播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。原則として更新は週に1回です。広告は表示しません!

戦争映画で耳にする「座標」が使える地図の作り方

概要

戦争映画を見ていると、位置を表現するのに座標と呼ばれる数字が使われている場面を目にすることがあります。

例えば1986年のアメリカ映画「プラトーン(Platoon)」では、森の中で敵の待ち伏せに遭い、砲兵隊に「砲撃を頼む。座標649402。」(原文では「Fire mission. Grid 649402.」)」*1と無線で伝える場面が出てきます。

位置を示す座標は、米軍が開発してNATO諸国でも使われるようになったMGRSMilitary Grid Reference System = 軍用グリッド基準座標系)と呼ばれるルールに則って引かれたグリッド(碁盤目)を基準に求めるものです。

過去にこのブログでは、そのMGRSについて解説する記事を掲載しました。

また、紙の地形図上でその座標を正確に求めるための座標定規「プロトラクター」を紹介したこともあります。

しかし、肝心の「MGRSグリッドが引かれた地形図の作り方」を紹介したことはありませんでした。

正確には、MGRSグリッドが引かれた地形図の作り方は前者の記事で紹介していますが、その方法で印刷した地形図は1/25,000の縮尺になっていないため、座標定規が使えないのです。

というわけで、今回の記事では「正確な縮尺で印刷され、座標定規に対応した紙の地形図」の作り方を紹介します。

(注:この記事で紹介する方法では、スマホ用の有償アプリと、コンビニのネットプリントサービスを使用します。)


▲コネチカット州ナイアンティックのストーンズ・ランチ軍用地において、プロトラクターを使用して地形図を確認する士官候補生。陸路航法の訓練では、(GPSを使わず)プロトラクターと地形図だけで目的地を確認し、そこへたどり着かなくてはならない。(Photo by 合衆国陸軍 Matthew Lucibello軍曹 2021年7月14日撮影)パブリックドメイン VIRIN*2:210714-Z-QC464-1010(出典元サイトの規約による注意事項:The appearance of U.S. Department of Defense (DoD) visual information does not imply or constitute DoD endorsement.)

なぜ紙の地図が必要?

私にとって、スマホアプリではなく紙の地図の方が山歩きでは便利。
その理由はいくつかあります。

  1. スマホの小さな画面では、表示できる範囲が狭い
    紙に印刷した地形図であれば、私が楽しんでいるような散歩程度の山歩きの全行程を一目で見渡すことができます。
    そのため進捗状況を直観的に理解しやすく、「ちょっと急がないと。」とか「このペースなら無理。引き返そう。」といった判断を容易に下せます。
  2. スマホ画面の地図は距離感が掴みづらい
    スマホに表示される地図は拡大縮小ができるため、距離感が掴みづらいのも難点。
    紙に印刷された地形図は常に同じ縮尺で見られるため、慣れると「ここからここへ移動するには40分ほどかかるかな」という具合に、見ただけで所要時間を推測できたりします。
  3. 晴天下ではスマホの画面が見づらい
    山歩きでは直射日光に照らされることも多く、スマホの画面が見づらいことがよくあります。
    紙の地図なら、明るい場所の方がむしろ見やすいです。
  4. スマホのバッテリー残量を確保しておきたい
    スマホのGPSで軌跡を記録しつつ、画面で常に位置を確認しながら歩くのは、スマホのバッテリー消費を増加させます。
    スマホのバッテリー残量は、万一の際の連絡用に確保しておくことが重要だと考えているので、私はそもそもスマホで地図を確認したりGPS機能を使用することは避けたいと思っています。
  5. スマホは高温下/低温下で正常に動作しない
    山で景色のいい場所に出会ったとき、スマホで写真を撮って知り合いに送ることが時々ありますが、「高温!」と画面に表示されてスマホが操作できない状況になったことが何度もあります。
    また低温下ではバッテリーの性能が低下し、電源が突然切れることもあります。
    動物避けのためにスマホで音楽やラジオの音声を流しながら歩くことがありますが、バッテリー残量が十分にあったはずなのに突然音が止まってしまうことがありました。
    スマホが正常に動作せず、地図を見たいときに見られないのは不便です。

これらの理由から、私は今(2025年)でも山歩きの際に紙の地図とコンパスを使っています。

そうは言っても、スマホは便利です。
「紙の地形図なんか使いたくない。スマホアプリでMGRSグリッドを使いたい。」という方は、上のリンク先「位置を示す座標の使い方(UTMグリッド/MGRS)」の記事内「6.スマホでUTMグリッドを使うには」をご覧ください。

MGRS対応地形図を作るために必要なもの

パソコンとプリンタが無くても、スマホアプリコンビニの印刷サービスを利用してMGRSに対応した地形図を作れます。

必要なのは、iOSまたはAndroidで動作し、インターネット通信が可能で、下記「スーパー地形」アプリと、コンビニのネットプリント用アプリが動作するスマホです。

この作業に必要なスマホアプリ「スーパー地形」は、iOS版は¥960の買い切り、Android版は年間¥780のサブスクリプション契約が必要。

初回インストールから3日間は機能制限なしで試用できるため、その間に動作検証を行えます。それ以降の継続利用には、前述の料金を支払わなければなりません。

コンビニのネットプリント用アプリは無償です(印刷は有料)。
立ち寄りやすいコンビニのサービスに対応したアプリを、お持ちのスマホにダウンロードしてください。

コンビニごとに使用するアプリは異なっているため、利用したいコンビニに対応したアプリが必要です。

  • セブンイレブン・・・かんたんnetprint-セブン‐イレブンでかんたん印刷
  • ファミリーマート・・・ファミマネットワークプリント
  • ローソン・・・PrintSmash(プリントスマッシュ)

アプリの操作方法や、コンビニに設置されたマルチコピー機の操作については、各サービス提供元のWebサイトなどをご確認ください。
(当ブログ管理人に質問をされても、正確な回答はできません。)

MGRSグリッドがある紙の地図を最大限に活用するには、座標定規(米軍の「GTA 5-2-12」。*3や、ベンリー産業のベンリープレートや二ツ折座標定規等)があると便利。10mの精度で正確に座標値を求められます。

座標定規がなくても、目測によりおおよそ10m~20m程度の誤差で座標を求めることも可能だと思います。

MGRS対応地形図の作り方

MGRS対応地形図を作る作業は、大きく2つの段階に分けられます。

第1段階は地形図のデータ(PDFファイル)を作成することで、第2段階は作成したPDFファイルを印刷することです。

PDFファイルの作成

注:ここに掲載しているのは、iPhone用「スーパー地形」アプリの画面です。

スマホで「スーパー地形」アプリを起動し、印刷したい範囲を表示してから画面右下付近の「ツール」をタップします。


▲iOS版「スーパー地形」で兵庫県南西部の高御位山周辺を表示した様子(右下の「ツール」をタップ)

表示されるメニューの下の方にある「印刷/PDF」をタップします。


▲「印刷/PDF」をタップ

印刷したい用紙のサイズと用紙の向き(縦か横か)を選択する画面が表示されるので、印刷したい範囲に応じて適切な項目を選択します。


▲用紙選択画面

すると印刷範囲の確認画面が表示されるので、必要に応じて印刷範囲を調整します。

印刷範囲(地図の中心点)が決まったら、画面左下の「選択完了」をタップ

縮尺は2万5千分の1に固定されているため、印刷範囲の広さは変更できません。ここで調整できるのは、作成される地図の中心点だけです。


▲印刷範囲の選択画面

印刷する項目を選択するための「出力設定」画面が表示されたら、下図を参考にMGRSグリッドを印刷するよう設定し、磁北線や縮尺を印刷するかどうかも適切に設定します。


▲出力設定画面

一番上の「高画質」は、画面に書かれている通りコンビニプリントを使う場合はOFFにする必要があるようです。

必要な設定を終えたら、画面下端の「PDF出力」をタップ


▲PDFファイルの作成が始まると、進捗状況がパーセント表示される

進捗率が100%に達すると、完成したPDFファイルをどうするか選択する画面が表示されます。


▲PDFファイルの共有方法を選択する画面(iPhoneの場合)

iPhoneでコンビニプリントサービスを利用する場合は、「“ファイル”に保存」をタップ

これでPDFファイルが完成しました。

保存されたファイルの名称は既定で「Output」になっているため、複数の地図を作りたい場合は、「ファイル」アプリから必要に応じて名前を変更すると良いでしょう。

PDFファイルの印刷(コンビニプリント)

続いては、作成したPDFファイルをコンビニで印刷する手順です。

各コンビニのプリントサービスに対応したアプリを起動し、印刷するファイルの選択画面から、先ほど保存したPDFファイルを指定します。

ここでは、ローソン用のアプリ画面を例に紹介します。


▲ローソン用のアプリで印刷する場合は「PDFをプリントする」から「『ファイル』アプリを開く」を選択し、印刷するファイルを選択する

PDFファイルを選択した後は、アプリの指示に従ってQRコードを画面に表示し、マルチコピー機のQRコードリーダーで読み取らせます。


▲印刷するPDFファイルをスマホで選んだあと、アプリの指示に従ってQRコードリーダーをマルチコピー機で起動する

その後はマルチコピー機の画面の指示に従って印刷を実行しますが、重要なのは実寸大で印刷するための設定です。

ローソンとファミリーマートのマルチコピー機の場合は「用紙にあわせる」「しない」に、セブンイレブンの場合は「ちょっと小さめ」「しない」にします。
(ヒント:座標定規を使用しない場合は、この設定が漏れていても問題ありません。反対に、座標定規と組み合わせて使いたい場合は、必ずこの設定を行ってください。)


▲ローソンとファミリーマートの場合は「用紙にあわせる」を「しない」に設定する


▲セブンイレブンの場合は「ちょっと小さめ」を「しない」に設定する

アプリやマルチコピー機の操作はコンビニによっても異なりますし、同じコンビニでも新型・旧型のマルチコピー機が混在している場合があるため、共通した操作方法の説明はできません。

アプリの操作方法などについてはWeb検索で簡単に見つかるので、ご自身の環境に合ったコンビニ用アプリと、マルチコピー機の機種に応じた操作方法をお調べください。

印刷にかかる料金は、カラー印刷とモノクロ印刷でも変わりますし、用紙サイズによっても変わります。

A4サイズでカラー印刷する場合は、1枚あたり¥50~¥60です。

また、マルチコピー機によって色合いに差が出ます

例えば、下図は左が我が家の最寄りのローソン、右が最寄りのセブンイレブンのマルチコピー機で印刷した地形図ですが、左(ローソン)の方が色合いが濃くなっています。


▲マルチコピー機によって若干色合いが変わる(右の地形図の方が淡い色合いになっている)

好みの色合いが出せるマルチコピー機を見つけることも重要かも知れません。

自宅でMGRS地形図を作るには

パソコンとプリンタをお持ちの方は、「スーパー地形」アプリで地形図を出力した後、メールにPDFファイルを添付してパソコンで受信し、パソコン上のAdobe Acrobat ReaderでPDFファイルを開いて印刷してください。

この時「実際のサイズ」を選択して印刷すると、座標定規で座標を求められる正確な縮尺で印刷できます。


▲パソコン版Acrobat Readerから印刷する際は「実際のサイズ」を選択する

座標定規を使わず目測で座標を求める場合は、「実際のサイズ」で印刷することにこだわらなくても問題ありません。

MGRS対応地形図はどんなもの?

完成したMGRS対応地形図は、下図のように碁盤の目のような線が印刷されます。
この碁盤目こそ、座標を求めるために必要なMGRSグリッドです。


▲完成したMGRS対応地形図(左へ傾いた縦線は磁北線。コンパスを使わない、あるいは磁針偏差を調整したコンパスを使われる方は、磁北線を印刷しなくても良いと思います。)


▲MGRSグリッドに対応した地形図には、1km四方の枠(太線)と100m四方の枠(細い線)が印刷される

このグリッドのおかげで距離感が分かりやすくなり、個人的にはとても便利だと思います。

上の図では1km四方の線に10刻みで3桁の数字(縦線には800や810、横線には530や520)が書かれていますが、これは本来80や81、53や52という具合に2桁の数字であり、00~99の100通り(今回の方法で作成した地図の場合は000~990)しかありません。

その理由は、後に出てくる「座標値だけで位置を特定できる?」の項で説明します。

MGRS対応地形図で座標を求める方法

例えば、下の地図で赤丸で示した登山道の分岐の位置を座標で示すとしましょう。

今回は、地形図に引かれた100m単位の線だけを使う、つまり100mの精度で座標を求めることにします。


▲赤丸の位置を座標で表すことにする

MGRS対応の地形図では、1kmごとの太い線に番号が振られています

座標を求めるためには、その間に引かれた100mごとの線の番号も必要ですが、印刷はされていません。

100mごとの線を自分で数えて番号を振ると、下図のようになります。


▲赤丸の位置が含まれる1km四方の枠内の全ての線に番号を振るとこうなる

790番の太い縦線の一本右隣りの縦線は791番、その右は792番という具合になり、520番の太い横線の一本上の横線は521番、その上は522番ということになります。

重要なのは、縦線は左から右へ、横線は下から上へ数えるということ。

米軍のマニュアルでは「right and up」と覚えますが、自衛隊では「左フック、右アッパー」と覚えるようです。

座標は縦線の番号、横線の番号の順に書くと決められています。

赤丸が最も近い縦線の番号は798、最も近い横線の番号は526ですから、赤丸の位置を100mの精度の座標値(100mごとの線の番号)で表現すると、「798526」となります。

「798526」という座標値は798の縦線と526の横線の交点の位置を表しますから、赤丸の位置から南東にずれます。しかし、「798526の分岐を北へ進む」といった伝え方をする場合、798の線と526の線の交点付近の赤丸の位置にある分岐のことだと聞き手は分かりますから、実用上問題がありません。

ヒント
「スーパー地形」で作成した地形図に引かれた1kmごとの線には3桁の数字が振られていますが、米軍の地図では線の番号は2桁で印刷されています。

上の例で「790」となっている縦線は、米軍の地図では「79」、「800」の線は「80」と表示されます。横線も同様です。

MGRSグリッドは100km平方の範囲内で1kmごとに太い縦線と横線を引いていますから、太線の番号は縦方向も横方向も00~99になります。つまり、太線の番号は2桁で表示するのが本来の姿なのです。

個人的には、米軍方式の2桁の表記が気に入っています。

今回の例でいうと赤丸の地点は「79」の縦線(図では790の線)から東へ800mなので、縦線の番号は「79」の後ろに「800m」の100の位の数字である「8」をくっつけて「798」。赤丸の地点は「52」の横線(図では520の線)から北へ600mなので、「52」の後ろに「600m」の100の位である「6」をくっつけて「526」とすればよいことになります。

100mの精度で座標を求める際は、1の位と10の位の数字を切り捨てるわけです。

より精度を高めたい場合は、座標定規を使うと正確に10mの精度の座標(8桁)を求められます。

座標定規は持っていないけれども位置を正確に表現したいという場合は、まず100mの線の間を目分量で10等分します。


▲10m間隔の線を引いた様子(実際に線を引くのではなく、頭の中でイメージする)

10m間隔で座標を求める場合は、縦線と横線に表示された番号の右端に「0(ゼロ)」を追加し、4桁にします。

つまり、797の縦線は7970、798の縦線は7980とし、526の横線は5260、527の横線は5270とします。

すると、100mの枠内を縦横に10等分する10m間隔の縦線は7970の1本右が7971、その右が7972となり、横線も同様に5260の線の1本上の線は5261、その1本上は5262という具合になります。

このように縦線と横線の番号を4桁ずつにすることで、10mの精度をもつ座標値(10m間隔の線の番号)を求めることができるわけです。

したがって、今回の例であれば上の地図で赤丸を付けた登山道の分岐は7975の縦線と5262の横線の交点付近ですから、10mの精度を持つ座標値で表すと「79755262」ということになります。

ヒント
これも米軍方式で縦線の番号を「79」、横線の番号を「52」として考えると分かりやすいです。

10m単位で測った場合、赤丸の位置は「79」の縦線から750m東、「52」の横線から620m北ですから、縦の座標値は「79」の後ろに「750m」の100の位と10の位の数字である「75」を、横の座標値は「52」の後ろに「620m」の「62」をつけ足せばよいのです。

10mの精度で座標を求める際は、1の位の数字を切り捨てることになります。

座標値の決まりごと

座標を示すときは、縦線の番号と横線の番号の桁数を合わせなければいけません(座標値の中で縦線の番号を4桁、横線の番号を3桁にするといったことはできません)。

縦線の番号と横線の番号の間にはハイフンやその他の記号を入れませんから、座標値の桁数は必ず偶数とし、前半が縦線の番号、後半が横線の番号になるようにします。

桁数については、3桁-3桁で合計6桁の場合は精度が100m、4桁-4桁で合計8桁の場合は精度が10m、(GPS受信機でしか使用しませんが)5桁-5桁で合計10桁の場合は精度が1mになることを覚えておくと良いでしょう。

座標値だけで位置を特定できる?

ここまでに記載した座標値は、MGRS対応地形図に引かれた線の番号だけを利用したものです。

「こんな桁数の少ない数字だけだと、世界中どころか日本国内だけでも同じ座標値の場所がたくさん存在するのでは?」と疑問に思われると思いますが、その通りです。

MGRSでは地球上の場所を経度6度ごと、緯度8度ごとに区切ったUTMゾーンと呼ばれる区域に分け、さらにその中を100km四方に区切って英字のコード(UTM100km平方地域コード)を割り当てています。

座標値は、その100km四方の範囲内で場所を特定するために使われるものです。
そのため、1kmごとに引かれる線の番号は00~99(あるいは10刻みで000~990)の100通りしかないのです。

一般的に、位置情報を共有する相手はどの範囲(100km四方)の話をしているか事前に共通認識をもっているため、座標値だけで位置を伝え合えるというわけ。

ちなみに、上記手順で作成したMGRS対応地形図では、1kmごとに引かれた太い横線の番号の上にUTMゾーン番号とUTM100km平方地域コードが表示されています。


▲高御位山が含まれる100km四方の範囲を示すコードは「53SMU」(「53S」がUTMゾーン番号で、「MU」がUTM100km平方地域コード)

厳密に地球上の一点の位置を座標で表す場合は、座標値の前にUTMゾーン番号とUTM100km平方地域コードを付記しないといけません。

例えば、高御位山山頂の三角点の位置を100mの精度(6桁の座標値)で厳密に表したい場合は、「53SMU811523」となるわけです。

「53SMU」というコードが振られた100km平方の区域は地球上に一つしか存在しませんから、その範囲内の場所を座標値で指定することにより、地球上の一点の位置を正確に伝えられるのです。

練習問題

こういった内容は、読んでいると「なるほど」と理解したつもりになりますが、いざ実際に試そうとすると「どうやるんだっけ?」と悩むことになります。

というわけで、練習問題です。
解答は「最後に」の後に記載しました。

【問1】下の地図で鹿嶋神社近くにある88m標高点の座標値を100mの精度(6桁の座標値)で求めてください。


▲88m標高点の座標は?

上の問題は簡単だったと思います。

次は難易度を上げてみましょう。

【問2】高尾山の山頂付近にある599.3m三角点の座標を10mの精度(8桁の座標値)で求めてください。


▲高尾山山頂付近の三角点の座標は?

次は今までの逆で、座標値から位置を求めてみましょう。

【問3】下の地形図で「250475」はどこでしょう?


▲座標値「250475」はどこ?

最後は10mの精度(8桁の座標値)から位置を求めてみましょう。

【問4】下の地形図で「22694712」にあるものは何でしょう?


▲座標値「22694712」には何がある?

最後に

MGRSは、緯度・経度のような桁数の多い数値を相手に伝えなくても、少ない桁数の数字でおおよその位置を表現できる便利なシステムです。

しかし、日本では自衛隊以外でMGRSを理解してくれる組織が今のところほとんどなさそう。

グループ登山の際、仲間内で位置を伝え合う場合などに使ってみると、便利さが良く分かると思いますよ。

特に男性陣はこういうのが好きな方が多いでしょうから、大人になっても少年のような心を持ち続けている登山者の方は、「位置を座標で表す」ことに挑戦してみてはいかがでしょう。

言うまでもありませんが、救助要請の際に座標値を伝えても警察や消防には理解してもらえないので、座標の利用は仲間同士の連絡だけにとどめてください。

個人的には、10進法と60進法の表記が混在してややこしい上に桁数が多い緯度経度*4より、MGRSが普及してほしいと思っています。

練習問題の答え

【問1の答え】

88m標高点の座標値(100mの精度)は「793519」です。


▲88m標高点は793の縦線と519の横線の交点付近にあるので、座標は「793519」。
【別解】88m標高点は790の縦線(100km平方の地域内で西端から79番目の線なので「79」とする)から300m東なので、東西方向は79の後ろに3を付けて「793」。510の横線(100km平方の地域内で南端から51番目の線なので「51」とする)から900m北なので、51の後に9を付けて「519」。2つを並べると「793519」。

【問2の答え】

高尾山の三角点の座標値(10mの精度)は「40954380」


▲10mの精度で座標を求めるには、線の番号を4桁にして合計8桁にする必要があるため、高尾山の三角点近くの縦線の番号は4090、横線の番号は4380になる。三角点は4090の線と4100の線のちょうど真ん中付近にあるため、おおよそ4095と読み取れる。三角点は4380の横線とほぼ重なっているため、横線に関しては4380とみなしてよい。そのため、座標値は「40954380」となる。
【別解】三角点は「40」の縦線から東へ約950mなので、40の後ろに95をつけ足して「4095」、43の横線から約800m北なので、43の後ろに80を付けて「4380」。2つを続けて「40954380」。

【問3の答え】

座標値「250475」が示すのは、「東おたふく山」の山頂付近


▲座標値「250475」はこの場所(25の縦線から東へ0m、47の横線から北へ500m)

【問4の答え】

座標値「22694712」にあるのは、三角点の北にある電波塔です。

描かれていない10m間隔の線をイメージしないといけないですから、難易度は高め。


▲座標値「22694712」にあるのは電波塔(電波塔の地図記号は、円の下端中央が実際の位置を示すため、円の下端中央に近い線の番号を使って座標を求める。)
【別解】「2269」は「22の縦線から東へ690m」、「4712」は「47の横線から北へ120m」という意味なので、三角点の北にある電波塔だと分かる。

おまけ

座標とは関係ありませんが、軍用の地図について豆知識を紹介します。

それは、アメリカ軍の軍用地図の特徴。


▲アリゾナ州の5万分の1軍用地形図(上端に書かれたCHRISTMASは地形図の名前。日本の地形図も同様に地図の範囲内の主要な地名が地形図の名前として使用されます。)(出典:USGS(米国地質調査所)のWebサイト パブリックドメイン)


▲上の米軍の地図の一部を拡大したもの。座標を求める際に必要となるMGRSグリッド線(1km間隔)の番号が2桁で印刷されている。(出典:USGS(米国地質調査所)のWebサイト パブリックドメイン)

一見するだけで、日本の地形図とは色合いが違うことが分かります。

全ての米軍の地図がそうとは限りませんが、「THIS MAP IS RED-LIGHT READABLE」と表記された軍用地図の場合、夜間に赤いライト*5で照らしても、情報がしっかり読み取れるような色使いになっているのです。

「何色のライトで照らしても同じでは?」と思われるかも知れませんが、実は大きな違いがあります。

実際に赤色のライトで照らしたときの見え方を比較してみました。


▲実験に使用したのは、米軍用のLEDライト(SIDEWINDER LED HANDS-FREE LIGHT)

普通の照明下で見た米軍の5万分の1地形図*6と、日本の一般的な2万5千分の1地形図は、下の写真のように見えます。


▲米軍の地形図(左)と日本の一般向け地形図(右)(どちらも家庭用インクジェットプリンタを用いて実寸で印刷したもの)

赤色LEDを搭載した米軍用のライトでこれらの地形図を照らすと、その差は歴然。

米軍の地形図は赤い光で照らされても等高線が読めますが、日本の地形図の色合いでは等高線が見えなくなってしまいました。


▲赤色LEDのライトで照らした様子(米軍の地形図は等高線が読み取れる)

特定の色の照明下で可読性を求められる地図で使われる色については、アメリカ合衆国海兵隊の教材に次の通り説明が書かれています。

Red-Brown/Gray
The colors red and brown are combined to identify cultural features, all relief features, non-surveyed spot elevations, and elevation such as contour lines on red-light readable maps. The color gray is also used to make maps readable under blue or green light. 

(出典:合衆国海兵隊 基本術科学校 准士官基本教育課程 の資料「MILITARY TOPOGRAPHIC MAP I」(W140001XQ))

<当ブログ管理人による意訳>

赤茶色/灰色
赤色の照明下での可読性が求められる地図においては、人工物、地形の起伏、未調査の場所や標高、等高線を表すために赤茶色を使用する。青色または緑色の照明下での可読性が必要な地図においては、灰色が使われる。


▲夜間から日中にかけての陸路航法訓練課程に参加している第278機甲騎兵連隊のスパー・ライド(Spur Ride*7)候補生。夜の闇の中、赤色のヘッドライトで地図を確認している。この訓練では、見通しの悪い地形において地図、コンパス、そしてプロトラクターだけを使用し、指定された場所を見つけなければならない。(Photo by 合衆国陸軍 Arturo Guzman一等軍曹 2025年10月7日撮影)パブリックドメイン VIRIN:251007-A-PH391-5048(出典元サイトの規約による注意事項:The appearance of U.S. Department of Defense (DoD) visual information does not imply or constitute DoD endorsement.)

以上、ミリタリー豆知識でした。

*1:米軍では、火力支援を要請する際は8桁の座標値で位置を伝えることになっているため、6桁の座標を砲兵隊に伝えるこの描写は正しくありません。(参照:米軍のマニュアル FM 3-25.26「Map Reading and Land Navigation」)。

*2:VIRIN は(Visual Information Record Identification Number)の略。アメリカ国防総省が公開する画像や動画等に対して付与される一意の識別番号。

*3:自衛隊向け商品を扱う「戦人」というブランドから「プロトラクター」という名称で市販されており、通信販売で購入が可能です。

*4:例えば北緯34度50分21秒684、東経134度41分38秒357という、60進数で表した姫路城大天守の緯度経度は、Googleマップの10進数表記だと34.8393568350677,134.69398811481548になります。10進数の場合、南緯と西経は頭にマイナスを付けた負の数字にします。

*5:赤いライトは夜間でも目に優しく、目立ちづらいため軍用ライトでよく使用されます。

*6:ジョージア州ランプキン郡周辺の5万分の1地形図(地形図の名称は「LUMPKIN」)です。

*7:一人前の騎兵になるための訓練。Spurは拍車という意味で、昔は拍車を着けて馬に乗るための通過儀礼的なイベントだった。現在は装甲車両に乗るため拍車は必要ないが、名前だけは残っている。