姫路市街には、1979年に廃止された姫路モノレールの遺構がまだ残っていて、姫路駅側にはレールが残っており、手柄山(てがらやま)には当時の駅舎を利用して実物車両が展示されています。
姫路モノレールは、JR姫路駅から手柄山をつなぐモノレールで、1966年の姫路大博覧会(手柄山山上で開催)にあわせて開業。
当時の国鉄姫路駅の北西にモノレールの駅がありましたが、北へ延伸する予定だったためレールはぶつっと途切れた状態で、駅舎も仮設というもの。
そこから西へ進んだ将軍橋(当時線路をまたいでいた陸橋。今はJRの高架化により撤去)近くには、モノレール駅(大将軍駅)を備えたマンション(高尾アパート)が建設されました。
姫路駅の反対側の終点である手柄山駅ですが、レールは駅舎内で途切れていたわけではなく、駅を貫通して南側に伸びていました。
そこには転轍機と引上線、検修車庫があり、2編成あった車両の入れ替えや洗車、点検・修理が行われていました。
このレールは、南へまだまだ延びていくかのように付けられていたようです。
当時は姫路南部まで延伸する予定があったのかも知れません。
しかし、割高な運賃(山陽電鉄の姫路駅-手柄駅間が¥30の時代に¥100)と博覧会終了による需要の減少により乗客数が激減し、1974年に休止、1979年には廃止されてしまいました。
姫路市民にはなじみ深いモノレール遺構ですが、最近近くを通ったら、当面は残されるだろうと思っていた船場川沿いのレールのうち、新幹線の高架と交差している付近が、大型のクレーン車によって撤去されているではありませんか!
(注)現地に掲示されている道路使用許可申請書によると、平成27年9月19日23時から平成27年9月24日5時まで、旧モノレール橋桁撤去工事施工のため道路を使用するとされています。
同様に掲示されている特定建設作業・工事実施届出書によると、建設工事の名称は「旧モノレール橋脚・橋桁撤去(その1)工事」で、場所は南畝町 地内、実施期間は平成27年9月10日から平成27年10月19日までとなっています。
完全に撤去される前に写真を撮っておこう、ついでに、姫路駅から手柄山へモノレール軌道跡をたどってみようと思い、出かけてきました。
私は姫路市街に住んでいるため自転車で出かけましたが、遠方から来られる場合は、JRまたは山陽電鉄で姫路駅まで来てから、モノレール軌道跡に沿って手柄山へ。
手柄山からの帰りは姫路市文化センター前バス停から1時間に1本しかないバスに乗って姫路駅南口へ戻るか、少し東へ歩いて産業道路(県道62号線)沿い、姫路中央卸売市場の入口北にあるバス停(こちらの方が少し本数が多い)から姫路駅へ戻る、または山陽電鉄の手柄(てがら)駅へ行って姫路駅へ戻るという方法もあります。
もっと簡単な方法として、JR姫路駅の中央改札を出た右前にある観光案内所に行き、レンタサイクルを借りるという手もあります。
本日私がたどったルートをルートラボで作成してみましたので、興味のある方は下のURLからどうぞ。
まずはJR姫路駅へ。
JR姫路駅の北側、山陽電鉄姫路駅と神姫バスターミナルの間が、姫路モノレール営業当時にモノレールの姫路駅があった場所です。
ここから西へ進むと、橋脚が煙突のようにニョキニョキとはえた古い建物群に出会います。
建物の向こう側に橋脚があるのではなく、建物を貫通するように立っているのです。
建物の向こう側に橋脚があるのではなく、建物を貫通するように立っているのです。
異様な感じがしますが、なかなか面白い光景。
言うまでもありませんが、これらはモノレールが出来た後に建てられた建造物です。
この不思議な光景を見ながら、山陽電鉄の高架をくぐってさらに西へ進むと、モノレール駅のあるマンション(高尾アパート)に出会います。
これはモノレール軌道のカーブに合わせて湾曲した高層建物で、3~4階部分がモノレール駅。
駅の名前は、すぐ近くにある大将軍神社にちなんだのか、大将軍駅です。
解体に備えて住民は退去し、現在は立入禁止です。
マンション付近の軌道は撤去されていますが、マンション内のモノレール駅跡には軌道が残っています。
このマンションも取り壊しが決定しているので、見られるのは今のうち。
2017年8月追記
2017年に入ってから工事が始まり、高尾アパートは跡形も無く解体されてしまいました。
追記ここまで
マンションの先で軌道は南へカーブし、船場川(せんばがわ)沿いに南へ延びています。
以前はこの付近にモノレール軌道を支えるトラス構造の鉄骨がありましたが、今は跡形もありません。
数年前までは、川の右岸(西側)に古い煉瓦造りの工場(倉庫?)が建っていて、それを背景にモノレール軌道を見ると、それはそれは良い雰囲気だったのですが、その煉瓦造りの建物は老朽化のため取り壊されてしまいました。(参照:https://dfm92431.hatenablog.jp/entry/2011/02/26/173908)
新幹線の高架付近には80tクレーンがあり、すでに撤去された橋脚や軌道が地面に置かれていました。
モノレール軌道沿いに産業道路(県道65号線)を南下していくと、軌道跡はどんどん西側へ遠ざかってしまいますが、軌道跡と道路の間は駐車場やガソリンスタンド等の私有地なので、勝手に入ることは出来ません。
イオンタウン姫路の南西にある交差点から西へ入れば、再びモノレール軌道跡に近づけます。
が、東西に走る道路と交わる当たりで軌道跡はぷっつり途切れ、旧手柄山駅までは軌道跡は残されていません。
が、東西に走る道路と交わる当たりで軌道跡はぷっつり途切れ、旧手柄山駅までは軌道跡は残されていません。
▲残っている軌道の南端付近の様子(船場川にかかる橋の手前で途切れている)
後は西へ進み、「文化センター前」交差点を左折して南へ。
文化センターの東にある空き地には、橋脚が立っていた場所の盛り土が残っています。
これが、先ほどの橋と旧手柄山駅間に残る唯一の痕跡。
これが、先ほどの橋と旧手柄山駅間に残る唯一の痕跡。
文化センターの駐車場を右手に見ながら南へ進み、立体駐車場のすぐ先にあるアスファルト舗装の坂道(「手柄山交流ステーション・平和資料館」と書かれた道標がある)を登って行くと、姫路モノレールの旧手柄山駅内(モノレール展示室)へ入れます。
自転車で行かれる場合は、立体駐車場の南側に二輪車置き場(無料)があるので、そこへ止めて下さい。
モノレール展示室のある手柄山交流ステーションは、開館時間が午前9時から午後5時まで、休館日は毎週火曜(火曜が祝祭日の場合は次の平日)と年末年始です。
坂を上り、エレベータで渡り廊下へ上がったら、そのまま道なりに進むと旧手柄山駅舎の1階へ入れます。
この出入り口は、姫路モノレールが現役の頃、車両が出入りしていた穴です。
この出入り口は、姫路モノレールが現役の頃、車両が出入りしていた穴です。
入った所がレールの高さで、下から車体を見上げることが出来るはずだったのですが、水族館の入口と兼用になっていて、現在は水族館の入館料を払わないと車両下部には近づけません。
台車は屋外に展示されていてじっくり見物出来るので、気にせず階段またはエレベーターで2階へ上がって下さい。
2階が旧手柄山駅のプラットフォーム。
2両編成のモノレール車両(実物)が展示されていて、南側の車両は実際に中に入ることが出来ます。
2両編成のモノレール車両(実物)が展示されていて、南側の車両は実際に中に入ることが出来ます。
このモノレール車両は、実は過去に一度だけ屋外で展示されたことがあり、その際は私も見に行きました(参照:https://dfm92431.hatenablog.jp/entry/2009/11/15/130230)。
姫路モノレール線路■方式: 跨座式(ロッキード式)■線路延長: 1,824m■営業距離: 1,630m■複線区間: なし(全線単線)■駅数: 3駅(姫路駅、大将軍駅、手柄山駅)■軌道桁: プレストレストコンクリート桁・・・61本 最大スパン25m鉄筋コンクリート桁・・・33本 最大スパン15m鋼桁・・・4本 最大スパン47mメインレール・・・50-Tレールサイドレール・・・22kg/mレール■支柱: 鉄筋コンクリート製95本最大支柱高20.3m(地上16.4m)■転てつ器: 軌道桁可動式 1箇車両■車種: 直角カルダン電動2軸ボギー式■車体: 全アルミニューム合金製■型式・両数: 片運転台車(2両) 両運転台車(2両)100型101・102 200型201・202■自重: 18.1t 18.4t■定員: 120人(座席48人) 104人(座席40人)■電気方式: 直流600V■速度: 最高速度 120km/h営業運転最高速度 50km/h■所要時間: 下り(姫路駅→手柄山駅)3分50秒上り(手柄山駅→姫路駅)4分40秒(上りの所要時間が50秒も長いのは、山電本線を越えた先60パーミルの勾配を下って姫路駅に進入するため、ATSで10km/hに速度が規制されていたため)■電動機: 75kW×4/1両■制御器: 自動総括制御電動カム軸電空併用ブレーキ式(出典:2階の説明看板)
運転台も見ることが出来ますし、乗客用の椅子にも座れます。
私は姫路モノレールに乗ったことがありませんが、色合いやデザインが昔の電車と似ていて懐かしい感じ。
私は姫路モノレールに乗ったことがありませんが、色合いやデザインが昔の電車と似ていて懐かしい感じ。
姫路モノレールが現役だった当時のカラー映像が車内で上映されているのですが、本物の車両に乗ってその映像を見るのは、また格別です。
姫路博覧会のジオラマや市バス関連の展示、廃車処分されたモノレール車両の部品の見物を一通り終えたら、南側のドアから外へ出てみて下さい。
そこは、昔転轍機があった場所で、現在は台車が一つ、ぽつんと展示されています。
台車だけの展示なので、構造が非常によく分かります。
台車だけの展示なので、構造が非常によく分かります。
姫路モノレールの台車姫路モノレールの台車は1車両に2台あり、1台の重さは約3.7トンです。コンクリート製の軌道には鉄製の走行用レール、安定用レール、第3軌条が敷設され、鉄製の車輪からなる2軸ボギー式台車で車両を走らせていました。台車の動力として出力75キロワットの主電動機2機で駆動輪を動かし、最高速度は時速120キロの高速運転が可能でした。ロッキード方式は1本のレールの上を小径の鉄車輪で走ることに特徴があります。(出典:現地の説明板)
台車が展示されている場所は、かつて転轍機と引上線があった場所で、現在は身障者用スロープが付いている出入り口から車両が出てきて、それを転轍機で左へ振り、検修車庫へ入れていたようです。
台車の展示を見終えたら、再び展示室に戻り、階段を上がって最上階(屋上)から外へ出てください。
そこは手柄山山上の駐車場で、北向きの展望台があり、モノレールの軌道跡を眺めることができます。
そこは手柄山山上の駐車場で、北向きの展望台があり、モノレールの軌道跡を眺めることができます。
駐車場を右手に見ながら南側へ移動して下を見下ろすと、かつて転轍機があった空間(先ほど台車を見た場所)を見下ろすことが出来ます。
今はありませんが、転轍機をイメージしながらその空間を見下ろし、どこへ伸ばすつもりだったのだろうと妄想を膨らませると楽しいかも知れません。
これで、姫路モノレール関連遺構は一通り見終わったことになります。
最後に、1973年5月24日に国土地理院が撮影した航空写真を紹介します。
モノレールの軌道がはっきり分かります。(拡大表示できます)
▲モノレール姫路駅~手柄山駅の路線が写っている航空写真。(出典:国土地理院の地図・空中写真閲覧サービス)
せっかくなので、手柄山山上にある回転展望喫茶店(手柄ポート)(重要:2018年3月25日をもって閉店しました)や、太平洋戦全国戦災都市空爆死没者慰霊塔、姫路市平和資料館にも足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
いずれも、モノレール展示室屋上(駐車場)から歩いてすぐの場所です。
この付近には、他にも旧国鉄の飾磨港線の廃線跡地(https://dfm92431.hatenablog.jp/entry/2010/08/29/122744)や、三菱電機の引き込み線跡地(https://dfm92431.hatenablog.jp/entry/2011/02/26/173908)もあるので、こういったジャンルのものが好きな方は、あわせて探索してみて下さい。