く道が書かれているのに、ここにはそんな道がありません。
道が荒れて自然に帰っていることは覚悟していたので、西へ向けて薮へ突入することにしました。
薮漕ぎは想定していたものの、私が思っていたのは薄い自然林の薮。
ところが、実際はシダとイバラの濃密な薮です。
▲西へ向けてこの薮へ突っ込んだ
薮の中には獣道や鹿の寝床のようなものがありましたが、道の跡らしきものは見当たりません。
そのまま歩くとボヨーンとシダに押し返されるので、上からシダを押さえつけるように進みます。
11:14
何度もイバラにからめとられながら薮を突破し、展望台があるはずのピークに出ました(地図中「展望台跡」)。
そこにあったのは、朽ち果てた展望台。
ジャングルの中の遺跡のようになっていました。
▲朽ちて床が抜けた展望台
展望台跡の周囲はすべて薮で、道は見当たりません。
とりあえず先週歩いた遊歩道がある北西へ進むと、薮が消えて歩きやすい自然林に出ました。
▲シダもイバラもない快適な自然林を北西に進んだ
ひょっとしたら、赤穂火力線27番鉄塔の先で出会った巡視路標識のあった鞍部から、南西に稜線をたどれば簡単に展望台跡へ来れたのかな。
まぁいいか。済んだことなので、気にしないことにします。
11:21
先週歩いた遊歩道に出ました(地図中「遊歩道出会い」)。
これを南に進みます。
▲遊歩道を南へ進む
11:24
分岐のある鞍部に出ました(地図中「鞍部」)。
先週はこの鞍部を直進して川向山に登りましたが、今回は別のルートを歩きたいので左前方、川向山の東側斜面をトラバースする道に入ることにします。
▲鞍部の様子(先週は川向山に登ったが、今回は左へ進んだ)
ここからは、等高線とほぼ並行に付けられた道が延々と続きます。
▲アップダウンが少ない道が続く
11:30
ベンチに出会いました(地図中「巡視路合流地点」)。
よく見ると東からの道が合流する地点らしく、傾いた道標があります。
▲左から巡視路が合流する地点の様子
10:23に引き返した道をそのまま進めば、ここに来るのでしょう。
巡視路入口の標識に「25」と「26」の2つの数字が書かれていましたから、この南にある25番鉄塔への巡視路にもなっている、つまりここまでの道は整備されているはず。
別の機会に歩いてみようかな。
11:35
プラ階段が右へ延びる場所に出会いました(地図中「25番鉄塔分岐」)。
今回は川向山へ行かないので、25番鉄塔は無視して南へ進みます。
▲プラ階段の道(左上に25番鉄塔が見えている)
その後も等高線と平行な道が続きますが、道の様子は全く変化しません。
ハッキリ言って退屈です。
11:49
駐車場の東屋の脇に出てきました(地図中「P」)。
▲ここに出てきた
車に戻り、荷物を補充します。
実は、荷物を軽くするためにここまではバックパックの中に飲み水と行動食、命を守るための装備(ツェルト、救急用品、ココヘリの発信機)しか入れていませんでした。
ここで調理器具や食材などをバックパックに詰め込み、昼食休憩を取ると決めている御蔵山(みくらやま)へ、神護寺(じんごじ)経由で向かいます。
駐車場の案内図の右隣りから山道の続きが始まっているので、そこからまた入山。
▲ここから山道へ入った
植林の中に入ると、間もなく高雄山荘前を通り過ぎて神護寺跡に出ます。
▲植林の中の道の様子
▲植林を抜けた先の道標
12:04
神護寺跡に着きました(地図中「神護寺」)。
神護寺は取り壊されたらしく、瓦が散乱した空き地になっています。
▲神護寺の建物があったと思われる場所の様子
ここには形の整った手水鉢がありました。
近くに立っている看板によると、1665年に大石内蔵助良欽が寄進したものだそうです。
▲大石内蔵助良欽寄進手水石
神護寺跡の奥を見ると、小さな祠にお祀りされたお地蔵さんがありましたが、それに向かって右に石段があって、石段の上(山王権現)には大石良重寄進石燈籠(1666年)もあります。
▲大石良重寄進石燈籠
大石良雄寄進石燈籠はどこにあったのかな。
神護寺石造物 五基大石良欽寄進手洗石 一基
大石良重寄進石燈籠 二基(一対)
大石良雄寄進石燈籠 二基(一対)所在地 赤穂市周世一三〇〇番地
所有者 宗教法人 神護寺
指定年月日 平成二二年八月二十四日神護寺は、寛文三年(一六六三)に山王権現の神宮寺として赤穂浅野家初代藩主長直によって再建されたと伝えられる。
良欽寄進の手洗石は、高さ四九cm、幅五一cm、奥行五一㎝を測り、正面に「高雄山山王御宝前 奉寄進手水鉢 大石内蔵助良欽 于時寛文五乙巳年(一六六五) 十二月吉日」と刻まれている。良重寄進の石燈籠は、山王権現の社に至る石段の上にあり、六窓庵形で高さ一七〇cmを測る。柱の正面には「奉寄進 山王御宝前 寛文六丙午年(一六六六)正月吉祥日 願主 大石頼母助」と刻まれている。社殿前にある良雄寄進の石燈籠は、西の屋形で高さ二一〇cmを測る。柱の正面には「貞享四丁卯年(一六八七) 奉寄進 石燈籠 七月吉祥日 願主 良雄」と刻まれている。いずれも花崗岩製である。
赤穂城築城の完成を祝うとともに、浅野家や大石家の武運長久を祈願して寄進したものと考えられる。市内において、これら最古に属する石造物がまとまって存在すること、赤穂城の完成を祝って寄進されたという時代背景を示す資料として価値の高いものである。赤穂市教育委員会(出典:現地の看板)
お地蔵さんに向かって左に幅が広いなだらかな道が伸びていますが、それが御蔵山への道です。
▲御蔵山への道
12:12
山道の交差点に出会いました(地図中「参道分岐」)。
左折すると裏参道、右折すると表参道、直進すると御蔵山です。
▲御蔵山への道の入口(道標の赤い矢印が目印)
ここからも良い道が御蔵山山頂まで続きます。
▲分岐から御蔵山へ続く道の様子
山頂(昼食)
12:17
御蔵山山頂に到着しました(地図中「御蔵山」)。
https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/mikurayama20240310/index.html
▲御蔵山山頂で撮影した全天球パノラマ
東屋がありますが、中に机は無くベンチしかないため使い勝手が悪いですし、外にいる方が展望も楽しめます。
ということで、尼子山と千種川の雄大な眺めを楽しめる場所に椅子とテーブルを置き、のんびりと昼食を楽しみましょう。
▲昼食休憩時の様子
本日の昼食は、マルちゃんのカレーうどん。
マルちゃんブランドの商品を販売する東洋水産のWebサイトには、「ペッパーベーコンのカレーうどん」のレシピが紹介されています。
必要な材料は、ベーコン、キャベツ、たまねぎ、あらびき黒コショウ、オリーブオイルです。
冷蔵庫にベーコンが無かったのと、生野菜を山に持って行くのが面倒だったので、ベーコンはサラダチキン*2、生野菜は乾燥野菜*3に置き換え、あらびき黒コショウなんておしゃれなものも私の台所には無いため、「ほりにし」で代用することにしました。
▲本日の食材(「ほりにし」はミニチュアボトルに入れて持ってきた)
▲調理の様子
乾燥野菜をクッカーに張った水に漬けて戻し(左上)、サラダチキンを適当に切って(右上)、野菜とサラダチキンをオリーブオイルで炒めて「ほりにし」で味を付け(左下)、カレーうどんを調理します(右下)。
最後はフライパンの中身をカレーうどんに載せれば完成。
美味しそうには見えませんが、食べてみるとなかなか行けます。
やっぱりカレーうどんには鶏肉がよく合うなぁ。
▲出来上がったカレーうどん
使用したクッカーはMSR「アルパインストアウェイポット 775ml」、フライパンはユニフレーム「ごはんクッカープラス」の蓋、まな板はMSR「アルパインDXカッティングボード」、ナイフはSpyderco「Para Military 2」です。
ギラギラ光っているテーブルは、3F UL GEAR「遮熱テーブル(L)」。
すぐ下に新幹線の線路があり、頻繁に新幹線が通り過ぎていきます。
▲高速で走り去る新幹線
下山
13:28
優雅なひと時を満喫したので、下山しましょう。
もと来た道を下り、高雄山荘前(地図中「高雄山荘」)を通って車道(舗装路)を下ることにしました。
▲高雄山荘の左の車道から下った
▲高雄山荘前のお手洗い
▲高雄山荘から駐車場への道の様子
13:44
駐車場に到着。
朝は県道で1台も車とすれ違わなかったのに、帰りは普通車1台、軽四1台とすれ違いました。
軽四と出会ったのは比較的広い場所だったので良かったのですが、普通車と出会ったのはほぼ1車線幅だったため苦労する羽目に。
交通アクセス
公共交通機関を使用する場合は、JR有年駅が便利。
有年駅から地蔵堂まではおよそ1.6kmで、私が車を置いた駐車場から有年駅へはおよそ3.5kmです。