播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

山へ持って行けるドローン:Mavic Pro

購入の経緯

近年急速に知名度が上がった「ドローン」。
 
本来は自律的に行動でき、遠隔操縦も可能な無人航空機全般がドローンなので、固定翼機(いわゆる飛行機)でもヘリコプターでもドローンになり得るのですが、どういうわけかプロペラを複数持つ「マルチコプター」タイプのものがドローンだという誤った認識が広まっています。
 
それはともかく、私も個人向けのオモチャのドローンが初めて世に出た頃(2010年)にマルチコプターを1機購入して遊んでいましたが、空飛ぶラジコンとしてはおもしろさに欠け、空飛ぶカメラとしては性能がお粗末だったため、やがて部屋の片隅に埋もれることに。
 
ところが、近年は飛行性能が大幅に向上し、搭載されているカメラの画質も普通のビデオカメラ並みというか、それ以上になってきました。

「山の上でドローンを飛ばし、自分が登った山の様子を、今まで他の人が撮ったことが無いようなアングルから撮影したら面白いだろうな。」と思うようになりました。
 
そうなると、私の物欲は刺激されまくり。
唯一その物欲を抑えていたのは、ドローンの大きさでした。
 
山へ持っていこうにも大きくてかさばり、ドローンだけでバックパックが一杯になってしまいます。
そんなかさばるオモチャは、いくら精神年齢が低くてバカな私でも山へ持っていきませんし、部屋の隅に埋もれていく運命をたどるのは明白でした。
 
そんな「高性能なドローンはかさばる」という常識を覆す製品が2016年に発売されました。
それが今回紹介する「Mavic Pro(マビック・プロ)」。

仕様

製品名: Mavic Pro(マビック・プロ)
メーカー: DJI(中国)
機体重量: 743g (ジンバルカバー含む)
飛行限界高度: 海抜5,000m(カタログ値)
最大上昇速度: 毎秒5m(カタログ値)
最大下降速度: 毎秒3m(カタログ値)
最高速度: 時速65km(スポーツモード時のカタログ値)
最大飛行時間: 27分(無風の中、時速25kmの等速で飛行させた場合のカタログ値)
最大ホバリング時間: 24分(無風時のカタログ値)
通常の飛行時間: 21分(バッテリー残量が15%になるまでの時間)
最大飛行距離: 13km(無風時のカタログ値)
送信機伝送距離: 4km(カタログ値)
撮影用カメラセンサー: 1/2.3"(CMOS)12.35メガピクセル
撮影用カメラレンズ: 78.8度FOV、28mm(35mm換算)、F2.2
撮影用カメラISOレンジ: 100~3200(動画)、100~1600(静止画)
最大静止画サイズ: 4000×3000
動画モード: C4K:4096×2160 24p
       4K:3840×2160 24/25/30p
       2.7K:2704×1520 24/25/30p
       FHD:1920×1080 24/25/30/48/50/60/96p
       HD:1280×720 24/25/30/48/50/60/120/180p
記録メディア: microSD(最大64GB。クラス10またはUHS-1規格対応のもの)

概要

Mavic Proは、折りたたみ式でコンパクトに収納できるマルチコプター型ドローンです。
 
 
▲飛行中のMavic Pro
 
ラジコンとして操縦者の思い通りに飛ばせるほか、搭載している各種センサーを駆使して、例えば人や車を追いかけて撮影したり、任意の地点を中心に、指定した半径と高度、速度で円を描くように(カメラは指定した地点を向いたまま)飛行するといった自律的な動きも可能です。
 
それだけの機能を持っていながら、機体と送信機、充電器などの最低限のセットであれば定価で10万円台前半という驚異的な安さ。
あまりの人気で品薄になり、私も発注してから手元に届くまで2ヶ月ほどかかりました。
 
 
▲パッケージ内のMavic Pro一式
 
私が注文した時点では、Mavic Proの飛行に最低限必要な機材のみのパッケージ(税込129,800円)と、予備バッテリーや複数のバッテリーを充電するためのハブ、専用ケースなどが一式揃ったフライモアコンボ(Fly More Combo)と名付けられたセット(税込169,800円)の2種類の形態で売られていました。
 
私が購入したのは、フライモアコンボ。
 
 
▲フライモアコンボのパッケージ一式
 
Youtubeには、Mavic Proを紹介する動画が数多く登録されているので、まずはそれらをご覧下さい。
10分ほどでMavic Proが一通り分かる動画はこちら。
 

外観

上に挙げた動画だけで十分におわかりいただけると思いますが、一応簡単に紹介しておきます。
 
Mavic Proの機体はSFチックな軍用機を意識したようなデザインで、私の感覚ではメチャメチャ格好いい。

角張ったデザインが、SF映画に登場するような乗り物をイメージさせます。
見方によっては昆虫のようにも見えますが…。
 
 
▲展開したMavic Pro
 
 
▲収納状態のMavic Pro(大きさの比較用に500mlサイズのペットボトルを並べています)
 
 
▲収納状態のMavic Pro(おなか側。カメラ部分には専用のカバーを被せてある)
 
 
▲Mavic Proのカメラ(3軸ジンバルで制御される)
 
 
▲Mavic Proのお腹には超音波距離計(中央付近の大きな2つの穴)と、GPSが利用できない場合のホバリング時に地表を撮影して位置を維持するためのカメラ(超音波距離計を挟む位置に合計2つ)がある
 
バッテリーは、機体の体積のかなりの部分を占めるサイズを持っています。
このバッテリーには安全のための回路が搭載されており、残量が多い状態でしばらく保管しておくと、自動的に放電する機能が備わっています。
 
 
▲機体からバッテリーを取り外した様子
 
専用の送信機が付属していますが、スマホ(Mavic Proのカメラで写した映像や、機体の状態などを表示する)を挟むための折りたたみ式アームを備えており、機体と同様こちらも妙に格好いい。
 
 
▲スマホを取り付けた状態の送信機
 
送信機はアンテナとアームを折りたたむと下の画像のようになり、非常にコンパクト。
 
 
▲収納状態の送信機
 
Mavic Proの機能を十分に活かすには、スマホを送信機に取り付け、Mavic Proの機首にあるカメラからの映像をリアルタイムで見ながら動画や静止画を撮影する必要があるのですが、スマホを固定するためのアームと接続用の端子は次の画像の通りです。
 
左側のアームの中にスマホを接続するための端子があり(Lightning、マイクロUSB、USBタイプCから選べる)、送信機の下面中央にはフルサイズのUSB端子も備わっています。
 
 
▲送信機のスマホ取り付け部(左側のアーム内にLightning端子がある)
 
アームにあるスマホを挟むための溝は薄いため、ケースに入れたiPhoneは挟めません。
私は毎回、iPhoneをケースから取り出しています。
 
短辺側に端子のないスマホやタブレットは、送信機下面中央のUSBポートにケーブルをつなぐことで利用可能になります。(左側のアーム内のケーブルと、送信機下面のUSBポートは同時に利用できません。)
 
右側のアームはただのクリップで、中に配線はありません。
 
機体とバッテリー、送信機の他にも重要な付属品があります。
それは充電器。
 
 
▲Mavic Pro専用充電器(ACアダプタのUSBポートにUSBケーブルを1本接続している)
 
この充電器は、機体用バッテリーを充電するための専用コネクタのあるケーブルがACアダプタから伸びていて、ACアダプタ本体にはUSBポートが2つ付いています。
 
USBポートは、送信機やスマホの充電に使うためのもので、充電時の様子は下の画像のようになります。
 
 
▲機体用のバッテリーと送信機を充電している様子

Mavic Proの使い方

Mavic Proが手元に届くまでに、私が予習用に見た動画がこちら。
50分近くある動画なので、時間のあるときにどうぞ。
 
 
上の動画で、基本的な操縦方法やスマホの画面の見方はおわかりいただけると思います。
 
重要なのは、ドローンをどこで飛ばすかということです。
(注:以下のルールは、バッテリーを含む機体重量が200gを越えるドローンにのみ適用されます。屋内使用を想定した200g未満のオモチャのドローンは、これらの規制を受けません。)
 
国土交通省のサイト(http://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html)に詳細が書かれていますし、私は法律の専門家ではないので、概略だけ紹介しておきます。
 
飛ばしてはいけない場所の条件は、大まかに以下の3つです。
 
・空港等の周辺(進入表面等)の上空の空域
・人口集中地区の上空(国土地理院の地図で確認できます。)
・(地表や水面から)150m以上の高さの空域
 
さらに、以下のルールを守って飛ばす必要があります。
 
・日中(日出から日没まで)に飛行させること
・目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること(メガネやコンタクトレンズは可。望遠鏡や双眼鏡は不可。)
・人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること
・祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと
・爆発物など危険物を輸送しないこと
・無人航空機から物を投下しないこと(物には液体も含まれる)
 
飛ばしてはいけない場所の条件を一つも満たしていない場所、つまり人口集中地区ではなく、空港やヘリポートからも離れていて、地上から150m未満の高度を飛行させる場合でも、「人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること」という規制があるため、「郊外ならどこでも飛ばせる」ということはありません。
 
第三者の住む家や第三者の車両、電柱や電線、街灯など様々な物件がありますから、それらから30m以上離して飛ばせる場所でないとダメなのです。(道路や線路、田畑、堤防、自然物等は、第三者のものであってもここで言う物件にはあたりません。)
 
また、自宅の庭であっても、自宅が人口集中地区にある場合はドローンを飛ばしてはいけません(強風や機器の障害で意図しない方向へ飛ぶおそれがあるため)。
屋内なら問題ありません。(庭にネットを張ってドローンが飛び出さないようにすれば、屋内と同じ扱いになります。)
 
これらの条件が厳しいので、私の場合は山の上で飛ばしています。

山岳地帯は、空港の近くでもない限りは飛行禁止空域に該当する場所はほとんどありませんし、(私が行くような山では)第三者はほとんどいませんし、第三者の物件もほとんどありません。
 
備考:夜間に飛ばしたり、人口集中地区の上空を飛ばしたり、カメラ映像を頼りに、あるいは自動操縦で飛ばしたりといった行為は、国土交通大臣の許可や承認を得られれば合法的に実施できます(申請が大変そうなので、私はやったことはありません)。
 
ルールを守っていても、機器の異常によりドローンがどこかへ飛んで行ってしまい、墜落時に何らかの被害を生じる可能性があります。

そのため、ドローン用の保険に加入しています(DJIのドローンには1年間の保険が無償で付属しています。2年目以降は有償)。
 
当然ですが、操縦者に過失があると保険金が満額下りない可能性が高いので、前述のルールはしっかり守り、機体の整備やバッテリー状態の監視、飛行前の点検などにも真剣に取り組まなければなりません。
 
そんなにルールが厳しくては練習もろくに出来ないと思われるかも知れませんが、操縦に使用するスマホにインストールする「DJI GO 4」というアプリには、フライトシミュレータ機能があります。
 
送信機のスティックを動かすとスマホの画面に表示されるMavic Proが動き、実際にドローンを飛ばすことなく操縦の練習ができるのです。
 
ただし、フライトシミュレータ機能を利用するだけでも、Mavic Pro本体と送信機間の通信を確立しておく必要があるのが面倒。
 
 
▲フライトシミュレータの画面
 
ちなみに、実際にMavic Proを飛ばしているときのスマホに表示される画面は、次のようなものです。
 
 
▲Mavic Proを飛ばしているときのスマホ画面(様々な情報が表示されている)
 
左端に並んでいる3つのボタンは自動操縦系(自動で離陸地点に戻る等)の機能を使うためのボタン。
右端はカメラ関係のボタンで、右上はカメラの設定等が表示されています。
 
左下のレーダー画面は、Mavic Proの位置と離陸地点(操縦者の位置)の位置関係を示すもの。

その右にはMavic Proが離陸地点から水平距離でどれくらい離れているか、離陸地点からどれほどの高さまで上がっているかという情報等が表示されています。
 
上端は捕捉しているGPS衛星の数と電波強度、送信機とMavic Pro間の電波強度、送信されてくる映像の画質と電波強度、機体のバッテリー残量が表示されています。

Mavic Proの操縦方法

左右2本のスティックにそれぞれどんな機能を割り当てるのかは、操縦モードの切り替えで選択出来ます。
飛行系のラジコンではモード1やモード2が一般的なようですが、私はモード3を選んでいます。
 
モード3の場合、スティックの操作と機体の動きは以下のようになります。
 
左スティック
 上に倒す・・・前進
 下に倒す・・・後進
 左に倒す・・・機首の向きはそのままで左へ動く
 右に倒す・・・機首の向きはそのままで右へ動く
 
右スティック
 左に倒す・・・機首が左を向く
 右に倒す・・・機首が右を向く
 上に倒す・・・上昇する
 下に倒す・・・下降する
 
左スティックの上下で前進・後進、右スティックの左右で機首の向きが変わるという操作は、車のラジコンと同じ。
 
右スティックの上下で上昇・下降をする、また左スティックの左右の動きで、車のラジコンにない動きができる点以外は、ラジコンカーと同じ操縦方法なので、私の感覚では直感的に分かりやすい。
 
左スティックが水平面での動き、右スティックが垂直軸を基準にした動きになっているのも私にとっては分かりやすいので、モード3にしています。
 
2017年4月追記
 ドローンの操作に慣れてきたので、現在はモード2に切り換えて使用しています。
 モード2は海外では主流になっている操作体系で、モード3の左右のスティックの操作が逆転したもの。今後のことを考えると、マイナーなモード3よりも一般的なモード2の方が良いかなと思い、切り換えました。
追記ここまで

Mavic Proの利用目的

上に書いたとおり、私の場合はMavic Proは山で飛ばしていますが、その目的は普通のハイカーさんが撮れないアングルの写真を撮ることです。
 
つまり、私にとってMavic Proは「空中に設置できるカメラ」なのです。
 
(注:カメラの利用時は、撮影前に静止画モードか動画モードを選択する必要があります。従って、動画の撮影中に静止画を撮影するといった使い方は出来ません。)
 
 
▲通常は撮れない写真の例(1)(兵庫県加西市の善防山城跡)
 
 
▲通常は撮れない写真の例(2)(兵庫県姫路市の小赤壁。動画から切り出した一コマ。)
 
ドローンは、「目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること」というルールを守って飛ばさないといけないので、「カメラからリアルタイムで送られてくる映像を見ながら、自分が空を飛んでいる気分を楽しむ」という使い方(FPV:First Person View「一人称視点」と呼ばれる使い方)はできません。
 
ドローンから送信される映像の利用目的は、あくまでも「撮影される画像の確認」であって、操縦のための映像ではありません(スマホに写る映像はドローンの前方だけなので、側方や後方、上方、下方の障害物がまったく見えないため、そもそもカメラ映像だけを頼りに屋外で飛ばすのは危険すぎます)。
 
通常は、視線は常に機体を追い、写真や動画を撮るときに、最小限の時間だけ画面を見るという使い方をするわけです。
 
単なる面白そうなラジコンとしてドローンを購入すると、「飛ばせる場所がない」「(空撮用の機材なので)アクロバット飛行が出来ない」「FPV(一人称視点)で飛ばせない」等の理由で後悔することになります。

最後に

ドローンは、メカ好きやラジコン好きの人にとっては興味が湧く対象ですが、飛ばせる場所を理解し、ルール(法律)を守った上でどんな使い方をするのかを決めないと、宝の持ち腐れになってしまいます。
 
ドローンが欲しいと思っている方は、慎重に判断してください。
 
Mavic Pro用のアクセサリ類を紹介する記事もあります。興味のある方はどうぞ。