播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

LANケーブルの自作(その2)

先日、LANケーブルの自作についての記事を掲載しましたが、あの記事ではケーブルテスタ以外は一般の方向けの資機材を使っていました。

 

LANケーブル自作にハマッてしまい、さらに高性能な資機材が欲しくなった方がいらっしゃるかも知れないので(そんな人が本当にいるのだろうか?)、今回は業務用の資機材を使った成端作業を紹介します。

 

ここで紹介している道具類は、すべて私が個人的に購入した物です。(業務用の資機材ですが、個人でも購入することが出来ます。)

 

では作業手順をお見せしましょう。

 

今回の例では、AMPというメーカーのRJ45プラグ(ハイパフォーマンス型)を使用しています。
このプラグは、専用工具と組み合わせて使う必要があります。

 

AMPのハイパフォーマンス型プラグでは、プラグとブーツを組み合わせて成端しますが、プラグを付けた後にブーツをはめることができないので、あらかじめブーツをケーブルに通しておきます。

 

 

次にケーブルストリッパを使って皮膜を剥き・・・

 

 

芯線の順序を整えた後、芯線の長さを測るための治具(じぐ)にはめます。

 

 

治具からはみ出した芯線をニッパで切断します。これで、芯線が適切な長さになります。

 

 

芯線の順序が狂わないように注意しながらケーブルを治具から外し、ロードバーと呼ばれる芯線用レールに芯線を通します。これで、芯線の順序が狂わなくなります。

 


▲ロードバー(プラグに付属)に芯線を通した状態

 

ロードバーごとケーブルの端をプラグに差し込みます。

 


▲透明なプラグの中に黒いロードバーが入っています

 

最初に通しておいたブーツをプラグにはめます。

 

 

AMP社の専用かしめ工具でかしめます。

 


▲この作業でブーツとプラグが固定される

 

完成!

 


▲透明でなければ、既製品のように見えます



これでいきなりケーブルを使ってはいけません。
テスタで品質をチェックする必要があります。

 

配線工事でプロが使うテスタは、Fluke(フルーク)社の「認証」用のケーブルテスタです。これはケーブルの性能を保証するためのテスタで、私がここで紹介するケーブルテスタは「検証」用のテスタ。

 

検証と認証の違いですが、検証テスタでは「このケーブルは、ギガビットLANで使えるでしょう」と言えるだけですが、認証テスタを使うと「このケーブルは、ギガビットLANで使えます」と言えるのです。
お客様からお金を頂いて配線をする業者にとっては「・・・でしょう」と「・・・です」の違いは大きい。

 

私は自宅や友人・知人宅内の配線か自身の職場の配線しかしないので、「認証」テスタほどの性能は必要ありません。そのため、検証用テスタを使っています。
なんといっても、検証用テスタと認証用テスタでは、値段の桁が違いますから。
認証用テスタを買うお金があれば、車を買います。そのくらい高価なんです。

 

では、私の持っている検証用テスタでのテスト作業を紹介します。

 


▲テスタ本体にケーブルの一端を、もう一方の端をリモートアダプタに差し込みます。写真は、テスト実行前の画面。

 

この状態で「TEST」ボタンを押すと、数秒後にテスト結果が表示されます。
結果表示は次のような画面です。

 


▲テスト中のケーブルがどの通信速度まで対応しているかが一目瞭然。チェックマークが入っていると合格、バツ印だと不合格。今回は、すべての通信速度で使えるという結果が出ています(すべてチェックマーク)。

 

テスト項目の詳細を見ることも出来ます。

 


▲ケーブルを流れる信号レベルの評価

 


▲各ペアごとの長さの表示。各ペア間で信号到達時間に大きな差がある場合は、この画面で表示されます。

 


▲結線状態の表示。この表示では、ストレートケーブルが正しく作られたことが分かります。左上の奇妙なマークは、ケーブルの端にリモートアダプタが接続されていることを表しています。

 

何もここまで本格的に検査する必要はないように思えますが、家庭用の安いケーブルテスタで「異常なし」となったケーブルが、実はネットワーク障害の原因だったということもあるのです。(クロストークやインピーダンス異常など、安いテスタでは検出できない異常もある。こういった障害は、検証テスタか認証テスタでないと検出できない)

 

スイッチ間のカスケードやサーバ、ルータを接続するような重要なケーブルとして使う場合は、Fluke社の製品でケーブルを検査するべきです。

 

ケーブルの品質チェックをすることを、「ケーブルをFlukeにかける」なんて言うくらい、Flukeはこの分野で信頼されているブランドです。品質は一流ですが、値段も超一流・・・。



プロが高価な機材を使う理由は単純です。良い結果が出せるからです。
たとえば、ここで写真に写っているかしめ工具は1万5千円以上しますが(数万円で売られていることもある)、プラグの端子を押し込むための歯の精度や固さが、安いかしめ工具よりも優れています。
プラグも高いだけあって抜き差ししやすい形状(長いブーツがついている)になっていますし、耐久性(抜き挿し回数)も安いプラグよりずっと優れています。



前回紹介した家庭用の資機材を使った作業に比べ、今回紹介した手順では使用する道具が増えていて、煩雑になったように思えるかも知れません。
しかし、作業は業務用の資機材を使った方が速くて楽であり、出来上がるケーブルの品質も良くなります。

 

会社でネットワーク担当をされている方には、家庭用よりも業務用の資機材をお勧めします。予算の関係でなかなか難しいかも知れませんが、徐々にそろえていくと良いと思います。



最後に、今回の記事で使用した資機材をまとめておきます。

 

・プラグ(メーカー:AMP、型番:5-569278-3、価格:@50円ほど(100個単位))
・ケーブルストリッパ(メーカー:ELECOM、品名:外皮むき工具、価格:2,000円ほど)
・かしめ工具(メーカー:AMP、型番:3-231652-0、価格:15,000円ほど)
・治具(メーカー:PANDUIT、型番:WPT-8、価格:600円ほど)
・ケーブルテスタ(メーカー:Fluke networks、品名:CableIQ、価格:10万円台後半)