イベント概要
本日は、阪神基地隊の艦艇一般公開イベントに出かけてきました。
公開されるのは、護衛艦みょうこう(DDG-175)と潜水艦けんりゅう(SS-504)、掃海艇なおしま(MSC-684))の3隻。
▲阪神基地隊の東岸壁で公開されていた護衛艦みょうこう
イベント名称: 阪神基地隊艦艇一般公開
日時: 2024年02月24日(土)10:00~15:00(最終受付は14:30)
場所: 阪神基地隊(神戸市東灘区魚崎浜町37)
内容: 護衛艦、潜水艦、掃海艇一般公開(最終乗艦14:30)・呉音楽隊演奏
備考: 事前申し込み不要。シャトルバスの運行はありません。駐車場はありません。酒類や危険物、ペットの持ち込みは禁止されています。金属探知機による身体検査と、手荷物検査があります。
姫路駅から阪神基地隊へ
09:41
我が家の最寄り駅であるJR姫路駅から野洲行の新快速電車が発車。
10:21
三ノ宮駅で下車し、JR三ノ宮駅を出て阪神電車の神戸三宮駅へ向かいます。
10:30
阪神電車の神戸三ノ宮駅を大阪梅田行の直通特急が発車。
10:36
御影(みかげ)駅に到着。
直通特急から各駅停車に乗り換えます。
10:39
大阪梅田行の各駅停車が御影駅を発車。
10:44
阪神電車の青木(おおぎ)駅で下車。
ここから阪神基地隊まで、およそ2kmの道のりを徒歩で移動しました。
https://goo.gl/maps/GeynkfeidUqyqTYE6
▲阪神基地隊の位置
阪神基地隊にて
装備品展示
11:11
阪神基地隊に到着。
▲阪神基地隊
入口で金属探知機によるボディチェックを受けたら、続いては奥のテントでカバンの中身の検査です。
荷物のチェックと、口頭で危険物の有無を確認されてからイベント会場へ。
まずは航空自衛隊と陸上自衛隊の装備品展示を見学することにしました。
航空自衛隊の展示は、待機車という珍しい車両です。
▲航空自衛隊の待機車
待機車 Standby Car
機能
1 高射隊に装備され、機動展開時の仮眠、待機所及び人員輸送に使用する。
2 車載された全天候性アルミニウム・シェルタである。
3 電源は、牽引式の30kw、60Hz発動発電機であり、有蓋指揮車又はジャンクション・ボックスを経由して供給される。能力
最大24名が簡易ベッドで仮眠することができる。諸元
全長:11.98m
全幅:2.49m
全高:3.79m
重量:16.98t
(出典:現地のパネル)
陸上自衛隊からは、炊事車や軽装甲機動車が展示されていました。
▲トレーラー1t炊事車
トレーラー1t炊事車
概要
1軸の小車両に炊具を搭載して屋外で調理するための装備で、車両に牽引されて移動する。・構成
かまど:6基
野菜調理器:1基
発電発動機:1基
消火器:1基 等・性能等
炊飯:一度に最大約600人分の調理が可能
汁物等:一度に最大約1,500人分の調理が可能・諸元
全長:4,595mm
全長:2,310mm
重量:約1,000kg・使用燃料
自動車用無鉛レギュラーガソリン及び白灯油
(出典:現地のパネル 原文まま(諸元の2つ目の「全長」は「全幅」の誤りか))
▲軽装甲機動車
地上の展示を一通り見た後、どの艦艇から見学しようかと悩んだのですが、どれもこれもすごい行列です。
護衛艦みょうこうの見学
11:20頃
悩んでも仕方ないので、とりあえず一番目立っていた護衛艦みょうこうの行列に並ぶことにしました。
隊員さんのお話では、30分待ちとのこと。
▲見学待ち行列に並んでいる間に撮影した護衛艦みょうこう
主要要目
基準排水量 7,500t
全長 161.0m
全幅 21.0m
喫水 6.2m
機関 ガスタービン(25,000馬力×4機)
軸数 2軸
軸馬力 100,000馬力(hp)
速力 30kt以上
乗組員 約300名
(出典:見学時に配布されたパンフレット)
11:40頃
行列に並んでからおよそ20分で乗艦できました。
乗ったところは艦の中央付近、ハープーンミサイルの真下あたりです。
▲このような舷梯(げんてい)を通って乗り込む
▲乗り込む位置は、ハープーン艦対艦ミサイルの真下
ステルス性を考慮して壁に覆われた右舷の舷側通路を、順路に従って艦首の方へ進みます。
▲壁に覆われた舷側通路を進む
薄暗い通路から明るい空間に出ると、そこは前甲板。
ミサイルの垂直発射装置や主砲、揚錨機などが設置された、護衛艦らしさにあふれた空間です。
主砲の名前は「54口径127mm速射砲」ですが、これは砲弾の直径が127mmで、砲身の長さが127mmの54倍あるという意味です。
▲護衛艦みょうこうの54口径127mm速射砲*1
▲前甲板の垂直発射装置(VLS:Vertical Launch System)は29セル*2
VLSからミサイルが発射される様子がYouTubeにありますので、転載します。
艦体の表面からいくつか小さな突起が出ているのが気になったので、近くにいた隊員さんに質問したところ「核兵器や化学兵器の影響で汚染された環境で活動する際、あそこから水を噴き出して船を除染するんです」とのことでした。
アンテナかフックだと思ってましたが、水を噴射するノズルだったとは。
▲矢印で示しているのは、艦体のあちこちにある除染用のノズル(上に写っているのはSPY-1Dレーダー)
攻撃用の武装だけでなく、艦を守るための装備も備わっています。
その一つは、Mk.137 デコイ発射機。敵のレーダーや対艦ミサイルを欺くための、囮(おとり=英語でデコイ)を発射する装置です。
▲Mk.137 デコイ発射機(左舷側の2基。右舷側にも2基あって、合計で4基備わっている。)
これが囮を発射する様子がYouTubeにありますので、転載します。
前甲板を見終わったら、壁に覆われた左舷の舷側通路に入って艦尾へ向かいました。
▲左舷の舷側通路入口
露天の通路に出ると、そこにあるのはハープーンミサイル。
敵の艦船を攻撃するための、艦対艦ミサイルです。
▲ハープーンミサイル
ハープーンミサイル
水上艦艇を攻撃する艦対艦ミサイルです。相手のレーダーに探知されるのを避けるために超低空で飛翔します。
目標の捜索・探知を自分自身で行い高い確率で目標に命中する信頼性の高いミサイルです。
全天候型
全長:4.6m
重量:約680kg
射程:100km以上
ハープーンとは、捕鯨用の銛(もり)のことです。
(出典:現地のパネル)
ハープーンミサイルの発射映像がYouTubeにありますので、転載します。
ハープーンミサイルを見た後は、救命いかだの下を通ってさらに奥へ。
▲救命いかだの下を通って艦尾へ向かう
出てきたところは、飛行甲板です。
ここにもVLS(垂直発射装置)がありますが、セルの数は前部甲板よりはるかに多い61。
前甲板の29セルと合わせて90のセル(ミサイル90発分)があることになります。
▲飛行甲板のVLSは61セルもある(8セル×8列ですが、3つのセルは塞がっています)
艦尾側の構造物は上部が階段状になっていて、Mk.99 Mod3 ミサイル射撃指揮装置のパラボラアンテナと、ヘリのパイロット向け水平灯、そして迎撃を回避して接近する敵のミサイルや航空機などを攻撃する高性能20mm機関砲が並んでいるのが渋い!
▲屋根に並ぶレーダー等
護衛艦みょうこうの艦上4か所で全天球パノラマを撮影しましたので、紹介します。
パノラマ画面左上のリストから、撮影場所を切り替えてご覧ください。
https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/js_myoko20240224/index.html
▲護衛艦みょうこうで撮影した全天球パノラマ(撮影日:2024年2月24日)
12:05頃
護衛艦みょうこうの見学を終え、艦を下りました。
掃海艇なおしまの見学
引き続き、掃海艇なおしまの見学に向かいます。
▲掃海艇なおしま(MSC-684)
主要性能要目
基準排水量・・・・・510t
全長・・・・・・・・54.00m
全幅・・・・・・・・ 9.40m
喫水・・・・・・・・ 4.20m
主機・・・・・・・・Diesel 1,800hp
バウスラスター装置・1
電機推進装置・・・・130kw×2
速力・・・・・・・・14kt(26km/h)
乗員・・・・・・・・約45名
(出典:見学時に配布されたパンフレット)
13:00頃
掃海艇なおしまの見学待機列に並んで約1時間、やっと乗艦できました。
私が並んでしばらく経ってから来た人たちに、隊員さんが「90分待ちです」と声をかけていましたから、1時間で乗船できたのはラッキーかも。
それにしても、90分待ちとか「USJかよ!」(行ったことないので分かりませんが)と言いたくなります。
▲掃海艇なおしまの舷梯
乗艦して前甲板に行くと、ありました。20mm機関砲です。
掃海艇と言えばこれ!
▲掃海艇なおしまのJM61-M 20mm機関砲
▲左後ろから見た20mm機関砲
20mm機関砲(JM61-M)
有効射程 約2000m
最大射程 約4500m
最大射高 約3000m
ふ仰範囲 -15度~+85度
装填方式 手動(砲身を回転する)
発火電圧 220~400 V.D.C本砲は、バルカン砲を主体とし、海上自衛隊の小型艦艇に設計され、沿岸警備等を目的とした人力操作の小口径機関砲である。口径20mm、空冷式6砲身、他励動力の駆動発射方式による450±50発/minの発射速度の性能を有し、20mm機関砲と呼称されている。
(出典:現地のパネル 原文まま)
これは敵の船を攻撃するというわけではなく、機雷掃討(きらいそうとう)に使用するものです。
「機雷」は海の地雷で、海中に浮いていたり海底に転がっていて、船が接触したり、船の音や船体から発せられる磁気を感知して爆発します。
そんなものがあると危なくて船が通れませんから、掃海艇が機雷を探し出して破壊するわけです。見つけ出した機雷を破壊するのが機雷掃討で、海面に浮いてきた機雷をこの機関砲で破壊します(詳細は後述)。
20mm機関砲を見て「かっこええなぁ」と感動していたちょうどその時、岡本海運の鋼材運搬船JFE-N1「清丸(きよまる)」が横を通っていきました。
私にとってはこれも珍しい船ですから、なんだか嬉しい。
向こうも大きな護衛艦が来ていたのが珍しいらしく、船員さんたちが船の上で大きく手を振ってくれました。
▲船員さんがこちらに手を振りながら通り過ぎて行った清丸
前甲板を見た後は左舷の舷側通路を通って船尾へ向かうのですが、先ほど見た護衛艦みょうこうと違って、列が進みません(その理由は後で分かりました)。
13:25頃
渋滞している道路のように舷側通路をジリジリと船尾に向かって進み、およそ20分で船尾甲板に到達。
▲掃海艇なおしまの船尾甲板(左奥は掃海用ダビット、右奥は掃討用クレーン、中央は巻揚機。)
▲船尾甲板の右舷に置かれている掃海浮標(黄色いのは訓練用の機雷)
▲船尾甲板の巻揚機
掃海艇なおしまの船尾には、万一見学者が海に落ちた場合に備えてゴムボートが浮かべられていました。
▲万一に備えて用意されたゴムボート(なおしまに搭載されているもの)
船尾甲板の左舷前方にあったのは、黄色い水中無人機。
見学者の多くが興味を持っていましたが、特に説明のパネルはなかったように思います。
これはPAP-104 Mk.5と呼ばれる機雷掃討用の機材です。
▲通常は船尾甲板左舷側の格納庫内に保管されているPAP-104 Mk.5(右に写っているシャッターが格納庫)
さて、ここで「掃海艇」の名前の由来になっている「掃海(そうかい)」について、どのような作業なのか簡単に紹介します。
海中には敵が敷設した係維機雷(けいいきらい)と呼ばれる機雷(地中に設置されて歩兵や車両に被害を与えるのは地雷で、船に損害を与えるため海中に敷設された「地雷」のようなものが機雷です。)が漂っていることがあります。
係維機雷自体は浮くのですが、海底の重りとワイヤーでつながっているため海面に出てこず、海中に留まる仕組み。
そういった係維機雷がいくつもあるのを機雷探知機で見つけたら、下図のように船尾からカッター付きのワイヤーを垂らして機雷の近くを航行します。
▲係維機雷を処分する作業の模式図
展開器と呼ばれる装置で2本のワイヤーを横に広げ、沈降器と呼ばれる重りでワイヤーを海中に沈めた状態で掃海艇が進むと、ワイヤーに付いているカッターが係維機雷のワイヤー(係維索)を切断してくれます。
係維索が切れて浮いてきた係維機雷を機関砲で破壊するというのが作業の流れで、これは「係維掃海」と呼ばれる掃海方法。
黄色い水中無人機「PAP-104」は有線(光ファイバー)誘導式で、機雷を見つけるソナーやビデオカメラ、係維機雷のワイヤーを切るカッター、沈底機雷(海底に沈む機雷)を爆破するための爆雷を装備できます。
PAP-104を掃海艇の中から遠隔操作し、係維機雷のワイヤーを切ったり、沈底機雷に爆雷を投下して機雷を破壊するわけです。これは機雷掃討と呼ばれる作業。
他に、船の音や磁気を探知して爆発する機雷に対しては、船のような音を出す「発音体」や船に似た磁気を発する装置を海中で引っ張り、機雷を反応させて爆発させる「DYAD掃海」(船の音や磁気を模す装置の名前が「Dyad」)と呼ばれる作業もあります。
船尾甲板の巻揚機は、係維掃海用の機材やDyadを引っ張るために使われているのです。
では、掃海艇見学の様子に戻りましょう。
掃海作業に必要な機材が所狭しと並ぶ船尾甲板をぐるっと回った後は、船内へ。
面白いのは、多くのドアが木製ということ。
そもそも掃海艇なおしまは、船体自体が木製です。
前述の通り、機雷は船が発する磁気に反応して爆発する場合があるため、機雷が多い海域にあえて入っていく掃海艇は、磁気を発しないように鉄以外の素材で船体を作らなければいけないのです。
▲船内の通路の様子(ドアが木製である点に注目)
一部のドアは開け放たれていて、室内の様子を見ることもできました(立ち入りは禁止)。
▲士官便所兼浴室
▲第2士官寝室
それにしても、士官の生活空間でこのレベルとは。
もっと良い環境にしてあげて欲しいものです。
13:45頃
船橋に入りました。長かった…
▲船橋内の様子
船橋の中は見るものが多く、見学者の滞在時間が長いため行列が進まなかったのです。
▲船橋内の火災報知器
▲双眼鏡はそれぞれ使用者が決められている
他の見学者の邪魔になるといけないので、船橋内の見学は3分ほどで終えて外へ出ました。
船橋の外には、左右両側にそれぞれ双眼鏡と信号灯が置かれています。
▲船橋横(右舷側)の65式8cm双眼鏡(倍率は15倍。事故を起こさないよう、周囲の船を見張るのに使用)
▲信号灯(右舷側)(光の点滅でモールス信号を送るために使う)
▲船橋の前には広いスペースがあった(船橋の窓は旋回窓ではなく普通のワイパーが備わっている)
13:50頃
最後は船橋の裏へ回り込み、ラッタルを下りて船尾甲板の右舷側から船を下りました。
▲信号旗の下を通った(一番上の旗は指揮官旗で、司令官が乗船していることを示すもの。その下は、それに続く信号旗が暗号ではなく平文であることを意味する旗で、続く7枚は上から「WELCOME」を意味する信号旗になっている。)
▲それぞれの信号旗が表すアルファベット
阪神基地隊から姫路駅へ
まだ潜水艦けんりゅう(SS-504)を見学していませんが、上甲板に乗るだけで待ち行列が20分とのこと。
お腹もすいたし、前回潜水艦の上甲板に上がらせてもらったので、今回は諦めて帰路につきました。
▲潜水艦けんりゅう
2023年6月17日に阪神基地隊で潜水艦なるしお(SS-595)の上甲板に乗った時の記事はこちら。
14:40頃
阪神青木駅に到着。
14:46
高速神戸行の普通列車が青木駅を発車。
14:51
御影駅で普通列車から須磨浦公園行の特急に乗り換え。
14:55
特急が御影を発車。
15:01
神戸三宮(阪神)で下車し、JR三ノ宮駅へ。
15:07
姫路行の新快速が三ノ宮駅を発車。
15:48
姫路駅に到着。
一度にこれだけの展示を見られるイベントは、そうそうないと思います。
こんなすごいイベントを実施してくれる基地が近くにあるって、本当にありがたい。
毎度のことですが、いつも念入りに準備して円滑にイベントを運営し、見学者に丁寧に対応してくださる自衛隊員の皆様には、感謝してもしきれません。