播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

姫路城 冬の特別公開:折廻り櫓 内部公開

本日は、2018年2月の間だけ期間限定で公開される姫路城・折廻り櫓(おれまわりやぐら)を見に行ってきました。
 
▲折廻り櫓の位置(備前丸で撮影)矢印が指しているのが折廻り櫓
 
イベント名称: 折廻り櫓 内部公開
期間: 2018年2月1日(木)~2月28日(水)
時間: 09:00~16:00(閉門は17:00)
場所: 姫路城大天守南東 折廻り櫓
料金: 折廻り櫓の見学自体は無料。ただし、姫路城の入城料(おとなひとり¥1,000)は必要。
説明: 「姫路城の大天守のふもと、備前丸は、かつて姫路城を築城した池田輝政の御殿があったところです。その備前丸の東北に、大天守の石垣にそっと寄り添い備前門と一体となった櫓が、折廻り櫓。今回は、普段は公開していない折廻り櫓と備前門の内部をご覧いただきます。」(出典:「折廻り櫓 内部公開」のチラシ)
 
ゆっくり見学するなら朝一番に出かける方が良いだろうと思い、開城時間である09:00の5分前に入城口に並びました。
 
時間通りに入場が開始され、券売機で大人一人¥1,000の入城券を購入。
 
入城口のゲートを通過した後、「世界遺産登録25周年記念 復刻品(昭和38年頃) 姫路城縦覧券」なるものをもらえました。
数量限定(30,000枚)ですので、欲しい方は早めにどうぞ。
 
ちなみに配付は2018年2月1日からで、私が受け取ったものの通し番号は3000番台中程の数値でした。
 
▲世界遺産登録25周年記念 復刻品(昭和38年頃) 姫路城縦覧券(左は表面、右は裏面)
 
今回の目的は折廻り櫓の見学なので、大天守内には入りません。
というわけで、最短ルートで折廻り櫓へ向かいました。
 
何度も姫路城を訪れていて、折廻り櫓だけを見られれば良いという方は、菱の門をくぐった後に右折(普通の見学ルートは左折か直進)し、石垣の中にある分かりにくい「るの門」をくぐってください。
 
▲菱の門
 
「るの門」をくぐった先で右手にある「ぬの門」(鉄板で装甲が施されている)をくぐり、お菊井戸脇を通過。
「りの門」を抜けて北へ進んで道なりに左へ曲がると備前門があり、それをくぐったところにあるのが折廻り櫓です。
 
入城券を買ってから折廻り櫓に着くまでに掛かった時間は5分。距離にして400m弱。
 
▲折廻り櫓(備前丸から撮影)折廻り櫓の右端が備前門です。
 
私以外には単独の外国人男性が一人と係員が数人いるだけで、人の話し声も無く、自分の足音が一番大きな音という状況でした。こんなに静かな姫路城は初めてかも。
 
折廻り櫓は、上の画像から想像出来るとおり上から見ると「L」字型ですが、往時は左右対称で上から見ると「凹」の字型になっていたそうです。
ところが、明治時代の修復作業後に今の姿になったとのこと。
 
この建物は今まで何度も見たことがありますが、石垣に接している部分が斜めになっているという特徴的な建物なのに、まったく意識していませんでした。
 
私以外の唯一の観光客である外国人の単独男性は折廻り櫓の外観の写真撮影に夢中になっていたので、私が本日の一番乗りで折廻り櫓の中へ。
 
1階には2つの開口部がありますが、西側が入口で東側が出口になっていました。
 
1階は薄暗くて狭い空間で、見学対象ではなく、靴を脱ぐためだけの場所になっています。
案内の係員さんがいらっしゃったり、道具類が色々置かれていたので、なるべくモノが写らないように1枚だけ写真を撮らせてもらいました。
 
1階は南の出入り口以外に開口部がなく、閉鎖的な空間です。
 
▲折廻り櫓1階(西側)内部の様子(窓は無い)
 
係員さんからナイロン袋を受け取り、脱いだ靴をそれに入れて急な階段を登ると、1階とは打って変わって明るい豪華な空間に出ました。
 
▲2階へ上がる急な階段
 
折廻り櫓の2階は「L」字型をしていますが、長い方の部分には西室、中室、東室の3部屋が東西方向に並んでおり、短い方の部分には2つの小さな部屋が南北方向に並んでいます。
 
1階西側から入ってすぐの階段を登った場所なので、最初に出会うのは2階西端の西室です。
(注:西室は通路または中室から見るだけで、中には入れません)
 
▲階段を上がったところにある西室(南から撮影)
 
▲階段を上がったところにある西室(東から撮影)
 
2階 西室
部屋の中央の北東よりに炉を切り、当初の柱は表面を鉋で仕上げる丁寧さでした。釘隠しには六葉と菱形のものがありました。現在は、金メッキを施した金具の釘隠しに復元しています。
(出典:「折廻り櫓 内部公開」のチラシ)
外から見た折廻り櫓は、石垣に接している西端が斜めになっていましたが、中も斜めになっています。
 
▲2階の通路西端の壁(石垣の形状に合わせて斜めになっている)
 
見るからに不自然な壁ですが、西室の中には斜めの壁はありません。
斜めになる西面に押し入れや戸棚を設置し、不自然さが目立たないようになっているのです(西面中央の戸棚の下に少しだけ斜めの壁が見えています)。
 
折廻り櫓が面している備前丸という広い曲輪には、かつて城主の御殿がありました。
折廻り櫓は、上級の武士やその親族が御殿で城主に会う際の待合室として使われたと考えられているそうです。
 
同じように石垣に接している建物としては、姫路城の有料エリアに入る際に最初にくぐる菱の門1階にある門番の部屋がありますが、そこは石垣に接している部分に壁が無く、建物の中なのに石垣が露出している構造。
 
上級武士と下級武士の扱いの差は大きい。
 
▲【参考】菱の門 門番所の内部(非公開・2017年1月の特別公開時に撮影)
 
中室は質素な部屋ですが、西室と中室を区切るふすまだけは豪華です。
 
▲中室から西室へ入るためのふすまの引手
 
中室と東室の間はふすまではなく、板壁になっています。
ふすまでつながった2室とそれ以外の部屋は別の空間という扱いなのかな。
 
▲中室と東室を区切る板壁(東室で撮影)
 
折廻り櫓の西は大天守の石垣、南は御殿のあった備前丸、つまり城の内側ですが、北と東は敵に攻め込まれた場合の被攻撃面になります。
そのため、戦闘用の空間らしさの無い西室でさえ北面には狭間(さま)があり、東に面した部屋には多数の狭間が開けられています。
 
▲2階中室から北の曲輪を見る
 
▲畳張りで炉もある生活空間らしい西室にも北向きの狭間がある
 
▲2階東室(北面と東面)
 
2階 東室
壁に見える四角い枠は、ふた付きの狭間で、居室に狭間が設置されているのは姫路城では珍しい例です。
(出典:「折廻り櫓 内部公開」のチラシ)
東室の南には、名前の無い2つの小さな部屋が南北に並んでいます。
 
南側の部屋は、姫路城を見学して備前丸から出る時に通る備前門の真上にあたる部屋で、今回の内部公開では、立入りは出来ませんが、その北隣の部屋から中を見ることは可能です。
 
▲備前門の真上の部屋
 
▲備前門の真上の部屋と東室の間の部屋
 
▲備前門の真上の部屋と東室の間の部屋から、東側の井郭櫓を見下ろす
 
これで見学可能な範囲は一通り見終わったので、外に出ることにしました。
 
出る際は、中室にある階段から1階へ下りますが、こちらも入口の階段と同様に急角度。しかも、かなり年季が入った階段です。
 
1階東側は、武具の保管などに使われていた棚が復元されています。
 
▲折廻り櫓1階(東側)(天井の根太の何本かが黒ずんでいる)
 
1階 焦げた根太(ねだ)
明治15年(1882年)に備前丸にあった施設を焼失。辛うじて、折廻り櫓は残りましたが、黒ずんだ根太にその痕跡を残しています。
※根太(ねだ)…床板を支える横木
(出典:「折廻り櫓 内部公開」のチラシ)
折廻り櫓から出た後は、観光客のいない備前丸で大天守の美しい姿をしばらく楽しんでから、帰路に就きました。
 
本日は、リコーの全天球パノラマカメラ「Theta S」で折廻り櫓の2階を撮影したので、興味のある方は以下のリンクからご覧下さい。
姫路城 折廻り櫓の2階で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2018年2月3日)

https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/oremawariyagura20180203/virtualtour.html
ところで、地形図を見ると姫路城の備前丸には三角点の記号が描かれていますが、三角点標石らしきものは地上にありません。
それもそのはず、三等三角点標石(点名:姫路城)は、備前丸南東付近の地表よりも低い場所にあり、上に石を載せて隠してあるのです。
 
▲三等三角点標石(点名:姫路城)は、この石の下にある
 
姫路城見学に来られた三角点マニアの方は、この三角点探しをしてみるのも面白いかも。
ただし、勝手に石を持ち上げたりしないで下さい。
 
姫路城は真冬の間、観光客が減少するため、それを少しでも防ぐ目的で特別公開を行うようです。
来年はどこが公開されるのかな。