アメリカ軍の官給品の水筒は、水筒本体、クッカー、固形燃料ストーブを重ねてコンパクトに収納でき、専用のポーチに入れればバックパックなどに取り付けて簡単に携帯できる製品です。
この米軍の水筒は便利そうに思えますが、水筒は不透明で中が見えないし、変な匂いがするし、クッカーには蓋がないのでお湯を沸かすのに時間がかかるし、容量が微妙に少なくて袋入りのインスタントラーメンを調理すると溢れそうになるし、固形燃料ストーブはただの筒だし(天面がないので、クッカーを乗せづらい)、山歩きで使うには厳しいものです。
過去に詳しく紹介したことがあるので、お時間があればご覧ください。
私の場合、それらの問題を解決するため、水筒本体はナルゲンボトルと同じメーカーが作った米軍の水筒の互換品(透明だし、匂いがない)に交換し、収納に使うポーチは容量が大きくなり使いやすくなった米軍の新しいタイプのものに変更しました。
さらに、使い勝手が良いとは言えない官給品のクッカーと固形燃料ストーブを、優れた民生品に置き換えました。(「そこまでして使わなくても…」と言われそうですが、米軍の水筒のデザインや設計思想が好きなんです。)
それが、今回紹介するキャンティーンクッカーキット*1です。
外観の説明から実際の性能まで一つの記事にすれば長くなりすぎるので、前編と後編に分けることにしました。
前編では主に外観を、後編で実際の湯沸かし性能を紹介します。
仕様
▲キャンティーンクッカーキットのパッケージ(現行の製品とはデザインが異なります)
商品名: キャンティーンクッカーキット コーティング
メーカー: ブッシュクラフト株式会社(神奈川県)
重量: 約230g(カップ)、約105g(ストーブ)、約70g(リッド)(いずれもカタログ値)
材質: SUS304ステンレス(内面フッ素樹脂コーティング)
定価: ¥5,000(税抜)
購入先: ブッシュクラフト.JPオンラインショップ
備考: 上記仕様は現行製品のものです。この記事の画像に写っているのは、価格が税込¥7,884だった初期の製品です。現行品と全く同じかどうかは分かりません。
パッケージ内容
パッケージには以下の3つが含まれています。
▲パッケージ内容(左からカップ、ストーブ、リッド)実際に何度か使用した後に撮影したため、焼き色が付いています。
カップ
カップの片面にはメーカーのロゴが印刷されており、そのロゴに向かって左側、カップの側面には50ml単位で目盛りが打刻されています(容量を表す数字は100ml単位)。
目盛りは700mlまでしかありませんが、カップ全体の容量は800mlほどあります。
米軍の官給品のカップは容量が700mlほどしかなく、袋ラーメンがなんとか調理できるギリギリのサイズなのに対し、容量が800mlあるこちらのカップなら、少し余裕をもってラーメンを調理できます。
▲カップ(メーカーロゴに向かって左側面に目盛りが打刻されているのが分かる)
メーカーロゴの反対面には、取っ手の付け根があります。
▲カップの取っ手の付け根(こちら側の側面には単位がオンスの目盛りが打刻されている)
取っ手を使う時は、底面に被さるような形になっている取っ手を根元側へ動かし、スライド式のロックで取っ手を広げて固定します。
▲取っ手を根元側へ展開し、ロックをカップ本体の方へスライドさせる
▲ロックによってワイヤーが左右に広げられ、取っ手の付け根の溝にワイヤーがはまって固定される
簡単に使えて便利そうですが、このロックはスライドさせづらいです。
しかも、きちんとロックする前の状態では取っ手が簡単に外れてしまうことも多い(そもそも脱着可能な設計になっています)。
加工精度があまり良くないので、外れた取っ手を付け直すのもスムーズではありません。
ロックした後の取っ手はしっかりしているので、ご安心ください。
カップ側面の目盛りの精度が低いのも残念。
私の持っているカップの目盛りは50ml分少ない位置に刻まれているので、例えば500mlの水を計りたいときは、450mlの目盛りに合わせればぴったり500mlになるという具合。
正確に計量した水をカップに入れ、水面がどの目盛りの高さに来るか調べてください。
これで目盛りの誤差が分かるので、以後はその誤差を考えて水を入れて使えば問題はないでしょう。
ただし、カップは上が太く、下が細いため、場所によって目盛りの誤差は変わってきます。よく使う分量の目盛り付近で誤差を調べないといけません。
リッド
カップに被せる蓋です。
▲リッド(表)小さなつまみと大きなワイヤーハンドルが付いている
▲リッド(裏)
蓋には小さなつまみと、大きなワイヤーハンドル(ベイルハンドル)が付いています。
このベイルハンドルが面白い。
上の「リッド(裏)」の画像を見て下さい。縁からベイルハンドルの先端が飛び出しています。
そして、カップの上端には穴が開いています。
▲カップ上端の穴
つまり、ベイルハンドルの先端をカップ上端の穴に通せば、蓋がしっかりとロックされ、ベイルハンドルを持てばカップを持ち上げられるようになるのです。
▲カップにリッドのベイルハンドルをセットした様子
このキャンティーンクッカーキットはアルコールストーブと組み合わせて使われることも多いと思いますが、アルコールストーブは温度が上がると炎が大きくなり、カップの側面や取っ手を炙り始めます。すると、取っ手が熱くなりすぎて素手で持てず、カップを火からおろせなくなります。
しかし、ベイルハンドルがあれば、火傷をせずにカップを火から下ろせます。
リッドを外すときは、ベイルハンドルを両側から少し押して内側へ曲げると、先端がカップの穴から外れてリッドが取れます。
私の場合、普段はベイルハンドルの先端をカップの穴に入れず、リッドをカップの上に適当に乗せて使っています。
ベイルハンドルが邪魔な場合は、取り外してしまっても良いかも。
軍手を持っていれば取っ手が熱くなっても持てるので、ベイルハンドルがなくても大丈夫といえば大丈夫です。
私は軍手を忘れたときのために、ベイルハンドルを付けています。
ストーブ
このストーブは、山の中で拾った木の枝などの薪を燃料にしたり、別売の固形燃料やアルコールストーブとセットで使用します。
▲ストーブ(燃料となる木の枝を投入したり、固形燃料に点火するための大きな開口部が側面にある)
▲ストーブ(開口部が無い方の面)
私がこのストーブを使う時は、トランギアのアルコールストーブ(別売)と組み合わせて使っています。
▲トランギアのアルコールストーブ(別売)がすっぽり収まる
▲真横から見たところ
このようにセットしたアルコールストーブに点火し、リッドを載せたカップを置いてお湯を沸かすわけです。
▲ストーブの上にカップを置いた様子
収納方法
これらの3点と米軍官給品の水筒あるいは互換品(別売)は、重ねて収納できるようになっています。
▲水筒、カップ、ストーブ、リッドを重ねた様子(写っている水筒はナルゲンの「オアシス」で、別売)
これら一式は、米軍官給品の水筒用ポーチ*2(別売)にギリギリ収まります。
▲米軍の水筒用ポーチ(別売)に一式を収納できる
水とクッカー、リッド、ストーブの一式がたったこれだけの体積にすべて収納できてしまうのが、米軍の水筒の魅力です(といっても、私が使っている一式の内、米軍の装備品はポーチだけで、他は全て民生品に置き換わっていますが)。
私の場合はこの外観も気に入っていて、「どうにかして山で使いたいな」という気持ちが昔からあり、いろいろと工夫して山で使っています。
実際の湯沸かし性能については、後編で紹介します。
▲後編はこちら