姫路城では、冬場に観光客が減少する対策として、普段一般に公開していない場所を特別公開するイベントが行われます。
2023年の冬にも特別公開が行われますが、その公開場所は「菱の門」。
姫路城の入城券を買って有料エリアに入るとすぐに出会う大きな門です。
▲姫路城・菱の門
イベント名称: 世界遺産・国宝 姫路城 冬の特別公開
期間: 2023年2月11日(土)~3月12日(日)
時間: 9:00~16:30(最終入城 16:00)
公開場所: 姫路城・菱の門(国指定重要文化財)2階櫓部
観覧料: 200円(姫路城の入城料¥1,000が別途必要)
注意事項: 三脚の使用、飲食、喫煙は禁止されています。古い建物のため、バリアフリーは一切考慮されていません。
https://goo.gl/maps/Ng9CKa58XST32X6N9
▲姫路城入城券売り場の位置
09:00
入城券売り場をふさいでいたゲートが開けられました。
▲入城券売り場の様子(開門前)(左奥に見えているのが菱の門)
券売機で大人ひとり¥1,000の入城券を購入。
ゲートで入場券を渡したら、¥800の地域クーポン券(有効期間は入城日とその翌日のみ)がもらえました。
2022年12月1日から姫路城入城者に配布されているらしく、予算がなくなり次第配布終了とのことです。
詳細はこちら。(姫路市の公式サイトです。)
¥1,000で入場券を買いましたが、使えるお店は限られているものの¥800のクーポンが返ってきたので入城料は実質¥200!
そんなありがたいサービスに驚きつつ通路を進んで左へ曲がると、目の前に巨大な門が姿を現しました。
この門こそ姫路城に残る門の中で最大であり、今回内部が特別公開される「菱の門(ひしのもん)」です。
菱の門の1階 門番所内部は過去に特別公開されたことがありますが、2階の内部は初公開とのこと。
▲有料エリアに入って最初に目にする門が「菱の門」
▲菱の門の名前の由来となった花菱(冠木に取り付けられている)
菱の門をくぐった先で左を見ると菱の門の1階内部へ入る扉が開いており、そこが特別公開の受付になっていました。
▲菱の門特別公開の様子(中央下に写っている黄色いチェーンの場所から門に入り、右奥の扉から仮設の階段を上って2階へ入る)
菱の門1階の扉を入ったところは、かつて門番所だった場所。
ここで特別公開の観覧料である¥200を支払います。
▲菱の門1階の門番所入口
▲門番所内の様子(壁が石垣になっている点に注目)
菱の門と門番所
菱の門は、姫路城内に現存する最大の城門です。築城当初の城主の屋敷は備前丸にあり、菱の門は、大手門に比肩する大事な城門だったといえるでしょう。
門の形式は櫓門です。1階の通路部に門を設け、太い2本の鏡柱に肘壺金具で大扉を吊っています。鏡柱の上の冠木には木製の花菱が付けられ、門名の由来となっています。また、門の左右にはそれぞれ「門番所」(番所:西側の部屋)と通称「馬見所」(東側の部屋)が
置かれています。「門番所」は大きな門扉の横に付く脇門に面していて、門の出入りを監視しました。
また「門番所」内南側の壁は石垣になっており、西の丸東辺石垣の北端に当たります。その石垣が門の建物に組み込まれているということは、本多忠政が西の丸を造成したときに菱の門も現在のかたちになったとみることができます。
(出典:現地の看板)
菱の門の二階は、外からしか入れない構造です。
そのため、門番所内で受付を済ませたら入口とは別の扉から外へ出て、外に設置された階段を上がって2階へ入るように順路が設定されていました。
▲菱の門2階入口
菱の門二階
菱の門の2階は櫓で、櫓の南面に華頭(火灯)窓と武者窓を中央に、東寄りに出格子窓を配置しています。華頭窓と武者窓は黒漆塗の窓枠や格子に飾金具を打って装飾をしています。さらに、櫓の外壁面は真壁造りで、柱や舟肘木、貫などが壁体の中に隠れることなく外側に見え、とくに南側からの見栄えを意識して建てられています。
2階内部には、門を入って西側の雁木を登り、西側の華頭窓の横にある入口から入ります。入口は城外からは土塀で隠れて見えません。
櫓内部は東室・中室・西室の3室に分かれます。主要な城門なので武器が保管されていたとみられます。西室と中室では床面の南端(通路の真上)に石落し用の蓋が切られていて、頭上から攻撃できる仕掛けとなっています。この石落しは外から見ても存在に気づかないので、「隠し石落し」とも呼ばれます。
(出典:現地の看板)
二階に入ったところは西室。
小さな部屋で、河合寸翁(かわいすんのう)が愛用した硯(元鼎硯:げんていすずり)が展示されていました。これも初公開とのこと。
▲西室内の様子(公開初日のため、テレビ局の取材が入っていました。一般の見学者は三脚を使用できません。)
▲河合寸翁が愛用した硯(元鼎硯)
河合寸翁が愛用した硯(元鼎硯)
姫路市所蔵姫路城主酒井家家老の河合寸翁(道臣)が愛用した硯で、石材は不明です。墨堂(墨を磨るところ)はかなり摩耗しています。硯箱は黒漆塗りで蓋の文字には金を使用し「元鼎硯」と書かれています。これは、硯背(硯の裏)に刻まれた銘文「漢元鼎」に由来するものです。「元鼎」は中国・前漢の武帝の時代の元号で紀元前116~111年にあたり、この硯の来歴を示唆していますが、どういう経緯で寸翁の手元にたどりついたのかはわかっていません。
また、一説には「元鼎」は寸翁の実名でもあり、この硯に由来するといわれています。しかし、「元鼎」が彼の実名だとする確かな史料は見つかっていません。寸翁の実名として確かな「宗鼎」(読み方は不明)あるいは「鼎」と混同している可能性があります。
(後略)
(出典:現地のパネル)
西室の隣は中室で、この部屋の南端には石落しがあります。
▲中室の様子(奥の窓の下に石落し)
▲中室の石落しから通路を見る(下を通っている人がよく見える)
▲石落しの蓋(手前は閉じた状態。奥は開いた状態。)
「石落し」という名前から、この穴から石を落としたと思っている方も多いですが、この細い穴を通る程度の石を低いところから落としたところで、大した殺傷力はありません。
実際は火縄銃や槍で攻撃するための設備だと考えるのが自然でしょう。
中室からさらに奥へ進んだところが東室で、ここには黒漆塗長持が展示されていました。
▲東室の様子(今回が初公開となる黒漆塗長持が展示されている)
▲黒漆塗長持
黒漆塗長持
菱の門の櫓部の東室に置かれていた長持。全体を黒漆塗りとし、長辺には直径30cmほどの大きさで、平蒔絵の葵紋が2つずつ描かれています。
この長持は、酒井家資料を収納・保管していたものの一つです。酒井家資料はもともと酒井家が所有していた近世・近代の文書等の総称で、姫路市が酒井家から資料を受け取る際、東京からこの長持に入れたまま姫路まで運ばれたようです。酒井家所有の長持で葵紋が描かれていることから、酒井家と徳川家もしくは松平家とのつながりがうかがわれます。その具体例として、両家間の婚姻が考えられます。安永3年(1774)には酒井忠以が高松藩松平家から嘉代姫を、天保3年(1831)には酒井忠学が将軍家から徳川家斉の25女・喜代姫を迎えています。いずれかの嫁入り道具だったのかもしれません。
(出典:現地の看板)
菱の門の2階を一通り見終わるのに要した時間は、およそ15分でした。
私は姫路城の近所に住んでいてたびたび天守閣を訪れているため、今回は特別公開の場所だけを見学。姫路城での滞在時間約20分で自宅へ戻りました。
大して時間はかかりませんし、観覧料は¥200ですから、特別公開の期間中に姫路城に行かれる際は、普段見上げることしかできない菱の門内部をぜひ見学してみてください。
全天球パノラマカメラで菱の門2階内部を撮影しましたが、薄暗い上に三脚の利用が禁止されている(シャッター時間が長くなるのでぶれる)ため、画質は低いです。
パノラマ画面左上のリストで3つの部屋を切り替えてご覧ください。
https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/hishinomon20230211/index.html
▲菱の門2階内部で撮影した全天球パノラマ
交通アクセス
JRまたは山陽電車の姫路駅から入城券売り場までの距離は、およそ1.3km。
個人的には、徒歩で行かれる方が多い印象です。
自転車の場合は、入城券売り場のすぐ横にある駐輪場を利用できます。
▲入城券売り場横の駐輪場