購入の経緯
YouTube動画を見ていたら、お勧め動画の中にアメリカの政府機関が使用しているボールペンを紹介する動画が出てきました。
いかにもアメリカ製の安っぽい文房具という雰囲気が面白いし、ペン軸に「U.S. GOVERNMENT(合衆国政府)」と書かれているのがかっこいい。
しかも、詳しく調べてみると売り上げの6割が米軍からの調達だと判明。
「普段使いできるミリタリーグッズ」はなかなかありませんから、ミリタリー好きとしては買わずにいられなくなり、ネット通販で1ダース入りの箱を一つ購入してしまいました。

▲Skilcraft U.S. Government Pen(メモ帳はRite in the Rainの「No.935 Top Spiral Notebook」)
概要
Skilcraft U.S. Government Penは、1968年4月からアメリカの連邦政府機関で使用が始まり、それ以降まったく別のボールペンに置き換えられることもなく、また今後も置き替えの予定がないという、アメリカ政府お気に入りのボールペンです(参考:Blake Stilwell. Why the Skilcraft Pen Has Been Used by the Military Since 1968. 2024年1月4日. Military.com)。
このペンは、箱に「Assembled in the USA」、「Components Made in USA」と書かれていることから、最終組み立てだけでなく、使用されている部品もアメリカ製。
連邦政府や米軍が愛用するのは当然かも知れません。
耐久性の高さから、米軍ではベトナム戦争以降の全ての戦争・紛争で使用されているそうです(参考:Jack Moore. It can withstand extreme temperatures. It can write for a mile. Meet the government's favorite pen. 2018年4月23日. WTOP News)。
Skilcraftは全米視覚障害者産業(NIB=National Industries for the Blind)が使用するブランド名で、名前の通り視覚障害のある方々が生産に携わっています。
このボールペンを紹介する2分弱のYouTube動画を見つけたので、転載します。
視覚障害者の方々が働く工場の映像もあります。
仕様

▲Skilcraft U.S. Government Pen(12本入り)のパッケージ
製品名: Skilcraft U.S. Government Pen Fine Point - Black Ink*1
NSN*2: 7520-00-935-7135*3
メーカー: NIB(National Industries for the Blind)(アメリカ)
重量: 約7g(1本あたりの実測値)
材質: プラスチック(軸の黒い部分)、鉄(銀色の部分)、真鍮(カートリッジ)、タングステンカーバイド(ボール)
生産国: アメリカ合衆国
定価: $11.57 USD(1ダース=12本あたり)
購入価格: ¥4,980(税込)
購入先: amazon.co.jp
備考: 今回紹介するのは、黒インクで細字のボールペンです。ペン先の細さは細字が0.5mm、中字が0.7mm。

▲米軍も使用するため、箱にはNSN(軍需品の管理番号)が記載されている(バーコードはNSNではなく下のUPC(Universal Product Code)を示すもの。UPCは日本でいうところのJANコード。)

▲1箱に12本が入っている
外観
安っぽいですが、中央付近の太い銀色の帯と「U.S. GOVERNMENT」の文字のおかげで印象的な外観に仕上がっています。
銀色の部分(ペン先とペン軸の中央付近、クリップ、押しボタン)は磁石がくっつくので、鉄製かな。

▲Skilcraft U.S. Government Pen Fine Point - Black Ink(青インクの製品はペン軸が青色)
クリップには「SKILCRAFT USA」の文字が刻まれています。

▲クリップに打刻された「SKILCRAFT USA」の文字
長さは約13cm(5 1/8インチ)ですが、これは一般的なボールペンと大差ありません。

▲一般的なボールペンとの長さ比較(左からジェットストリーム、クロス、パーカー、Skilcraft)
この長さだと米軍の戦闘服のポケットに全体が収まり、銀色のクリップがポケットの外に飛び出して光を反射する状況(戦場では好ましくない状況)を引き起こさないとのこと。
また海軍の兵士によると、海図上ではペンの長さがおおよそ150海里に相当する(海図の縮尺は200万分の1かな?)ため、大まかに距離を測る際にも使用できたり、女性兵士の爪の長さが軍の規定(指先から1/4インチ=約6mm以内)に収まっているかどうか、ペン先(銀色の部分の長さが約6mm)を使って測れるそうです(参考:Jack Moore 2018)。
ペンはノック式で、ペンのお尻にある銀色のボタンを押し込む度にペン先が出たり引っ込んだりします。

▲ペン先を出した状態(上)と収納した状態(下)の比較
インクは交換式になっており、ペン軸のクリップ側をしっかり握り、ペン先側を反時計回りに回すことで分解が可能。
ペン軸を二分割する際、中央の鉄製の輪が外れるので要注意です。
ただ、ペン軸の引き込み機構に関する部品(ボタンやカム機構)はペン軸内に固定されており、脱落しません。

▲ペン軸を分割してインクカートリッジを取り出した様子
ペンの性能
連邦政府機関や米軍が使用するこのボールペンは、次のような性能が要求されているそうです。
- 氷点下40℃から71℃(華氏-40度~華氏160度)の環境で、長さ1マイル(約1.6km)の線を引き続けられること
- インクはにじむことなく5秒以内で乾くこと
- 書かれた文字は、48時間以内の水没では消えないこと
- 書かれた文字は、2回漂白しても消えないこと
- 制服のポケットに収まるサイズ(長さ13cm)であること
(参考:Jack Moore 2018)
これらの仕様に関する一次情報を知りたいと思ってアメリカのGSA(General Services Administration=一般調達庁)のサイトでこのボールペンの仕様を検索したところ、FedSpecs「A-46321」に今回のボールペンのNSNが含まれているのを発見。
ただし、Document Statusは「Cancelled」になっていて、もう有効ではないようです。
キャンセルされた文書ということですが、文書番号が「A-A-2915A」というのは分かったので検索すると、1996年4月24日付「Commercial Item Description Pen, Ball-Point(Recycled Plastic, Retractable)」と題したPDFファイル(ページ数は5)が見つかりました。
ペンの構造に関しては、インク交換の際に部品の紛失を防ぐためか、引き込み機構の関連部品が脱落しないようにすることが書かれています。
2.5 Retraction Mechanism. The retraction mechanism shall be firmly secured into the cap so that no loose parts fall out when inserting the replaceble ink cartridge.
<当ブログ管理人による意訳>
2.5 引き込み機構 ペン先を出し入れする引き込み機構は、交換式インクカートリッジを挿入する際、部品が脱落しない構造になっていること。(出典:A-A-2915A Commercial Item Description Pen, Ball-Point(Recycled Plastic, Retractable))
ペンの貯蔵寿命(shelf life)に関しても仕様書には記載があります。
2.8 Shelf Life. Pens shall have a minimum shelf life of eighteen (18) months after delivery and shall be capable of withstanding normal usage and handling and pass the performance testing criteria as outlined in section four (4).
<当ブログ管理人による意訳>
2.8 貯蔵寿命 ペンの貯蔵寿命は納品から少なくとも18か月とし、貯蔵期間後に通常利用が可能なだけでなく、セクション4に記載の検査に合格する品質を保つこととする。(出典:A-A-2915A Commercial Item Description Pen, Ball-Point(Recycled Plastic, Retractable))
ペンの外箱には、製造年月日(MFG)に加えてインクの品質検査を行う時期(INSP GEL)が18か月後であることが印刷されていますが、これは上記の仕様に従っているからでしょう。

▲箱には製造年月日とインク、ペン先の検査時期が印字されている
仕様書「A-A-2915A」にはインクが5秒以内に乾くことと、過酷な環境で保管した後に最低でも750mは線が引けることが記載されていますが、それ以外は特に書かれていませんでした。
1960年代に作成された当初の仕様書は16ページあったそうですから、最初はより多くの要求項目が書かれていたのかも知れません(参考:Jack Moore 2018)。
最後に
「U.S. GOVERNMENT」の文字が官給品らしさを醸し出してはいるものの、樹脂製のペン軸と約7gという軽さ、そして安っぽい鉄製部品のおかげで、「これぞアメリカの文房具」という雰囲気をまとっており、それが好きという一部の方には「刺さる」製品かも知れません。

▲1本たったの7g!
チャチな見た目に反し、ボタンを押したときの感触や書き心地の滑らかさは秀逸。
ペン自体が軽く、銀色の部分が鉄でできていることから、磁石にくっつく点も便利。

▲磁石を使えば、冷蔵庫の横などに貼り付けておける(我が家の冷蔵庫側面に磁石を取り付け、そこにボールペンをくっつけた様子)
ミリタリー好きの方や、他の人が持っていないものを使いたい方、アメリカ製品が好きという方なら、満足できる逸品だと思います。