播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

姫路市の小富士山(麻生山)南東尾根を歩く

姫路市南東部には山頂に電波塔が建ち並ぶ仁寿山がありますが、その東向かいに聳える仁寿山と同じくらいの小さな山が、今回紹介する小富士山(麻生山)です。

小富士山への登山道で一般的なのは、南側の奥山地区から谷沿いを登るルートと、北側の四郷学院*1方面から登るルートです。

今回は一般的なルートを歩かず、まったく別のルートを歩きました。

2006年に私が小富士山を歩いたとき、仁寿山と小富士山の間にある峠の北側で、北面に「左麻生山行者道」と刻まれた大正時代の道標に出会いました。

北面に「左」と彫られているので、南向きで道標と向き合った際に左になる方向、つまり東に行者道は延びているはず。

地形図では道標付近から東へ、小富士山山頂の華厳寺に続く道が破線で描かれており、それが行者道だと考えました(私の勝手な推測です)。

この行者道が気になっていたのと、小富士山から南東に延びるなだらかな稜線(112m標高点まで地形図では破線が描かれている)を歩かれた方の山行記録に刺激され、行者道と呼ばれる道で小富士山に登り、ほとんど歩く人がいない小富士山南東尾根で下山する予定で出かけました(残念ながら下の地図のGPS軌跡を見てお分かりの通り、小富士山の行者道を歩くことはできませんでした)。

小富士山の南東尾根を歩かれた方の山行記録へのリンクを紹介します。

登山口と下山口が離れているのと、周辺に登山者向けの駐車場がない*2ことから、公共交通機関を利用しました。

f:id:dfm92431:20210327202945j:plain▲今回下山に利用した小富士山南東の尾根

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▲対応する地形図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図「姫路南部」

f:id:dfm92431:20210327203015j:plain▲カシミール3Dで作成したルートの断面図

10:00
JR姫路駅北側にある神姫バス「15番のりば」*3から、23系統(見野循環:みのじゅんかん)の路線バス*4で出発。

10:26
定刻から8分遅れで「四郷学院西(しごうがくいんにし)バス停に到着(地図中「四郷学院西バス停」)。
運賃は大人ひとり¥250です。

f:id:dfm92431:20210327203045j:plain▲四郷学院西バス停

「四郷学院西」バス停からバス道を北西に進み、太い道路が交わる信号の無い三叉路(直進と左折)を左折。

f:id:dfm92431:20210327203147j:plain▲太い道路が交わる三叉路を左折

150mほど西へ進んだところにある三叉路(直進と左折)を左へ入ります。

f:id:dfm92431:20210327203202j:plain▲この分岐を左に入る

右に池を、左に山を見ながら200mほど西へ進むと、道は南へ向きを変えて集合住宅が建ち並ぶ東阿保地区へ入ります。

そのまま道なりに進んでいくと、間もなく道は直角に右へ向きを変えて西向きになります。

f:id:dfm92431:20210327203241j:plain▲東阿保地区の様子(奥に仁寿山が見えている)

道が西に向きを変えてからおよそ160mで、左側に「阿保古墳群(あぼこふんぐん)」と書かれた石碑の立つ未舗装の道に出会います。

ここが今回の登山口。

https://goo.gl/maps/QmNq9Kct4QrRwuK39
▲阿保古墳群の入口

10:37
阿保古墳群の入口に到着(地図中「阿保古墳群入口」)。

f:id:dfm92431:20210327203341j:plain▲阿保古墳群入口の様子

「四郷学院西」バス停から「阿保古墳群」入口までの距離は、およそ850mです。

未舗装の道に入ると、車を何台も駐められそうな広い駐車場に出会いました。
しかし、その駐車場の手前には「私有地のため不法投棄禁止」の旨の看板が立っていたので、山歩きをする人向けの駐車場ではないかも知れません。

駐車場の奥を見ても、小富士山と仁寿山の間を通る峠道には続いていないようです。
「おかしいな」と思って引き返すと、山道の入口を見つけました。

f:id:dfm92431:20210327203419j:plain▲ここから昔の峠道に入る

「姫路古墳ロード」と書かれた立て看板のある小径を上ると、小富士山と仁寿山の間を南北に走る峠道に出ました。

f:id:dfm92431:20210327203436j:plain▲峠道の様子

峠道を南へ進むと、開けた場所に出ます。

古い航空写真を見ると、昭和30年代後半にこの場所の木々が伐採されたようです*5。しかし、その後何かが建てられた様子はありません。謎の広場です。

f:id:dfm92431:20210327203452j:plain▲謎の広場

ここで、2006年に出会った行者道の道標を探しました。
私の記憶では、この広場の南端付近にあったと思ったのですが、いくら探しても見つかりません。

仕方がないので、あきらめて峠から小富士山に登ろうとしたところ、広場から峠道に入ってすぐ、件の道標に出会いました。古い記憶は当てになりませんね。

f:id:dfm92431:20210327203536j:plain▲広場の南端から擬木階段のある道に入る

10:53
行者道の道標に出会いました(地図中「行者道道標」)。

北面に麻生山行者道」と刻まれているので、この道標から東に向けて行者道があるはずです。

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▲行者道を示す道標

しかし、道標のすぐ横を見ても濃密な藪で道は見当たりません。
少し先から行者道が始まっているのかなと思って進むと、左側に道の跡らしきものがありました。

装備を整えて藪に入ってみると、そこは雨水でえぐられてできた溝のような場所。
想像以上に深いので、「この溝の中でヤバイ野生動物に遭遇すると逃げ場がないな」と怖くなったと同時に、「道なら歩きやすい尾根上に付けるだろう」という考えが浮かび、溝の上(道標に近い北側)を探索。しかし、道らしきものは見当たりませんし、イバラがあちこちに生えています。

f:id:dfm92431:20210327203642j:plain▲藪なので分かりにくいが、中央に行者道跡に見えた溝のようなものが写っている

というわけで、行者道を歩くという目的はすぐに諦めました。
安全な山歩きのためには、あきらめの良さも大事(←単に根性がないだけです)。

で、素直に峠道を南下しました。

峠道もえぐれたように深くなった場所があります。
行者道も、序盤はこんな道だったのかも知れません。そもそも先ほどの溝が行者道だったのかどうかもはっきりしませんが。

f:id:dfm92431:20210327203712j:plain▲峠道の様子

道の両側が竹林になると、峠は間近です。

峠は、南北方向の峠道と、小富士山と仁寿山をつなぐ東西方向の登山道が交わる交差点。
小富士山に登るため、この交差点を左(東)へ。

11:09
すると、二股の分岐に出会いました(地図中「巡視路分岐」)。
左は宮西線2番、3番鉄塔を通る送電線巡視路、右は小富士山から南西に延びる尾根を直登する登山道です。

まだ未練のある行者道を調べるため、ここは巡視路に入りました。
巡視路は、行者道を横切る形で付けられているからです。

f:id:dfm92431:20210327203754j:plain▲巡視路と直登ルートの分岐は、巡視路の方に入った

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▲送電線巡視路の様子(奥に写っているのは宮西線2番鉄塔)

11:11
宮西線2番鉄塔を通過(地図中「宮西線2番鉄塔」)。

宮西線3番鉄塔の手前で、登山道に丸太が埋まっている場所があります。
そこで両側を見ると、かつては道があったように見えるではありませんか!これが行者道跡かも。

この丸太は、溝のようにえぐれた行者道を跨ぐように道を付けるために設置された橋かな。
興味のある方は、現地で確認してみてください。
ただ、藪は濃密そう。「さっさとあきらめて良かった」と胸をなで下ろしました。

11:19
宮西線3番鉄塔下で道は向きを変えます(地図中「宮西線3番鉄塔」)。

f:id:dfm92431:20210327203918j:plain▲宮西線3番鉄塔下で道は右へ曲がる

その先ですぐ二股の分岐(直進と左折)に出会います。
左は旧四郷中学校方面へ下りてしまうので、直進してください(道標があります)。

11:23
11:09の分岐で分かれた直登ルートと合流しました。

ここからは、岩盤が露出した急斜面を登ればすぐに小富士山山頂です。

途中でシダの多い道と少ない道に分かれる分岐がありますが、シダの多い方に行けば華厳寺前、シダの少ない方に進めば山頂南側の広場に出ます。

今回は歩きやすそうなシダの少ない道に進みました(シダの多い道は行者道跡の可能性があります)。

f:id:dfm92431:20210327203946j:plain▲小富士山山頂直前の様子

11:27
小富士山山頂南側の広場に到着。

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▲小富士山山頂南側の様子

小富士山山頂の様子がよくわかる画像を過去に撮影したので、それを流用してここに掲載します。

f:id:dfm92431:20210327204018j:plain▲ドローンで撮影した小富士山山頂の様子。右奥に華厳寺。(撮影日:2017年5月21日)

https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/kofujiyama20120923/virtualtour.html
▲小富士山山頂南側で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2012年9月23日)

まずは華厳寺で手を合わせてから昼食を楽しみました。

f:id:dfm92431:20210327204220j:plain▲華厳寺

本日の昼食は、マジックパスタ「ペペロンチーノ」。
お湯を入れて3分でできあがる便利で美味しいパスタです。

今日は公共交通機関を利用するので、荷物をコンパクトにまとめる必要がありました。
そのため、パノラマ撮影機材もドローンも持ってきていません。

いつものように山頂で遊べませんが、南側の大展望を楽しみながらのんびりと贅沢なひとときを味わうことができました。

12:21
華厳寺で下山の挨拶をしてから、下山開始。

本日の目的である南東尾根を下るには、旧四郷小学校方面への道に入る必要があります。
そこで、華厳寺前から東へ下ってすぐの丁字路を左(北)へ。

f:id:dfm92431:20210327204320j:plain▲華厳寺前から東へ下り(矢印の場所に道がある)、突き当たりを左折する

北へ延びる道も一般的なルートなので歩く人が多く、歩きやすい良い道です。

f:id:dfm92431:20210327204334j:plain▲北へ延びる道の様子

12:26
二股の分岐に出会いました(地図中「小中分岐」)。
直進すると旧四郷中学校方面、右は旧四郷小学校方面です。

南東尾根を歩くには、ここを小学校方面に入ります(小さな道標があります)。

12:27
東屋に出会いました(地図中「東屋」)。

f:id:dfm92431:20210327204359j:plain▲東屋

東屋まで東向きだった道は、ここで南に向きを変えます。

12:29
旧四郷小へ下る道と、南東尾根へ向かう道の分岐に出会いました(地図中「南東尾根分岐」)。
左が小学校方面(地形図破線道)で、右が南東尾根です(道標はありません)。

f:id:dfm92431:20210327204420j:plain▲下山路分岐の様子

「南東尾根分岐」から南は、歩く人の少ない山道。
しかし藪ではなく、しっかりとした道が付いています。

歩きやすい遊歩道も良いですが、自然林の中の小径も良い(個人的な考えです)。

f:id:dfm92431:20210327204458j:plain▲旧四郷小へ下る道と分かれて南東尾根へ延びる道の様子

12:35
息を切らしながら自然林の中の山道を登り、140+m小ピークを通過(地図中「140+m小ピーク」)。
展望はありません。

12:39
南東尾根に立つ紅白鉄塔、「姫一火力線20番鉄塔」の真下を通過(地図中「姫一火力線20番鉄塔」)。

この姫一火力線20番鉄塔は、ヘリコプターで送電線を巡視する際に鉄塔の番号が分かるように、頂部に「20」と書かれたプレートが付いています(小富士山山頂から双眼鏡などで確認できます)。

f:id:dfm92431:20210327204554j:plain▲姫一火力線20番鉄塔

f:id:dfm92431:20210327204611j:plain▲姫一火力線20番鉄塔の下の様子(奥は姫路火力東線16番鉄塔)

12:42
姫路火力東線16番鉄塔の下を通過(地図中「姫路火力東線16番鉄塔」)。

12:45
姫路火力東線16番鉄塔から少し南へ進んだところで、送電線巡視路が南東へ下っていく分岐に出会いました(地図中「南東巡視路分岐」)。

ここは巡視路に入らず、巡視路から右に分かれる小径に入って尾根の南端を目指します(道標はありません)。

f:id:dfm92431:20210327204640j:plain▲巡視路が左(南東)へ下っていく分岐の様子

巡視路はここまでなので、この先はまた普通の山道に戻ります。

巡視路に比べると道幅は狭くなりますが、十分に歩きやすい良い小径です。
まったく藪ではありません。

道は直線になっておらず、なぜかぐねぐねと曲がっているのが面白い。

12:52
新しい真っ赤なマーキングテープに出会って直ぐ、112m標高点に到着。

テレビ受信用の八木アンテナが1本、仁寿山の方に向けて立てられていました*6

f:id:dfm92431:20210327204725j:plain▲112m標高点の様子(中央奥の赤テープは、八木アンテナの先端に付けられたもの)

112m標高点からは南西の尾根に道が付けられており、これもまた明確で歩きやすい。
展望も良いし、なぜこんなに良い道が知られていないのか不思議でしたが、この後すぐにその理由が分かりました。

f:id:dfm92431:20210327204746j:plain▲112m標高点から南西に下る道の様子

最後は住吉神社に向けて下ることになり、道は神社に向けて南東へ向きを変えます。

その南東向きの斜面が強烈。
急角度な上に、岩の上に砂利が広がっていて滑りやすさ抜群なのです。

このルートが広まらない原因はこれかも。

私は一度足を滑らせて尻餅をついたのですが、そのままズズズッとシリセードのように斜面を滑り下りてしまうほど。

f:id:dfm92431:20210327204812j:plain▲南東向きの砂利の斜面(ここはまだ写真を撮れるほど余裕があった)

滑りやすかった砂利の道は、住吉神社が近づくと自然林の中の土の道に変わります。
斜度は相変わらず急なものの、滑らないので気が楽です。

f:id:dfm92431:20210327204831j:plain▲自然林に入れば、住吉神社は近い

13:07
谷留めの石積みを2つほど見たら、住吉神社に到着です(地図中「住吉神社」)。

f:id:dfm92431:20210327204850j:plain▲住吉神社

f:id:dfm92431:20210327204903j:plain▲継住吉神社由緒

継住吉神社由緒

 当社の鎮座地は、継集落北方にある船橋山の南面中腹に位置する小祠です。
 麻生八幡社に伝わる縁起には「巽に住吉、西に大年の社あり」とあり、もとは八幡社の飛地末社であったことがわかります。
 明治七年二月に無格社として公認され、以降は独立社となりました。
 石灯篭には、「天明三癸卯年」と刻まれ、この社名が残っているところからみると、かなり古くから祀られていると思われます。
 棟札より元治紀元に鞘神殿、祝詞殿、拝殿が上棟されたことがわかっています。
 その後老朽化のため修理を繰り返すも傷みがはげしくなったため、平成二十三年に鞘神殿、祝詞殿、拝殿を改築しました。
 現在、当社は継地区全域の鎮守の神社となっています。
(出典:住吉神社境内の石碑)

住吉神社から竹林の間の道を下ると、ラブホテルの裏に出ました。

f:id:dfm92431:20210327204919j:plain▲ラブホテルの裏に出たら、矢印の方向へ進んで側道へ向かう

f:id:dfm92431:20210327204936j:plain▲ここから側道に出る

下山地点のすぐ東に姫路バイパスと国道312号線が交わる「姫路東ランプ」交差点がありますが、この交差点には横断歩道や歩行者用の信号機はありません。

ちょっと危ないので、下山地点から側道を西へ進み、姫路バイパスをくぐる小さなトンネルを通って姫路バイパスの南側へ出ました。

f:id:dfm92431:20210327205000j:plain▲姫路バイパスをくぐるトンネル

トンネルをくぐって姫路バイパスの南に出たら東へ進み、県道551号線を南へ。
県道は、道の東側を歩いてください。

県道551号線には、山陽電車の線路をまたぐ陸橋があります。
陸橋の手前で左(東)へ分岐する道に入り、山陽電車の線路に突き当たったら左折。

f:id:dfm92431:20210327205017j:plain▲陸橋を渡らずその左(東)の道へ入る

f:id:dfm92431:20210327205033j:plain▲山陽電車の線路に突き当たったら左折し、東へ進む

八家川を渡ってすぐのところに山陽電車の八家駅があります。
下山地点から八家駅までは2.3kmほどの道のり。

13:44
山陽電車の八家駅(やかえき)に到着(地図中「八家駅」)。

13:54
山陽姫路行の普通列車が八家駅を出発。

14:08
山陽姫路駅に到着。運賃は¥300。

 

行者道は想像以上に藪化しているようですが、小富士山南東尾根はしっかりした道がついています。

南東尾根をルートに組み込むことで、小富士山をより楽しめるようになると思います。

ただし、南東尾根は道標などがありません。滑りやすい急斜面もあります
整備された山しか歩かない方には、お勧めしません。


交通アクセス

小富士山周辺は、登山者向けの正式な駐車場はありません。

路線バスは本数が少ないですが、登山時には活用できます。下山後の移動に路線バスは不適(本数が少ないため、タイミングが合わなければ待ち時間が長くなる。バスを待っている間に、歩いて鉄道駅まで行ける。)なので、帰りは鉄道を使うことをお勧めします。

*1:旧四郷小学校と旧四郷中学校を併合した義務教育学校。義務教育学校は、小学校と中学校の合計9年間の義務教育を一貫して行う教育施設。

*2:周辺には車を駐められるスペースがありますが、無断で駐車するとトラブルになる可能性があります(車の移動を呼びかける町内放送を奥山地区で実際に聞いたことがあります)ので、マナーや地元の方に配慮してください。

*3:姫路駅のバスターミナル中央の「島」になっている場所にあります。地下通路または歩道橋でその「島」に入ってください。

*4:姫路駅を出発後、京口方面に向かい、そこから南下するルートを通ります。

*5:昭和39年の航空写真ではこの広場が確認できますが、昭和36年の航空写真では確認できません。

*6:仁寿山の山頂に立っているアンテナの中に、NHKと民放のテレビ中継局が含まれています。