播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

業務用のストップウォッチ:サウンドプロデューサー

山歩きが趣味で、山の上で景色を楽しみながら食事をするのが私の山歩きの目的になっています。

しかし私は料理がまったくできないので、山の上で食べるのはインスタント食品ばかり。

そんなインスタント食品が美味しく出来上がるかどうかは、パッケージに書かれた作り方通りに調理するかどうかにかかっています。

特に重要なのは、「時間」

そこで、冷凍食品を炒めたり茹でたり、フリーズドライ食品にお湯を注いでから待ったりする時間を計るのに、スマホのストップウォッチアプリを使っていました。

タイマー機能だと事前に時間をセットするのが面倒なので、ストップウォッチ機能で調理時間を計ることにしています。

ところが、スマホはストップウォッチとして使いにくい

そもそも屋外だと画面が見づらいし、ボタンを押そうと思ったらロック画面になっていてボタンがタップできなかったり、タップしたつもりが、押した場所がずれていて計測が開始していなかったり…。

これらの問題点は、ちゃんとしたストップウォッチを使えば全て解決します。

シンプルなモノクロ液晶は屋外でも見やすいし、START/STOPボタンはいつでも押せるし、物理的な感触があるので、押し損ねることなんてありません。

というわけで、「ストップウォッチを買うぞ!」と思い立ちました。

ストップウォッチは100円ショップでも手に入りますが、「どうせ買うなら、業務用の高機能な製品で、他に誰も持っていないようなものにしよう。」と意味不明な要求仕様を自分に課して、検索エンジンでいろいろと検索。

その結果見つけたのが、今回紹介する「サウンドプロデューサー」です。

概要

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▲サウンドプロデューサー(標準付属のネックストラップを取り外し、別のヒモをリストストラップとして装着しています)

サウンドプロデューサーは、その名の通りラジオやテレビ、映画、演劇といった分野の業界で使用される業務用のストップウォッチ。

撮影や録音、上演に必要な機能を備えるだけでなく、それらの現場で邪魔にならないような工夫も施されています。

詳しくは続きをお読みください。

仕様

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▲サウンドプロデューサー

製品名: サウンドプロデューサー(SVAX001)
メーカー: セイコーウオッチ株式会社(東京都)
サイズ: 高さ116mm×幅58mm×厚さ26mm
水晶振動数: 32,768Hz
時間精度: 常温において±0.0006%以内、月差換算±15秒以内
作動温度範囲: -10度C~+60度C(ただし、表示機能:0度C~+50度C)
表示体: FE(電界効果)型ネマチック液晶
使用電池: CR2032×1個
電池寿命: 約3年
電子回路: C-MOS-LSI×1個
防水性: なし
生産国: 日本
定価: ¥15,400(税込)
購入価格: ¥9,790(税込)
購入先: ヨドバシカメラ

外観

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▲サウンドプロデューサーの外観

ストップウォッチなのにテンキーを備えており、液晶画面の上にはモード切替用のロータリースイッチ(説明書では「表示切替スイッチ」)が付いています。

今時は何でもかんでもタッチパネルですが、やっぱりこういった物理スイッチが最強です。

タッチパネルは画面を注視し、ボタンが表示されている位置に指を正確に当てる必要がありますから、利用者の負担が大きい。

手袋をはめていたり、濡れた手では操作できない(あるいは感度が落ちたり誤動作する)のも、タッチパネルの致命的な欠点です。

このサウンドプロデューサーは全ての操作を物理ボタン/スイッチで行うため、軍手をはめていても難なく使えます。

さすがは業務用の機材。

裏面はシンプルで、電池交換用のフタすらありません。
裏蓋全体を外して電池を交換する構造になっているのです。

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▲サウンドプロデューサーの裏面(中央の長方形の凹みは、サウンドプロデューサーの管理部署や使用者の氏名などを印刷したテプラを貼るためのもの。)

機能

サウンドプロデューサーには「計算機(CALC.)」「タイマー(TIMER)」「ストップウォッチ(STOP-W.)」「時計(TIME)」の4つの表示モードがあり、表示切替スイッチで各モードを切り換えるようになっています。

計算機(CALC.)モード

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▲計算機モードの初期画面

60進数の計算ができるモードで、時間の足し算・引き算に使います。

例えば「10分20秒-2分50秒」の計算をするとします。

まずはテンキーで「1」「0」「分」「2」「0」「秒」と入力します。

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▲10分20秒と入力した時の画面

次に「-」のキーを押し、続いて「2」「分」「5」「0」「秒」と入力します。

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▲2分50秒と入力した時の画面

最後に「=」のキーを押すと、計算結果が表示されます。

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▲計算結果が「7分30秒」と表示された

この計算結果は自動的にメモリーに保存され(メモリーに保存できる計算結果は一つだけ)、他のモードで呼び出して使えます

タイマーやストップウォッチが動作している間でも、このモードに切り換えれば計算ができる(計測はバックグラウンドで続く)のも便利なところ。

タイマー(TIMER)モード

テンキーで時間を設定し、START/STOPボタンを押すとカウントダウンが始まります。

タイマーの開始前にテンキーの「Call」キーを押すと、計算機モードで計算した結果が読み込まれて表示されます。

計算機モードで計算した結果を暗記して設定する必要がないのです。

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▲「Call」キーを押すと計算機モードの時に計算した結果である「7分30秒」という値が自動的に設定された

このタイマーモードは、私達一般人が想像するタイマーと異なる動きをします。

一般的なタイマーは、残りが0秒になると音が鳴ったりしてそれを知らせてくれますが、サウンドプロデューサーは違います。

なんと、「0」を過ぎると負の値で時間が進んでいくのです。

撮影や録音の現場で「ピピピ」なんて音が鳴ると、撮影/録音した内容が台無しになってしまいますし、シーンの長さが設定した時間を過ぎてしまった場合、他のシーンでどのくらいの時間を節約すれば良いか判断する必要があるので、決められていた時間をどのくらい過ぎたかが分かるようになっているのです。

そんなわけで、サウンドプロデューサーはラーメンタイマーなどとして日常生活で使うのが難しい。

私の場合は、そもそもストップウォッチ機能で時間を計っているので、合図がなくても問題ありません。

タイマーには、他にも面白い機能が備わっています。
それは、経過時間の表示。

タイマーが進んでいる間に「経過時間表示」キーを押すと、タイマーを開始してからの経過時間が表示されるのです。

経過時間が表示されるのは、「経過時間表示」キーを押している間だけなので、液晶表示の内容が残り時間なのか経過時間なのかを間違える心配もありません。

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▲「経過時間表示」キー

タイマーの動作中に他のモードに切り換えてもカウントダウンは止まらず、バックグラウンドで動き続けます。

ストップウォッチ(STOP-W.)モード

私達が想像するとおりの動きをするストップウォッチの機能です。
ただし、測定できる最小単位は「1秒」

面白いのは、ストップウォッチで計測を開始する時間を任意の値に設定できる点。

通常のストップウォッチは0時間0分0秒から計測を開始しますが、例えばテンキーで2分50秒と入力し、そこをスタートとして計測を開始できるのです。

タイマーと同じで、計算機モードで計算した結果を「Call」キーで呼び出し、そこからスタートすることもできます。

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▲計算機モードで計算した結果を呼び出し、そこから計測を開始することもできる

ストップウォッチの動作中に他のモードに切り換えても計測は止まらず、バックグラウンドで動き続けます。

時計(TIME)モード

時間を表示するモードです。
年月日や曜日は表示できません。表示できるのは時刻のみ

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▲時計モードの画面

このモードにも業務用らしい機能があるのですが、それは秒合わせを簡単に行えるというもの。

時計モードの時に「SPLIT/RESET」ボタンを押して「秒合わせ」状態にし、時報に合わせて「START/STOP」ボタンを押すと、時計の秒が「0秒」になるのです。

これが使えるのは時刻のズレが30秒以内の時。

秒が1~29秒の時に上記の操作を行うと、分はそのままで秒が0になり、30~59秒の時に行えば、分が繰り上がって秒が0になります。

サウンドプロデューサーの特徴

  • サウンドプロデューサーを必要とする方が携わっている業界では、基本的に1秒未満の計測が不要なので、計測は1秒単位です。
  • 普通の電卓ではできない60進数の計算(時間の計算)ができます。
  • ストップウォッチで計測しつつ、タイマーを使う(あるいはその逆をする)ことができます(モードを切り換えても計測は止まりません)。
  • 計測(または計算)できる時間は99時間59分59秒までです。
  • 撮影や録音、上演の現場で使用する業務用機器ですから、余計な音や光を出しません。*1
  • タイマーやストップウォッチの使用中、見間違いを防ぐために時計の表示/非表示を切り換えることができます。

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▲時計の表示/非表示を切り替えるための「時刻表示」キー

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▲ストップウォッチモードで時刻を非表示にした様子

  • 液晶画面は、スマホと違って炎天下でもはっきり見えます。ただし、炎天下に放置して高温になると、液晶画面が真っ黒になってしまいます。冷めると正しい表示に戻ります。

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▲6月のある日の昼頃、快晴の陽差しが直撃している時の液晶画面。まったく問題なく読み取れる。

サウンドプロデューサーには専用のケースも付属しています。
しかし、このケースを使用する状況が思いつきません。長期保管用かな?

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▲専用ケース(標準で付属する)

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▲専用ケースを開いた状態

最後に

放送業界などでの利用を想定した製品であるため1秒未満を測定できないですし、タイマーで設定した時間を過ぎても合図が出ないなど、普通にストップウォッチやタイマーを必要としている人にとっては、ハッキリ言って不便です。

しかし、仕事でプレゼンや発表をする時にこれを手元に用意しておくと時間配分を調整しやすいと思いますし、これらの機能を知って「これは使えそう」と思われた方もいらっしゃることでしょう。

計算機モードは、山歩きをする方にも役立ちます。

登山マップ等に書かれている所要時間を足していき、ルート全体の所要時間を計算したり、私の山行記録のように要所の通過時刻だけが書かれた山行記録から、所要時間を簡単に計算できます。

例えば山頂到着が11:32で、出発した時刻が08:58といった場合に「11時間32分00秒-8時間58分00秒」という計算をするわけです。

スマホ用のアプリでも時間が計算できるものはありますが、私は山歩きの際は基本的にスマホを使わない*2ので、専用のハードウェアがあると助かります。

高かったですが、私は充分に満足しています(と自分に言い聞かせています)。

*1:ボタンを操作したときの確認音も出ませんし、タイマーのカウントダウンが0になったときの通知音も鳴りません。また、暗い場所で表示を見やすくするためのバックライトもありません。

*2:耐久性が低いとか、画面が見づらいとか、夏場は汗で濡れた/冬場は手袋をはめた手ではタッチパネルが操作しづらいなど、スマホはアウトドアに全く向いていないと個人的に思っています。