播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

LANケーブルの自作

LANケーブルは最近のパソコン環境では必須ですが、ほとんどの方はお店で既製品を購入されていると思います。
でも、日曜大工や電子工作の好きな方は、LANケーブルの自作に挑戦してみてはいかがでしょうか。

 

自分の作ったケーブルでネットワークにつながっていると思えば、(最初の内だけですが)普段使っている「マイネットワーク」やブラウザのウィンドウを開くときにちょっとした感動を覚えることが出来ます。

 

「LANケーブルなんて数百円で買えるんだから自作なんてしなくても」と思われるかも知れませんが、色々とメリットがあります。

 

・ちょうど良い長さのケーブルが作れる。
・爪が折れたLANケーブルを買い換える必要がない。(プラグを付け直せばOK)
・小さな穴や細い隙間、開けようと思っても割れそうで開けられない古いモール等にケーブルを通すとき、プラグが邪魔で通せないことがしばしばあります。そんな時、プラグを付けていない状態でケーブルを通し、最後にプラグを付ければ、既製品では絶対通せない場所にケーブルを敷設することが可能です。

 

家庭内や小規模なオフィスなら、パソコン本体の上に小型のハブやルータを置いていることも多いはず。そんなときは、ケーブルの長さが30cmもあれば十分ですが、市販品ではそこまで短いのは見つけにくい。ムダに長いケーブルは邪魔なだけですから、ちょうど良い長さのケーブルが作れるのは便利。

 

プラグの爪が折れただけでケーブルを買い換える人もいますが、ケーブルの自作が出来る人であれば、1個40~50円のプラグを付け直すだけで、そのケーブルを使い続けることが出来ます。



では、LANケーブルを自作するための道具を紹介しましょう。
自作用のパーツやケーブルには、カテゴリ6(略称カテ6)とエンハンストカテゴリ5(略称カテ5e)の自作用パーツが売られていますが、パーツの値段と性能を考えると、カテ5eで十分です。

 

・LANケーブル
家庭で使うなら、数十メートルの既製品を購入し、付いているプラグを切り落として使えば良い。
パソコンショップで購入可能。(1mあたり100円ほど。100m単位で購入すればもっと安い。)

 

・RJ45プラグ(コネクタ)
パソコンショップで購入可能(1個あたり40円~50円)

 

・かしめ工具
6芯と8芯の両方に対応していれば、電話線の自作にも使えて便利
パソコンショップで購入可能(4,000円ほど)

 

プラグとの相性があるので、プラグと同じメーカーの製品を買うのが無難。業務用の本格的なものであれば、使えるプラグが指定されていることがあるので要注意。

 

・LANケーブルテスタ
パソコンショップで購入可能。安い物なら数千円
(手間はかかりますが、電子工作用のテスタでも代用は可能)

 

・ハサミ

 

以上の5つはケーブル自作に必須です。ケーブルテスタまで「必須」にするのは大げさかも知れませんが、完成したケーブルをパソコンにつないでも使えない場合、原因がケーブルにあるのかPC側の設定にあるのか切り分けが出来るので、私は持っているべきだと思います。



ケーブルの作り方は単純です。
LANケーブルのビニール被膜を剥き、中の芯線8本を規格に沿って並べ替え、プラグに差し込んでかしめるだけ。最後は、テスタを使って導通のチェック。

 

具体的に手順を見ていきましょう。

 

まずはハサミを使ってLANケーブルのビニール皮膜を3センチほど剥きます。適度な力でケーブルをハサミの刃の間に挟み、ハサミやケーブルを回すように動かして皮膜を切断、取り除きます。このとき、力を入れ過ぎるとLANケーブル内の8本の芯線の絶縁用皮膜にキズが付いてしまいます。そうなると、ショートや断線で使い物にならないケーブルが出来上がってしまいます。
皮膜を剥いた後は、芯線の皮膜にキズがないかしっかりチェックして下さい。

 

 

芯線は(白橙、橙)、(白緑、緑)、(白青、青)、(白茶、茶)の8本で、括弧内の2本ずつがより合わされて4組のペアが出来上がっています(上写真参照)。

 

それぞれのペアのよりをほどいて芯線を両指先でしっかり挟み持ち、引っ張りながらくねくねと曲げて下さい。すると、よりの跡が消えて芯線がまっすぐになります。よりをほどく部分が長すぎると、出来上がったケーブルの品質が低くなるので、皮膜に隠れている部分はなるべく「より」がほどけていないようにすると良いでしょう。

 

ケーブルを伸ばすとき、後で並び替える順序を考慮しながら作業をする、つまりこの段階でケーブルの順序をある程度整えておくと、きれいなケーブルを作ることが出来ます。

 


▲よりをほどいてまっすぐに伸ばす。

 

次に、まっすぐに伸ばした芯線を規格に従って並べるのですが、この規格にはAとBの2通りがあります。
Bの規格が一般的なので、ここではBの規格(正しくは「TIA/EIA568B」)の順番で説明します。

 

芯線は左から白橙、橙、白緑、青、白青、緑、白茶、茶の順番に並べて下さい。

 

 

この状態で再度芯線を引っ張りながらくねくねと曲げ、しっかりとクセを付けます。そうすると、手を離しても8本の順序が変わりません。

 

次に、並べた芯線の先端を、必要な長さだけ残して切り落とします。どれだけ残すのかは、使用するRJ45プラグの形状次第です。プラグを横から見ると、内部の構造(高さの変化)がよく分かるはずです。高さのある場所はLANケーブルの被膜が入るところで、高さが低くなる場所は芯線だけが通るところです。芯線だけが通る区間の長さプラス数ミリ程度の余裕を持たせ、芯線の先端がまっすぐに揃うように余分な芯線を切り落として下さい。

 


▲芯線の先端はまっすぐにそろえる。

 

いよいよケーブルをRJ45プラグに差し込みます。プラグは爪のない面を上に向けてケーブルを挿して下さい。プラグの先端はケーブルが1本通れるだけの穴が8本並んだ状態です。それぞれの穴に芯線が1本ずつ通るように、丁寧にケーブルを押し込んで下さい。
プラグを横から見たときに芯線の先端がプラグの先端に達し、高さのある空間に皮膜がある程度はまっていればOKです。

 

 

プラグは透明なので、中のケーブルの色を見ることが出来ます。ここで再度ケーブルの順序を確認し、間違っていればいったんケーブルをプラグから抜いて並べ替えをして下さい。

 

最後はかしめ工具でプラグをかしめれば、プラグの取り付けは終了。

 


▲かしめ工具は色々あるので、取扱説明書をよく読んで操作して下さい。

 


▲かしめた後の端子の状態。上にあるかしめる前の状態と比べてみて下さい。

 

反対側も同じ要領でプラグを取り付ければ、自作ケーブルは完成です。しかし、まだこれをネットワークにつないではいけません。

 

接触不良やショートがないか、ケーブルテスタで調べましょう。ケーブルテスタは色々な製品があるので、取扱説明書を良く読んで使って下さい。

 


▲ケーブルテスタを使った導通確認作業。(写真の装置はFluke networksのCableIQ)

 

電子工作用のテスタを使う場合は、まず片方のプラグ(プラグAと呼ぶことにします)の白橙端子にテストリードを当て、もう一方のプラグ(プラグBと呼ぶことにします)の白橙端子にもう一方のテストリードを当てて導通をチェックします。導通していれば正常です。
次に、プラグBのテストリードを隣の端子(橙)に当てます。さらにプラグBのテストリードを隣へ隣へと移動させ、茶色の端子まで移動させたら、プラグAのテストリードを橙へ移動させ、プラグBのテストリードも橙に当てます。そしてまたプラグBのテストリードを隣へ隣へと動かします。この作業を繰り返し、プラグAとプラグBの両方で、テストリードが茶色に当たっている状態になればチェック完了。この作業の間に、同じ色の端子同士でだけ導通があれば正常。違う色の端子間で導通があれば、ショートしているということです。

 

ショートや開放(断線や端子の接触不良)があった場合は、プラグを切り落として作り直します。

 

異常が無ければ、ネットワークへつないで下さい。初めて自作ケーブルを使うときは、いい年をした大人でもかなり嬉しい気分になれます。
最初の内は失敗することも多いので、慣れるまでは職場のケーブル自作には手を出さない方が良いと思います。家庭内LANの配線作業で十分に腕を磨いて下さい。

 

ケーブル自作に慣れてきたら、もっと効率よくケーブルを作る方法は?とか、出来上がったケーブルの品質にも興味が出てきたりします。
そこまでハマッてきたら、下に紹介するような道具も使ってみて下さい。

 

・高機能なRJ45プラグ
抜き差ししやすくするために長目のブーツがついたプラグや、芯線を並べやすくするロードバー(ガイド)のついたプラグ等があります。

 

・ニッパまたはケーブルカッタ
ケーブルの切断に使う。ハサミだと刃が傷む
ホームセンターやパソコンショップで購入可能(1,000円~2,000円)

 

・ケーブルストリッパ
LANケーブルの皮膜を剥くための道具。大量のケーブルを作るときには、これがあるとすごく楽。
パソコンショップで購入可能(2,000円ほど)

 


▲大きな洗濯ばさみのような形の道具。ケーブルを挟んでくるっと回せば皮膜が剥ける。

 

・高機能なケーブルテスタ
高級機種は、パソコンショップでは入手不可(数万円~百万円以上)
こんな値段のテスタまで買うようになったら病気かも。私はすでに重症です。

 


▲私が使っているのはFluke networksのCableIQ。導通やショートのチェックだけでなく、ケーブルの長さや断線箇所の位置を表示したり、ケーブルがどの程度の通信速度まで使えるか検証する機能が付いています。LANケーブルだけでなく、電話線や同軸ケーブル、スピーカーケーブルのチェックも可能。

 

家庭内LAN用にケーブルを自作するだけなら、数千円~1万数千円クラスのケーブルテスタで十分です。

 

数十メートル以上の長さがあるケーブルを作って敷設したり、業務で使用するネットワークに使うなど重要なケーブルを作ったりするなら、少なくともFluke networksのLinkRunner(断線、ショート、スプリットペアの検出、異常箇所までの距離・ケーブル長の表示、その他ネットワークのトラブルシューティングに使える機能が満載で7万円ほど)くらいの性能のあるテスタを買う(あるいは会社の経費で買ってもらう)ことをお勧めします。