播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

陸上自衛隊 姫路駐屯地 創立72周年記念行事

イベント概要

本日は、155mmりゅう弾砲(FH70)の空包射撃とレンジャー訓練展示が有名な、陸上自衛隊 姫路駐屯地の創立記念行事に出かけてきました。


▲FH70による空包射撃の様子

イベント名称: 陸上自衛隊 姫路駐屯地 創立72周年記念行事
日時: 2022年12月3日(日)9:00~15:00
場所: 陸上自衛隊 姫路駐屯地(兵庫県姫路市峰南町1-70)
プログラム:
10:20~11:15 観閲式
11:30~12:00 訓練展示
12:30~13:00 レンジャー体験
13:00~14:00 音楽演奏、太鼓演奏、マッチョコンテスト、格闘展示
14:00~14:45 レンジャー訓練展示
13:00~15:00 装備品試乗
13:00~15:00 装備品展示
09:00~14:00 野外売店
09:00~15:00 野点

備考:

  • 駐車場はありません。(駐屯地内に自動車を駐める場所はありません。)
  • 自転車用の駐輪場はあります。
  • 手荷物検査があります。


https://goo.gl/maps/X3DwbEmWpUbbSH538
▲陸上自衛隊 姫路駐屯地正門の位置


▲駐屯地内の地図(地理院地図に当ブログ管理人がイベント会場の位置を書き加えた)

観閲式開始まで

10:06
姫路駐屯地に自転車で到着。自転車で気軽に来られるのは、地元民の特権です。


▲姫路駐屯地の正門

自転車を手荷物検査場の隊員さんの前に止め、鞄を全開にして中身をチェックしてもらいます。
その後、正門を入ってすぐ右の駐輪場を案内されました。


▲広大な自転車専用駐輪場

昨年の記念行事では駐屯地内の売店に行くのが遅くなり、あまりの人の多さで買い物をあきらめてしまいました。

2年連続でそんな思いをしたくないので、今年は真っ先に駐屯地内の売店へ。
例年は店内に入れても混雑がすごくて身動きがとりづらいのですが、今年はお店の入口で入場制限をしており、一人出て行ったら次の一人が入るという具合になっていました。

少し待ちましたが、小物類をいくつか購入できて大満足。


▲売店とコンビニが入っている建物(売店は入って左、コンビニは右)


▲お目当てはこのお店

今回購入した小物類は、別の記事で紹介しています。

続いては記念式典会場へ。

途中で野外売店地域を見てみると、まだ時間が早いのか、行列はありませんでした。


▲野外売店地域の様子(10:30頃)


▲野外売店地域の南にはキッチンカーも来ていた

観閲式・観閲行進

10:35
記念式典会場(グラウンド)は、来賓あいさつの真っ最中でした。
次から次へと国会議員の挨拶が続く中、どこから見学しようかとウロウロ。


▲観閲式(来賓あいさつ)の様子

観閲行進が見やすいのはグラウンドの北西部なので、そこに陣取ることに。

11:00
来賓の挨拶や祝電披露が終了し、観閲行進の準備が始まりました。

まずは除染車が来賓席の前に散水します。
観閲行進では来賓席の前を多数の車両が通りますから、砂埃が起こらないようにするために必要な作業です。


▲散水する除染車

散水が終わると、それまでにグラウンド中央に整列していた第3音楽隊の演奏する行進曲に合わせて観閲行進が始まりました。

今回流れた行進曲は従来の「祝典ギャロップ」ではなく、「陽光を背に」*1でした。

軽快な「祝典ギャロップ」も好きでしたが、「陽光を背に」は荘厳さがあって行進には向いているかも。


▲車両行進曲「陽光を背に」が演奏される中、ヘッドライトを点灯させた車両が来賓席の前を次々に通過する様子

「陽光を背に」は、YouTubeの東北方面隊広報チャンネルで公開されている次の動画でお聴きいただけます。


www.youtube.com

11:17
すべての車両が来賓席の前を通過し、グラウンドから出ていきました。
これで観閲行進は終了です。

次は第3音楽隊による演奏。
今年は自衛隊の行進曲やアメリカ軍の行進曲、連続テレビ小説に登場する「東京ブギウギ」が演奏されました。


▲グラウンド中央に整列する第3音楽隊

訓練展示

11:30頃
音楽隊の演奏が終わると、再び除染車が来賓席前に散水。

11:39
本日のメインイベント、訓練展示が始まりました。

まずは軽装甲機動車と偵察用オートバイがグラウンドに侵入し、偵察の結果敵部隊を発見。敵と銃撃戦を繰り広げた後に現場を離脱します。


▲陣地を置く場所を偵察する軽装甲機動車とオートバイ(偵察用)

次に、敵航空機に備えた対空陣地設営のため82式指揮通信車が偵察にやってきました。
偵察の後、隊員を何人か下ろして離脱。


▲隊員を運んできた82式指揮通信車

82式指揮通信車から降りた隊員と高射特科部隊(対空ミサイル)が、敵の航空機から味方を守るために展開しました。


▲展開する高射特科部隊(左は93式近距離地対空誘導弾、右は81式短距離地対空誘導弾)

今度は特科部隊(砲兵)を展開させるために、82式指揮通信車と軽装甲機動車が偵察に来ました。


▲特科部隊を展開する前に偵察を行う82式指揮通信車(奥)と軽装甲機動車(手前)

ここからは続々と車両と火砲がグラウンドに進入してきます。
入ってきたのは対砲レーダ装置 JTPS-P16が1両と、中砲けん引車に引かれた155mmりゅう弾砲FH70と自走してきたFH70が合計8門。


▲車両が多数入ってくると砂埃がすさまじい


▲グラウンド中央で南北方向に並んだFH70(展開前)


▲展開後のFH70(8門あることが分かるように、奥から順に番号を付けました)

こうなったら、後はFH70の独壇場。
まずは攻撃準備射撃として、発見した敵陣地に向けてドッカンドッカンと空包を撃ちまくります。


▲FH70の発砲炎

砲口から出るガスなのか、発砲の瞬間に全身に空気の塊が当たる感覚と、耳栓なしでは耳が痛くなること間違いなしの轟音を全身で感じられます。

しかも、どの砲がいつ発砲するのか分からないため「終わったかな」と思った瞬間にドカンと来て、思わず飛び上がるほど。

今年度の訓練展示では、敵から反撃があったという想定で陣地変換(発射場所の変更)*2の展示がありました。

陣地変換のため、(南側の4門だけですが)あっという間に砲身と脚を折りたたみ、自走状態になってグラウンドから出ていきます。


▲陣地変換のため折りたたまれたFH70(グラウンドへ戻ってきた時に撮影)

対砲レーダ装置 JTPS-P16*3が反撃してきた敵砲兵の位置を標定し、残った4門のFH70が敵砲兵への攻撃(対砲迫戦)を行いました。


▲訓練展示では初登場(?)の対砲レーダ装置 JTPS-P16

今度は敵航空機が来たという想定で軽装甲機動車が12.7mm重機関銃M2の空包射撃を行うのですが、調子が悪いのか頻繁に弾詰まりを起こしていました。

そうこうしているうちに、陣地変換のため移動していたFH70×4門の射撃準備が整い、8門のFH70による突撃支援射撃が開始。

またまた派手に撃ちまくります。


▲とにかくバカスカと撃ちまくる突撃支援射撃の様子

12:02
最後は歩兵が敵陣地に突撃して制圧し、訓練展示は終了。

訓練展示前に風向きを確認すると西風が強く、グラウンドの北か南が見学に向いていると判断したのですが、北は来賓席もあって窮屈。昨年は北から見学したため、同じアングルはつまらないと感じて今年は南から見学していました。

何故かFH70がド派手にぶっ放した直後に短時間だけ北風が吹き、煙と火薬の燃えカスがグラウンドの南側の観客を襲いました。

ここまでの画像でご覧いただいた通りFH70は私の目の前にありますから、観客の髪や服に火薬カスが付くし、火薬が燃えた強烈な匂いが不快だし、目も開けられないし、カメラのレンズも汚れから守らないといけないし、久しぶりに「これぞ訓練展示」という体験ができました。

さて、お腹が空いたので野外売店地域でお昼ご飯を食べようかと思いましたが、訓練展示後は帰るお客さんが多くいるはずなのに、北(野外売店地域)へ向かう人もかなりの数がいました。

売店やキッチンカーの数を考えると、大行列に並ぶことになるのは確実です。

ということで、いったん自宅に戻って昼食を食べることにしました。

装備品展示

13:20
再び姫路駐屯地に到着。
13:00から始まっている装備品展示を見ることにしました。

展示されていたのは、次の装備品です。

・03式中距離地対空誘導弾(中SAM)発射装置(LAU)
・除染車3形(B)
・81mm迫撃砲L16
・軽装甲機動車
・オートバイ(偵察用)
・FH70
・93式近距離地対空誘導弾
・81式短距離地対空誘導弾

では、これらの写真を順に紹介します。

03式中距離地対空誘導弾(中SAM)発射装置(LAU)


▲03式中距離地対空誘導弾(中SAM)発射装置(LAU)

03式中距離地対空誘導弾(中SAM)
発射装置(LAU)
Launcher Unit
 ミサイルを搭載し、機動・展開、射撃統制装置からの指令により、垂直発射方式でミサイルを発射し、敵の航空機等を撃墜する。
(出典:現地のパネル)

除染車3形(B)


▲除染車3形(B)

除染車3形(B)
Decontamination Vehicle
1 概要
 全国の科学科部隊及び航空自衛隊に装備され、核兵器・化学兵器・生物兵器によって汚染された地域・施設・人員の大規模な除染に使用する。
 73式大型トラックに、2500Lの水槽と加温装置を搭載し、車体の前後から除染剤を散布することが出来る。地下鉄サリン事件に出動したほか、阪神大震災、洪水被害後の防疫消毒業務を行う等各種の災害において活躍している。東日本大震災においては津波のよる浸水被害を受けた沿岸地域において疫病の蔓延を防止する為、大規模な防疫活動に使用された。また、福島第一原子力発電所事故においては警戒区域内で活動した装備品等の除染を行った。
2 構成
(1)タンク容量 2500L
(2)後方スプレーホース部:約15m
(3)散布部分:前方・後方スプレー・側方シャワーパイプ
3 除染手段
 温水・除染剤
4 製作
 シャーシ部 いすゞ自動車 タンク部東急車輛
 加温部   ユニバーサル特機
(出典:現地のパネル 原文ママ)

81mm迫撃砲L16


▲81mm迫撃砲L16


▲81mm迫撃砲L16の砲口にある刻印

81mm迫撃砲L16
-諸元・性能-
口径 81mm
砲身長 1,280mm
重量 約38kg
制作 豊和工業
備考
 普通科中隊が装備し、長射程化、軽量化がはかられている。(英国ロイヤル・オーディナンス社のL16をライセンス生産)
(出典:現地のパネル 原文まま)

軽装甲機動車


▲軽装甲機動車

軽装甲機動車
LAV(Light Armoured Vehicle)
-諸元・性能-
乗員 4人    空車重量 約4.5t
全長 4.4m    全幅 2.04m
全高 1.85m    最低地上高 0.41m
登板能力 tanθ60%    最高速度 100km/h
行動距離 約500km    製作 小松製作所
(出典:現地のパネル 原文まま)

オートバイ(偵察用)


▲オートバイ(偵察用)

オートバイ(偵察用)
●諸元
 全長 2,130mm
 全幅 850mm
 全高 1,190mm
 車両重量 154kg
 最高速度 135km/h
 乗員 1人
●製作
 川崎重工
(出典:現地のパネル)

FH70


▲FH70

りゅう弾砲(略称FH-70)
●諸元
 全長 9,800mm(走行時)
    12,400mm(射撃時)
 全重量 9,600kg
 操作 9人
●製作
 日本製鋼所
●備考
 中砲けん引車(FH-70用)でけん引。補助動力装置(APU)を有す。
(出典:現地のパネル)

93式近距離地対空誘導弾


▲93式近距離地対空誘導弾

93式近距離地対空誘導弾
(近SAM)
〇国産の近距離地対空誘導弾
〇高射特科大隊及び高射特科中隊に装備
〇3名の乗員で運用可能
(出典:現地のパネル)

81式短距離地対空誘導弾


▲81式短距離地対空誘導弾

81式短距離地対空誘導弾
(短SAM)
〇初の国産地対空誘導弾
〇高射特科大隊等に装備
(出典:現地のパネル)

マッチョコンテスト

13:30
装備品展示を見終えたので、先ほどから聞こえていた和太鼓の演奏を見にイベント地域へ向かいました。

腹に響く和太鼓の演奏は私が到着してすぐ終了してしまい、その後はマッチョコンテストが始まりました。
参加者は9人で、観客の拍手の大きさで優勝者を決めます。

司会者や参加者が盛り上げ上手で、集まっている観客もすごい数でした。


▲マッチョコンテストの様子

14:00
マッチョコンテストが終了しレンジャー展示訓練が始まる時間になったので、レンジャー訓練展示会場へ。

レンジャー訓練展示

「レンジャー」は陸上自衛隊の資格の一つで、隊員の1割未満しか取得していない(できない)ものです。厳しい訓練課程を突破しなければ得られない資格で、その過酷なトレーニングの様子はテレビ番組で紹介されることもあります。

そんなレンジャー資格を持つ隊員たちによる訓練展示です。

14:15
自衛隊のイベントとしては珍しく、定刻を15分ほど過ぎてからレンジャー訓練展示が始まりました。
この訓練展示は、基礎訓練展示と応用訓練展示の二部構成。

基礎訓練展示では、下の画像のような技が披露されます。


▲隊舎の屋上から懸垂降下する様子


▲セーラー渡過と呼ばれるロープ渡り(建物の3階の高さで行います)


▲ロープの上に立った状態から…


▲故意に落下して命綱だけでぶら下がり…


▲体を揺らしてロープの上へ戻る(この後はセーラー渡過で隊舎へ移動)


▲前向きでの懸垂降下はインパクト抜群(客席から感嘆の声が上がります)

応用訓練展示は、人質を救出するシナリオで進められました。

まず、いかにも阪神ファンという服装をした悪役(レンジャー隊員)が「優勝パレード見に行こ!」と客席から子供たちを呼び寄せ、建物の2階へ連れて入ります。


▲連れ去られて助けを求める(?)子供たち

建物の屋上にレンジャー隊員がひそかに侵入し、ドローンで偵察。
(本物のドローンは使えないので、釣り竿で張りぼてのドローンを吊り下げる)


▲釣り竿でドローンを吊っている…じゃなくて、ドローンで偵察する様子

続いて、悪役が立てこもる部屋のドアに爆薬を投げ込んでドアを爆破します。(実際に壊せないので、爆竹を鳴らす)


▲前向きで懸垂降下しながら爆薬を投げ込む

その後、慌てて出てきた悪役を狙撃手が排除。

最後は屋上からレンジャー隊員4名が2階に懸垂降下で突入し、子供たちを解放して終了。

すごいのは、屋上から3階を飛び越して直接2階へ飛び込む技術です。
これには驚きの声が上がっていました。


▲屋上から3階を飛び越えて2階へ直接飛び込む

14:50
レンジャー訓練展示が終了しました。

これですべての行事が終了…あっ!体験試乗を忘れてた!
何に乗れたんだろう…

それにしても、(途中でお昼ご飯を食べに家へ帰りましたが)丸一日楽しめる楽しい記念行事でした。

毎年のことですが、訓練で大変な中、観客が楽しめるよう入念な準備でイベントを実施していただく駐屯地の皆様には、感謝しかありません。

なお、陸上自衛隊 姫路駐屯地のX(旧Twitter)アカウント(@CampHimeji_PR)からの2023年12月3日午後06:03付の投稿によると、「約5500人の方たちが来てくれたで~!!」とのことです。

交通アクセス

路線バスの場合

JR姫路駅の北にある神姫バス北8番のりばを出るバス(大寿台方面)に乗車してください。「自衛隊前」バス停は、姫路駐屯地の正門から道路を挟んだ真向かいです。
運賃は、大人一人¥230。現金または交通系ICカードが使えます*4

JRの場合

播但線の野里駅から姫路駐屯地の正門までは、およそ1kmです。

今後記念行事を見に行かれる方へ~見学のヒント~

  • 姫路駐屯地の記念行事では自家用車を駐屯地内に乗り入れることはできませんし、自衛隊が管理する駐車場もありません。公共交通機関では路線バスJRが利用できます。路線バスは1台でさばける人数が少ないため、1km歩かないといけませんが、JRの方が良いかも。
    姫路駅前からレンタサイクルを借りて行くという手もあります。
  • 訓練展示では小火器や大砲が空包射撃を行います。小火器の銃声はたいていの方にとって問題ないと思いますが、大砲の轟音は想像を絶するものです。カメラでの撮影をしない場合は、両手で耳を塞ぐことをお勧めします。どうしてもカメラ等で撮影したい場合は、耳栓があった方が安全です(慣れれば耐えられる音ですが、後で耳が痛くなることがあります)。
    小さなお子さんを連れていかれる場合は、子供さんの耳を塞いであげた方が良い場合もあります。保護者の方は、子供さんの耳を塞ぐと自分の耳を塞げませんから、耳栓を用意することをお勧めします。
  • 風向きによっては、砂埃や火薬の燃えカス、火薬が燃えた煙やその匂いをもろに浴びることがあります。カメラ等のレンズに砂埃が付着すると大変ですから、対策を用意しておくと安心です。
  • 駐屯地内の売店は、早い時間帯に行けば混雑を回避できます。訓練展示が行われている真っ最中が一番空いているかも。

*1:平成30年度自衛隊記念日観閲式で初めて演奏された車両行進曲で、東北方面音楽隊のコントラバス奏者、岩渕陽介三等陸曹(当時)が作曲。

*2:「陣地転換」という言葉を聞くこともありますが、「陣地変換」が正しい用語です。

*3:対砲レーダ装置は、敵が撃ち込んできた砲弾を追跡するレーダーで、その弾道を分析して発射した敵の位置や、着弾するであろう場所を正確に特定できます。

*4:バス車内で積み増しできるICカードは、神姫バスのNicoPa(ニコパ)カードだけです。ICOCAなどは駅で事前にお金を入れておかないといけません。