播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

第39回殿のグルメ対談(石窯パン工房マナレイア×壺坂酒造)

本日は、姫路城前にある納屋工房で毎月1回開かれる「グルメ対談」に参加してきました。
 
グルメ対談は、グルメブロガー「殿」(食べログでは「ハイパー殿」)が聞き手となり、飲食店や酒蔵の方々のこだわりやお店の魅力を聞き出し、お店のメニューの中からおすすめの商品や、グルメ対談用に特別に作られた食べ物、お酒も楽しめるイベントです。
 
本日のゲストは、石窯パン工房マナレイア(姫路市飾磨区)の店長 岡野氏と、壺坂酒造(姫路市夢前町)の壺坂氏。
 
(注)対談の内容はなるべく忠実に記録していますが、Webで公開出来ない内容もあるため、多少の修正をしています。
 
19:51開始
マナレイア飾磨店の店長、岡野さんがおしゃれな服装で登場。
 
 
▲殿(左)とゲストの岡野氏(右)
 
マナレイア飾磨店で働いている期間はおよそ5年。
それまでは、コンセルボや飲食店などを転々とし、大阪で4年ほど働いた後、縁あって加古川のマナレイアで働き、ドイツで1か月ほどのパン焼き修行をしてドイツパン、つまりライ麦パンの知識や技能も身に着けて帰国されました。
 
ドイツでの修業は、日本人が岡野さんたった一人という状況だったそうです。
修行先のお店には日本語が話せる人はおらず、岡野さんはドイツ語も英語も話せませんでしたが、ガッツだけでなんとかのりきったとのこと。
 
ドイツからの帰国後、飾磨店で店長を任されました。
 
岡野氏によると、焼き上がったパンは、見た目が同じでも焼き方でまったく別物に変わるそうです。
岡野氏曰く「見た目では分からない水分量や生地の状態等で、味や風味が変化します。つまり、パンは生き物みたいなものです。パンを焼くだけなら誰でも出来ますが、美味しく焼けるようになるのは時間がかかります。」
 
岡野氏は冒頭で経歴を簡単に説明してくださいましたが、どういった業種で働いていたかの説明はなかったので、ここで殿が職歴を尋ねました。
 
岡野氏によると、パン屋の前は生花市場で働いていて(ガーデニングが好きなのだそうです)、その前は牛乳の営業。
 
どういうわけかパン作りの世界に入り、色々と大変だったそうですが、もともと料理には興味があったため、包丁を持つだけでも楽しかったし、鉄板掃除ができるのも嬉しいほど。
仕事自体がワクワクの連続だったとのことなので、それまでの仕事と違って長く続けられたそうです。
 
パン作りには師匠がいましたが、懇切丁寧な指導をしてくれるタイプではなく、「技術を盗め」的な態度で最初は戸惑ったそうです。パンの出来が悪いときは悪いとだけいわれ、具体的に何が悪いのかは何も言ってくれない。
なかなか大変だったそうですが、その時の苦労が、現在のマナレイアさんのパンに反映されて、飛ぶように売れるパン屋さんになったんですね。
 
石窯パン工房マナレイアは、岡野食品のチェーン店です。

通常は本部に指示された材料とレシピでパンを作るはずですが、マナレイアさんは材料やレシピ、販売促進の為のイベントも、自分たちの裁量である程度好きなように出来るそうです。
 
チェーン店だと、安いけど品質もそこそこという商品になりがちですが、マナレイアさんは色々と自由がきくので、それほど安くはないけれども美味しい商品を作れるというわけです。
 
マナレイアさんには、「第37回殿のグルメ対談(夢前夢工房×日本酒師範)」に登場された、夢前夢工房さんのイチゴを使ったパンがあります。
 
夢工房さんのイチゴを仕入れるきっかけは、「うちにしか作れないものは何か」を考えていて、地元のものを使うパンを作ることを思いついたことだそうです。
 
手始めに地元の豆乳や卵、野菜を使ったパン作りを始め、やがて夢工房を紹介されました。
そして、夢工房さんがイチゴを作っていることを知り、マナレイアのパンで使うようになったそうです。
 
最近は日本酒もパン作りに取り入れられているとのことで、殿がお酒との出会いについて岡野氏に質問。
岡野氏曰く「『食・地の座』というイベントがあり、そこで日本酒の魅力を知って、パンづくりに酒を取り入れられないかと考えるようになりました。」
 
地元の酒蔵のお酒をいろいろと買い、酒まんがあるくらいだから、酒のあんパンがつくれるのでは?という考えから始められましたが、日本酒は香りも味も繊細で、生地に練り込むと焼き上がったパンに日本酒の味も香りも残りません。
 
酒の酵母をパンに使うというのもありますが、最近では珍しくないので、あんこに日本酒を混ぜてみたり、酒粕をあんこにいれたり試行錯誤されたそうです。
 
その酒粕の中で、マナレイアさんのパンに最もよく合うのが、本日のゲストである壺坂酒造さんの酒粕でした。
出来上がったあんパンは、岡野氏によると、お酒に弱い人は酔うくらいのもので、 一つ140円。
 
そうやって次々に新しいパン作りに挑戦しているため、お店は大人気で、売り上げもかなりあるようですが、それでも先代の店長の時ほどではないとのこと。

岡野氏曰く「先代の店長を超えたい。」
 
そんな岡野氏に今後の夢を殿が尋ねると、「姫路に住んでいる人でもマナレイアを知らない人はたくさんいます。もっともっとたくさんの人に知ってもらい、姫路で一番のパン屋になりたい。」とのお答え。
 

 
店名: 石窯パン工房マナレイア飾磨店
(この住所をクリックすると、Googleマップ上で位置が表示されます)
営業時間: 7:30~20:00
定休日: 無休(年始のみ)
駐車場: あり(20台)
電話番号: 079-233-7605

 
 
20:32
続いて、壺坂酒造の壺坂氏が登場。
 
 
▲殿(左)とゲストの壺坂氏(右)
 
今回は、壺坂酒造さんが最近発売されたイチゴのお酒についての話から始まりました。
 
そもそもイチゴと日本酒を組み合わせようと考えたきっかけについて殿が壺坂氏に質問。
壺坂氏によると、夢前夢工房の社長さんからイチゴで酒を造ってくれと頼まれたのがきっかけだったとか。
壺坂氏は、夢工房さんで販売してくれるなら作りますよと回答されたそうです。
 
それからしばらく経って夢工房さんから実際に依頼が舞い込み、イチゴを使ったお酒造りが始まりました。
最初は日本酒にイチゴを混ぜたものと、甘酒にイチゴを混ぜたものの2種類を作られたそうです。
ところが、出来上がった試作品は甘すぎると言われて不評。
 
何とかしなければということで、従業員総出で話し合いをもちましたが、そこで最初に出てきた意見が「そもそもイチゴのお酒を飲んだことがない」とのことだったので、ネットで検索してイチゴのお酒やラズベリーのお酒を入手し、みんなで味見。

でも、「これだ!」という味が見つからず、イチゴを実際に食べてみて、イチゴの味をお酒に再現しようということになりました。
 
イチゴは甘いだけでなく酸味があるため、酸味を追求することにし、甘酒を使う製品はやめて、清酒で作ることを決定。
 
酸味を出すためにクエン酸とビタミンCを購入し、pHが大事だというアドバイスももらって、すでにもっていたpH計を使って試行錯誤の毎日。
 
味を決めるときには材料の調合を少しずつ変えたものを用意し、従業員総出で、多数決でベストな味を選んだそうです。
 
殿から「イチゴを発酵させて酒を作れない?」と質問が出ましたが、壺坂氏によると、壺坂酒造が持っている免許ではそういった製法は使えないとのこと。
 
夢工房さんから仕入れたイチゴのヘタを取り、色々な行程(詳細に説明がありましたが、念のため伏せておきます)を経てイチゴのお酒は造られるそうですが、それらはすべて手作業。
しかも、20kgのイチゴから、一升瓶50~60本しか作れません。材料費や製造にかかる手間暇を考えると、一升瓶1本¥2,800(税別)というのも決して高くはありません。
 
イチゴのお酒には一升瓶と150ml瓶がありますが、150ml瓶はイチゴのイメージを出すために三角形の瓶を使い、「緑があった方が良い」という他からのアドバイスで緑色のリボンを巻いたそうです。

瓶の見た目がイチゴっぽいですし、緑色のリボンがちょうどイチゴのヘタのように見えてイチゴのお酒の容器にぴったり。
 
こんな特殊な瓶なので、瓶自体の値段が高く、150ml瓶は売値が1本¥580(税別)です。
しかし、この可愛い見た目は店頭で目を惹きそうですし、プレゼントにも良さそう。
 
このイチゴのお酒はかなり売れているそうで、壺坂氏曰く「久々のヒット商品。」とのこと。
 
話題は変わって日本酒の売れ行きについての話になりました。
年を取るとビールはしんどいし、日本酒は酔う。でも、ワインはいくらでも行けるというような風潮があると言う殿に対して、壺坂氏からは「よく『ワインのような日本酒』という表現が使われますが、あれはうちでは禁句です。『ワインのような』と言っている時点で、日本酒はワインに負けてることになりますから。」と返答。
 
これには参加者一同爆笑しましたが、確かにおっしゃるとおりということでみんな納得。
 
そんな壺坂酒造さんとマナレイアさんの出会いは、マナレイアさんからの企画の持ち込みだったそうです。
 
マナレイアの岡野氏が、日本酒をパン作りに活用したいと相談に来られて、新しいもの、変わったものが好きな壺坂氏と意気投合。
壺坂酒造さんが材料を提供し、マナレイアさんが試作品を持ってくるという流れで日本酒入りあんパンが出来たとのこと。
 
最後に、今後の展望について殿から壺坂氏に質問がありました。
 
壺坂氏によると、どこの国でも国酒(フランスならワイン、ドイツならビール、日本なら日本酒)の売り上げは不調なんだそうです。
そこで、壺坂酒造さんでは海外での販売に活路を見いだそうとされています。

現在の輸出先は香港。
 
それと同時に、北海道や関東にも商品を卸していたのをやめて商圏を縮小し、播磨地域での販路拡大を狙っているそうです。
 

 
 
会社名: 壺坂酒造株式会社
(この住所をクリックすると、Googleマップ上で位置が表示されます)
電話番号: 079-336-0010

 
21:14
試食と試飲が始まりました。
 
今回の試食は、マナレイアさんの膨大な数のパン各種と、壺坂氏が趣味で作られたジャム(砂糖の代わりに、甘酒を煮詰めたものを使ったもので、従業員に「本業は日本酒造りですよ。」と怒られるほどジャム造りにはまっているそうです)。
 
マナレイアさんのパンに関しては、今回の対談用に特別に通常より小さめに作られたものを用意してくださいました。小さくすることで、いろんなパンを食べられるようにとの岡野氏のご配慮です。
 
試飲は、壺坂酒造さんの甘酒や濁り酒、そして対談で話題に出たイチゴのお酒。
 
 
▲試飲用のお酒と試食用のパンが並んだテーブルの様子
 
上の写真ではパンが3種類しか写っていませんが、実際はその両脇にもずらりとパンが並んでいます。
全種類食べようと思いましたが、お腹いっぱいになって食べきれず。。。
 
それにしても、どのパンを食べてもすごく美味しいというのがすごい。
これだけ種類があれば、「こんなものかな」と感じる商品があってもおかしくないのですが、すべてが「すごく美味しい」んです。
 
その中にあって、カレーパンと「いそべっち」は「とんでもなく美味しい。」
カレーパンは脂っこさがなく、すじ肉がたっぷり入っていて、表面はサクサク。
いそべっちは、見た目が「パンの磯辺揚げ」ですが、中にちゃんとちくわが入ってます。これは日本酒に合いそうなパン。
 
食パンも何種類か頂きましたが、焼かなくても、何も塗らなくても美味しいんです。
試しに壺坂氏手作りのジャムを塗ると、ますます美味しくなりました。
 
 
▲壺坂氏手作りのジャム(非売品)左からリンゴ、トマト、梅のジャム
 
上の写真では右上に写っているのがイチゴのお酒ですが、これは瓶が赤いのではなく、中身のお酒が赤いのです。

飲んでみると、まさしくイチゴ!美味しい!お酒という感じがしません。
しかし、アルコールは7%ということでビールより強いですが、ぐいぐい行けてしまいます。
 
パンに合うお酒なんて初めて。
 
 
▲イチゴのお酒
 
22:00前
対談参加者がゲストに質問をするQ&Aコーナーが始まりました。
 
石窯パン工房 マナレイアさんへの質問
 
質問1 ずばり人気の秘訣は?
回答1 以前は人件費を削るためにスタッフを昼から帰らせるといったことをしており、確かに人件費は削れましたが、焼きたてのパンを出せる回数が減り、お客さんは減っていきました。しかし、上の方針が変わって、こだわりをもつことが許されるようになりました。そこで人件費を気にせず、いつも焼きたてのパンを出せるようにしたところ、客足が戻りました。今は、「普通に美味しい」パン屋を目指しています。
(注)「普通に美味しい」は褒め言葉には聞こえませんが、ここでの意味は「何を食べても美味しい。美味しいことが当たり前。」という意味です。
 
質問2 材料の産地を気にする人は多いですか?
回答2 多いです。安心して買ってもらうために、お客さん目線で考えることにしました。今は、地産地消を目指しています。
 
質問3 マナレイアさんが美味しいと思うパン屋さんはどこですか?
回答3 ステラさんやぱんださんのように、品質に妥協しないお店はいいですね。商品にお店の方の思いがこもっていて、それが買い手にも伝わってきます。
 
質問4 あんパンのあんに日本酒を入れる発想はどこから思いついたんですか?
回答4 基本的に天の邪鬼で、人がすることの真似をしたくなかったんです。日本酒は、パン生地に練り込むと飛んでしまいますし。酒まんがヒントです。
 
壺坂酒造さんへの質問
 
質問1 お酒造りに適したお水とはどんな水ですか?
回答1 例えば京都の水は硬水、宮水は軟水ですが、うちの仕込水は中軟水と呼ばれるものです。この水を使うと、自分が思っているよりも甘いお酒が出来上がります。ちなみに、目標は優しい味の日本酒です。
 
質問2 壺坂さんがワインを作るとしたら、どんなワインが出来ると思いますか?
回答2 ワインは作ったことがないので分かりませんが、25年ほど前、ワイン酵母で日本酒を造ったことはあります。ただ、あまり売れませんでした。酸味がきつくて。もし商品として作ってしまうと、不味くても捨てられません。作ったお酒を捨てると、脱税になってしまうんです。作った分は必ず売って税金を納めないといけませんから、あまり変わったものは作れないです。
 
質問3 壺坂さんではどんな酵母を使っていますか?
回答3 きょうかい酵母を使っています。蔵についている酵母を使うところもありますが、あれは時間が経つと変異する、つまり味が変わってしまう可能性があります。
 
ここには書いていませんが、実際はもっといろいろなお話が出ました。
しかし、企業秘密?公開して良いの?と思えるような内容や、よくぞ話してくれましたというような赤裸々な内容もあったため、かなり省略しています。
 
22:45
グルメ対談が終了しました。
 
それにしても、今回は本当に食べ過ぎました。
 
試食用にこんなにたくさんのパンを用意して頂いたマナレイアさん、貴重なイチゴのお酒を大盤振る舞いしてくださった壺坂酒造さん、ごちそうさまでした。