山歩きの時に重要な役割を果たしてくれるハイドレーションシステム。
水が入った袋状の容器をバックパックの中に入れておき、そこから伸びたホースを胸元に固定して、ホースの先端にあるバルブを噛んで水を飲むための道具です。
私のように、日帰りで短時間の山歩きでさえ1日に2リットルも水を飲むような人間にとっては、この上なく便利で山歩きには必要不可欠。
しかし、人によっては「そんなに水は要らない。」という人も多いですし、「水ではなくスポーツドリンクが飲みたい。でも、ハイドレーションシステムに水以外の飲み物を入れると、匂いが染みついたりカビが生えたりするので、手入れが大変。」という問題もあります。
そこで、15年近く前ですがペットボトルやナルゲンボトルをハイドレーションシステム化する「Smartube(スマーチューブ)」なる製品を購入。
スポーツドリンクが入ったペットボトルにホースを直結し、ペットボトルをバックパックに入れておけば、胸元のホースからいつでもスポーツドリンクを飲めるし、手入れをする必要があるのはホースだけというものです。
それが経年劣化と汚れで使えなくなったので買い換えようと思いましたが、Smartubeはもう販売されていません。
代わりに、イスラエルのSOURCE Vagabond Systems Ltd.というメーカーから似たような製品が出ていたので、それを買ってみました。
概要
SOURCE Vagabond Systems Ltd.という長い社名は聞き覚えが無いと思いますが、ブランド名である「SOURCE」というロゴが入ったハイドレーション関連製品は、山歩き好きの方なら見たことがあると思います。
一般的なハイドレーションシステムは、数リットルの水が入る袋状の容器(リザーバ)とホース、飲み口で構成されており、その袋状の容器は、使用後の洗浄や乾燥に手間がかかるという欠点があります。
今回紹介するConvertube(コンバーチューブ)は、ハイドレーションシステムからその欠点をなくすもので、袋状の容器の代わりにペットボトルやナルゲンボトルを使うという構造。
ペットボトルなら使い捨てに出来ますし、ナルゲンボトルは洗浄や乾燥が簡単です。
仕様
▲Convertubeのパッケージ
製品名: Convertube(コンバーチューブ)
メーカー: SOURCE Vagabond Systems Ltd.(イスラエル)
生産国: アメリカ
材質: アダプター・主要部(青):ポリプロピレン、ポリアセタール/パッキン(白):シリコン/バルブ(青):シリコン/ストロー:ポリエチレン/チューブ内側:熱可塑性ポリウレタン/飲み口部・バイトバルブ(青半透明):シリコン/ベース部(オレンジ):ポリアセタール/内部パッキン(黒):ゴム/飲み口カバー(黒):ポリアセタール
購入価格: ¥2,750(税込)
輸入販売元: イワタニ・プリムス株式会社
購入先: amazon.co.jp
アダプターは4種類あり、それぞれ以下の容器に対応します。
・42mm(ラーケン・フツーラ)
・63mm(ナルゲン)
・28mm(ペットボトル)
・24mm(エヴィアン)
外観
パッケージに含まれる内容は、以下の画像の通りです。
▲パッケージ内容
飲み口とは反対側のホースの先には、ペットボトルにぴったり合うアダプターが付いていて、少し硬めの白いパイプが延びています。
▲容器側のホースの端
この白いパイプは、接続する容器の大きさに合わせてある程度自由に伸縮させることが出来ます。
▲白いパイプを引き出した様子
続いて、飲み口側を見てみましょう。
飲み口にはヒモでつながった黒いキャップが被さっており、それを引き抜いてバルブを噛んで吸い込むと、飲料を飲めるようになっています*1。
▲飲み口(キャップを被せた状態)
▲飲み口(キャップを外した状態)
飲み口は、何かの拍子に飲料が漏れ出さないように、水流のON/OFF切り替え機構が備わっています。
操作は単純で、飲み口を90度回転させるというもの。
飲み口の基部と飲み口との間の隙間を見れば、飲料を飲める状態かどうか簡単に判別できます。
ただ、山歩きの最中に汗や土などで汚れた手で飲み口を操作するのはイヤなので、私の場合はこの機能を使っていません(常に水流ON)。
▲水流をOFFにした状態(隙間が無い)
▲水流をONにした状態(隙間がある)
使い方
ペットボトルと組み合わせて使う場合は、まずペットボトルの底まで届くように、白いパイプを引き出します。
▲ペットボトルのサイズに合わせて白いパイプを引き出す
そうしたら、Convertubeのアダプターをペットボトルの口に被せて、ペットボトルを回して締め付けてください。
▲ペットボトルにConvertubeを取り付けた様子
ペットボトル以外の容器を使う場合は、それに対応するアダプターを容器側に取り付け、そこにConvertubeをねじ込みます。
▲ナルゲンボトルと組み合わせる場合は、製品に付属する63mmアダプターをナルゲンボトルに取り付ける。
▲63mmアダプターにConvertubeを取り付けた様子
Convertubeを飲料の容器に取り付けたら、それをバックパックに入れるのですが、外側のサイドポケットに入れるのが良いでしょう。
ここに容器を入れておけば残量の確認が簡単にできますし、万一中身が漏れても被害が小さくて済みます。
▲バックパックのサイドポケットに容器を入れた様子(赤い物体は携帯防虫器)
▲飲み口が胸元に来るようにホースを前に回す(飲み口は別売の純正アクセサリ「マグネットクリップ」で固定している)
私は飲み口を固定するために、専用のマグネットクリップを使っています。
磁石の力で飲み口を任意の場所に固定できて便利。
マグネットクリップの純正品は2,000円近いので、強力な磁石を使って自作しても良いかも知れません。
逆流はしない?
Convertubeは、要するにペットボトルなどの容器から飲料を飲むための長いストローのようなものです。
コップや紙パックの飲料をストローで飲んでいる状況を想像してみてください。
ストローから口を離すと、ストロー内の飲料はコップや紙パックの中へ戻っていきます。
ホースが1m近くあるConvertubeでそれと同じことが起こると、飲む度に飲料を1m動かすだけの力で吸い込むことになり、疲れているときは飲料を飲めなくなってしまいます。
しかし、Convertubeではしっかりとその対策が取られています。
対策は2つ。
一つは、飲み口の構造です。
飲み口は、噛んで変形させないと飲料が通らない構造になっているので、口を離すと飲み口がふさがり、空気がホース内に入りません。
飲料を容器に押し戻す空気が入らないので、飲料はホースの中に残ったままになるのです。
もう一つの対策は、28mmアダプターに備わっている吸気バルブ。
▲吸気バルブ
人がストローから飲料を吸い込めるのは、ご存じの通り容器内の液面が大気圧で押されるから。
ストローをくわえて吸い込むことでストロー内の圧力が大気圧より低くなり、大気圧に押された液体がストロー内を上昇するのです。
つまり、Convertubeが取り付けられた容器に空気が入らないと、いくら吸い込んでも中の飲料は飲めません。
そのために吸気バルブが付いていますが、このバルブは空気を容器の外から中へしか通さない構造。
具体的には、バルブの断面は「V」字型をしており、Vの字の上が容器の外、下が容器の内側になっています。
飲料を吸い込んで容器内の圧力が下がると、吸気バルブ下端の尖った部分が外からの大気圧で押されて広がり、空気が容器内に流れ込むという仕組み。バルブの構造上、その逆方向への空気の流れは生じません。
▲容器側から見た吸気バルブ
▲吸気バルブの構造を示した断面図
ホース内の飲料が容器内に戻るには、ホース内の飲料と同じ体積の空気を容器から押し出さないといけません。
吸気バルブを通る空気の流れは外から中への一方通行になっており、容器内の空気は外へ出られないため、飲料は容器内に戻らないのです。
これら2つの機能により、常にホースの中は飲料で満たされた状態になって、強い力で吸い込まなくても飲料を飲めるという仕組みになっています。
メンテナンス
使用後のConvertubeは、飲み口とホース内を乾燥させる必要があります。
前述の通り、飲み口は変形させないと空気の通り道が出来ないので、そのまま吊っていてもホース内の空気は流れず、なかなか乾燥しません。
そのため、乾燥させる時は飲み口を取り外します。
飲み口は水流のON/OFFを切り替えるために90度回転させられますが、ちょうどその中間地点、45度の角度の時に引っ張ると、飲み口が基部からスポッと外れるようになっています。
▲飲み口を取り外した様子
これでホースの端から端まで空気が流れるようになるので、乾燥させやすくなります。
抜いた飲み口は、初めての時は元に戻すのに苦労するはず。
抜けたときの飲み口の角度をしっかり覚えておき、内側の形状を見て正しく差し込む必要があります。
メーカー公式動画(軍用モデルを使っての説明)がYouTubeにあるので、転載します。
効率的に乾燥させる方法
水槽で使用するエアーポンプのチューブをConvertubeのホース内に通すことで、ホース内に風を送り込んで短時間で乾燥させられます。
この方法を使う場合は飲み口を取り外し、容器側の白いパイプを引き抜いてください。
飲み口を付けたままだと風が通り抜けませんし、白いパイプを抜かないと、エアーポンプのチューブをホース内に差し込めません。
▲水槽に使うポンプでホース内を素早く乾燥させられる
最後に
胸元の飲み口をくわえるだけで、立ち止まることなくいつでも飲料を飲めるハイドレーションシステムは、一度使うと後戻りできなくなるほど便利。
手入れをするのがホースだけというConvertubeは、手入れの大変さからハイドレーションシステムの導入を悩んでいた方にはお勧めです。
*1:SOURCE社のハイドレーションシステムに使われている飲み口の内、Helix Valveと呼ばれるタイプのものです。