播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

鶉野飛行場が受けた空襲 Part 1(1945年3月19日)

かつて兵庫県加西市には、姫路海軍航空隊鶉野飛行場がありました。
ここは太平洋戦争中、複数回にわたってアメリカ軍空母艦載機による空襲を受けています。

その空襲の記録は、アメリカ軍側には戦闘報告書として残されており、インターネット検索で報告書を5種類見つけることができました*1

この記事では、1945年3月19日に鶉野飛行場(姫路海軍航空隊鶉野飛行場)が受けた攻撃を、米軍側の報告書で見てみることにします。

米軍の戦闘報告書を読むのに必要な予備知識を別の記事で紹介していますので、まだの方はまずそちらの記事からお読みください。

参考にした戦闘報告書は「Aircraft Action Report No. 9 1945/03/19 : Report No. 2-d(33): USS Hancock, USSBS Index Section 7」です。

この記事の内容は、基本的に報告書の内容を当ブログ管理人がおおざっぱに翻訳したものです。

以下の点にご注意下さい。

  • この記事のレイアウトは、米軍の報告書の様式を再現しています。
  • 判読できない文字は文脈から推測し、推測できないほど文字がかすれていれば、文章そのものを省略している場合があります。
  • 報告書の記載内容にそもそも誤りがある可能性もありますが、当ブログ管理人では判断が付かないので、そのまま訳しています。
  • 記載されている時刻は協定世界時ではなく現地時間、つまり日本時間です。
  • アメリカ軍の文書なので、単位が日本と異なっています。1マイルは約1.6km、1フィートは0.3mです。マイルは1.5倍すればおおよそのキロメートルの数値に、フィートは3で割ればおおよそのメートルの数値になります。

f:id:dfm92431:20200901093557j:plain▲1945年3月19日の作戦に関する戦闘報告書の冒頭部分

https://goo.gl/maps/sQh77ybF6rDkMHyA9
▲空母ハンコックの位置(北緯32度20分 東経134度18分)

1.概要

(a)報告部隊 VBF-6 (b)配備基地 空母ハンコック (c)報告書#9
(d)離陸時刻 1945年3月19日 時刻 11:15
 緯度 北緯32度20分 経度 東経134度18分
(e)任務 戦闘機掃討 (f)帰投時刻 14:27

参考資料

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▲空母ハンコック (CV-19)
出典:U.S. Navy - U.S. Navy photo [1] from the USS Hancock (CV-19) 1944-1946 cruise book available at Navysite.de, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=76099172による

2.報告対象の航空機

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参考資料

f:id:dfm92431:20200911225405j:plain▲アメリカ海軍のF4U-1Dコルセア (1945年)(主翼下にロケット弾を搭載している)*2
出典:USN - U.S. Navy Naval Aviation News 15 April 1945, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3696001による

3.作戦に参加した他部隊の航空機

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4.発見または交戦した敵航空機(2.に記載した機体によるものに限る)

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(h)発見した敵機の行動理由(推測)   
(i)雲の中で会敵したか?    その場合は雲の状態を記載。   
(j)雲の中での会敵時刻と太陽または月の明るさ    (k)視程   

5.空中で撃破した敵航空機(2.に記載した機体によるものに限る)

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6.戦闘中または作戦行動中の味方の損失または損害(2.に記載した機体に限る)

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7.犠牲者(2.に記載した機体の搭乗員に限る)

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8.帰還した機体の飛行距離、燃料、弾薬に関する情報

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(当ブログ管理人による注釈)コルセアの燃料タンクは3つあり、主燃料タンクは容量230ガロン(1,046リットル)、左右の主燃料タンクがそれぞれ57ガロン(259リットル)で小計114ガロン(518リットル)なので、燃料搭載量は合計344ガロン(1,564リットル)です。

容量が160ガロン(727リットル)の増槽タンクを胴体下に装備すると、合計で504ガロン(2,291リットル)の燃料を搭載可能です。

コルセアの燃料消費量は、巡航時で1時間当たり45ガロン(182リットル)~100ガロン(455リットル)、最大出力で毎時275ガロン(1,250リットル)です。

これらの情報は、米軍のパイロット教育用動画*3で説明されているので、信頼性が高いと思います。

米軍の戦闘報告書では燃料の単位が記載されていませんが、機体内と増槽タンクを合わせると500ガロン以上搭載できるので、単位はガロンと思われます。

9.敵の対空砲火(該当する行にチェック)

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10.自軍および敵軍の戦力比較

比較対象なし
*伊丹と姫路では攻撃前に中頻度の対空砲火。徳島では攻撃中および撤退時に中頻度の対空砲火。

11.敵艦艇または地上目標への攻撃(2.に記載した機体によるものに限る)

(a)攻撃目標および位置 伊丹航空基地
(b)目標到達時刻     (c)目標上空の雲の状態 高度13,000フィートに層雲 雲量10/10
(d)目標の見え方 煙っていた・霞んでいた (e)視程 5~8マイル
(f)ロケット弾/爆弾投下方法     使用した爆撃照準器     
 1行程あたりのロケット弾/爆弾投下数     投下間隔     
 投下高度    
(g)地上の敵航空機に与えた損害: 破壊 35 破壊(不確実)  損傷 20

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(o)結果        
(p)写真撮影の有無 無し

12.戦術および作戦情報

 掃討作戦部隊は紀淡海峡からおよそ80マイルの位置にある空母ハンコックを11時15分に発艦。部隊はVBF-6(第6戦闘爆撃飛行隊)所属の16名のパイロットと、空母フランクリンが行動不能になった際に空母ハンコックへ着艦したVBF-5(第5戦闘爆撃飛行隊)のパイロット6名で編成された。部隊は合衆国海軍予備役のL.M. Bigblow少佐が指揮。発艦後、部隊は15,000フィートの雲底のすぐ下、高度14,000フィートへ上昇。対空砲火を受けることなく、紀伊水道に沿って北上した。神戸の南西付近の海岸線まで到達すると、大口径の対空砲火(頻度は中~高)を受けた。そこから伊丹へは、高度15,000フィートを北東へ進んだ。攻撃後の撤退ルートは西。格納庫及びその他の施設にロケット弾および機銃掃射による攻撃を加えた。結果は良好で、格納庫周辺で複数の火の手が上がった。
 部隊は社(やしろ)*4と三木の航空基地*5を見ながら北西へ向かい、姫路航空基地*6を攻撃した。そこには75~100機ほどの航空機があった(航空機を保管するための基地に見えた)。これらの航空機に機銃掃射を実施したところ、格納庫近くの6機が炎上した。15機が破壊され、15機に損傷を与えたと見積もられる。合流地点は姫路航空基地の5マイル西方で、そこから部隊は南へ向かった。播磨灘では、小型の輸送船を機銃掃射した。往路で気になった格好の攻撃目標である徳島基地*7を攻撃するべく、四国の東岸を南下。
 高度9,000フィートから、北西から南東向きに徳島基地を機銃掃射。この基地にも75~100機ほどの航空機があった。この攻撃で破壊した航空機は20機で、損傷を与えたのは5機と見積もられる。2つの小隊が対空砲の囮になっている間に、別の2つの小隊が浅い角度で機銃掃射を行った。他の航空機は上空援護にあたった。部隊は南東で合流し、空母へ戻った。
 伊丹の上空は、3月17日の神戸大空襲による煙に覆われていた。

13.資料

空白


報告書作成者

C.I. DRAYTON, Jr.大尉
アメリカ合衆国海軍予備役 航空戦闘情報局(ACIO)

報告書承認者

R.W. SCHUMANN, Jr.少佐
アメリカ合衆国海軍 指揮官(C.O.)

*1:鶉野飛行場を対象とした作戦が、少なくとも5回は実施されたことになります。1回は1945年3月19日、残り4回は1945年7月30日に実施されています。

*2:鶉野を攻撃したのはグッドイヤー・エアクラフト社製のコルセアで、それにはFGの制式名称が与えられていました。F4Uは、チャンス・ボート社製のコルセアに付けられた制式名称。ハイフン以降の文字列は、バリエーションを示すものです。

*3:https://youtu.be/R4aPk4fledU 全編英語音声。自動生成の英語字幕がありますが、音声認識に誤りがあるため音声を聞き取る必要があります。

*4:海軍社飛行場。兵庫県加東市。

*5:陸軍三木飛行場。兵庫県三木市。

*6:海軍鶉野飛行場。兵庫県加西市。

*7:徳島海軍航空基地。現在の徳島飛行場。