播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。原則として更新は週に1回です。広告は表示しません!

兵庫県加西市の山下城跡

藤ノ木山でも散歩しようかなと思ってGoogleマップを見ていたら、「山下城跡」というのが目に入りました。

航空写真に切り替えて確認すると、城跡は伐採されていて東屋もあり、気持ちよさそう。
Google検索すると城跡の北に駐車場があるとのことで、車を駐める場所にも困らないようです。

ということで、この山下城跡を見に行くことにしました。


▲山下城の本丸跡(ドローンで撮影)あずまやが立っているのが本丸跡で、その左に見える削平地が二の丸跡。

山下城跡
 山下城は、地誌「播磨鑑」によると、浦上久松の居城であるとされ、天文元年(1532年)頃に築城、永禄9年(1566年)頃に、別所氏の兵站拠点基地として改修され、天正6年(1578年)まで、機能していたものと考えられる。
 この城郭は、戦国時代に珍しい「平山城」で、残存状態の極めてよい城跡である。
 賀茂川を外堀として、丘陵全体に削平地(郭)や堀切・池などを巧みに配置して、守備の厳重化と機能性の有効化を図っている。
 南の最高地(比高30m)を本郭として、二の郭・二重の帯郭で「南郭群」を構成し、北東に各種の屋形を中心とした「東郭群」を設けて、政治的な機能を図っている。
 その前面には西本郭を中心とした大手を守備するための「西郭群」を配置している。

北播磨城郭研究会

一般社団法人加西市観光協会
山下城跡周辺保存会
平成26年7月
(出典:本郭跡の看板)


▲対応する地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図「笠原」(緑色の線は車で通ったルート)


▲カシミール3Dで作成したルートの断面図

10:30
姫路市街の自宅を車で出発。

国道312号線を北上し、「広瀬北」交差点を右折して県道81号線*1に入ります。

「広瀬北」交差点から東へ進むことおよそ3km、「西山田西」交差点を左折。そのまま道なりに2kmほど東へ進んだところにセブン-イレブン 姫路山田町店があります。
このセブン-イレブンのすぐ先に「藤ノ木山自然公園野外活動センター」への道標が立つ信号のない交差点があるので、それを右折。ここからも県道81号線です。

交差点を右折してからおよそ600m進むと、「←山下城跡・常行院」と書かれた道標が立つ信号のない交差点があるので、道標に従ってこれを左折。

田んぼの中を走る道は間もなく集落の中へ入りますが、道幅が狭いです。大きな車に乗っている方はご注意を。

道標のあった場所から350mほどのところでカーブミラーのある三叉路を右折すると、正面にお寺(常行院)の門が見えます。

そのお寺の門を通り過ぎてすぐ右手に駐車場があるのですが、山下城跡へ行く方はここに車を置くのが一般的なようです。


▲常行院の門


▲常行院の本堂

田冨山 田福寺 常行院

一 名称 田冨山田福寺常行院
一 所在地 加西市山下町
一 宗派 天台宗
一 本尊 田福寺 薬師如来
     常行院 阿弥陀如来
一 建造物 本堂(田福寺) 庫裡(常行院 奥の院 弁天堂 その他

 常行院は、明治維新までは田冨山田福寺の一院。享保十七年の(一七三二)の「田冨寺記」によれば、当寺は、聖徳太子開基の霊場で薬師如来を精慮一宇を建て安置する。その後法道仙人来たり十一面観音を刻み同じくこれを安置した。
 天武天皇の御字白鳳八年六月に氷零頻りに降り国中稲虫(蝗)の災いにあい、当山の本尊に祈誓した除災のお礼を田畑に刺しおいたところ蝗悉くさり五穀豊穣を迎え民衆の喜びきわまりなく、帝の勅により田冨山田福寺と号し県の余田に十二院が建立された。
 その後後醍醐天皇の御字当国赤松家の譜代浦上七郎左ェ門正久なるもの寺領田畑等を奪い取り妨舎を焼き払い城郭を構えて所居とした。このとき霊宝記録当悉く消失した。人王百三代後花園院の御字宝徳年間に当地の門七郎衛が中心となって再興し、快慶法印を招いて寺を委ねた(今の本尊はこれなり)
 平成十九年には現本堂・惣門の落慶法要を厳修し現在に至る。
一 その他 石造七重塔(市指定文化財)
一 ご詠歌
   もろ人の ねがう心は 大悲尊
         つみある人も 救いたまえと
(出典:常行院前の看板。)

常行院の門の前には、常行院について書かれた看板と並んで山下城跡のイラストマップが設置されています(イラストマップは大雑把すぎて、残念ながら役に立ちません)。

イラストマップには、城跡が整備された経緯が次の通り書かれています。

 常行院の南東の丘陵(通称 城山)に、「播磨鑑」によると浦上久松(1570年代)の居城として“中世城郭遺構”があります。
平成21年3月 加西市市史・文化財室の調査によると、この丘陵は、規模が大きく本丸も広い面積で立派な城郭を有する山城(山下城跡)であることが分かりました。
そこで、里山ふれあい森づくり(住民参画型)事業を実施し、平成19年度に落慶した常行院本堂とともに、この周辺を山下西町の「歴史遺産地区」に、また、山下城跡を「ふれあいの森」として整備しました。
平成22年度 里山ふれあい森づくり(住民参画型)事業地
(出典:常行院前の看板)

11:13
常行院前の駐車場に到着(地図中「駐車場」)。


▲常行院前の駐車場


https://goo.gl/maps/Dem7VgSHueQUf2NU9
▲常行院前の駐車場の位置

ちょうど作業中の地元の方がいらっしゃったので、「城跡に登りたいんですが、車をここに置かせていただいてよろしいですか?」と尋ねると、「もっと先に進んで、登山口前に止めたらええよ」とのこと。

お言葉に甘えて常行院の先にある「山下城跡 遊歩道(約150m)」の道標に従って右折し、車を進めました。道はギリギリ1車線幅で、登山口が近づくと未舗装になります。

11:16
「山下城跡」と刻まれた石碑の立つ登山口に到着(地図中「P」)。


▲登山口前に駐車した

常行院前の駐車場や登山口前のスペースには、お手洗いや飲料の自動販売機はありません。買い物やお手洗いは、事前に済ませておく必要があります。

11:21
準備が整ったので出発。


▲登山口の様子

登山口から丸太階段の道を登りますが、城跡好きの方は階段を登る前に登山口の左右を見てください。堀の跡と思われる窪みがありますよ。

丸太階段の道を登っていくと、間もなく水をたたえた井戸跡に出合いました。
山城の井戸跡で水がしっかり入っているところは珍しいかも。

ここは道の分岐になっており、ここから谷の北を通って登山口へ下りられるようになっています。


▲井戸跡(葉っぱが浮いていてわかりづらいですが、水を湛えています。)

井戸跡を過ぎると、丁字路に突き当たりました。
本丸跡へ行くには左、右は東郭群へ続く道です。


▲井戸跡の先で出会う分岐(丁字路)

また分岐に出合いました。今度は直進と左折です。
本丸跡へ行くには、これを左折。直進すると西郭群へ行けます。


▲本丸跡と西郭群への分岐

11:31
草藪と化した二の丸跡の横を通り過ぎ、本丸跡に到着(地図中「本丸跡」)。


▲本丸跡の様子

今までは木陰だったため平気でしたが、日当たり抜群の本丸跡の暑さは異常です。
すぐに東屋に避難。


▲きれいな東屋

暑すぎるためか、虫がいないのはありがたい。しかも、適度に風が吹いてくれるおかげで涼しく感じられました。

本日の昼食は、オニシのナシゴレン(インドネシア料理。スパイシーなチャーハン。)と、マックスバリュのしじみワカメスープ。

ナシゴレンの辛さが今日の暑さにピッタリ。
ただでさえ汗が噴き出すのに、辛さでさらに汗が出てきてむしろ気持ちいい。


▲本日の昼食

昼食の後は全天球パノラマを撮影し、ドローンを飛ばして遊びました。

パノラマ画面内左上のリストから「本丸跡」と「空撮パノラマ」を切り替えて2種類の全天球パノラマをご覧いただけます。


https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/yamashitajo20230716/index.html
▲山下城本丸跡で撮影した全天球パノラマ

12:44
すっかり汗が引いたので、出発。

下山するのではなく、本丸跡にある復元図を見て城跡の様子をイメージしながら、城跡探索をすることにしました。


▲本丸跡にある想定復元図

まずは大手口を見に行くことにします。

復元図では、西郭群のある尾根の北端が大手口とされているので、本丸跡からもと来た道を下り、西郭群への道に入りました。

道は尾根の上や右下の谷間へ延びる道など何本もありますが、いずれも道標がありません。

尾根の上は草藪っぽいし、谷間は薄暗い竹林で気味が悪いので、分岐に出会う度に稜線と谷の中間を通りそうな道を選んで進みました。


▲西郭群のある尾根にはしっかりした道が残っている

12:50
尾根の先端に下りてきました(地図中「大手口跡」)。

急峻な切岸(きりぎし=人口の崖)や郭跡(くるわあと=斜面を削って平らにした場所)、そしてそれらをつなぐ通路がしっかり残っています。
なんだかカッコいい…


▲大手口跡

もと来た道を引き返し、今度は東郭群を見に行くことにします。

東郭群は、畑になっていました。
ただ、郭跡の全体が畑になっているのではなく、広い郭の西にある帯郭(おびくるわ=細長い削平地)状の場所だけが耕されているようです。


▲畑として利用されている東郭群の郭の一つ

畑として使われていない平らな空間は、草藪か竹やぶになっているような雰囲気。


▲東郭群の大半は薮になっていそうな雰囲気

東郭群の北端近くから大手口跡を見ると、現地で見るよりもはっきりと地形が分かりました。


▲東郭群から見た大手口跡

またまた来た道を引き返し、井戸跡まで戻ってきたら、草に覆われた道で谷の北側へ回って登山口へ。


▲想定復元図で「現地政所」とされていた郭跡の様子

13:05
下山完了。

常行院前の駐車場に車を置き、常行院でお参りをしてから帰路に着きました。

参考のため、カシミール3Dで作成した山下城跡の立体図を載せておきます。
地形図より細かい地形が分かり、城跡らしさが感じられると思います。


▲山下城跡の立体地図(カシミール3Dで作成)本郭は本丸、二郭は二の丸のこと。


交通アクセス

自家用車以外の交通手段として、路線バスが利用できます。

最寄りのバス停は神姫バスの「西山下」バス停で、JR姫路駅の北にある7番乗り場から発車する61系統のバス(北条・フラワーセンター方面)が「西山下」バス停を通ります。

「藤ノ木公園前」バス停の次が「西山下」バス停です。車内放送や車内前方の表示を確認し、乗り過ごさないようにしてください。

運賃はおとな一人¥710で、所要時間は(ダイヤ通りに運行した場合)約50分です。
西山下バス停から常行院までの距離は、およそ500m。

平日、土曜、日曜(祝日)でバスの時間がバラバラですし、本数が少ないため、事前に神姫バスのWebサイトで時刻をしっかり確認することをお勧めします。

*1:一部の区間は県道117号線と重複しているため、地図アプリ上では県道117号線と表示されるところもあります。