日帰りの山歩きを楽しむ際、冷凍食品を持っていってそれを昼食として食べることがあります。
しかし、自宅から登山口までの移動時間と、登山口から食事を摂る山頂までの移動時間は数時間におよぶため、冷凍食品は保冷バッグに入れていても溶けてしまいます。
溶けた冷凍食品は、パッケージに書かれている調理方法ではうまく仕上がらず(加熱時間には溶かすための時間も含まれているため、指示通りに作ると加熱しすぎになる)、試行錯誤が必要です。
登山口から山頂までの移動時間はしかたないにしても、自宅から登山口までの移動時間中は、なんとかして冷凍食品を凍ったまま運びたい。
また、スーパーやコンビニで冷凍食品を買ったときは、冷凍食品が溶けないうちに帰らないといけないため、寄り道ができないのも不便。
クーラーボックスは氷を入れないと役に立たないし、氷を買うのももったいないし、そもそも氷では冷凍食品を凍ったままにしておける温度にはなりません。
というわけで、車の中で使えて冷凍庫にもなる小型の保冷温庫を買うことにしました。
▲車内に置いたマキタの充電式保冷温庫「CW003GZ」
概要
保冷にするとマイナス18度まで冷やせて、保温にすると60度まで温められる、小型の保冷温庫です。
電源は、マキタの電動工具用18Vバッテリーまたは36V(40Vmax)バッテリー、車のシガーソケット、家庭のAC100Vが利用できます。
仕様
▲マキタ充電式保冷温庫「CW003GZ」の外装パッケージ
製品名: 充電式保冷温庫 CW003GZ
メーカー: 株式会社マキタ(愛知県)
外形寸法: 456mm × 245mm × 308mm(取っ手を含まない)
庫内寸法: 210mm × 150mm × 220mm
内容積: 7リットル
重量: 8.8kg(BL4050Fバッテリー装着時)
電源: マキタ電動工具用バッテリ-、AC100V、シガーライターソケット(12Vまたは24V)
冷却時消費電力: 65W
加熱時消費電力: 36W
感電保護クラス: Class Ⅲ
冷却方式: コンプレッサ・冷媒ガス(R-134a 24g)圧縮方式
温蔵方式: ワイヤヒータ加熱方式
断熱材: ポリウレタンフォーム(シクロペンタン)
耐候性: IPX4
色: 青とオリーブの2色展開
定価: 69,800円(税別)
購入価格: 51,400円(税込)
購入先: ニューステージツールズ(Yahoo店)
パッケージ内容
CW003GZのパッケージ内容は、次の通りです。
・充電式保冷温庫 CW003GZ本体
・ショルダーベルト
・ACアダプタ
・シガーソケット用コード
▲パッケージ内容(付属品は手前の左からショルダーベルト、ACアダプタ、シガーソケット用コード)
重要
この商品には、バッテリーや充電器は付属しません。電源の無い場所で保冷温庫を使用したい場合は、別途純正のバッテリーと充電器を購入してください。
純正ではないバッテリーは、機器の故障や発火などを起こす危険がある(互換バッテリー等は品質が低い材料を使い、安全確保に必要な措置を講じないから安い)ため、必ず純正品を使ってください。
バッテリー代をケチって家や車を燃やすなんて愚の骨頂です。
外観
ぱっと見は小型のクーラーボックスのように見えますが、よく見ると操作パネルや通気窓が付いており、ただのクーラーボックスではないことが分かります。
▲CW003GZ本体正面
上部のフタを開閉するための蝶番(ちょうつがい)は、堅牢なものが使われています。
▲開閉部の蝶番(ちょうつがい)は頑丈(左はバッテリ収納カバー、右の2つはフタの蝶番)
蝶番と並んで負担がかかりそうな部品としてフタのラッチがありますが、こちらも大きくて丈夫そうな部品が使われています。
▲フタのラッチ
ラッチの左下に見えているのは、栓抜きです。
今時栓抜きが必要な飲料は瓶ビールくらいですが、役に立つことがあるかも知れません。
▲本体正面に埋め込まれている栓抜き
保冷温庫の庫内は、本体の大きさに比べるとかなり狭いです。
500mlのペットボトルが6本入る程度の広さしかありません。
▲保冷温庫は狭い(横210mm×奥行き150mm×高さ220mm)
▲庫内の高さは22cmほど
▲600mlサイズのペットボトル(右)だと庫内の高さが足りず、フタが閉まらない
庫内には、フタを開くと点灯するLEDライトが内蔵されているため、薄暗い車内などで使う時でも問題なく庫内を見られます。
▲庫内にはフタが開くと自動的に点灯するLEDライトがある
バッテリ収納カバーを開くと、中にはバッテリーをはめ込むための端子が2種類取り付けられています。
▲バッテリ収納部
上の画像で上に見えているのが18Vバッテリー用の端子、右側が36V(40 V max)用の端子です。
構造上、取り付けられるバッテリーは18Vか36Vのいずれか一つだけ。
大型の製品だとバッテリーが複数セットできて、電源のない場所では順次バッテリーを切り替えて長時間動作するものもありますが、CW003GZでは長時間運用の場合、自分でバッテリーを入れ換えて使う必要があります。
▲18Vの純正バッテリー(BL1860B)を取り付けた様子
本体正面右下と、背面の左下には通気窓があります。
▲背面左下の通気窓
背面の通気窓は吸気口になっているため中にはフィルタが入っており、フィルタのホコリ掃除をするためにフィルタカバーが取り外せるようになっています。
よほど長期間使うかホコリっぽい環境で使わない限り、このフィルターの清掃が必要になる頻度は低いと思われます。
▲フィルタカバーを外してフィルタを取り出した様子
電源について
この製品には、「ACアダプタ」と「シガーソケット用コード」が付属しています。
それぞれのケーブル長は次の通りです。
ACアダプタ
家庭用100Vのコンセントで製品を利用するためのケーブルは、電源ケーブルとACアダプタの2つの部品で構成されています。
コンセントのプラグとACアダプタを接続する電源ケーブルの長さはおよそ150cm。ACアダプタ(箱型の部品と、そこから延びる電源ケーブル)の長さがおよそ80cmです。
ACアダプタ使用時は、バッテリーを装着していてもバッテリーからは給電されません。
シガーソケット用コード
シガーソケット用コードはACアダプタのようにケーブルは別れておらず、全体が1本のケーブルになっていて、長さがおよそ250cmあります。
シガーソケット用コード使用時は、バッテリーを装着していてもバッテリーからは給電されません。
純正バッテリー
マキタの電動工具を使われているなど、この保冷温庫に対応する純正バッテリーをお持ちの方は、電源の無い場所でもバッテリーでこの製品を利用できます。
▲私はこの保冷温庫に対応するマキタの18V、6.0Ah純正バッテリー(BL1860B)を購入した
バッテリー駆動では、バッテリーの種類や設定温度によって動作時間が異なるため、下表を参考にしてください。
▲1充電あたりの連続運転時間(単位:時間)*1
なお、CW003GZにはバッテリーを充電する機能はありません。バッテリーは必ず専用充電器で充電してください。
使い方
私の場合、この保冷温庫は山歩きや買い物の際、車に積んで利用しています。
CW003GZは、軽四の助手席に辛うじて置けるサイズ。
▲軽四の助手席の床にCW003GZを置いた様子
ただ、助手席ではフタを全開にできるほどのスペースはなく、フタの開閉時は片手でフタを支えておかないといけません。
▲私の車の場合助手席ではフタを全開にできない。
後部座席ならゆとりがあります。
▲私の車の場合、後部座席の床なら余裕を持って置ける
アウトドアでこの保冷温庫を使う場合、車からテントなどへ重い保冷温庫を持って移動しないといけません。
頑丈な取っ手は付いていますが、固い取っ手は長時間持つには適しておらず、保冷温庫の取っ手を持って移動すると手の筋肉が疲れて、手がプルプルと震えてきます。
手への負担を減らすためか、CW003GZにはショルダーベルトが付属しており、取っ手の穴にそれを通せば肩に掛けて運べます。
▲CW003GZにショルダーベルトを取り付けた様子
▲ショルダーベルトには滑り止めが付いたパッドがついている
これを使えば、手がプルプルすることなくCW003GZを安全に運べます。
それでも楽ではありませんが…
▲ショルダーベルトを使ってCW003GZを肩に掛けている様子
続いて具体的な操作方法を紹介します。
私の場合は冷凍食品にしか使わないため、まず出かける1時間ほど前にACアダプタを接続し、保冷モードで-18℃に設定します。
保冷/保温のモードは「設定 冷/温」ボタンを押す度に切り替わり、モード選択後に温度調節ボタンで設定温度を決めます。
▲保冷モードで運転を開始した直後の様子(右上に外部から電源供給を受けていることを示すコンセントのアイコンが表示されている)
なお、保冷モードの場合に設定可能な温度は-18℃、-15℃、-10℃、-5℃、0℃、5℃、10℃の7種類です。
温度表示画面に表示されている庫内温度が設定温度に達したら、冷凍庫から取り出した冷凍食品などを保冷温庫に入れます。
そして、出かける直前にACアダプタを抜いて保冷温庫を車に積み込みます。
ACアダプタを抜くと、(残量が十分にあるバッテリーを装着されていれば)自動的にバッテリー駆動に切り替わります。
▲バッテリー駆動になると、右上のコンセントのアイコンが消える(撮影のためだけに-18℃になるのを待つのは面倒だったため、庫内温度が高い状態で撮影しました)
車に積み込んだら、バッテリー節約のためシガーソケット用コードを接続します。
保温の場合も基本的に操作は同じですが、画面に保冷ランプの代わりに保温ランプが点灯します。
保温モードで設定できる温度は、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃の7種類。
▲保温モードの時の画面表示
騒音について
CW003GZは保温モードの時は無音ですが、保冷モードではコンプレッサを回すため騒音が発生します。
どの程度の音が出るのか、おおざっぱに測ってみました。
▲騒音計を正面の通気窓に向けて測定した(念のため三脚と騒音計の間にはRycoteのサスペンションを付けています)
まずは電源が入っていないときの音。騒音計は34.4デシベルを表示しています。
環境省がWebサイトで公開している「騒音の目安について」によると、40デシベル弱という騒音の目安は夜間の戸建て住宅地とのことです。
▲電源が入っていないときの音(環境音を拾っている)
保冷モードで電源を入れると、一気に数値が上がります。
騒音計は52デシベルを示していますが、これは昼間の高層住宅地域や書店の店内の騒音と同じくらい。
音が気になるため、寝室に置いて常設の小型冷蔵庫として使うといった目的には不向きです。
▲保冷モードでコンプレッサが動作しているときの音
注意事項
※ここに挙げた注意事項は、取扱説明書から一部を抜粋したものです。
- 庫内に飲食物をつめ過ぎないでください。
- 発動発電機(エンジンジェネレータ)の直流出力(DC)を電源として使用しないでください。
- 水などを庫内に直接入れないでください。
- 庫内に飲食物を入れる場合は、あらかじめ冷えたもの・温まったものを入れてください。
- 車内で使用する場合は、ラゲッジスペースや後部座席の足元など、安定した場所に設置し、必ず固定をしてください。また、座席の上には不安定な状態で設置しないでください。
- 本製品を運転中に前後・左右に30°以上傾けないでください。
- 傾けると運転を自動停止する保護機能が働きます。
- USB電源端子には、DC5V、2.4A電源に対応する機器のみを接続してください。
▲CW003GZの操作パネル右側には、スマホなどの充電に使えるUSBポートが付いている(本体の電源が入っている間だけ使用できます)
最後に
この製品を購入するまでは、冷凍食品を山で食べようと思ったときは家から近い山しか選べませんでしたし、買い物で冷凍食品を購入したときは、寄り道をせずにまっすぐ家に帰る必要がありました。
しかしCW003GZを購入してからは、そういった制約が一切なくなっています。
最近は飲食店が店の前に冷凍の自販機を設置していることがありますが、遠方のお店でそういった自販機から冷凍食品を買った場合も、まったく溶かすことなく家に持って帰れるのは便利。
保温でも保冷でも、出かける前にあらかじめ庫内を温めて、あるいは冷やしておく必要はありますが、放置しておくだけですから大した手間ではありません。
ただ、庫内のスペースが小さいことは気になります。
普通のスーパーやコンビニで売られている冷凍食品や要冷蔵の商品なら何も問題ないのですが、コストコで売られているような巨大な食品の場合は厄介です。
コストコに行く際は、まずこの保冷温庫の中にアウトドア用の強力な保冷剤を入れて持っていきます。
買い物をしているあいだ保冷温庫はバッテリーで動作し、真夏の屋上駐車場に車を置いていても、保冷剤をしっかり凍った状態のままにしておいてくれます。
そして、買い物を終えたらコストコのクーラーバッグに購入した商品を入れ、その上に保冷温庫から取り出した「キンキンに冷えた強力な保冷剤」を載せます。
冷凍食品を完全に凍ったまま家に持ち帰ることはできませんが、要冷蔵の商品なら自宅に着く頃でも冷えたままですし、冷凍食品の溶け方も最小限で済みます。
ところで、他のメーカーからはもっと庫内が広かったり、庫内に仕切りがあってそれぞれの区画で動作モードを変えられる製品も販売されています。
車内の広さや使い方に応じて、ご自分に適した製品を探してみてください。
重要
保冷温庫は、廃棄時にリサイクル料金が必要です。
リサイクル料金は、2022年10月時点では¥5,200です。
*1:庫内が設定温度に達してからの運転時間の目安です。使用環境や内容物により変動します。