概要
前回の記事(外観編)では、イギリス軍官給品の水筒やステンレス製クッカー、樹脂製カップなど一式から構成されるMk2(マーク・ツー)ストーブ一式について、見た目やNSN(NATO Stock Number)などの細かい情報を紹介しました。
「外観編」はこちら。
今回の記事では、Mk2ストーブ一式を山歩きに持って行く場合の携行方法や湯沸かし性能、実際にラーメンを作る様子を紹介します。
Mk2ストーブ一式をどうやって持ち運ぶ?
「外観編」で紹介した通り、Mk2ストーブ一式は積み重ねると背が高く、しかも器具が重なっているだけで簡単にバラけてしまうため、何らかの方法で一式をまとめて固定しないといけません。
▲Mk2ストーブ一式を重ねた様子(500mlペットボトル飲料は大きさの比較用)
本来はMk2ストーブに対応した専用ポーチがあるのですが、「(Mk2ストーブの旧モデルである)Mk1ストーブ一式を収納していたポーチに入るだろう」と安易に考え、Mk2ストーブを買うときに専用ポーチは購入しませんでした。
ところが、Mk2ストーブ一式は従来のポーチより全体の背が高く、収納できないことが判明。
そこで、手持ちのアウトドア用品や放出品の中から使えそうなものを探したところ、いいものが2つ見つかりました。
ストラップ
一つ目は、荷造り用のストラップ。
クイックリリースバックルが付いた25mm幅のストラップで、以前アメリカ軍のバックパックを買ったときに一緒についてきたもの(Lashing Strap:荷物固定ストラップ)です。
こういったストラップを使ってMk2ストーブ一式をまとめると、ピッタリサイズではないポーチや袋に収納できます。
▲ストラップで一式をまとめた様子
スタッフサック
二つ目は、コンプレッションキャップが付いたスタッフサック。
我が家にあったのはイギリス軍放出品の「COMPRESSION SACK,JU」*1で、夏季用(Jungle)寝袋を収納するのに使われるものです。
▲イギリス軍の寝袋用スタッフサック
コンプレッションキャップが付いているため、上下からMk2ストーブ一式をしっかり挟み込み、がっちりと一体化させることができます。
▲コンプレッションキャップ付きスタッフサックにMk2ストーブ一式を収納した様子
コンプレッションサックですから、開ける前には4本のストラップを緩め、収納するときにはそれらを締め上げる必要があり、ちょっと面倒かもしれません。
しかし、同じイギリス軍装備同士の組み合わせなので、個人的には前述のストラップよりもこちらの方が気に入っています。
燃料の収納
Mk2ストーブはステンレス製クッカーを中に重ねることができず、一式の収納サイズが大きくなる原因になっています。
この時ストーブ内にできる空間は、固形燃料やパック燃料の収納に使えます。
▲パック燃料は複数収納できる
▲一人鍋用固形燃料は3つ収納できる
Mk2ストーブ一式の重量
外観編でもそれぞれの重量は記載しましたが、表にまとめてみました。
▲Mk2ストーブ一式の重量
ここに固形燃料と水の重さ(水筒一杯に入れると1リットルなので、1kg)、スタッフサックなど収納用ケースの重量も加わることになり、実際にアウトドアに持ち出すときは合計で2kgほどになります。
重さはかなりのものですが、体積は1リットルサイズの水筒を一回り大きくした程度なので、コンパクトと言えないこともないかな。なにせ、この体積で水1リットル、樹脂製カップ、ステンレスクッカー、固形燃料ストーブ、固形燃料の全てがまとまっているわけですから。
湯沸かし性能
我が家のバルコニーで、Mk2ストーブ一式を使った湯沸かし性能を調べてみました。
使用した熱源は、次の3種類。
- トランギア アルコールストーブ(燃料60ml。火力調節用の蓋は使用しない。)
- ニチネン パック燃料
- ニチネン 固形燃料(30g アルミ箔付き)
ニチネンの固形燃料については、アルミ箔を付けた状態と外した状態でそれぞれ水温の変化を測定しました。
測定環境は、次の通りです。
場所 我が家のバルコニー
気温 約19℃
湿度 約70%
風速 1~2m/s
測定方法
- 500mlの室温の水を使用する(袋ラーメンを作る想定)。
- 測定前には、ステンレスクッカーを室温まで冷ます。
- クッカーには、専用のフタを使用する。
- 水温は、1分ごとに温度を自動で記録するスマホ連動型の温度計で測定する。
▲測定の様子(下に耐火煉瓦を置き、樹脂製フタの湯切り口に温度計のセンサーを差し込んでいる)
測定結果は、次のグラフの通りです。
▲500mlの水が沸騰するまでの時間と、燃料が燃え尽きるまでの時間
グラフの線の色は、燃料の色に合わせました。
例えばアルミ箔が付いた固形燃料は、アルミ箔をイメージした灰色。アルミ箔を外した固形燃料は、燃料の色に合わせて青色。パック燃料は赤色で、トランギアは真鍮(しんちゅう)をイメージして黄色にしています。
それぞれの燃料で点火から何分後に沸騰したのかは、縦方向の破線が示しています(グラフの線が100℃に達したところから真下に破線を引いています)。
燃料が燃え尽きた時間は、グラフ下部に引き出し線で示しました。
固形燃料は、アルミ箔の有無で沸騰までの時間や鎮火までの時間に大きな違いが出ています。
燃料の携帯性や沸騰までの時間を見ると、(湯沸かしを目的とした場合は)アルミ箔を外した固形燃料が最も優れていると言えます。
▲固形燃料は溶けてこびりつくため、アルミ箔をMk2ストーブの燃料皿に敷いておくと後片付けが簡単
パック燃料は購入から数年経過し、中身が揮発して減ったため火力、燃焼時間とも固形燃料に負けた可能性があります(本来は中身が27gあるはずですが、測定前に重さを測った所、全体で23gほどしかありませんでした)。
トランギアのアルコールストーブは、燃料を60mlも入れたのに14分間しか燃えませんでした。しかも炎が大きく立ち上り、樹脂製のフタを溶かす結果に。
このストーブ一式でトランギアを使われる場合は、樹脂製のフタを使わないことをお勧めします。
Mk2ストーブで袋ラーメンを作る
実際にMk2ストーブ一式を使い、山の上でラーメンを作る様子を紹介します。
用意するものは、次の通りです。
- Mk2ストーブ一式(水、燃料を含む)
- 点火具(ライター、マッチ等)
- 袋ラーメン
- 袋ラーメン用の具材
- ナイフ(具材を切るのに使用)
- まな板
- 箸
- ウェットティッシュ、キッチンペーパー等(使用後のクッカーを拭くのに使用)
- (スープを飲み干せない方は)漏斗とペットボトル等、残ったスープを回収して持ち帰るための道具
- まずは必要な道具類や食材を山に持って上がります。
▲用意した食材等 - 袋ラーメンの調理方法に従い、必要な分量の水を水筒本体からステンレスクッカーに注ぎます。たいていの場合は500mlのお湯を沸かすので、クッカーの目盛りで正確に分量を量れます。
▲水筒からクッカーに水を入れる - 固形燃料などを使ってお湯を沸かします。燃焼時間が限られているため、熱を無駄にしないようフタを被せておくのが無難。このフタはクッカーの内側に張り付いて外しにくくなるため、湯切り口に箸などを差し込み、てこの原理で持ち上げる必要があります。
▲お湯を沸かしている様子 - お湯が沸くのを待っている間に、具材を準備します。
▲必要に応じて具材をカット - お湯が沸いたら、麺を投入します。はじめは全体がお湯に浸かりません。
▲麺を投入した直後の様子 - すぐに麺の下部が柔らかくなるので、箸を使って麺全体を沈めます。樹脂製のフタは透明で吹きこぼれそうになってもすぐ分かりますから、クッカーを持ち上げたり、フタを外すなど、吹きこぼれに素早く対応できます。
▲麺全体をお湯に沈めた様子 - 袋ラーメンの調理方法に従って麺を茹で、指示通りのタイミングでスープを入れます。
私の場合「イトメンのチャンポンめん」を食べる時だけですが、味玉の代わりに溶き卵を入れます。卵を溶くときに樹脂製カップが便利。
イトメンの「チャンポンめん」とは何ぞや?という方は、次の記事でご覧いただけます。
- 最後に具材をトッピングすれば、ラーメンは完成です。クッカーはステンレス製で熱が伝わりにくいため、アルミ製のクッカーほど縁が熱くならず、直接口を付けてスープを飲むのが簡単です。
▲具材を入れて完成したラーメン - 食後はウェットティッシュやキッチンペーパーでクッカーの汚れを拭き取り、元通りに収納します。
スープが飲み干せない場合は、ペットボトルなどに入れて持ち帰るか、ラーメンスープを固める粉末を使用するなどして、適切に処理してください。
残ったスープを山の中にぶちまけることは、絶対にしないでください。
最後に
Mk2ストーブ一式は軍用品のため、登山用品に比べると極端に重いですが、体積はさほど大きくなく、頑丈で取り扱いに気を使う必要もないですし、(個人的な意見ですが)何より使っていて楽しいのが魅力。
趣味で使う道具は、「使って楽しい」とか「持っているだけで幸せ」という要素も大切だと思います。
もちろん、「軽量化命!」という方はここで紹介したような道具ではなく、より軽量な素材で、より薄く、より小さく作った軽量な道具に対してそういった気持ちを感じられるはず。
幸せを感じられるポイントは人それぞれですが、「軍用品のかっこよさ」とか「落としても踏んづけても壊れない頑丈さ」に魅力を感じられる方であれば、今回紹介したイギリス軍の装備品(ストーブやフタは官給品ではありませんが)を使ってみてはいかがでしょう。
個人的には、(米軍装備ファンには申し訳ないですが)アメリカ軍のキャンティーンカップやストーブより使いやすいと思います。
長所
※個人的な意見です。
- カッコいい。特にMk2ストーブにクッカーを乗せた姿はたまりません。
- 頑丈。樹脂製のフタ以外は、ちょっとやそっとのことで壊れません。
- 固形燃料やアルコールストーブなど、Mk2ストーブは対応できる熱源の幅が広い。
- 樹脂製のフタは透明でクッカー内の様子を確認しやすい。
- 官給品のクッカーはステンレス製で熱伝導率が低いため、ラーメンを作った直後でもスープを飲みやすい(唇を火傷しづらい)。
短所
※個人的な意見です。
- 重い。
- 樹脂製のフタは、いとも簡単に溶けてしまう(フタだけでも購入できるため、予備で複数枚買っておくことをお勧めします)。
- クッカーに被せた樹脂製のフタは、なぜか取り外しにくくなる(箸やナイフを使い、てこの原理で外す必要がある)。
- クッカーの細い取っ手は、手に食い込んで痛い(登山用やアウトドア用クッカー共通の問題点)。
- 日本国内での取り扱いがほとんどない(私はイギリスのお店から通販で購入しました)。
*1:NSNは「8465-99-869-5311」です。同じNSNでも、コンプレッションキャップが付いていない場合もあるようですので、ご注意ください。