イベント概要
姫路港では毎年この時期、地域住民や地元アイドル等のステージイベントが行われ、そのすぐ近くの岸壁で護衛艦等の一般公開が行われる「姫路港ふれあいフェスティバル」が開催されます。
2024年の姫路港ふれあいフェスティバルでは、護衛艦いなづま(DD105)と巡視船きい(PL73)の一般公開が行われるとのこと。
護衛艦はいつも大人気で、乗艦するだけでも長時間行列に並ぶことになります。
今回公開される「いなづま」は私が2016年に大阪で見学した護衛艦「きりさめ」と同型ですから、「一度見た船の同型艦だから見なくてもいいかな。護衛艦見学の行列がすごかったら、巡視船だけでも見学しよう」と考えて出かけてきました。
▲一般公開されていた巡視船きい(手前)と護衛艦いなづま(奥)
イベント名称: 令和6年度 姫路港ふれあいフェスティバル
日時: 2024年10月27日(日)10:00~15:00
場所: 姫路港飾万津臨港公園周辺
主催: 姫路港ふれあいフェスティバル実行委員会
共催: 兵庫県中播磨県民センター、姫路市、国関係機関、姫路港関係団体等
後援: 国土交通省近畿地方整備局神戸港湾事務所、瀬戸内・海の路ネットワーク推進協議会、姫路港ポートセールス推進協議会
入場料: 無料
駐車場: あり
内容: 海上保安庁 巡視船「きい」一般公開、護衛艦「いなづま」一般公開、ステージ演奏、飲食店などの出店、銀の馬車道ウォーク
私の自宅から会場までは6kmほど。
最近は暑くて山歩きもせず、休日は電車やバスで出かけているだけで体が鈍っていますから、自転車で出かけることに。
一般公開の様子
https://maps.app.goo.gl/soe3VCsU1VWmSFkD8
▲巡視船きいと護衛艦いなづまが停泊していた場所
会場に到着すると、姫路港の3号岸壁に船首を北に向けた巡視船「きい」、4号岸壁に護衛艦「いなづま」が停泊していました。
予想通り護衛艦の方は長蛇の列ができていたので、巡視船だけを見学することにしました。
▲10時の時点ですでに長蛇の列ができていた護衛艦いなづま
船尾甲板
▲巡視船きい(PL73)
全長: 78m
最大幅: 9.6m
総トン数: 960トン
速力: 約20ノット
所属: 和歌山海上保安部(第5管区)
建造: 三井造船玉野事業所(岡山県玉野市)
就役: 2014年7月31日
巡視船きいの方には行列はなく、「乗ってもいいのかな?」という雰囲気でした。
海上保安庁の制服を着た方に尋ねると「どうぞどうぞ」と言われ、安心して乗船。
▲船尾付近に設置された舷梯から乗船した
乗船した場所は船尾甲板。
大きな巻揚げ機と小さなクレーン(ユニックのオーシャンクレーン)があるくらいで、広々としていました。
▲船尾甲板から船橋方面を見る
甲板にいらっしゃった乗組員さんに聞くと、巻揚げ機は船を係留するためのロープを張るのに使うらしく、船舶の曳航に使うのは別の装置とのことでした。
ロープは海水を吸って重くなると扱いが大変なので、機械を使うそうです。
船尾甲板を見た後は、右舷の通路を通って船首へ。
▲右舷の通路の様子
船首
船首には遠隔放水銃と30mm単装機関砲(Mk44ブッシュマスターⅡ)の砲塔があり、護衛艦とはまた違った雰囲気。
▲船首の武装と船橋
30mm機関砲の砲塔から一段下の空間までは見学可能でしたが、砲塔に続く階段は立ち入り禁止。「あとちょっとなのに」とか「ここまでかぁ」と落胆する見学者が多かったですが、私は「給弾室排気」と書かれたハッチや「30mm機関砲安全スイッチ」と書かれた保安器箱のようなものを間近で見られただけで幸せ。
▲給弾室排気と書かれたハッチ(左)
アメリカ軍とイギリス軍がMk.44ブッシュマスターⅡを搭載したGWS(Gun Weapon System)を射撃する様子がYouTubeにありますので、転載します。
船首からは、左舷の通路を船尾に向けて進むように順路が設定されていました。
船内の見学
矢印に従うと、通路の中ほどにある扉から船内へ入れるではありませんか!
入った所は洗面台。こんなところに生活空間があるのか。
▲通路から船内に入ってすぐの洗面台
洗面台から船の中央を縦に通る通路を船首側に進むとすぐ左手に厨房があり、その向かい側(通路の右)は公室(食事や打ち合わせをするための部屋)になっていました。
▲厨房
▲公室の様子
公室を見終わったら、順路を示す矢印に従って階段を登ります。
階段は護衛艦と違って角度が緩く、安全に上り下りできました。
▲巡視船の階段
階段を登り切った所は船橋(船長が指揮をとる場所)です。
様々な機器があり、全天球パノラマの撮影にもピッタリだと思ったのですが、乗組員さん曰く機密情報が多すぎるということで、船橋内全体が撮影禁止になっていました。
そんな重要情報が多い船橋を実際に見られただけで幸せです。
どうでも良い話ですが、置いてあった双眼鏡はニコン製でした(今まで見学した護衛艦はケンコー・トキナー製が大半でした)。
船橋内を見学していたら、巡視船の搭載艇(複合艇)による訓練展示がある旨のアナウンスが流れました。
訓練展示は巡視船の右舷側の海上で行われ、船橋横という特等席から眺めることが出来ました。今日は来てよかった!
▲急旋回を披露する複合艇
下船
最後は煙突付近から階段で甲板の高さまで下り、煙突の真下付近に設置された舷梯から下船しました。
▲左後方から見た巡視船きい
上の画像で煙突と船橋の間に吊られている高速警備救難艇の尾部に注目してください。
青く塗られているのが目についたので舷梯近くにいらっしゃった乗組員さんに尋ねると、ウォータージェット推進とのことでした。
▲高速警備救難艇はウォータージェット推進(青い部分にスクリューが無い)
もう一つ気になったのは、船体の側面についていた電光掲示板(停船命令等表示装置)。
周囲の船舶に対して停船命令を出したり、防災情報などを伝えるための装置のようですが、今回は「ようこそ巡視艇きいへ」等の文言と公開時間が表示されていました。
▲停船命令等表示装置(「ようこそ巡視船」の文字が見える)
訓練展示(不審船対応)
「さて、帰ろうかな」と思っていたら、2回目の訓練展示が始まりました。
今度は高速警備救難艇(白色)を不審船に見立てて、複合艇(黒色)が取り締まりを行うという内容です。
今度は岸壁からその様子を眺めることにしました。
目の前を高速で通過する複合艇がまずカッコいい!
▲訓練展示のために移動する2隻の複合艇
そして2隻が息をピッタリ合わせて高速で機動する様子を見せるのもカッコいい!
▲2隻が息を合わせて機敏な動きを披露する様子
俊敏な動きのほか、不審船に進路を変えさせるための機動(相手の舳先(へさき)を高速で横切る動き)も実演されました。
▲1隻を不審船に見立ててその舳先を至近距離で横切る(相手の進路を強制的に変えさせる機動)
続いては不審船役の船を相手に、警告や挟み撃ちによる実力行使(相手の船への移乗)のデモンストレーションが行われました。
▲巡視船に近づく不審船役の船(右)に拡声器で警告を伝える様子
▲口頭での警告を無視し続けるため、強制的に不審船の進路を変えさせる様子
▲執拗に巡視船に向かい続ける不審船を2隻で挟み込んで…
▲…不審船に密着して移乗し、制圧する様子
午前の部の訓練展示はこれで終了とアナウンスが流れたので、帰路につきました。
海上保安庁の船を見学させていただいたのは初めてでしたが、機密が多い船橋まで見学でき、随所に立っておられる乗組員の方々に色々と質問ができて楽しい経験になりました。
船上で撮影した全天球パノラマ
船橋以外の場所は基本的に撮影が可能でしたので、全天球パノラマを撮影しました。
船上や船内の様子をご覧ください。
https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/patrol_vessel20241027/index.html
▲巡視船きい船上で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2024年10月27日)
参考情報
今回一般公開された海上保安庁の巡視船「きい」には「PL73」という記号が付いています。
「PL」は「Patrol vessel Large(大型巡視船」」の頭文字を取ったもので、数字は連番です。
「きい」の場合、同型船の番号は「PL71」から始まっているため、番号が「73」の「きい」は、同型船の3番目ということになります。
巡視船艇の記号には、他に「PLH」(Patrol vessel Large with Helicopter)や「PM」(Patrol vessel Medium)、「PS」(Patrol vessel Small)(以上は巡視船)、「PC」(Patrol Craft)、「CL」(Craft Large)(これらは巡視艇)があります*1。
*1:海上保安庁のWebサイトを参照しました。