播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

山での食事を快適にする保温カバー:Pot Cozy

概要

今回紹介するのは、アメリカのアウトドア愛好家の間では有名なPot Cozy(ポット・コジー)。
 
基本的にはアルミ蒸着の気泡緩衝材(いわゆるプチプチ)を使って自作するもので、簡単に言うと、Pot Cozyはクッカー(鍋)の外側に被せて保温するためのカバー。
(参考:SOTOブランドのナビゲータークックシステムには、同様のものが同梱されています。)
 
▲自作したPot Cozyを被せたクッカー(クッカーに口を付けやすいよう、Pot Cozyの高さを低くしてあります)

導入の経緯

私は「展望の良い場所で、温かくて美味しい食事を楽しむこと」を目的に山歩きをしていますが、山歩きの食事には以下のような問題点があります。
  1. 山の上で、アルミやチタンのクッカーを使って作った食べ物は、あっという間に冷めてしまう。

  2. 山用のクッカーは持ち手が金属ワイヤーだったりして握りづらいので、中身が多い(重い)状態で細い持ち手を掴むと、持ち手が手に食い込んで痛い。そもそも、クッカーの持ち手は調理に便利な形状であって、食事用にはデザインされていない。
「1」の対策として、例えばクッカーを絶えず火にかけたまま食事をするという方法が考えられますが、燃料がもったいないし、物によっては焦げ付くし、現実的ではありません。
 
「2」の対策として、食器として使いやすい容器に移し替えるという方法があります。
食べやすいのは良いですが、移し替える時点で食器に熱が奪われて食べ物が冷めるだけでなく、持っていく荷物が増えますし、帰宅後の洗い物まで増えてしまいます。
 
Pot Cozyは断熱性の高い素材なので、クッカーの外側に被せておくことで中身が冷めにくくなります。つまり、上に書いた「1」の問題点が多少は改善できそう。
 
またPot Cozyを被せたクッカーは、丼を持つときのように保持できるので、「2」の問題点は完全に解決できるはず。
 
というわけで、自分でも作ってみようと思い立ちました。

作り方

Youtubeに細かく説明された動画があるので、それをご覧頂くのが一番良いと思います。
 
Pot Cozyの自作方法を説明する動画は多くありますが、ここで紹介しているものは他の動画にはない細かいコツが含まれているので、大変参考になります。
 
解説は英語ですが、英語が分からなくても映像だけでよく分かると思います。
 

材料

海外の解説動画で使われているのは「Reflectix(リフレクティックス)」と呼ばれる断熱材で、気泡緩衝材(いわゆる「プチプチ」)を2層重ねて両面にアルミを蒸着したものです。
 
Reflectixは日本では簡単に手に入らないため、ホームセンターで購入した「保温・保冷シート」(1層の気泡緩衝材の片面にアルミを蒸着したもの)を2枚重ねにして使うことにしました。
 
 保温・保冷シート(0.9m×1.1m) ¥499
 アルミテープ ¥499
 両面テープ(保温・保冷シートを2枚重ねにするために使用)
 
合計で¥1,000以上かかりましたが、これだけあればPot Cozyをいくつか作れるので、作る個数で割れば、1つあたりのコストは少額。
 
▲使用した材料と道具
 
他に油性ペン、定規、ハサミが必要です。
 
上で紹介した動画ではなく、他のおおざっぱな解説動画を参考に作ったので、かなり雑な感じに仕上がりました。
 
▲自作したPot Cozy
 
ここで紹介した動画ではクッカー全体を覆うようなPot Cozyを作っていますが、私はクッカーの中身を冷めにくく保ったまま食事が出来れば良いので、クッカーを上から覆う部品は作りませんでした。
 
クッカーには通常、持ち手が付いています。
Pot Cozyに持ち手を通すための切れ込みを作っても良いですし、上の動画のように使用時は持ち手を折りたたんでPot Cozy内に収納してしまうという手もあります(その場合は、軍手か何かを使い、火傷しないようにクッカーをPot Cozyに入れる必要がある。一度入れてしまえば、後は素手で安全に扱える。)。

性能

冒頭の画像にあるチタンのクッカーにお湯を入れて、ホームセンターで買った保温・保冷シート(2枚重ね)のPot Cozyがある状態とない状態とで、どれくらいの差が出るのかを無風の室内で測ってみました(測定日は2018年6月。空調のない室内で実施。)。
 
方法は以下の通りです。
 
・Pot Cozyありの測定時はクッカーにPot Cozyを被せる。or Pot Cozyなしの測定時はクッカーを裸の状態で置く。
・沸かしたばかりのお湯(500ml)と温度計のセンサーをクッカーに入れ、すぐに蓋をする(蓋をするのは、センサーを固定するため)。
・5分ごとに湯温を記録する。
 
同じクッカーを2つも持っていないので、以上の作業をPot Cozyのありなしで合計2回行いました(2回目の測定時は、クッカー自体やクッカーを載せていた台が室温に戻るまで待った)。
 
その結果をグラフにしたのがこちら。
 
別で沸かしたお湯をクッカーに注ぎましたが、その時点で湯温は92度まで下がりました。
そのため、開始時の温度が92度になっています。
 
▲Pot Cozyがある状態とない状態とでの水温の変化(お湯が60度まで冷めるのにかかった時間を示す線を入れています)
 
グラフでは温度がセ氏60度のラインを赤くしていますが、その部分に注目してください。
セ氏60度までお湯の温度が下がるのにかかった時間は、Pot Cozyがあると50分、ない場合は40分です。
 
(注)温度計のセンサーを固定するためにクッカーの蓋を閉めて測定しています。実際の食事の際は蓋を開けたままになるため、もっと早く冷めていきます。
 
他の温度帯で調べても、同じ温度までお湯が冷めるのにかかる時間は、Pot Cozyがあると25%ほど長くなりました。
 
クッカーの下半分を覆っているだけなのに、なかなかの効果だと思います。
 
クッカーの上端まで覆うように作ればもっと保温性能は高まるかも知れませんが、そうするとPot Cozyが邪魔になって、クッカーに直接口を付けられなくなってしまいます。
 
山でクッカーを使って袋麺を調理して食べる時と、カップ麺を食べるときを思い出してみて下さい。カップ麺の方が、長時間温かい状態が保たれませんか?
 
カップ麺の容器はアルミやチタンのクッカーより断熱性が高いためそうなるわけですが、Pot Cozyは断熱性が皆無に近いクッカーを、カップ麺のカップのような性質に近づけてくれるわけです。

最後に

ここではクッカーに装着するPot Cozyを紹介しましたが、アルミ蒸着のプチプチで袋を作っても便利です。
その中にお湯を入れたアルファ米のパッケージを入れて15分待つと、裸の状態で15分置いたアルファ米よりも出来上がりが温かくなります。
 
簡単な工作で山での食事が便利になりますから、私のように温かい物を食べることにこだわる方は、挑戦してみてはいかがでしょうか。