播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

アルコールストーブで調理ができる:ストームクッカーS(機能編)

「外観編」から続く

▲外観編はこちら

外観編ではストームクッカーの仕様と構成部品を紹介しましたが、この「機能編」では使い方と性能を紹介します。

使い方

組み立て

※日本語版説明書と多国語版説明書では、組み立ての手順が若干異なっています。ここで紹介している手順は、多国語版説明書の手順です。

風上に吸気穴を向けてベース(下段)を地面に置きます。

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▲ベース(下段)を安定した場所に置く

安全な場所で燃料を入れたアルコールストーブを、ベース(下段)にセットします。

重要!
ベース(下段)にセットした状態でアルコールストーブに燃料を入れると、万一こぼれた場合、点火後に危険な状態になります。

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▲燃料を入れたアルコールストーブをベース(下段)の穴にセットする

ベース(下段)のツメが切り欠きに嵌まるよう、ベース(上段)をベース(下段)の上に置きます。

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▲ツメと切り欠きの位置を合わせてベース(上段)を載せる

そうしたらベース(上段)を少し回転させ、ツメが切り欠き以外の場所に来るようにします。これで、2つのベースが連結されました。

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▲ベース(上段)を少し回転させる

マッチや燃焼部が長いライターなどを使ってアルコールストーブに点火します。

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▲ライターでアルコールストーブに点火する様子

ポットを使う場合は、ゴトクが内側に倒れていることを確認した上でベース(上段)の中にポットを置きます。

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▲水を張ったポットをベース(上段)の中にセットした様子

少しでもお湯を早く沸かしたい場合は、フライパンをポットの上に置き、フタ代わりにすると良いでしょう。

メーカーの公式動画では、フライパンは底面を下に向けてポットに置いていますが、それには2つの理由が考えられます。

一つは、フライパンをアルミハンドルで掴みやすいから(フタ代わりのフライパンを取ったり載せたりしやすい。)。

もう一つは、フライパンを少しずらしてポットの縁を露出させることで、フライパンをフタ代わりに置いたままポットをアルミハンドルで持ち上げられるから(ポットの中身をなるべく冷まさずにポットを持ち上げられる。)。

フライパンを上下ひっくり返してフタのように被せると、アルミハンドルでフライパンを持ち上げるのが面倒ですし、ポットを持ち上げようと思うと、まずフライパンを取り除かないといけません。

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▲フライパンをフタ代わりに置いた様子(説明書通り、フライパンは底を下に向けてポットの上に置いてある)

フライパンで調理をする場合は、ゴトクを3本とも外側に広げた上にフライパンを置きます。

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▲ゴトクを外側へ広げた様子

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▲フライパンを使う時の様子(外側へ広げたゴトクの上にフライパンを載せる)

フライパンには、専用の蓋がありません

蒸し焼きのようにしたい場合は、フライパンの上にポットを伏せて置くか*1、アルミ箔を被せると良いでしょう。

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▲ポットを伏せてフライパンに置けば、蒸し焼きができる(実際に山で冷凍餃子を焼いたときの様子)

収納

調理と食事が終わったら、ポットやフライパンの汚れと水分をウェットティッシュやキッチンペーパー等で拭き取ってから収納作業を始めます。

まずはベース(下段)を上下ひっくり返し、その中にベース(上段)を重ねてゴトクを外へ広げます。

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▲ベース(下段)の中にベース(上段)を重ねる

ベース(上段)の中にポットを収納し、ポットの中にアルコールストーブとアルミハンドルを入れてから、ゴトクを内側へ倒します。

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▲ポットを入れてゴトクを内側に入れた様子

最後にフライパンを被せ、ストラップで全体を留めれば収納が完了です。

このとき、ストラップのバックルがストームクッカーの側面に位置するように留めてください。こうすることで、バックルが邪魔になりにくくなります。

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▲フライパンを被せてストラップで留めた様子

メーカーが公式動画で収納の様子を紹介してくれていますので、Youtubeから転載します。

※動画に出てくるのは、この記事で紹介するSサイズより一回り大きいLサイズのストームクッカーです。(動画に出てくる収納袋やケトル、フューエルボトルは、ストームクッカーに付属しません)


www.youtube.com

ポットの中に収納するのは、袋に入れたアルコールストーブとアルミハンドルだけ。
フライパンの内側に、地面に接するベース(下段)の縁が触れそうに見えますが、実際は触れません。

地面に置いて使うような汚れ物をポット内に入れたり、食べ物を入れる部分に接する状態にしなくて済むため、衛生面を気にする方には良いと思います。

使用後のフライパンやポットの拭き残しで他の部材が汚れると困るので、実際に山で使う際は、ポットとフライパンをナイロン袋に入れてから収納しています。

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▲フライパンを透明なナイロン袋に入れて収納した状態(見えませんが、中のポットもナイロン袋に入れてあります。)

性能

気温セ氏約25度の屋外で、500mlの常温の水を沸騰させてみました。

まずはトランギア純正のアルコールストーブ「TR-B25」で沸騰までの時間を計り、続いてエバニューのアルコールストーブ「EBY254」でも同様に沸騰にかかる時間を計測。

f:id:dfm92431:20210717064651j:plain▲水温の変化を測定している様子(フタ*2の隙間から温度計のセンサーを差し込んでいる)

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▲エバニューのEBY254をベース(下段)に置いた様子*3

結果は下のグラフの通りです。
※「×」印は、燃料が燃え尽きたタイミングを示しています。

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▲2種類のアルコールストーブで測定した、500mlの水が沸騰するまでの時間

エバニューのアルコールストーブは高火力だと思っていましたが、ストームクッカーとの組み合わせだと、トランギアの純正品とあまり変わらないようです。

どんな料理に使う?

ポットとフライパンがセットになっているので、ストームクッカー一式を持って行くだけで色んな食事を楽しめます。

といっても、私は料理なんてできないので、下に挙げたようなものだけです。

丼もの

ポットでご飯を炊き、蒸らしている間にフライパンで丼の具を調理できます。

山でご飯を炊くときの量は1合が一般的かも知れませんが、1合だと丼の具を多くしないとバランスが悪いので、私の場合は0.7合にしています。

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▲ご飯を蒸らしている間にフライパンで親子丼の具*4を調理している様子(右奥は、炊きあがったご飯を蒸らすために置いたポットで、ポットに被せてある銀色のカバーは、自作のコジーです。(詳細は「オプション編」で紹介。)

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▲フライパンで調理した具をポット内の炊きたてご飯にかければ、美味しい丼のできあがり

丼ではありませんが、カレーを食べるときも便利。

ポットでご飯を炊き、蒸らしている間にフライパンでレトルトカレーやココイチの冷凍カレーソースを温め、蒸らし終わったご飯にかけて食べれば良いわけです。

レトルトカレーは湯煎で温めるより、中身をフライパンに空けて加熱した方が美味しいような気がします(個人的な感想です)。

ご飯と炒め物のおかず

ポットでご飯を炊き、蒸らしている間にフライパンでおかずの炒め物を作れます。
コンビニに行くと、フライパンで温められそうなおかずが色々と見つかります。

炒飯

ポットでご飯を炊き、ポット内で生卵と和えてからフライパンで炒めると、簡単にパラパラ炒飯が作れます。

1合のご飯を炒めるのは無理がある(フライパンから溢れてこぼれ落ちる)ので、少なめに炊くことをお勧めします*5

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▲カップヌードルチャーハンを調理する様子*6

ラーメン

フライパンで冷凍餃子や冷凍炒飯、ポットでインスタントラーメンを作れば、山の上で豪華なラーメンセットが楽しめます。

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▲冷凍餃子を焼いてからラーメンを作る(順序が逆だとラーメンが伸びる)

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▲できあがったラーメン(チャーシューとゆで卵入り)と餃子

ラーメンのスープが残った場合は、固めて持ち帰れば良いと思います。

きちんと料理ができる方なら、ストームクッカーで手の込んだ料理も作れると思います。

ストームクッカーを使った料理に関しては、個人的にこのYouTubeチャンネルがお勧めです。

自分自身の姿はほとんど写さず、おしゃべりは一切せず、控えめなBGMを背景に調理の様子を淡々と流す動画ですが、投稿者さんのセンスが良いため、見ていて心地よい映像になっています。
(私は、投稿者さん自身が映って間断なく話し続けたり、謎の効果音が入ったりした賑やかな動画は苦手です。)

最後に

アルコールストーブの最大の弱点である“風”を、ストームクッカーを使えば(強風時を除き)無力化できます。むしろ、そよ風なら吸気に利用できるような仕組みになっています。

アルコールストーブの燃焼で生じた熱気をベース(上段)とポットの間に流し、熱を無駄にせずポットを加熱できる構造なので、アルコールストーブの弱い火力でも、500ml程度のお湯なら比較的簡単に沸かせますよ。

「アルコールストーブなんて使い物にならない」と思っていた方には、ぜひ一度試していただきたいです。

ストームクッカーには、大きさと材質(表面処理)の違いにより複数の種類があり、輸入販売元であるイワタニ・プリムス株式会社の公式動画でそれらの違いが紹介されています。
購入を考えておられる場合は、それぞれの特徴を知った上で、最適なものをお選びください。


www.youtube.com

長所

  • 昔ながらの、まるで日本のカマドを思わせるようなデザインが魅力的。
  • 組み立てや片付けが面倒に思えるかも知れませんが、ガソリンストーブのプレヒートなどの準備作業と同じで、ある意味“儀式”のような様式美がたまらない。
  • とにかく、使っていて楽しい(←趣味の道具には大切な要素)。

上の3つは、ある意味カルト的な視点からの長所です。普通の方にとっては長所にならないと思います。

  • ストームクッカー以外の製品では、地面に置いて使う不衛生な部品をクッカー内に収納するものもあるが、ストームクッカーは不衛生な部品をポット内に入れなくて良いため、衛生的。
  • アルコールストーブは燃焼音が静かなので、山の中の静けさを楽しめる。
  • ガスストーブには劣るが、火力は十分。
  • ポット2つとフライパンが付属するので、調理の際は色々と応用が利く。
  • トランギア純正アルコールストーブを使う場合は、弱火にすることも可能(ただし、火力調整用のフタは高温になるため扱いづらく、頻繁な火力調整は難しい)。
  • 燃料用のアルコールは、アウトドアショップの無い地域でも薬局などで簡単に購入できる。

短所

  • かさばる。
  • 重い。
  • 価格が高い(購入直後の状態でバリや塗装の剥がれがあるなど、品質に見合っていないように思います)。
  • 広い設置面積が必要(ベース(下段)の直径以上の広さで、燃えやすい物が周囲に無い、平坦な空間が必要)。
  • 道具を使わず、素手でアルコールストーブに消火/弱火用のフタを被せる作業は危険(火傷のおそれがある)。
  • 純正のアルコールストーブを剥き出しのままポットに収納しておくと、銅とアルミという異なる金属の接触による腐蝕(異種金属接触腐食)が発生する可能性がある(英文の取扱説明書やトランギアのWebサイトでは、アルコールストーブは、商品購入時に入っている黄色いナイロン袋に包む、あるいは類似の袋に入れた上でポットに収納することが推奨されている)。

「オプション編」へ続く

▲「オプション編」はこちら

*1:ポットが熱くなるので、軍手が必要です。

*2:純正の別売品です。

*3:ストームクッカーは純正アルコールストーブおよびその他の純正オプション以外の使用を想定していません。今回は性能比較のため、安全に配慮して実験を行っています。

*4:焼き鳥の缶詰と卵、丼用の調味料を混ぜたもの。

*5:冷凍炒飯が1食分で約250gとされているので、0.7合くらいのご飯に具材を足すと、だいたいそのくらいの重さになると思います。

*6:カップヌードルとご飯を混ぜて作る炒飯です。日清のWebサイトにレシピが掲載されています( https://www.nissin.com/jp/products/recipes/343 )。量が多いと炒めづらいので、私はミニサイズのカップヌードルと、0.5合のご飯を使います。