播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。原則として更新は週に1回です。広告は表示しません!

遠くがハッキリ見える日本製の防振双眼鏡:SIRIUS(シリウス)14(前編)

購入の経緯

先日、神戸のメリケンパーク(屋外)で行われたアウトドアの展示会(OUTDOOR DAY JAPAN 2024 KOBE)で阪神交易という会社の展示ブースを覗きました。

大半の方がご存じないと思いますが、阪神交易さんはレーザー距離計ナイトビジョン双眼鏡スピードガンなど、私が好きなジャンルの製品を扱っている商社で、手振れ補正機能が付いた同社製の防振双眼鏡「シリウス」シリーズも販売しています。

ブースには同社が扱う各種の製品が並んでいましたが、その中にシリウスシリーズの双眼鏡も2種類(倍率が12倍と14倍)展示されていました。

展示会場のメリケンパークは海に面した屋外の広場です。
そのため、メリケンパークが平地といえども、海の向こうに見えるポートアイランド(埋立地)などを眺めて双眼鏡の性能を実際に体験可能。

シリウスは阪神交易さんが製作されている日本製の双眼鏡ですから、展示ブースの方に機能や質感へのこだわりを直接、しかも詳しく聞くことができ、「この性能と質感なら高価なお値段にも納得!」ということで、双眼鏡を衝動買いしてしまいました。(「クレジットカードが使えます」なんて書いてあるんですよ…商売上手)

概要

双眼鏡は、倍率が大きくなるほど手振れの影響を受けやすくなり、8倍や10倍を超えるような双眼鏡を手持ちで使うとなれば、見える映像はブレて使い物になりません

その対策として、ジャイロセンサーによってレンズを細かく制御し、手振れを補正して遠くの風景をはっきりと見えるようにしてくれるのが「防振双眼鏡」*1です。

防振双眼鏡は、例えばコンサートスポーツの試合を見たり、バードウォッチングといった一般的な使い方の他、船舶やヘリコプターのように揺れる乗り物から遠くを観察・監視するといった業務用途でも使われます。

私の防振双眼鏡の使い方は、山の上で風景を眺める時、気になる物が見えたらその正体を確認したり、見えている街並みがどこなのか、どれがどの山なのかを調べたりするというものです*2

取扱説明書にある概要を紹介します。

防振双眼鏡シリウス14について
「シリウス14」はジャイロセンサー内蔵、2つの防振モード搭載の防水型防振双眼鏡です。揺れる環境下や動きのある対象物に対してブレることなく、素早く捕捉できます。高倍率時に頻発する手ブレ補正にも効果があります。防振が必要のない状況では電源を切ることにより双眼鏡としても使用できます。
(出典:シリウス14の取扱説明書)

仕様


▲シリウス14のパッケージ

製品名: シリウス14(フォーティーン)
メーカー: 株式会社 阪神交易(大阪府)
寸法: 150mm×125mm×53mm(カタログ値)
重量: 560g(電池を含まないカタログ値)
望遠倍率: 14倍
対物レンズ有効径: 30mm
プリズム: BaK-4
レンズコーティング: フルマルチコート
実視界(FOV): 4.4度
見掛け視界: 56.5度
ひとみ径: 2.1mm
アイレリーフ: 15mm
最短合焦距離: 3.5m
防水性能: IPX4(雨天使用可能)
防振機構: レバー式
電池寿命: 約12時間(センサー駆動時)
オートオフ機能: 無操作かつ静止時30分で電源オフ
電源: 単三形アルカリ乾電池1本
原産国: 日本
保証期間: 購入から12か月
定価: ¥99,000(税込)
購入価格: ¥80,000(税込)*3
購入先: イベント時のメーカー展示ブース


▲箱にはケースに入ったシリウス14本体(接眼レンズカバー装着済み)、ネックストラップ、単三形アルカリ電池1本、取扱説明書、保証書、レンズクロスが入っている。

外観

シリウス14は、左右が非対称のポロプリズム*4タイプの双眼鏡です。

左右が非対称なのは、片側に電池ボックスが付いているから。


▲シリウス14本体上面と各部名称


▲本体底部と各部名称

高級感を高めるためにラバーコーティングされている機種もありますが、あれは何年か経つと劣化してネチャネチャになり、ケースに入れるとケース内に張り付き、手に持つと筐体表面に自分の指紋がくっきり付いて、指も真っ黒になるという最悪な体験を味わう羽目になります。(別メーカーの防振双眼鏡で痛い目に遭いました。)

それに対し、シリウス14のような梨地の樹脂製筐体であれば劣化の心配がなく、滑りやすいこともなく、そこそこ高級感を感じられます。

双眼鏡は一度購入すると長く使いますから、劣化しづらい素材で作られていることは私にとって重要。

使用前の準備

視度の調整

双眼鏡の接眼レンズには、片方に視度調整用のダイヤルが付いているのが一般的。
人間の目は左右の視力が完全に同じではないことが多いですから、使用者の視力の差を補正するために使うものです。

視度の調整は、双眼鏡の購入直後や「なんだか双眼鏡のピントが合わないなぁ」と感じるようになったら行う作業で、頻繁に行うものではありません。

適切に視度の調整を行えば、その後はピント調整リングを調整するだけでくっきりした景色を楽しめるようになります。

視度を調整するには、遠くの景色が見えて、双眼鏡を持っていても怪しまれないような場所へ行かないといけません。

そうしたら、右側の接眼レンズにキャップを被せて左眼だけで双眼鏡を覗き、遠くにある適当な目標物を見ながらピント調整リングを回してピントを合わせます。


▲右の接眼レンズを塞いで左眼だけでピントを合わせる

今度は左側の接眼レンズにキャップを被せ、右目だけで先ほどと同じ目標物を見ます。

ピントが合っていれば問題ありません。視度調整が必要ない視力ということになり、そのまま双眼鏡を使えます。

ピントが合っていない場合は、右の接眼レンズにある視度調整リングを左右に回してピントを合わせます。この時、ピント調整リングを操作してはいけません。


▲視度調整リングで右目側のピントを合わせる

時間が経つと視力が変化することがあるため、きちんと視度調整をおこなったのにくっきり見えなくなってきたと感じたら、その時に再度視度の調整を行います。

眼幅とアイカップの調整

双眼鏡を両目の前に構えて遠くを見ながら接眼レンズの間隔を調整し、自分の目の幅に合わせます。

眼の幅と接眼レンズの幅があっていない場合は、見える景色の中に黒い影がちらちらと映り込みます。黒い影の映り込みが最小になるよう、接眼レンズの間隔を調整するのが眼幅の調整です。


▲接眼レンズの間隔を最小にした状態


▲接眼レンズの間隔を最大にした状態

黒い影の映り込みの多さは、接眼レンズと目との距離が適切かどうかによっても変わってきます。

最適な見え方で双眼鏡を使えるようにするため、接眼レンズの周囲にはアイカップと呼ばれる部品が付いており、ひねると前後に移動します。

これを移動させ、アイカップを目元にぴったり付けた状態で黒い影の映り込みが最小になるようアイカップの位置を調整すると、双眼鏡の使いやすさは大幅に向上します。


▲アイカップはこれだけ可動する(左は最も伸ばした状態。右は最も縮んだ状態。)

これらの調整作業により、双眼鏡を自分の目の位置と視力に合わせることができました。

これ以降は、双眼鏡越しに見る対象物の距離に応じてピント調整リングを回すだけで、遠くの景色などをくっきりと楽しめるようになります。

ちなみに、これらの操作はシリウス14に限らず多くの双眼鏡で必要なものです。

安価な双眼鏡でも視度調整リングが付いていたりしますから、「そんなもの調整した覚えはない」という方は、お手持ちの双眼鏡で上記の調整を行ってみると良いでしょう。

お持ちの双眼鏡の実力が最大限に発揮されますよ。

電池の挿入

手振れ補正を使うには電源が必要で、シリウス14の電源は単三形電池×1本

電池ボックスは左側の接眼レンズの前に設置されており、電池蓋はねじ込み式です。開閉は面倒ですが壊れる可能性が低く、長く使えることが期待できます。

一般的な電子機器でよく見る「ロックをはずすとバネの力でパカッと開くタイプのフタ」は樹脂部品が劣化して割れやすく、個人的には信用できません。

電池交換なんて頻繁に行うわけではありませんから、多少手間がかかっても壊れないことの方が大切だと思う私にとって、シリウスの電池蓋は優れていると感じます。

電池の出し入れの際は、つまみを起こして電池蓋を反時計周りに回して取り外します。


▲つまみを起こして電池蓋を回す


▲電池蓋を取り外した状態

単三形電池は、プラス極が蓋側になるように挿入。


▲電池を入れた様子

電池を入れたら、電池蓋を元通りに締め込めばセット完了です。


▲本体には電池の向きを示す刻印がある(単3 AA*5と彫られている)

以上でシリウス14を使用する準備が整いました。

操作方法等については、「後編」に掲載します。

*1:自衛隊や海上保安庁など、官公庁が購入する場合は「像静止双眼鏡」という名称が使われています。入札公告を見る限り、海上保安庁ではフジノン(富士フィルム)やニコンの防振双眼鏡が使われているようです。

*2:山によっては、山頂に避難小屋や鉄塔、あずまやが建っていたり、山腹に林道が通っているなどの特徴があり、それらを見ることで山を特定できることがあります。

*3:購入時点の価格.comにおける最安値は¥81,694でしたから、お得に買えたと思います。しかもその場でメーカーの方に外観や機能、付属品の過不足をチェックしていただきましたから、安心して購入できました。

*4:シリウス14のように対物レンズと接眼レンズが一直線になっていないものがポロプリズム、一直線になっているのはダハプリズムと呼ばれるプリズムを内蔵しています。プリズムは、レンズ越しに見た対象が上下逆さまにならないよう、対象が正しい向きで見えるようにする光学部品です。

*5:「AA」は、単3形を示す英語の「ダブルエー」のこと。英語だと単4形は「AAA(トリプルエー)」です。