ドローンを購入してからは、ドローンを使わないと見られないものを撮影するために山に行っています。
今回もそんなパターンで、2015年3月に歩いた鶏足寺(けいそくじ)跡ととんがり山を歩いて来ました。
目的は、ドローンで鶏足寺跡と大黒岩、亀岩を撮影すること。
注:当日は風が強くて亀岩ではドローンを飛ばせませんでしたが、後日再訪して空撮した画像を掲載しています。
▲対応する地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図「龍野」
10:10
姫路市街の自宅を車で出発。
県道724号線を西進し、山陽自動車道をくぐって坂を下りきったところにある「石倉」交差点を右折。
小さな橋を渡り、先端に神社のある尾根を回り込むように左折して尾根沿いに北上すると、右側に峰相山大池が見えてきます。
この池を過ぎたところ(池の北西角)にある三叉路を右折し、最初の三叉路を左折。
後は田んぼの中の一直線の道を北へ進んでいくと、峯相上池(みねあいうわいけ)南側の堰堤下にある駐車場に到達します。
私はこのルートしか知らないので毎回この行き方をしていますが、尾根沿いの道は狭いので、大きめの車は通りにくいです。尾根沿いの道よりも、さらにもう一本東の道を通る方が良いかも。
10:40
峯相の里の駐車場に到着(地図中「P」)。
以下のURLをクリックすると、駐車場の位置がGoogleマップで表示されます。
▲峯相の里の駐車場
10:45
準備を整えて出発。
駐車場から北西に延びる道を進み、突き当たりを右へ曲がります。
▲峯相上池の西側を北へ進む
10:49
峯相上池を右に見ながらアスファルト舗装の車道を北へ歩いて行くと、峯相の里管理研修棟に出会います(地図中「峯相の里管理研修棟」)。
▲峯相の里管理研修棟
車道はこの研修棟の少し先までアスファルト舗装ですが、そこから簡易舗装になって開山堂前で途切れます。
▲簡易舗装の車道
10:55
開山堂に出会いました(地図中「開山堂」)。
ここは車道の終点なので、転回できるように広いスペースがあります。
▲開山堂(石段を登ると十一面観世音菩薩)
開山堂で今日一日の安全をお願いし、石段を登って十一面観世音菩薩でも同様にお参り。
▲十一面観世音菩薩
十一面観世音菩薩の右には「峰相山鶏足寺古蹟由来」と題された看板が設置されており、鶏足寺の由来が書かれています。
▲峰相山鶏足寺古蹟由来(拡大表示出来るので、興味のある人は読んでみてください)
寺号の由来については「郷土史うちこし」でも触れられており、上の看板に書かれている内容とともに、以下の記載もあります。
「鶏足寺」の寺号の由来は、新羅の別称を鶏林と呼び、この寺が鶏林(新羅人)の足跡のあった寺、すなわち新羅人ゆかりの寺とされることによる。(出典:「郷土史うちこし」p95 郷土史うちこし編集委員会編 平成13年10月1日)
参考までに、たつの市立埋蔵文化財センターの資料に書かれていた文章も紹介しておきます。
峯相山鶏足寺
鶏足寺は、峰相山(標高239.7m)の南腹に位置する山岳寺院跡で、峯相記に新羅の王子の創建と記載がある。峯相記は、同書の著者が貞和4年(1348)に当寺へ参詣し、老僧から聞いた話をまとめたという形式がとられている。峯相記には、金堂・講堂・法華堂・常行堂・五大尊堂・鐘楼・一切経蔵・勧請神(九所の社壇)・五重塔・三重塔・宝蔵・僧房が300余などの建物が往時にはあったと記されているが、天正6年(1578)に黒田勘兵衛に攻められ焼失し、現在は多数の削平地と石垣・石段・井戸跡・五輪塔・経塚などが残るのみである。本格的な発掘調査は行われていないが、8世紀第1四半期~16世紀前半の遺物(須恵器・土師器・灯明皿・瓦・備前焼・白磁・製塩土器・瓦質火鉢・砥石・茶臼・土器・瓦・経筒など)が採取されている。
(出典:たつの市立埋蔵文化財センター図録9 特別展「峯相記の考古学~西播磨の中世をさぐる~」平成24年10月20日 たつの市立埋蔵文化財センター)
秀吉に滅ぼされた鶏足寺ですが、「郷土史うちこし」には以下の記載があります。
峰相山の攻防 『播磨鑑』には、太市郷横太市村に桐野構居があり、領主は桐野大膳広行で赤松の支流であった。長子主税広景の孫、十郎左右衛門勝武は、大永のころ赤松村秀の幕下となり、その子勝條が相続して天正年中、羽柴秀吉の中国攻めのとき、峰相山の衆徒はこれに背いたので戦闘に及んだ。このとき桐野家は同心して一族は滅亡してしまった。(中略)この峰相山での戦闘記録は見当たらないが、左記のように赤松氏の家来が支援したことが、『赤松諸家大系図』に記されている。*広瀬師頼ノ後裔 平田忠冬、天正頃太市峰相寺入与力ス。後ニ別所ヘ籠ル。*宇野為助ノ後裔 長沢広末、赤松貞俊軍乱ニ郎従十人、門葉二十七人軍配ニ附峰相亡滅ノ時彼寺ヘ与力門支八人。*芦屋道満ノ後裔 原田道直、長川宮内、西森主馬助、中岡伯耄守、土井隼人、堀内監物、野中大学助、為以下知家老四百人従附峰相ヘ与力*赤松義則ノ後裔、大和久兵衛壱岐守、峰相山亡滅ニ与力、太市ノ郷民ト刀合。*赤松一族、別所家人土井西忠右衛門ノ門支、英賀掃部助、坂渕淡路守、黒瀬主水正川、俣井主膳正、船津井右進、南野中大膳、為下知峰相ヘコモル。(出典:「郷土史うちこし」pp.96-97 郷土史うちこし編集委員会編 平成13年10月1日)
十一面観世音菩薩の拝殿に向かって右上に防獣ゲートがあるのですが、そこから山へ入ります。
場所によってはロープで扉を結びつけるようなゲートもありますが、ここのゲートは掛けがねが2つあるだけで、開閉は簡単です。
▲十一面観世音菩薩の北にある防獣ゲート
ゲートから先は、幅は広いものの斜度がきつい坂です。
鶏足寺跡の植物を刈り払ったりした際に、キャタピラを備えた作業用車両を走らせるために作った道かな(簡易舗装の道から十一面観世音菩薩に向かって分岐する幅広の道があるので、小型のパワーシャベルなどは難なくこの道へ入れます)。
▲防獣ゲートから先の道の様子
11:07
広くて斜度のきつい道を上っていくと、空が開けた場所に出ました。
鶏足寺跡の削平地群です(地図中「鶏足寺跡」)。
▲ドローンで撮影した鶏足寺跡(矢印の場所に私が立っています)
▲カシミール3Dで「スーパー地形」データを確認すると、数多くの削平地が階段状に並んでいることが分かる
11:28
ドローンで鶏足寺跡を撮影するという一つ目の目的を果たし、鶏足寺跡を出発。
削平地群の西の端付近を登って行くと稜線に出ますが、そこには石積みがわずかに残っていたり、その周辺には多数の石が転がっています。
小さなプレートが立っていて、それによると中世墓の跡だそうです。
▲鶏足寺跡近くの稜線上に残る中世墓跡
中世墓の裏(西)へ回ると、稜線上を通る道に出会います。
岩に描かれたピンクの矢印やマーキングテープが目立っていました。
▲稜線上の道(鶏足寺跡付近)の様子
鶏足寺跡から南へ伸びる稜線上の道ですが、鶏足寺跡近くは道沿いに岩が大量に転がっています。
やがて岩はなくなりますが、岩のあった範囲がかつての鶏足寺の境内ということでしょうか。
大規模な山岳寺院だったようです。
▲稜線上の道(鶏足寺から離れた場所)の様子
11:39
岩が散在する登り坂に出会い、その坂を上りきると大黒岩への分岐に出会いました(地図中「大黒岩分岐」)。
ここには、南のとんがり山方面から来たハイカー向けに「左 大黒岩 右 峯相山」のプレートがあります。
鶏足寺方面から来た場合は、直進が大黒岩、左折するととんがり山方面です。
大黒岩をドローンで撮影するのも今日の目的の一つなので、分岐を直進して大黒岩へ向かいました。
国道29号線を山崎方面から姫路方面に向かって走っている時、「追分」「下伊勢」間の峠を東へ下っていると、正面の稜線の左の方で、まるで山の上にトーチカのようなものが立っているのが見えますが、それが大黒岩です。
11:40
大黒岩に到着(地図中「大黒岩」)。
大黒岩は、西側の巻き道を通って反対側へ回り込めます。
ドローンを飛ばそうかどうか悩むほどの強風でしたが、何故か大黒岩から景色を見ている間に風が弱まってきたではありませんか。
「今がチャンス」というわけで、大急ぎで準備をしてドローンを飛ばしました。
ドローンを着陸させようとするころに、また風が強くなってきました。
開山堂と十一面観世音菩薩でお参りをした効力かな(そういうものは信じませんが、そう思えるような出来事でした)。
▲登山道から見た大黒岩
▲ドローンで撮影した大黒岩(巨大な岩峰の先端が大黒岩だと分かる。矢印の位置に私が立っています)
▲大黒岩から見たとんがり山
11:52
ドローンを片付けて大黒岩を出発。
大黒岩分岐に戻り、南西へ伸びる道に入ります。
11:58
大黒岩から南へ進んでいくと最初に通過する小ピーク(地図中「250+m小ピーク(1)」)あたりから、道の両側にシダが出てきました。
▲足下にシダが目立ってくる
12:04
地図中の「250+m小ピーク(2)」を通過。
12:10
256.6m三角点ピークに到着。
ここには四等三角点標石(点名:下伊勢)があるだけで特に展望もなく、長居は無用です。
▲三角点ピークの様子
12:12
三角点ピークの南側にあるピークに到着(地図中「とんがり山」)。
▲とんがり山の様子
ここにも三角点標石のようなものがありますが、これは公共測量用の図根点で、三角点ではありません。
▲とんがり山山頂にある図根点標石(「図」と「公共」の文字が読み取れる)
とんがり山(南峰)で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2015年3月8日)
https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/tongariyama20150308/virtualtour.html
大黒岩にいたときも風は強かったですが、三角点ピークに着くとさらに風が強くなっていました。
ぼーっと立っているとよろめいてしまうほどの風ですが、展望を楽しみながら食事をするのが私の山歩きの大切な楽しみなので、意地でもここで食事を摂ることにしました。
軽い荷物には重しになるような別の荷物を載せたり、面倒ですが飛ばされそうなものはバックパックの奥からその都度出し入れしたり、軽い折りたたみ椅子や折りたたみテーブルは使わない等々、強風対策を万全にし、立ったまま食事をしました。
▲本日の昼食(唐辛子入りトマトソースのレジネッレとクラムチャウダー)
パスタは太くて短い縮れたタイプのものだったので、スプーンで掬って食べていたのですが、フライパンから口までスプーンを移動させる間にパスタが風で飛ばされてしまうほどの強風。
手に持ったフライパンも風に煽られて不安定だし、パスタが飛ばされないように顔をフライパンのすぐ側まで近づけないといけないし、熱々の状態は最初の数分だけですぐに冷めてしまいましたが、やっぱり私の場合、山での食事は好展望の場所に限ります。
▲とんがり山の山頂から、輝く播磨灘を見る(小豆島もはっきり見えた)
12:52
強風の中、必死で展望と食事を満喫したので、下山開始。
3つめの目的である亀岩の空撮は、この風の強さではどう考えても不可能です。
「でも、大黒岩の時みたいに風が弱まるかも」とわずかな希望を持って、とんがり山南側のとんでもない急斜面を下りました。
▲とんがり山から南へ下る斜面は恐ろしい斜度(見上げて撮影)
毎度のことですが、この斜面は急すぎます。
梯子を前向きで下りているような感覚になるので、後ろ向きで下りた方が良いかも。
とんがり山が何故そう呼ばれているのかは、後日、風の弱い日に再訪してドローンで撮影した下の画像を御覧いただければ分かると思います。
登山道は南面にあり、ドローンは南西からとんがり山を撮影しているので、右側の斜面に登山道がつけられていることになります。
▲とんがり山をドローンで南西から撮影した画像(撮影日:2017年12月24日)名前の通りとんがっている。
この斜面の途中で、亀岩がよく見える場所がありました。
▲とんがり山から下る途中で見た亀岩(矢印が差している岩)
急斜面の後は、背の高いシダに挟まれた道を進みます。
13:06
亀岩に到着(地図中「亀岩」)。
亀岩には、次のようないわれがあるそうです。
亀岩の伝説
この先にある亀岩のくぼみには、年中枯れることなく小水がたまっています。崇神天皇の時代(前84年)にその亀岩に香稲(かしね)が4本生え、その稲の穂を天皇の命により諸国に耕作しました。以後、諸国に流布した香稲はこの岩に生えていた4本の香稲の種子であったといわれております。
平成20年7月 社団法人姫路青年会議所
(出典:亀岩の南にある看板)
▲亀岩上部の様子
亀岩で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2015年3月8日)
https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/kameiwa20150308/virtualtour.html
▲ドローンで南東側から撮影した亀岩ととんがり山(撮影日:2017年12月24日)
▲亀岩に立ってドローンで北から自撮りした画像(撮影日:2017年12月24日)
丸みを帯びた大きな岩に見えますが、角度を変えて真南から撮影すると、西側が切れ落ちたような形になっていることが分かります。
切れ落ちた部分の下が巻き道。
13:09
ドローンで亀岩を空撮できないかとしばらく風の様子を見ていましたが、弱まるどころか、とんがり山にいたときよりも強いんじゃないかという状態。
というわけで、さっさと諦めて下山を続行しましょう。
亀岩の西側には巻き道が通っているので、安全に南へ下ることが出来ます。
巻き道へは、亀岩の上部北西から下りられます。
▲亀岩の西にある巻き道
「250+mピーク(1)」付近から登山道沿いにシダが出てきましたが、シダは所々で少なくなるものの、なくなることはなく、亀岩の南側にいたっては下の写真のような状態。
▲シダが多い道の様子
足下が見えず、枯れ枝や段差、植物の蔓が引っかかったり、シダにつきものの胞子やマダニがズボンに付着したり、なかなか不快な道です。
162m標高点の北にある鞍部から東へ下るような記憶があったのですが、進路が変わる地点は鞍部からわずかに登り返したところでした。
13:23
南に向けて稜線を通っていた道が東へ向きを変える場所を通過(地図中「変針地点」)。
162m小ピークへ続く道は、ロープで封鎖されていました。
▲道が向きを変える場所の様子
東へ下る道もここまでの道と同様にシダが多く、滑りやすい場所も何カ所かありました。
13:33
支柱にもたれかかった「峯相山登山口 亀岩・トンガリ山・尾根コース」の看板がある場所に下りてきました(地図中「登山口看板」)。
▲峯相山登山口
登山口看板の場所からは、左側に竹林(この付近の特産品である筍が採れる)を見ながら林道のような道を東へ進みます。
▲竹林を見ながら車道を目指した
車道に出た後はそのまま北へ進み、峯相上池手前で右折して駐車場へ戻れば良いのですが、今回は車道に出た場所の右前方にあった防獣ゲートを開き、田んぼの中を東へ進んで、来たときに車で走った道をたどって駐車場に戻りました。
13:43
駐車場に到着。
ズボンに付いたマダニを1匹ずつ丁寧に取り除いてから車に乗り込みました。
14:10
自宅に到着。
▲本日のルートの断面図(カシミール3Dで作成)