播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

姫路城 夏の特別公開「乾小天守・イの渡櫓・ロの渡櫓・ハの渡櫓・東小天守」

姫路城大天守は、周囲に3つの小天守(西小天守、東小天守、乾小天守)がありますが、これらの2階より上は通常非公開。

しかし、2022年の夏は東小天守と乾小天守の2つの内部が特別に公開されることになりました。


▲イの渡櫓(2階)から見たロの渡櫓(右)と乾小天守(中央奥)垂れているヒモは避雷針

イベント名称: 世界遺産・国宝 姫路城 特別公開
期間: 2022年7月15日(金)~8月31日(水)
時間: 9:00~18:00(最終入城 17:00)
公開場所: 乾小天守・イの渡櫓・ロの渡櫓・ハの渡櫓・東小天守
観覧料: 500円(姫路城の入城料¥1,000が別途必要)
注意事項: 三脚やフラッシュを使用しての写真撮影は禁止されています。
 城内は飲食・喫煙禁止です(熱中症対策のためフタ付の飲料のみ可)。
備考: 大天守内部や今回の特別公開の範囲は、土足禁止です。脱いだ靴は配付されるナイロン袋に入れて持ち運ぶことになるため、脱ぎ履きしやすく、ナイロン袋(コンビニやスーパーで1枚数円で買うタイプの物)に入れて持ち運びやすいものを選んでください。階段が急なため、スカートは危険です。

特別公開される場所を見学するルートは、次の通りです。
(1)入城口でおとな一人¥1,000でチケットを購入して有料エリアへ入城。
(2)順路に沿って大天守の最上階へ。
(3)大天守最上階から順路に沿って下る。
(4)大天守の出口手前で特別公開のルートが分岐するので、看板に従ってそちらへ入る。
(5)特別公開の受付で大人ひとり¥500を支払う。
(6)イの渡櫓→東小天守→ロの渡櫓→乾小天守→ハの渡櫓→大天守出口へ進む。


▲この扉をくぐった先でルートは左右2本に別れる(左が特別公開、右は出口)

大天守の出口付近から特別公開専用の受付で料金を支払ったら、係員の指示に従って階段を登ります。

そこは「イの渡櫓」の2階。
長さが10mほどしかない短い渡櫓(わたりやぐら)で、大天守に接している南端はただの壁になっています(1階で大天守とつながっている)。


▲イの渡櫓の南端(大天守に接している部分)

イの渡櫓を北に進んだところにある階段を上がると、そこが東小天守

西側だけ窓のない、小さな部屋です。


https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/himejijo20220723-1/index.html
▲東小天守で撮影した全天球パノラマ

東小天守
「うしとらのすみやぐら」が当初の呼び名でした。
東小天守は高さ9mの石垣の上に建つ三重櫓です。
石垣の石材は主に広嶺や増位山系で採取された凝灰岩を使用しています。外観上は二重の多門櫓で、北向きに妻の千鳥破風があります。三重目は、多門櫓の二重屋根の上に乗せられた望楼で、外観からはイの渡櫓とロの渡櫓に一体化した望楼付きの多門櫓にみえます。実際、1階から2階への階段はイの渡櫓の中にあり、東小天守内での昇降はできません。
(出典:現地のパネルから一部を抜粋)

窓の上には小さな開閉部(火縄銃の煙を抜くための換気口)があり、開閉部と窓の間には火縄銃用の火薬や火縄を掛けておくための棒がたくさん設置されています。


▲東小天守の窓の上にある武具掛け

大天守と違い、小天守には階段が一つしかありませんから、上り下りする客同士が鉢合わせしないよう、係員さんが階段の上下で誘導してくれます。

係員さんに下りても大丈夫か確認してから階段を下り、続いてロの渡櫓の2階へ進みます。

ロの渡櫓の2階は、2019年公開の映画「引っ越し大名!」の撮影場所にもなったところ。


▲ロの渡櫓(2階)


https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/himejijo20220723-2/index.html
▲ロの渡り櫓(2階)で撮影した全天球パノラマ

ロの渡櫓
東小天守と乾小天守をつなぐ天守曲輪では一番長い渡櫓です。明障子の部材に「北の長やニちうめ~」という墨書が見つかり、当初は「北の長屋」と呼ばれていたことがわかりました。
外観上の特徴は、一重目の中央に大きな軒唐破風がつくことです。破風の下は横長の出格子窓となり、石落としになっています。
(中略)
2階も1階と同様に東西に長大な一室構成となっています。2階の内庭(城内)側には24連の素木の格子窓が連なっていて、外から見ると壮観です。北面の窓は漆喰塗の縦格子窓になっています。北面の窓は2階と1階で作りが異なっています。
(出典:現地のパネルから一部を抜粋)

ロの渡り櫓の武具掛けには、(数は少ないですが)槍や火縄銃、火縄や火薬入れが引っ掛けられており、往時の姿をイメージしやすくなっています。


▲ロの渡櫓の武具掛けに掛けられた火縄銃用の火縄と火薬入れ(レプリカ)

ロの渡櫓の廊下の中央部分だけは、荒々しい仕上げの板が使われていますが、それは仕上げに使われた工具が古いから。

鉋(かんな)が出来るより前に使われていた、釿(ちょうな)と呼ばれる道具で表面を削った板のため、表面が凸凹になっているのです。


▲ロの渡櫓(2階)に残る釿削りの床


▲ロの渡櫓(2階)から見た大天守(多数の窓と狭間がロの渡櫓に向いていて、ロの渡櫓がキルゾーン*1になっているように見える)

ロの渡櫓を過ぎると、次に出会うのは乾小天守(いぬいこてんしゅ)です。

乾小天守は、階段で2階分の高さを上がると最上階。
つまり、東小天守は3階が最上階でしたが、乾小天守は4階が最上階になっています。


▲乾小天守の2階から見たロの渡櫓(左)、東小天守(左奥)、イの渡櫓(中央奥)。右は大天守。


https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/himejijo20220723-3/index.html
▲乾小天守(最上階)で撮影した全天球パノラマ

乾小天守
「いぬいやぐら」が当初の呼び名でした。このことから、3つの小天守はある時期からやぐら(櫓)が小天守に読み替えられるようになったようです。その時期は不明ですが、酒井時代には小天守で通用しています。
 乾小天守は3つの天守の中で平面も高さも最も規模が大きく、西側に大きく張り出した石垣の上に建てられています。張り出し部の出隅とロの渡櫓との接続部の入隅の上に建物を石垣天端際まで建てています。こうしてちょうど天守曲輪・備前丸にアプローチする西側唯一の虎口であるほノ門と、天守入口への最短コースとなる水曲輪に対して横矢が形成され、天守曲輪の西側を扼える役割を果たしています。
外観は、軒唐破風、千鳥破風と三重目の火灯窓が建物を飾り、装飾性の乏しい東小天守とは対照的です。
(出典:現地のパネルから一部を抜粋)

乾小天守を外から見ると西と南に火灯窓があるのですが、上の全天球パノラマをご覧頂いても分かるとおり、室内からはどれが火灯窓なのかほとんど分かりません。


▲乾小天守最上階から見た大天守


https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/himejijo20220723-4/index.html
▲乾小天守(最上階)の窓からの眺めを撮影した全天球パノラマ

乾小天守からハの渡櫓の2階に入り、階段を下ると、大天守の出口の手前(ハの渡櫓の1階)で一般の見学ルートと合流します。

ここで靴を履き、順路に従って進むと備前丸。城主の御殿が建っていた曲輪です。


▲備前丸から見た姫路城

小天守からは、今までに経験したことのない距離、方向から大天守を眺めることができます。

姫路城に何度も通っている方でも経験したことのない角度から姫路城を楽しめるので、特別公開の期間中に姫路城へ行かれる方は、ぜひ特別公開エリアも見学してみてください。


交通アクセス

JRまたは山陽電車の姫路駅から姫路城の大手門まではおよそ1km強で、大手門から入城口まではおよそ300m。

路線バスを使われる場合は、JR姫路駅北口にあるバス停から「姫路城大手門前」を通るバスをご利用ください。様々な路線が「姫路城大手門前」バス停を通りますので、詳細は神姫バスのWebサイトでルート検索をする必要があります。

運賃は¥100。

神姫バスのWebサイトで検索される場合は、「発」を「姫路駅(北口)」、「着」を「姫路城大手門前(西方面)」または「姫路城大手門前(東方面)」に設定してください。

*1:敵兵を効果的に殺傷するための場所のこと。