播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。原則として更新は週に1回です。広告は表示しません!

遠くがハッキリ見える日本製の防振双眼鏡:SIRIUS(シリウス)14(後編)

概要

前編ではシリウス14の外観と、使用するための準備について紹介しました。
今回の後編では、実際の性能等を紹介します。

前編に興味のある方は、下のリンクからどうぞ。

手振れ補正のON/OFFとモードの切り替え

双眼鏡をあまり使わない方にとっては、「手振れ補正なんて必要?」と思われるかもしれません。

実際に双眼鏡で遠くを見るとわかっていただけると思いますが、双眼鏡の中の景色は呼吸による上半身の上下動や、心臓の鼓動による手の微振動でかなり動き、安定しないのです。

また、間の角度が1度になるように引いた2本の直線の間隔は1km先で約17mにもなりますから、双眼鏡の角度が1度変わると、例えば5km先の物体を見ていれば85mもずれることになります。手振れ補正は必須といえるでしょう。

そんな重要な手振れ補正機能ですが、シリウス14には「フローティングモード」と「スティルモード」の2種類の動作モードが備わっています。

手振れ補正機能のON/OFFは、右の接眼レンズの前にあるレバー(電源スイッチ)で簡単に切り替えられます。


▲電源スイッチ(左はOFF、右はONの状態)

電源を入れるとフローティングモードと呼ばれる手振れ補正モードが動作し、電源スイッチの手前にあるLEDが緑色に点灯します。


▲手振れ補正(フローティングモード)がONの状態(緑色点灯)

この状態でスイッチをOFFにし、すぐまたONにすると、今度はスティルモードに切り替わります。

スティルモードで動作している時のLEDは赤色


▲手振れ補正(スティルモード)がONの状態(赤色点灯)

手振れ補正の性能

フローティング(floating)モードは「浮動モード」という意味で、双眼鏡を大きく動かして使う場合に適したモードです。

【フローティングモードの使用例】

  • 飛んでいる鳥や航空機、ステージ上を動き回る演奏中のアーティストなど、大きく移動する対象物を見る
  • ボートの上など揺れる場所で遠くを観察する等

スティル(still*1モードは「静止モード」という意味で、双眼鏡をじっとさせて遠くの一点(あるいは狭い範囲)を見る時に適したモード

【スティルモードの使用例】

  • 木にとまった鳥を観察する
  • ゆっくり移動する物(船舶等)を観察/監視する
  • ライブ会場でMC中のアーティストを見る等

実際に手振れ補正の効果がどのくらいあるのか、見え方の違いを動画で紹介します。
下の動画は、約8km先の煙突をシリウス14で見た時の見え方です。

注:スマホ越しの映像です。肉眼ではもっと明るく、鮮明に見えます。


▲手振れ補正機能の性能(撮影場所から写っている煙突までの距離は約8km)*2

一部のスマホ環境では、この上の動画が再生されないことがあります。その場合は、以下のURLから直接動画ファイルをご覧ください。

https://shimiken1206.sakura.ne.jp/files/SIRIUS14_Comparison.mp4

スティルモードであれば、まるで双眼鏡を三脚に据え付けたかのような安定感です。これなら、「ずっとスティルモードで使えばいいのでは?」と思われるでしょうが、そうもいきません。

防振双眼鏡が手振れを補正する仕組みは、レンズの位置はそのままで、内部のプリズムと呼ばれる光学部品を動かし、対物レンズと接眼レンズを結ぶ光の通り方を一定に保つというもの。

スティルモードは、視野を一定に保つモードです。
そのため、ジャイロセンサーは自分が補正できる限界までプリズムを動かして手振れを補正してくれますが、その限界を越えて双眼鏡が動くと、双眼鏡が向いた新しい方向に向けて、プリズムがピョコンと素早く動くのです。

スティルモードのまま双眼鏡を上下左右に動かすと、見える映像はピョンピョン跳ねるような動きになってしまい、見づらくて仕方ありません。

フローティングモードは、スティルモードほど視野を固定しようとせず、双眼鏡の動きにプリズムの動きが滑らかに追随してくれます

プリズムの動きに大きな違いがあるため、状況に応じてモードを切り替えた方が快適に使えるというわけ。

三脚の使用

野鳥の巣を観察するなど、長時間にわたって同じ場所を見る場合は、手振れ補正よりも三脚に双眼鏡を取り付けた方が便利です。

双眼鏡の重さを感じることもなく、観察対象を毎回双眼鏡越しの狭い視野で探す必要もありません。


▲シリウス14を三脚にセットした様子

三脚用のネジ穴が付いており、追加の部品無しで三脚に取り付けられる双眼鏡は珍しいと思います。(多くの双眼鏡は、別売の三脚用アダプターを購入しないと三脚に取り付けられません。)

収納

収納時にレンズを保護するためのキャップは、接眼レンズ用のものだけが付属しています。

キャップは左右が蛇腹状の部品でつながっており、接眼レンズの間隔(眼幅)に関係なくしっかりとキャップを装着できます。

片方だけを紛失する心配もなく、非常に便利。


▲接眼レンズ用のキャップ

付属の専用ケースはシンプルは箱型で、フタはベルクロ留めのフラップ。
デザインに凝り過ぎて使いづらいケースもあったりしますが、個人的には結局シンプルなのが一番使いやすい。


▲専用ケースはシンプルな構造


▲背面にはベルトループがある

私は使わないのですが、ネックストラップも付属しています。


▲シリウス14に付属するネックストラップ

私がシリウス14を山に持って行く時は、防水性とクッション性のある袋に入れています。


▲山へ持って行く時は専用ケースを使わず、アウトドア用の防水バッグに入れる

最後に

私のように山歩きをする方であれば、景色を見るときに双眼鏡があればもっと楽しめるであろうことは、容易に想像できると思います。

山歩き以外では、次のような方に防振双眼鏡はお勧め。

  • 野鳥観察が好きな方
  • 広い施設警備監視などのお仕事をされている方
  • 船舶の乗員マリーナの管理者
  • スポーツを競技場で観戦するのが好きな方
  • 歌手(特にグループ)のライブに出かける機会が多いファンの方

なぜ歌手のグループのファンに防振双眼鏡が向いているかというと、「自分の推しを好きなだけ眺めていられる」から。

単独の歌手の場合、コンサート会場では巨大モニターに歌手が大きく映し出されますが、グループの場合は常に「推し」が画面に写っているとは限りません

防振双眼鏡があれば、モニターではなく双眼鏡越しに「推し」をずっと見ていられるわけです。

その他にも、想像力次第でいろんな使い方が思いつくかもしれません。

くれぐれも、他人のプライバシーを侵害するような使い方はしないでください

ちなみに、この「シリウス14」はビクセン(Vixen)の防振双眼鏡「ATERA II」(倍率は12倍。防水性なし。)やケンコー・トキナーの「VCスマート 14×30 Cellarto」(倍率は14倍。防水性なし。)と外観も機能も似ていますし、倍率は12倍と「シリウス14」に劣るものの、同じメーカー製で完全防水(IPX7)の「シリウス12」もあります。

他にも防振双眼鏡は色々とありますから、欲しくなったらご自身の好みに合うものをお選びください。

長所

  • 比較的コンパクト軽量
  • 14倍もの倍率があるので、広い野球場や競技場などでも使える。
  • 生活防水(IPX4)のため、汗みどろになったり雨に降られる山歩きでも使える。
  • 防振機能のON/OFFがレバー式のスイッチになっており、自動電源オフまでの時間が30分もあるので、長時間双眼鏡を覗く可能性のあるコンサートなどでは便利*3
  • 単三形電池×1本で長時間使用できる(ランニングコストが安い)。
  • 経年劣化しやすいラバーコーティングが使用されていない
  • 接眼レンズのキャップが左右個別ではなく連結されており、紛失しづらい
  • 三脚用のネジ穴がある。

短所

  • 倍率が高いため、狭い会場などでは「肉眼では見づらいけれど、双眼鏡を通すと狭い範囲しか見えなくて中途半端」という状況になる。
  • 電池蓋がねじ込み式のため、開閉が面倒。また、電池蓋はどこにもつながっておらず、屋外で電池交換をする際に落とすと紛失するおそれがある。
  • 完全防水ではないため、波しぶきを受ける可能性がある小型船舶での使用には向かない(海上で使用する場合は、富士フィルムの完全防水の防振双眼鏡が向いています。一部の富士フィルム製防振双眼鏡は、完全防水で水に浮きます。)。
  • スティルモードでの動作を示す赤いLEDは、ビデオカメラの録画中を示すライトを連想させるため、コンサート会場など録画が禁止されている環境では、周囲の人の誤解を招くおそれがある*4

*1:スティル写真という「静止画」を意味する言葉がありますが、その「スティル」が「still」です。「ティ」という表記がなかった時代の名残で「スチール」とか「スチル」と表記される場合もあります。

*2:双眼鏡は手持ちで、スマホ用のアダプターを使用してスマホのカメラを接眼レンズに当てて撮影しました。

*3:他社製品では、防振機能を有効にするにはボタンを押しっぱなしにしなくてはいけないとか、自動電源オフまでの時間が極端に短いものがあります。

*4:他社の製品では、LEDを隠すフタが付いているものがあります。