暖かい時期の山歩きで私が困っているのは、虫。
今年もそろそろ暖かくなり始める時期なので、虫対策の山道具を紹介します。
蜂やアブに刺されると、直ちに下山せざるを得ないほどのダメージを受ける場合があります。
私は暑さに弱いため、そもそも虫が多い時期に山歩きはしないのですが、「ちょっと涼しくなってきたな」と思って登った山でも蜂やアブに悩まされることが頻繁にあるので、強力な殺虫剤のスプレーに加えて、今回紹介する携帯防虫器も山に持っていくようになりました。
携帯防虫器とは?
携帯防虫器は、和歌山県にある児玉兄弟商会が製造・販売している、一見すると普通の蚊取り線香の線香皿のような道具です。
本来は林業や農業に携わる人のために作られた「業務用」の製品ですから、一般向けの蚊取り線香用線香皿とは造りが違います。
中に入れる線香も、普通の蚊取り線香とは違って強力な「パワー森林香」というものを使っています。
業務でこれを必要とされる方が便利に、そして安全に使えるよう色々な工夫が施されていますが、それらについては記事の中で説明します。
どうでもいい話ですが、今回紹介する携帯防虫器と中に入れる線香は、2018年10月、日曜朝のテレビ番組「がっちりマンデー」で紹介されているのを見て、初めて存在を知りました。
▲携帯防虫器のパッケージ
製品名: 携帯防虫器
メーカー: 株式会社児玉兄弟商会(和歌山県)
生産国: 日本
重量: 約142g(中に線香を入れていない状態での実測値)
国内定価: ¥1,400(税別)
購入価格: ¥1,400(税別)
購入先: 好日山荘 姫路駅前店
携帯防虫器の外観と機能
▲携帯防虫器の外観
真っ赤な本体が印象的ですが、これは山や草むらで携帯防虫器を落とした(置いた)時に見つけやすくするための工夫。
携帯防虫器の煙を出す穴は鎧戸のスリットのような形をしており、吊り下げられて垂直になった状態であれば、多少の雨がかかっても中に雨水が入らないようになっています。これも業務用らしい工夫の一つ。
つり下げた時に下になる方にはちょうつがいが付いており、その反対側には止金(とめがね)が2つと吊り金が付いています。
止め金が2つもついているのは、万一山の中などでフタが開いて線香が落ちると山火事が発生する危険があるので、それを防ぐため。
▲吊り金のある側には止金がある(矢印が示す銀色の部品)
▲止金を解除した状態
止金を解除して本体を開くと、中から銀色の枠が現れます。
この銀色の枠は線香を挟み込んで保持するための部品で、線香をしっかり保持しつつ、線香の熱を奪って火が消えてしまわないようにするため、線香と接する側はギザギザになっています(線香との接触面積が最小限になっている)。
一般的な蚊取り線香の線香皿は、網やグラスウールで線香を保持する構造なので、激しく動いた場合に中で線香がずれてしまう可能性があります。
ずれた結果、線香の先端が線香皿に触れると火が消えてしまうことがありますが、線香を金属製のギザギザで挟み込む携帯防虫器では、そのような事態にはなりません。
▲携帯防虫器内部の様子
▲専用の線香を置いた様子
裏面には半透明のカバーが被さっており、その中には線香を2巻収納できる空間があります。
つまり、裏面に予備を2巻入れておき、もう1巻を中にセットしておけば、最大で3巻の線香を携帯できます。
1巻で5時間ほどもつので、最大でおよそ15時間の屋外作業に対応できるわけです。
▲携帯防虫器の裏面
▲裏面のカバーを外した様子
携帯防虫器は、ズボンのベルトに吊り金を引っ掛けて携帯するように設計されていますが、この吊り金はベルトに引っ掛ける他に、携帯防虫器が開かないようにロックする役割も持っています。
下の画像の様に、吊り金のヒモは表側から穴を通して裏面に回して使う構造になっています。
吊っている間、ヒモはピンと張った状態になるので、仮に止金が2つとも解除されたとしても、携帯防虫器が大きく開くことはないのです。
山火事を防ぐために、これでもかというほど安全性が考慮されています。
▲表面から裏面に吊り金の紐を通して吊すため、吊している間、携帯防虫器は開かなくなる
携帯防虫器に入れる線香は?
この携帯防虫器に入れるのは、児玉兄弟商会が販売している「パワー森林香」という商品*1。
▲パワー森林香(赤函)30巻入のパッケージ
製品名: 富士錦 パワー森林香(赤函)30巻入~携帯防虫器専用~
メーカー: 株式会社児玉兄弟商会(和歌山県)
生産国: 日本
重量: 1巻あたり約18g
適応害虫: ユスリカ、チョウバエ、アブ*2
成分: メトフルトリン
国内定価: ¥1,900(税別)
購入価格: ¥1,900(税別)
購入先: 好日山荘 姫路駅前店
備考: 1巻で5時間ほど燃焼します。
箱の中には、10巻ずつナイロン袋に小分けされたパワー森林香と注意書きが入っています。
▲パワー森林香(赤函)の内容
携帯防虫器の使い心地
煙の量が多く、匂いもちょっとキツイというか煙たいですが、虫除け効果は強力。
携帯防虫器は農業や林業に携わる方向けのものですが、虫の多い時期にアウトドアを楽しみたい方にも最適です。
私は山歩きを趣味にしているので、虫が多い時期にはこの携帯防虫器が大活躍。
私の場合、バックパックの正面に携帯防虫器を取り付けて山を歩いています。
携帯防虫器が裏向きになるとバックパックが燻されてしまうので、両側に開けられた穴に紐を通し、携帯防虫器をバックパックに引き寄せる形にすると良いでしょう。
▲バックパックに取り付けた携帯防虫器(裏返るのを両側のヒモで防いでいる。上のヒモは、正しい通し方になっていない。)
▲携帯防虫器が裏返らないようにするためのヒモは、コードロックで留めておくと便利
携帯防虫器をぶら下げて山を歩いていると、鬱陶しいアブやハエ、ハチと遭遇する頻度が大幅に減少します。
まったく出会わなくなるわけではありませんが、出会ったとしても、虫は煙の臭いを感知すると即座に私から離れていきます。
▲荷物をあさりやすくするためと、虫除け効果を最大化するため、食事中は携帯防虫器をバックパックから取り外して自分の近く、風上側に置いておく
注意事項
- 携帯防虫器は、中に火の着いたパワー森林香を入れていると高温になるので、素肌が触れやすい場所にぶら下げることは避けた方が良いでしょう。同じ理由から、熱で変形・変質しやすいものの近くに取り付けることも避けて下さい。
背面は予備のパワー森林香を収納するスペースになっていますが、下の熱画像*3から、実はこの空間が断熱材としての役割も果たしていることが分かります。
▲中のパワー森林香に火が着いている時の携帯防虫器の温度(前面)
▲中のパワー森林香に火が着いている時の携帯防虫器の温度(背面)
- パワー森林香は屋外用なので、室内では使わないで下さい。煙の量と匂いで大変な目に遭うと思います。
- パワー森林香は太くて分厚いので、点火にはターボライターがあると便利です。
- 煙が当たり続けた場所には、煙の匂いが染みついてしまいます。匂いが付いて困るものの近くには、携帯防虫器を取り付けないで下さい。
- 使用後の携帯防虫器を剥き出しで部屋に置いておくと、本体に染みついている匂いが非常に気になります。これの対策については、後述します。
パワー森林香の消火方法
パワー森林香が燃え尽きる前に使用を終わりたい場合は、線香の火を消さないといけません。
その方法として、林業に携わっている方のブログに便利な技が紹介されていましたので、紹介します。
私はこの記事を参考にし、フィルムケースに似た容器に仏壇の線香の灰を入れて使っています。
▲灰を入れたプラ容器
▲パワー森林香の先端を灰に突っ込んで消火する
携帯防虫器の保管方法
保管方法は重要です。
携帯防虫器には煙の匂いが染みついてしまい、剥き出しで部屋に保管していると、その匂いが部屋中に漂います。
「ジップロックに入れておけば大丈夫じゃないの?」と思われるかも知れませんが、ジップロックの素材であるポリエチレンはガスの透過度が高いので、匂いは漏れてくるのです。
それを防ぐため、私が使っているのがこちら。
クリロン化成株式会社の「うんちが臭わない袋」(Mサイズ)です。
▲「うんちが臭わない袋」(Mサイズ)のパッケージ
15枚入りで1つのパッケージになっており、ホームセンターのペット用品コーナーで¥200未満で売られています。
「うんちが臭わない袋」に携帯防虫器を入れ、食品の袋の口を留める汎用品のクリップで閉じてしまえば、匂いは全く漏れません。
ただ、「うんちが臭わない袋」は薄手なので、携帯防虫器の突起部分で破れないようにするために、携帯防虫器を丈夫なナイロン袋に入れてから「うんちが臭わない袋」に入れた方が安心です。
袋の口をクリップで何度か留めているうちに袋が破れてきます。
その場合は、破れた位置より下でクリップを留め直すか、それができないほど破れが酷い場合は、袋を交換してください。
▲Mサイズは、携帯防虫器を入れておくのに最適なサイズ
▲袋の口をクリップで塞いでおけば匂いは漏れない
最後に
防虫効果を客観的に評価できる方法が分からないため、性能を具体的に書くことはできませんが、私はこの携帯防虫器とパワー森林香の組み合わせが素晴らしい性能を持っていると感じています。
携帯防虫器が約142gで、1巻18gのパワー森林香が3巻(裏面に予備として2巻、1巻は燃焼部にセット)で54g。
合計でほぼ200gになりますから、荷物の軽さを求める登山者にはお勧めできないかも知れません。
しかし、寄ってくる虫に苦しみながら山歩きをすることを思えば、200g程度の重量増は、私にとっては苦になりません。
この煙の匂いを不快に感じる方もおられるようなので、人の多い山で利用される場合は、ご注意ください。