昔からライト好きでいろんなライトを買っていましたが、最近は落ち着き気味でした。
ところが、職場で停電に遭ってライトのありがたさを実感したのが運の尽き*1。
また「ライト欲しい病」が発症し、正常な感覚の持ち主に「何に使うの?」と言われる「わけのわからないライト」を買ってしまいました。
ハッキリ言って、実用品ではなく装飾品。
米軍用のライトだから、なにせデザインがかっこいいんです。
概要
購入したのは、アメリカ軍用のヘルメットライト「SIDEWINDER STALK(サイドワインダー・ストーク)」です*2。
戦闘用のヘルメットに取り付けて使うライトで、軍事利用を想定しているため赤外線も照射でき、IP67相当の対候性があります。
アウトドアで使っても壊れる心配はありません。
www.youtube.com
▲メーカー公式の紹介動画
仕様
▲SIDEWINDER STALKのパッケージ(メーカー名しか記載のない汎用の紙箱)
製品名: SIDEWINDER STALK(サイドワインダー・ストーク)
メーカー: Streamlight Inc.(アメリカ)
電源: 単3形アルカリ電池×1本(付属)・単3型リチウム電池×1本(別売)・CR123A×1本(別売)のいずれか一つ
点灯時間: 最大輝度の場合5.6時間。最小輝度の場合95時間。(カタログ値)
照射距離: 最大約28m(カタログ値)
光度: 12~200カンデラ(カタログ値)
光束: CR123A使用時100%出力で76ルーメン。単3形電池使用時100%出力で57ルーメン。(カタログ値)
全長: 約14cm(カタログ値)
防水性: IP67
材質: 本体はナイロン樹脂、レンズカバーはポリカーボネート。
重量: 単3形電池とベルクロアダプター使用時は約81.65g。CR123A電池とベルクロアダプター使用時は約72.57g(カタログ値)
アメリカでの価格: 割引前の価格はおよそ200ドル。実勢価格は100ドル台前半。
購入価格: 23,012円(税込)
購入先: アカリセンター(株式会社カネデン)
外観
紙箱にはSTALK本体と単3形アルカリ電池1本、そして取扱説明書が入っています。
▲パッケージ内容
ミリタリー好きの方ならわかっていただけると思いますが、本体のデザインは「いかにもアメリカ軍」という格好良さがあります。
▲本体右側面と底部(底部には操作方法が英語で書かれている)
▲本体左側面と上部
初期状態では、上の画像のように本体の左側面に黒くて大きなクリップ*3が取り付けられていますが、右にも付け替えられます。
クリップの付け替えには、プラスねじ×1本の脱着が必要です。
基本操作
電池は、本体後部のラッチを解除して開く蓋の中に入れます。
▲電池ボックスを固定するラッチ
▲電池ボックス
STALKは電池ボックス内にバネで動くスペーサーがあるため、単3形電池でもCR123Aでも使えます。
単3形電池の場合は、スペーサーに押されて下の画像のように少しだけ電池が飛び出すので、これを指で押さえながら蓋を閉じることになります。
▲単3形電池を入れた様子
電池ボックスの奥行きは可動式のスペーサーによってCR123A電池の長さと同じになっているため、CR123A電池はきれいに収まります。
▲CR123A電池を入れた様子
メーカーの資料(SIDEWINDER STALK PRODUCT FACT SHEET)によると、電池の極性を間違えてセットした場合は保護機能が働き、回路が壊れないようになっているそうです。
STALKの操作は2段階に分かれています。
最初の段階は「どの色のLEDを点灯させるのかを決める」こと。
これは、本体上面のダイヤルで選択します。
選択肢は「OFF」「白色」「赤外線*4」「色付LED」の4つで、それぞれダイヤルでは「OFF(オフ)」「W(White)」「IR(Infrared:赤外線)」「C(Colors:色付き)」と表記されています。
▲ダイヤルが「OFF」位置にある状態
なお、このダイヤルは磁力を使って本体内部の回路を動作させる仕組みになっており、ダイヤルと本体内部との間に物理的な接触がありません(防爆構造*5)。
ちなみに、STALKは軍事利用を想定しているため不意に可視光を発することがない(赤外線発光モードになっている)ことを確認しやすくしないといけません。そこで、ダイヤルの「IR(赤外線)」の位置には突起が付いており、手触りだけで赤外線モードになっているかどうかを判別可能です*6。
▲ダイヤルの赤外線(IR)の位置には突起がある
次の段階は、ダイヤル前方にある黒いボタンを押すこと。
これで、ダイヤルで選択されたLEDが最小輝度で点灯します。
ボタンを押し込んだ状態を保持すると輝度が1段階強くなり、さらに押しっぱなしにするともう1段階強くなります。
さらにボタンを押し続けると、今度は輝度が1段階ずつ下がり、最小輝度になったらまた1段階ずつ上がるという動作を繰り返します。
希望する明るさになったところでボタンを離すと、選ばれた輝度でLEDは点灯し続けます。
▲白色LEDの輝度が変化する様子(弱→中→強→中→弱の順に切り替わる)
LEDが点灯している状態でもう一度ボタンを押すと、消灯します。
明るさを記憶する機能はないため、一度消灯すると次にONにするときは、必ず弱で点灯します。
使うかどうかは分かりませんが、ボタンをダブルクリックすると点滅する機能もありますよ。
ダイヤルを「C」にした状態でボタンを押すと色付きのLEDが点灯しますが、その時に点灯するLEDの色は、前回消灯した時の色を記憶しています。
▲ダイヤルが「C」位置にある状態
色の切り替えは、「ボタンを5回素早く押し、5回目でボタンを押しっぱなしにする」ことで行います。
5回目のボタンを押しっぱなしにしている間は、LEDが赤→緑→青の順に切り替わるので、目的の色のLEDが点灯した時にボタンを離します。
▲ダイヤルを「C」に合わせた時のLEDは3色のいずれかが点灯する
これら赤、緑、青のLEDも、白色LEDと同じ要領でそれぞれ弱、中、強の3段階に輝度を変えられますし、ダブルクリックで点滅も可能です。
ちなみに、このボタンは30万回の押下に耐える耐久性を持っています。
民間で使用する際には全く必要ありませんが、せっかく備わっている機能があるので紹介します。
それは、敵味方識別(IFF*7)機能。
ダイヤル中央には赤外線LEDが埋め込まれており、これが1分間に50回点滅します。
これを点滅させておくと、ナイトビジョン(暗視装置)を持っている味方に自分の位置をアピールできるというわけです。
IFF用のLEDを点滅させるには、ダイヤルを「IR」の位置にした上でIFFスイッチをONにします。
▲敵味方識別(IFF)用の赤外線LEDを点滅させるには、IFFスイッチを固定するラッチを解除し…
▲ダイヤルが「IR」の状態でスイッチを左右どちらかに動かす
赤外線LEDの発光は肉眼で見えないため、暗視装置を持っていないと動作しているのかどうかわかりません。
当ブログ管理人(私)は「変な人」ですから、暗視装置*8を持っています。
せっかくなので、暗視装置越しにスマホのカメラで赤外線LEDが点滅する様子を撮影してみました。
▲私が持っている暗視装置を通して見た敵味方識別(IFF)用赤外線LED発光の様子(アニメーションGIF形式)
上の動画ではメインの赤外線LEDも点灯していますが、IFF用のLEDは本体のON/OFFに関係なくIFFスイッチで制御できるため、IFF用のLED単独で点滅させられます。
ダイヤルが「IR」の位置にない場合は、IFFスイッチをONにしてもIFF用のLEDは点滅しません。
STALKをどこに装着するか
STALKにはヘルメットに取り付けるためのマウントが何種類か売られていますが、マウントは基本的にアメリカ軍のヘルメットに装着するための寸法で設計されており、一般の作業用ヘルメットに取り付けるのは難しいと思います*9。
そこで活躍するのが、本体についているクリップ。
クリップを使うと、帽子のツバに取り付けられます。
▲帽子のツバに付けた様子
▲帽子のツバをしっかり挟んでいるクリップ
ただし、クリップは軍用です。
民生品のような「生地を傷めにくい構造」や「脱着しやすい構造」にはなっていません。
むしろ、脱落しないように取り付けも取り外しも至難の業になるような形状。
帽子のツバにクリップの跡が付くのはもちろん、脱着時にもツバが激しく傷みますし、何なら自分の爪も傷むかも。
絶対にお気に入りの帽子で試さないでください。おしゃれなネイルをしている方にもお勧めしません(そもそもそんなおしゃれな人は、こんな変なライトを使わないでしょうが…)。
さて、STALKの画像を見た方は「なんでライトの首が長いんだろう?」と疑問に思われていることでしょう。
実は、この長い首はある程度自由に角度を変えられるようになっているのです。
▲ライトの首を曲げた様子
こんな風に首が曲がるので、帽子のツバに付けても角度の調整が自由にでき、問題なくヘッドランプとして使えるわけです。
私の場合は、バックパックのショルダーストラップに取り付けています。
ライトの首を曲げて向きを自由に変えられるので、常に数メートル先の路面を照らしながら歩けるはず。(私は基本的に暗い時間帯の山歩きをしないため、これを使うのはよほどの非常時か、天気が悪い時に鬱蒼とした樹林帯を歩くときくらいかな。)
▲ある日、他のハイカーがいそうにない山に単独で出かけた時の装備。バックパックのショルダーストラップにSTALKが取り付けてある。*10
照らす範囲を大きく変えたい場合は体の向きを変えないといけませんし、使い勝手も明るさもランタイムも最近の高性能なヘッドランプに劣りますが、私は頭が大きいためバンドの締め付け感が不快です。さらに、汗っかきでバンドがすぐにびしょ濡れになるという理由から、ヘッドランプがあまり好きではないのです。
おでこにあるヘッドランプ本体のスイッチは見えないため、操作に手間取って目的の操作ができずにイラつくというのも、ヘッドランプが苦手な理由の一つ。
STALKをショルダーストラップに取り付けるこの使い方は、私にとってのヘッドランプの弱点を解決できるものと考えています。(まだ実際に使う状況になったことはありません。)
明るさ
壁に囲まれた約5m四方の正方形の場所で、正方形の一辺の中央付近、高さ1.5mほどの位置から正方形の中心を狙って照射した様子を紹介します。
※単3形アルカリ電池を使用しています。
※画像内にはランタイムが表示されていますが、これは明るさが当初の状態から10%に落ちるまでの時間です(カタログ値)。
▲白色LEDの明るさ(3段階の明るさ比較)
▲赤色LEDの明るさ(3段階の明るさ比較)
▲緑色LEDの明るさ(3段階の明るさ比較)
▲青色LEDの明るさ(3段階の明るさ比較)
最後に
民間では不要な機能が付いている上に防爆構造になっているため、非常に高価。
手持ちでは使いづらいし、専用のマウントはアメリカ軍用のヘルメットにしか対応していないし、クリップは米軍やNATO諸国が使用するMOLLE(モーリー)、あるいはPALSと呼ばれる装備品の連結用規格に対応し、脱落しづらい構造になっているため、民間向けのバックパックや帽子に取り付けると脱着しづらい上に生地が傷むし、見た目のカッコ良さとあふれるロマン以外には長所がありません。
普通の方にはまったくお勧めしませんが、ミリタリーマニアの方や、インドアでサバイバルゲームを楽しむ方なら、何かしらの魅力を感じられるかも。
長所
- カッコいい!(私の個人的な意見です。)
- 軽い。
- 乾電池式で、単3形とCR123Aのどちらでも使える(事前の充電やこまめな電池残量管理が必要な充電式と違い、電池さえ用意しておけば使いたい時に確実に使える。私は個人的に、緊急時に使う電気製品には充電式を選ばないことにしています。)。
短所
- 高価すぎる。(私の個人的な感覚です。)
- ライトの向きを自由に変えられそうに見えて、実際はライトの向きの自由度はさほど高くない。(私の個人的な感覚です。)
- 単体では取り付けできる位置が限られている(別売の部品も基本的にはヘルメットへの取り付けを前提としている)。
*1:復旧に工事が必要な、職場全体が完全な真っ暗闇になるレベル。非常灯も内蔵バッテリーを使い切って消灯するし、その他の非常用設備もバッテリーを使い切って警告音を鳴らし、その後うんともすんとも言わなくなるし、電話交換機も非常用バッテリーを使い果たして止まりました。建物の揚水ポンプも止まったので、貯水槽が空になってトイレの水も流れなくなる始末。仕事の関係で、復電後に各種機器の動作確認を行わないとならず、深夜まで待機する羽目になりました。
*2:米軍が調達する物品に設定されるNSN(National Stock Number)がSTALKには設定されていないため、官給品ではありません。兵士が自腹で購入して使用するものです。
*3:この記事で使用しているSTALKの黒いクリップは「Sidewinder Stalk Helmet Clip」です。「概要」のYouTube動画に写っているSTALKに付いているのは「ARC Rail™ Clip」です。
*4:赤外線の波長は940nmです。
*5:電気回路の端子が接触したり離れたりする際には、火花が出る可能性があります。可燃性ガスが充満している環境などでは火花が発生しない仕組みが必要で、そういった仕組みは防爆構造と呼ばれており、消防や化学工場で使われている懐中電灯も防爆構造になっています。
*6:突起の位置がどこにあるかを手触りで判別することで、ダイヤルでどのモードが選択されているかを知ることができます。例えば突起が本体後方にあれば「OFF」になっているとか、突起が本体右側にあれば「W(白色LED)」が選択されていることが分かります。
*7:敵味方の識別を意味する英語「Identification, Friend or Foe」の頭文字をとったもの。
*8:正規のルートで購入した2.5世代の民生品(カナダ製)です。
*9:別売のヘルメットマウントが対応している米軍のヘルメットは、PASGT、ACH、MICH、ECH(ヘルメットの種類によって使用する金具が異なる)です。ARCレールが付いているヘルメットには、ARCレールマウントを介して取り付けが可能。ベルクロ付きヘルメットに付けるためのベルクロマウントや、ナイトビジョンマウント用のアダプターもあります(すべて別売)。
*10:この画像では、モンベルの「バーティカル アタッチャブルベルト」を使ってショルダーストラップにSTALKを取り付けています。STALKより目立っているコイルスプリングは、熊撃退スプレーの脱落・紛失防止用。レザーマンのポーチには、遭難時にヘリから見つけてもらいやすくするための山岳用発煙筒「ポッケム」と、万一捜索される側になった状況で呼びかけに答えるために使用する笛が入っています。STALKの反対側のショルダーストラップにぶら下がっているビーズは、歩測用のペースカウンター。