播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

ドローンの飛行許可・承認を受けました

重要
この記事の内容は、記事公開時点の法律や制度などに基づいています。
記事の作成者(私、しみけん)は法律の専門家ではないため、内容の正確さを保証しません。
2017年初頭にマルチコプター型ドローンの「Mavic Pro(マヴィック・プロ)」を入手して以来、海や山でドローンを飛ばして遊んできました。


▲Mavic Pro

飛ばす場所が海や山だけだったのには、理由があります。

それは、航空法第132条でドローンやラジコン飛行機、ラジコンヘリ等(※)(以下ドローン等)の飛行可能な場所が制限されているから。
※航空法施行規則第5条の2により、重量が200g未満(バッテリー含む)の機体は対象外。

航空法第132条では、以下の3つのエリアでドローン等の飛行が禁止されています。
  1. 空港等の周辺の上空(航空法第132条第1号)
  2. 人口集中地区(Densely Inhabited Districtの頭文字を取ってDIDと呼ぶ)の上空(航空法第132条第2号)
    以下のURLで表示される地図で赤く表示されている部分がDIDです。
    http://maps.gsi.go.jp/#8/35.563512/140.339355/&base=std&ls=std%7Cdid2010&blend=0&disp=11&lcd=kokuarea&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0&d=vl
  3. 地上から150m以上の高さの空域(航空法第132条第1号)
他に「小型無人機等の飛行禁止法」によって政府機関やその他重要施設上空やその周辺(おおむね300m程度)は飛行が禁止されています。

これを見ると「なんだ。郊外ならなんの問題もないじゃないか。」と思われるかも知れません。

しかし、航空法第132条の2ではドローン等の飛行方法についても定められていて、以下のルールを守らないといけません。
  1. 日中(日出から日没まで)に飛行させること
  2. 目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
  3. 人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること
  4. 祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと
  5. 爆発物など危険物を輸送しないこと
  6. 無人航空機から物を投下しないこと
これらのルールの中で、たとえ郊外であってもドローン等を飛ばしづらくしているのは「3」です。

郊外の田畑上空でも、近くに第三者の納屋や車両があったり、電線や電柱が立っていることはよくあります。
それらすべての物から30m以上の距離を保って飛ばさないといけないとなると、ドローン等を飛ばせる場所は本当に限られていますし、これらのルールを破った場合は、50万円以下の罰金が科される可能性があります。

そのため、私は山の上や海でしかドローンを飛ばさなかったのです。

ここまで読むと、「テレビなどで見かけるドローンの映像はどうなんだ?街中の映像があるぞ。」と思われる方もいるでしょう

実は、DID上空を飛ばしたり、禁止されている方法でドローン等を飛行させることは、地方航空局長の許可、または承認を得れば可能なのです(「小型無人機等の飛行禁止法」や自治体の条例、その場所の管理者が定めたルール等で禁止されている場所を除く)。

許可と承認の2種類がありますが、飛行禁止空域での飛行は「許可」を受け、禁止されている飛行方法を使う場合は「承認」を受けることになっています。

空撮業者さんなどは、これらの許可・承認を受けて、各事業者が作成した飛行マニュアル、または航空局の標準マニュアルを順守して飛行させているというわけです。

「それなら、自分も許可や承認をとって好きな所で飛ばしてやる」と考える人が出てくるでしょう。

そのためには、自分の住所地を管轄する地方航空局の申請窓口に、まずは電子ファイルで「無人航空機の飛行に関する許可・承認申請書」を送付して審査を受け、問題がなければ原本を郵送して許可・承認書を発行してもらうという流れになります。

国土交通省のWebサイトにWord形式で申請書が公開されているので、興味のある方はご覧下さい。


▲「無人航空機の飛行に関する許可・承認申請書」の1ページ目(私の場合で申請書は添付資料も含めて合計14ページになった)

しかし、今までドローン等を操縦したことがなく、ドローン等を買ったばかりの人は、前述の許可や承認の申請ができません。

許可・承認申請の審査基準が書かれている「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」の4-2(1)には、次の記載があるのです。

飛行を予定している無人航空機の種類(飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船のいずれか )別に、10 時間以上の飛行経歴を有すること。

原則としてドローン等の操縦経験が10時間以上ないと、そもそも申請ができません。

私の持っているドローン「Mavic Pro」の場合、バッテリー1つでおよそ20分強飛ばせますから、バッテリーが合計3つ手に入る「フライモアコンボ」というパッケージを買えば、バッテリーを3つ使って一日で1時間飛ばせることになります。
が、それでも10時間に達するには10日かかりますし、一人で漫然と飛ばしていると、20分も経てば飽きてきます。
短期間で10時間の飛行実績を作るのは難しい。

その「10時間」についても、「航空局標準マニュアル」には以下の記載があります。

プロポの操作に慣れるため、以下の内容の操作が容易にできるようになるまで10時間以上の操縦練習を実施する。なお、操縦練習の際には、十分な経験を有する者の監督の下に行うものとする。

ただ離陸させてGPS等各種センサーの機能に頼ってホバリングだけさせて飛行時間を稼いだり、漫然と飛ばしているだけでは操縦技術が身につきませんから、きちんとした訓練をしなさいということでしょう。

「航空局標準マニュアル」は、「無人航空機の飛行に関する許可・承認申請書」の「無人航空機を飛行させる際の安全を確保するために必要な体制に関する事項」の欄に「航空局標準マニュアルを使用する。」と書くのが一般的になっているようなマニュアルですから、これに従わないわけにはいきません。

「今時のドローンはGPSやジャイロ、加速度センサー、気圧センサーもあって、高度な操縦技術なんて不要じゃないか。」と思われるかも知れませんが、高い建物に囲まれた場所や、山岳地域の場合は谷間や崖沿いでGPSの電波を正常に受信できなくなる可能性が高いため、意図しない動きをドローンが突然始める可能性があります。

そのような状況には、しっかり訓練を積まないと対処出来ません。
第三者や第三者が管理する物件に被害を与えないためには、そんな場合でも機体を安全な場所まで自分で操縦できる(場合によっては安全な場所に意図的に墜落させる)技術が必要なのです。

「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」4-2に以下の記載がありますから、初心者でも安定して飛ばせる最近の上位機種のドローンをのほほんと飛ばしているだけでは、許可・承認を受けるのは難しそうです。

(3)飛行させる無人航空機について、次に掲げる能力を有すること。
   (中略)
 b)遠隔操作により飛行させることができる無人航空機の場合には、a)の能力に加えて、GPS(Global Positioning System)等による位置の安定機能を使用することなく、次に掲げる能力を有すること。
  ア)安定した離陸及び着陸ができること。
  イ)安定して次に掲げる飛行ができること。
   ・上昇
   ・一定位置、高度を維持したホバリング(回転翼航空機に限る。)
   ・ホバリング状態から機首の方向を90°回転(回転翼航空機に限る。)
   ・前後移動
   ・水平方向の飛行(左右移動又は左右旋回)
   ・下降

ドローン自体の性能も重要ですが、操縦者の技能も同じくらい大切で、その両方が充分だと認めてもらって初めて許可・承認が下りるわけです。

空撮業者さんや、ドローンで太陽光パネルの点検をしているような業者さんなら仕事で何十時間~何百時間もの飛行実績があり、ノウハウも蓄積されているでしょうから許可や承認は下りやすそうですが、個人での申請の場合は、そもそも10時間の飛行実績を積む(しかも高度な操縦技術を身につける)こと自体が大変です。

そんなこんなで、航空法で飛行が禁止されている場所や方法でドローン等を飛ばすのはなかなか大変。

そこで頼ったのが、航空局がホームページに掲載している「無人航空機の講習団体及び管理団体一覧」に掲載されたドローンスクール。

なぜドローンスクールに行こうと思ったのかというと、以下の2つの理由があります。
  • スクールを修了すれば10時間の飛行実績(それも、漫然と飛ばしたのではなく、高度な技術を持つインストラクターの監督下で飛ばした実績)が得られる。しかもスクールに証拠が残る。

  • 国土交通省のサイトで公開されている許可や承認に関するQ&Aのうち、ラジコン愛好家向けとして掲載されている以下の質問と回答が気になったから。

    Q19-3 機体や操縦技能についての認定等が義務づけられるのですか。

    A 航空法による義務付けはありませんが、安全飛行のため、飛行クラブや愛好者団体等が行っている機体や操縦技能の認定制度等への積極的な参加を推奨します。
     なお、飛行に関する許可等が必要な場合には、機体、操縦技能及び安全確保の体制について書面による審査が行われます。

「無人航空機の講習団体及び管理団体一覧」に掲載されているスクールを修了すれば、審査がスムーズに進むかなと期待したわけです。
(注:許可・承認を受けるためにドローンスクール等を修了したり、関連資格を取る必要は必ずしもありません。私の場合、私の個人的な考えでそうしただけです。)

そしてこの夏、職場の夏休みを利用して合計4日間スクールに通い、座学と10時間の実技講習を受けました。

実技講習で使う機体はGPSが無効化された古いドローンで、今時のドローンならプロポから手を離すとその場にじっとしていますが、教習用ドローンは常にプロポのスティックを操作し続けないとホバリングできません。

操作しなければフラフラーっとどこかへ飛んでいってしまいますし、着陸時も今時のドローンと違い、地面効果で(地面に当たって跳ね返る風に煽られて)あらぬ方向へ動いてしまい、決められた着陸地点に下ろすことさえ難しい。

高度を変える操作をしていなくても勝手に高度が変わるので、水平方向の操縦だけでなく高度を安定させる操作も常に必要。

そんなドローンで色々な飛び方をさせられるものですから、精神的に疲れます。
楽しいんですけどね。

10時間も訓練をすればそんな暴れん坊のドローンでもかなり思い通りに飛ばせるようになり、航空局が認定したスクールを修了したという紛れもない事実ができたため、自信を持って航空局へ申請書を出すことができました。

申請を出してから「無人航空機の飛行に関する許可・承認書」を受け取るまでにかかった時間は、私の場合で次の通りです。

左端は事前審査のための申請書送付を1日目とした経過日数。

 1日目:記入済みの申請書の様式をメールで大阪航空局の担当窓口に送信。
 2日目:申請書を受信した旨のメールを大阪航空局から受信。
10日目:原本送付依頼のメールを大阪航空局から受信。
11日目:押印済みの原本を大阪航空局宛に普通郵便で送付。
18日目:「無人航空機の飛行に関する許可・承認書」原本が普通郵便で到着。


▲私の元に届いた「無人航空機の飛行に関する許可・承認書」

ネットでは、窓口担当者から申請書の内容の修正依頼を何度も受けたとか、申請書の内容について電話で確認がきたというブログ記事などを見ていたので、私も何回修正させられるのかとドキドキしていましたが、確認事項も修正もなしで済みました。

申請した項目が少なかったこと(航空法第132条第2号(DID上空の飛行)と同132条の2第2号(目視外飛行)、同第3号(30m未満)だけ)が幸いしたのかな。

ただ、「無人航空機の飛行に関する許可・承認書」が届いたからといって、嬉しそうに所構わず好き放題にドローン等を飛ばして良いわけではありません。

「無人航空機の飛行に関する許可・承認書」の効力は、あくまでも「“航空法上は”飛ばしても良い」という意味があるだけで、航空法以外の法律や自治体の条例等で飛行が禁止されている場所では当然飛ばせませんし、その場所の管理者が「飛ばしてはダメ」と言えば飛ばせません。

でも、やっぱり嬉しいのは嬉しい。

今までは、麓のDID(人口集中地区)と同じ住所をもつため山の中なのにDID扱いされている場所や、山小屋、あずまや等がある場所ではドローンを飛ばせませんでしたが、今後は“航空法上は”問題なくドローンを飛行させることができます。

このブログでも、山に登ったときのドローン空撮画像が増えるかも。

参考資料(航空法第132条~第132条の3)

第九章 無人航空機

(飛行の禁止空域)
第百三十二条 何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。ただし、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合においては、この限りでない。

一 無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域

二 前号に掲げる空域以外の空域であつて、国土交通省令で定める人又は家屋の密集している地域の上空

(飛行の方法)
第百三十二条の二 無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。ただし、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、次の各号に掲げる方法のいずれかによらずに飛行させることが航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないことについて国土交通大臣の承認を受けたときは、その承認を受けたところに従い、これを飛行させることができる。

一 日出から日没までの間において飛行させること。

二 当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること。

三 当該無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に国土交通省令で定める距離を保つて飛行させること。

四 祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外の空域において飛行させること。

五 当該無人航空機により爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれがある物件で国土交通省令で定めるものを輸送しないこと。

六 地上又は水上の人又は物件に危害を与え、又は損傷を及ぼすおそれがないものとして国土交通省令で定める場合を除き、当該無人航空機から物件を投下しないこと。

(捜索、救助等のための特例)
第百三十二条の三 前二条の規定は、都道府県警察その他の国土交通省令で定める者が航空機の事故その他の事故に際し捜索、救助その他の緊急性があるものとして国土交通省令で定める目的のために行う無人航空機の飛行については、適用しない。

出典:e-Govウェブサイト(http://www.e-gov.go.jp