播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

アメリカ軍の弾薬箱(コストコのとは違う本物)

先日、大型業務スーパーの「Costco(コストコ)」でレプリカの弾薬箱を購入しました(https://dfm92431.hatenablog.jp/entry/2017/02/18/171115)が、本物の弾薬箱がどんなものかを今回は紹介します。
(ミリタリー好きでないと、読んでもよく分からないかも知れませんが…)
 
弾薬箱は、山道具扱いするにはかなり無理があるのですが、私が山道具(固形燃料など)の保管に使用しているというだけのむちゃくちゃな理由で、山道具として紹介します。

概要

名前の通り、弾薬箱とは銃弾や砲弾、信管などの爆発物を保管、運搬するための箱で、一般的に銃弾などを入れておく小型の物は鉄製、砲弾のような大きな物を入れる箱は木製です。
 
どちらの弾薬箱も、おしゃれな飲食店などでインテリアとして飾られていることがあって驚きます。
 
大きな木製の弾薬箱やアメリカ軍以外の弾薬箱は持っていないので、この記事で取り上げるのは金属製の弾薬箱、それもアメリカ軍の物(2種類)だけです。

外観

比較的新しい弾薬箱は側面に製造年の末尾2桁が打刻されているのですが、私のは塗装の色が現在のものよりも濃く、製造年度の刻印がないので、古いものと思われます。
 
私が持っている米軍放出の弾薬箱は、サイズが2種類。
一つはサイズがおおよそ 275mm(W) × 96mm(D) × 185mm(H)のもので、M19A1というタイプの弾薬箱。
 
 
▲我が家にある唯一のM19A1(マーキングのある面)
 
 
▲我が家にある唯一のM19A1(上の画像の反対面。「EMPTY(中身無し)」の表示がある)
 
もう一つはM2A1と呼ばれるタイプで、サイズはおおよそ 296mm(W) × 155mm(D) × 195mm(H)。
 
 
▲我が家に2つあるM2A1の内の一つ(初期型。マーキングのある面)
 
 
▲我が家に2つあるM2A1の内の一つ(初期型。マーキングのない面)
 
M19A1やM2A1という書き方ではピンとこないと思うので、M19A1は「弾薬箱(小)」、M2A1は「弾薬箱(中)」と呼ぶことにします。(M2A1より大きな弾薬箱があるので、「大」ではなく「中」としています。)
 
30年ほど前、私が子供だった頃、小遣いを貯めて放出品のお店で購入したもので(当時は弾薬箱(小)が千円程度、弾薬箱(中)でも二千円未満で買えたと思います。)、当時は花火や爆竹、かんしゃく玉といった危ないオモチャを保管するのに使用していました(悪ガキでした)。
 
大人になってからは、アウトドア用の固形燃料等の保管に使用しています。
 
本来の使い方は、既に書いたとおり銃弾等の保管、運搬用で、中身が外から見てすぐに分かるよう、側面と上面に黄色っぽい塗料でマーキングされています(ネットでは「刻印」という表記をよく見ますが、刻印ではなく単にスタンプまたはステンシルしているだけです)。
 
米軍放出の本物ですから現場で実際に使われていたわけですが、どういう使い方をされていたのかがマーキングから分かります。
 
例えば私の弾薬箱(小)のマーキングを見ると、以下のように書かれています。
 
 
▲我が家の弾薬箱(小)弾薬箱側面のマーキング
 
1行目の「200 CARTRIDGES」は、弾薬箱の中身が「200発の銃弾」であることを意味します。

2行目の「7.62 MM」ですが、左端の丸で囲まれたプラスの記号がNATOを、7.62mmは弾丸の口径を表しています。つまり入れてあったのは7.62mm NATO弾だったことが分かります。その右の記号は「(機関銃用に)弾丸がM13リンクでつながっている」ことを意味します。

3行目の「CARTONS」は弾丸が「箱」に入っていることを意味し、その右側の記号は、弾丸がバンダリア(弾丸を携帯するための使い捨てバッグ)に入っていることを意味します。つまり、リンクでつながった弾丸が箱に入れられ、さらにその箱がバンダリアに収納されているという意味です。

4行目の「1- M62 - 4 ● M80」は弾丸の構成を表し、「曳光弾(※)(型番がM62)1発と通常弾頭(型番がM80)4発」というパターンの繰り返しで弾丸がリンクにつながっていることを意味します。
※曳光弾(えいこうだん)は弾道を確認するために特殊な火薬が尾部に詰められた弾丸で、発射されるとその火薬が燃えて、光を発しながら飛行します。戦場のニュース映像で弾丸の軌跡が見えているのは、この曳光弾です。曳光弾と曳光弾の間に、4発の通常弾頭が飛んでいるのです。

5行目はロットナンバーで、先頭の「LC」は製造所(Lake City Arsenal:レイクシティー造兵廠)を表しています。

6行目の「A131」は型番で、曳光弾1発・通常弾頭4発の順に並んでリンクでつながったもの(箱入り)が、バンダリアに100発収納されたものを2つ、合計200発の弾丸をM19A1弾薬箱に詰めたものを表します。
 
弾薬箱を並べると側面のマーキングが読めなくなるため、弾薬箱は上面にもマーキングがつけられています。
 
 
▲我が家の弾薬箱(小)上面のマーキング(「M60機関銃またはM73機関銃用にリンクでつながった弾丸がバンダリアに入ったもの」というのが、このマーキングだけで分かる。M60やM73の口径は7.62mmなので、機関銃名があれば、弾丸の口径を表示する必要が無い。)
 
次に、我が家の弾薬箱(中)のマーキングも見てみます。
我が家には弾薬箱(中)が2つありますが、どちらもマーキングの内容は同じ。
 
 
▲我が家の弾薬箱(中)側面のマーキング
 
1行目の「840 CARTRIDGES」は、弾薬箱の中身が「840発の銃弾」であることを意味します。

2行目の「5.56 MM」は、弾丸の口径を表しています。

3行目の「BALL M193」は弾丸の型番(BALLは通常弾頭の意)を表しています。

4行目の「10 RD CLIPS」は、弾丸が「10発ずつクリップでまとめられている」ことを意味し、

5行目の「BANDOLEERS」は、クリップで留めた弾丸をバンダリア(弾丸を携帯するための使い捨てのバッグ)に入れた状態で弾薬箱に収めていることを意味します。

6行目はロット番号です(WCCは弾丸メーカーの略称で、Western Cartridge Company)。
 
 
▲我が家の弾薬箱(中)上面のマーキング(10発ずつクリップ留めになった弾丸が入っていることがこの記号から分かる。10発が1列になっていれば5.56mm弾、4発×2列の8発の記号ならクリップ留めの7.62mm弾。)
 
この場合のバンダリアは、ポケットが4つ並んだ布製のもので、それぞれのポケットに10発の弾丸をまとめたクリップを3つ(30発用の弾倉1本分)収納します。つまり、バンダリア1本で弾丸が120発。
このバンダリアは弾薬箱(中)に7つ収納できるので、合計で840発になるという計算です。
 
この布製バンダリアは「かさばる」「費用がかさむ」という理由で、アメリカ軍は布のバンダリアに代わるパッケージ方法を開発していたようです。
 
アメリカ陸軍のサイトに掲載されている2012年の記事では、透明なナイロンでできたバンダリア状の容器を開発していることが書かれています。
ナイロン製バンダリアは、30発入りのポケットが1つずつミシン目で切り離し可能で、部隊に支給された後の小分けが便利なのだそうです。
 
さらに、布製バンダリアは1つが1~1.25ドルするのに対し、ナイロン製の方は格安とのこと。

ナイロン製バンダリアで5.56mm弾を梱包したら、1つの弾薬箱(中)弾薬箱に1,050発を収納できます(布製バンダリアだと840発)。
 
ただ、この新しい梱包方法が採用されたというニュースは聞かないので、布製バンダリアが使い続けられているのかな。
 
さて、完全にミリタリーマニア向けの内容になってしまったので、本筋に戻りましょう。

機能

弾薬箱は火薬類を保管するための物ですから、収納されている火薬類を湿気や衝撃などから守り、安全に保管できるような設計になっています。
 
弾薬箱の耐久性は「PERFORMANCE ORIENTED PACKAGING TESTING OF M2A1 AMMUNITION BOX FOR PACKING GROUP II SOLID HAZARDOUS MATERIALS」と題された米軍のレポートを見ると分かります。

このレポートによると、弾薬箱(中)は以下の全てのテストに合格しています。
 
・落下テスト(高さ1.2mから様々な方向で落とす。わずかにへこんだり傷が付いただけ。)

・積み重ねテスト(重さ約15kgの弾薬箱(中)を高さ約5mまで積み上げたと想定し、最下段の弾薬箱にかかるのとほぼ同じ380kgの負荷を弾薬箱(中)に真上から加え、24時間後に弾薬箱の変形や傷みを調べる。変形なし。)

・振動テスト(上下に2.54cmの振幅で振動する台におもりを入れた弾薬箱(中)を固定せずに置き、1時間後に弾薬箱の損傷具合を調べる。弾薬箱が振動台から常に1.6mm浮き上がる程度の振動回数で実施。中身が漏れるような変形は無し。)
 
弾薬箱(小)、弾薬箱(中)ともに素材は鉄で、結合部分はすき間なく溶接されていますが、ちょうつがいや取っ手などの部品は、スポット溶接で取り付けられています。
 
なお、この取っ手自体とその溶接部分は、弾薬箱について定められた米軍の規格(いわゆるミルスペック)「MIL-DTL-3060G AMENDMENT-3」によると、約136kg(300ポンド)の負荷に1分以上耐えることが求められています。
 
 
▲外付けの部品はスポット溶接されている
 
フタの内側にはゴムのパッキンがあり(本体の縁が食い込むため溝が出来ている)、フタを閉じてラッチをかけると、完全防水になります。
 
個体差があると思いますが、私の弾薬箱(小)のフタはかなり堅く、開けるのにコツが要ります。
 
 
▲弾薬箱(小)のフタの内側(見えづらいですが、周囲にゴムパッキンがあります)
 
 
▲弾薬箱(中)のフタの内側(見えづらいですが、周囲にゴムパッキンがあります)
 
 
▲弾薬箱(小)のフタをロックするための頑丈なラッチ
 
 
▲弾薬箱(小)、弾薬箱(中)とも、ラッチはフタの方に接続されている(本体のワイヤーハンドルは、開閉時に箱を押さえつけておくためのものかな。)
 
フタを全開にすると下の写真のようになるわけですが、フタが重いため、弾薬箱が空の場合はかなりギリギリのバランス。少しでも振動を与えると、フタの方へガタッと倒れてしまいます。
 
 
▲フタを全開にした様子
 
弾薬箱(小)はフタの周囲に着いているスカートが斜めになっていますが、これはフタを閉じ切らなくても中に水や泥などが入り込みにくくなるようにとの工夫です。
(弾薬箱(中)も、初期型はスカートが斜めになっています。)
 
スカート下端が斜めになっているタイプの蓋は、ラッチ側のスカート下端付近に突起があり(下画像の矢印の部分)、それがフタを少し開けた状態を維持する役割を果たしています。

この状態で機関銃の隣に設置し、すき間からリンクで連結された弾丸を出して機関銃に給弾します。
 
 
▲弾薬箱(小)のフタを中途半端に閉じた状態(スカートが側面のすき間を塞いでいるのが分かる。実際に機関銃の横に置いて使う際は、写真と違ってラッチを蓋の上に上げておく。)
 
 
▲初期型(左)と後期型の弾薬箱(中)のスカート形状の違い(分かりやすくするために、赤線で輪郭をトレースしました)
 
このフタですが、弾薬箱(小)も弾薬箱(中)も、どちらも簡単に取り外すことが出来ます。
 
戦争映画などでジープの後部や戦車の上部に積んである機関銃の横に弾薬箱が取り付けられていますが、あれにはフタが付いていませんね。
あの弾薬箱は、下の画像のようにフタを取り去っているわけです。
 
どうでもよい話ですが、ジープ後部の機関銃(M2重機関銃)用の弾丸は、リンクでつながった状態で弾薬箱(中)にちょうど100発収まります。
 
 
▲フタを外した状態
 
 
▲弾薬箱(小)のフタと本体を連結するちょうつがい(フタをマーキングのある面に向かってスライドさせれば、フタが外れる構造)
 
フタの上面にある取っ手は折りたたむと平らになりますが、これは弾薬箱を積み重ねるときのことを考慮した設計です。

弾薬箱の底面にはくぼみがあり(そのため内部が盛り上がっている)、そこに取っ手が収まるようになっているというわけ。
 
 
▲弾薬箱底面のくぼみ
 
上面が平らでないのに、安定して積み重ねることが出来るのです。
 
 
▲弾薬箱(中)を2つ積み重ねた様子
 
コストコで売られていた弾薬箱は、この底面のくぼみが浅すぎて弾薬箱が積み重ねられない(上には置けるのですが、ぐらぐら揺れる)という欠陥があります。
 
▲左が米軍の弾薬箱で、ぴったりと積み重なっている。右はコストコの弾薬箱で、2つの弾薬箱の間にすき間が空いているのが分かる。コストコの弾薬箱は、このすき間があるため積み重ねるとグラグラ揺れる。
 

使い心地

密閉性の高さは素晴らしいです。
 
実は、大人になってから久しぶりにこの弾薬箱を引っ張り出して中を見ると、その当時で10年以上前、子供の頃に買った花火やマッチなどがわんさか入っていたのですが、試しに火を付けてみても全く湿っている様子がありませんでした。
 
50年ほど前の米軍の缶入り固形燃料(主成分はメタノール)も弾薬箱で20年近く保管していましたが、缶の周囲に何やら結晶のような物は付いていたものの、中身が劣化している様子はなく、普通に火が着きました。
 
よほど湿気があったり海の近くといった環境であれば、弾薬箱自体が錆びてしまう可能性はありますが、通常の環境であれば何十年でも平気で使える耐久性があります。
 
その代わり、重いです。
 
弾薬箱(小)が約1.7kgで、弾薬箱(中)は約2.3kgもあります(台所用はかりの測定限界を超えていたため、荷物の重量を量るためのバネばかりで測定しました。したがって、この数値は正確ではありません)。
 
また、屋内での使い心地は全く考慮されていないため、弾薬箱の底面にはクッションや滑り止めの類いは一切ありません。
 
フローリングの部屋では、弾薬箱を置いたり移動させる度に、傷が付かないように慎重になってしまいます。
床の上で弾薬箱を引きずって動かすなんてもってのほか。
 
底面にクッションを貼れば問題解決ですが、弾薬箱の雰囲気が損なわれるので、クッションは貼りたくありません。
 
私はミリタリー好きなので弾薬箱は格好良いと思いますし、耐久性と密閉性が高いため、多少の使いにくさは我慢しますが、普通の人でも弾薬箱を気に入ってくれたことがあります。
 
昔、「丈夫な工具箱が欲しい」と言っていた現場作業をしている知り合い(ミリタリー好きではない普通の人)に放出品の弾薬箱(中)を1つプレゼントしたことがあるのです。
 
工具入れとして使うには深すぎて使いづらいような気もしますが、その人物は耐久性を重視する人だったので、「工具を投げ入れても、箱自体を乱暴に扱ってもびくともせん。」と言って喜んでいました。
そもそも、渡した段階で「かっこええー!」といって興奮していましたが。
 
ちなみに、弾薬箱の中の広さですが、分かりやすくするために弾薬箱(中)の中にCD/DVDの薄型ケースを入れてみました。
 
 
▲弾薬箱(中)の中には光学ディスクが収まる
 
弾薬箱(小)の内部は、エスビットポケットストーブ用の固形燃料のパッケージ(紙箱)がぴったり収まる幅です。

最後に

弾薬箱の活用方法は人それぞれ。
 
この無骨さと重さで好みは分かれると思いますが、ミリタリー好きの方なら、実用目的でも単なるインテリアとしても役に立つと思います。
 
昔は放出品店で山積みにされていたのに、最近はあまり見かけなくなりました。
側面のマーキングも、最近の放出品では上から塗りつぶされたりしているようです。
 
マーキング付きの格好いい弾薬箱が欲しい人は、早めに買った方が良いかも知れません。
 
ただ、放出品の弾薬箱は時々とんでもない状態の物があります。
 
私が持っている弾薬箱も、購入時は一つは中が泥だらけ、一つは中がオイルでベトベトという状態でしたし、フタを開けると独特の匂いが立ちこめるものもありますから、放出品を買うときには覚悟が必要です。