播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。原則として更新は週に1回です。広告は表示しません!

コストコでしか買えないトランシーバー:FC-CO20RW

概要

本日紹介するのは、免許や資格がなくても使用できる無線機です。
 
通信距離が長いアマチュア無線機は、免許をとらないと使うことが出来ません。
電波が遠くまで届くということは電波が強い、つまり他の無線機器への影響が起こりうるので、正しい知識を持った人が適切に使用する必要があるというわけです。
 
しかし、ショッピング施設や飲食店などで従業員間の通信に使われているような無線機であれば、電波の出力が弱く、周囲への影響がほとんどないということで、免許や資格を持っていない人でも操作可能。
 
こういった出力の小さな無線機は特定小電力トランシーバー(略称は「特小:とくしょう」)と呼ばれ、有名メーカーの製品であれば1台あたり1万円前後で販売されています。
 
 
▲FC-CO20RWの2台入りパッケージ
 
製品名: FC-CO20RW
メーカー: 株式会社エフ・アール・シー(東京都)
生産国: 中国
周波数範囲: 422.0500~422.3000MHz(単信20波)
         421.5750~421.9125MHz(半複信受信27波)
         440.0250~440.3625MHz(半複信送信27波)
通信方式: 単信、半複信
送信出力: 10mW
受信感度: -8dB以下(@12dB SINAD)
低周波出力: 100mW以上(@8オーム5%歪)
電源: 単3形電池×1本
耐候性: IP67(防水・防塵)
サイズ: 51mm × 90mm × 30mm(突起物を含まず)
重量: 90g(電池含まず)
購入価格: ¥9,800(2台セット)
購入先: コストコホールセール神戸倉庫店(神戸市垂水区)

購入の経緯

コストコで買い物をしている時に、特定小電力トランシーバーが売られているのをたまたま発見。
 
甥っ子がどういうわけか無線機に興味を持ち、誕生日プレゼントにトランシーバーを欲しがっているというのを聞いていたので、本格的な特小の半額程度だからと購入してみたところ、他の安価な特小では見られないような特徴があることが分かり、後日コストコに行った際、自分用にも1セット買ってしまいました。
 
調べてみると、株式会社エフ・アール・シーのFC-G20Rと同じ製品のようです。

外観

 
▲パッケージ内容(トランシーバー本体×2、ベルトクリップ×2、取説×1)
 
見た目は安っぽい特小で、コストコだから安いというわけではなく、この値段ならこんなものだろうという質感です。
 
背面には、(当然ですが)技術基準適合証明(技適マーク)がきちんと表示されています。
 
 
▲技適マーク(上に貼られている郵便のマークのようなステッカー)
 
技適マークは、日本の電波法に適合するように作られた無線機であることを証明するもので、これがない無線機は日本国内の放送用電波や消防、防災無線、タクシー無線などを妨害する可能性があり、そういった無線機を日本国内で使用すると、電波法違反になってしまいます(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)。
 
ネットショッピングだと、恐ろしく安い価格で何十キロも電波が届くことを謳った無線機が売られていたりしますが、そういった製品は海外の規格で作られていますから、技適マークがついていません(あやしい無線機を売っているWebサイトでは「法令を各自で調べて下さい」とか「海外旅行でお使い下さい」などと書かれていたりします)。

総務省は電波の監視システムをもっており、違法な無線局を摘発した事例がWebで公開されています。
安いからといって、日本国内の電波環境に合わない無線機を買うことは絶対におやめ下さい。
 
ところで、スマートホンも無線機ですが、これは本体に技適マークを表示する代わりに、設定画面で技適マークが表示されるようになっています。
 
閑話休題、FC-CO20RWの背面には、付属のポケットクリップを取り付けられます。

比較的しっかりしたクリップで、クリップ自体を本体へ取り付けたり取り外したりするのは工具いらずで簡単。
クリップの角度は固定式で、高価な製品のようにクリップを横や斜めに向けることは出来ません。
 
 
▲ポケットクリップ(左がクリップを取り付けた状態。右はクリップを付ける前の状態)
 
続いて、操作部を見ていきます。
 
一般的な特小と同様、上面にボリュームダイヤルを兼ねた電源スイッチがあります。
左側面にあるのはPTT(Push To Talk。送信時に押すボタン)とLEDライトのスイッチ。
 
正面の液晶画面下には3つのボタンが並んでいて、中央がメニューボタン(「M」と表記)で、その左右に設定変更用のDOWNボタンとUPボタンがあります。
 
 
▲液晶画面のある面に向かって左側面にPTTとLEDライトのスイッチ、上面に電源兼用のボリュームスイッチ、液晶下に左からDOWN、メニュー、UPボタン
 
 
▲反対側にもボタンのようなものがあるが、それは飾り。ボタンのように見える模様の上にストラップホールがある。
 
LEDライトは非常時に懐中電灯として使うための機能のようですが、明るさはそれほどありません。
一度ボタンを押すと点灯し、次に押すと点滅を開始。もう一度押すと消灯します。
 
このLEDライトは、誤操作を防ぐためのキーロックをかけていると、電源ONの状態では点灯できません。
電源をOFFにしていると、キーロックの有効・無効に関係無く点灯させられます。
 
 
▲LEDスイッチを押すと、上面のLEDライトが点灯する

特徴

私が惹かれたFC-CO20RWの特徴は2つあります。

一つはIP67(粉じんが内部に侵入せず、規定の範囲内で水中に入れても有害な影響を受けない)の防水・防塵性能。
 
もともと子供へのプレゼント用として買ったわけですが、子供に使わせるなら防水・防塵性能は必須です。
彼らは機械の繊細さを知りませんから、汗まみれ、泥まみれになったり川で遊んで濡れたままの手で平気で電子機器を触ります。
 
一般的に子供は物の扱いが乱雑で、手に持っている物もよく落としますし、何も考えずに不安定な場所に物を置き、落下させることもよくあります。
 
よくあるラッチで止めるタイプの電池蓋なら、落下の衝撃で蓋が開いて電池が飛び出したり、蓋が破損して閉まらなくなってしまいますが、FC-CO20RWは防水性を高めるために電池蓋がねじ込み式になっているので安心(まだ落としたことがないので本当に大丈夫なのかどうかは不明ですが…)。
 
私が気に入ったもう一つの特徴は電源です。
 
通常、特小は単3形電池を3本使うものが多いと思います。
しかし、FC-CO20RWは単3形電池を1本しか使わないのです。
 
子供は、おもちゃなどでも使い終わってきちんと電源を切らないことがあるので、すぐに電池を使い切ってしまいます。
一般的な特小だと電池が切れる度に単3形電池×3本を入れ換えないといけませんが、1本ならそれほど負担になりません。

ランニングコストが安く済むわけです。
 
アルカリ単3形電池×1本でどの程度の時間使用できるのか不安はありますが、カタログスペックでは送信10秒、受信10秒、待ち受け80秒の繰り返しで約35時間動作するとされています。
 
 
▲本体底面の電池の挿入口(防水のため蓋に赤いOリングが付いている)
 
 
▲電池の挿入口はコインを使って回せるように溝がついている(電池蓋の破損を防ぐため、コインではなく手で締める方が安全です)
 
電池蓋は金属部分と樹脂部分の2つの部品がネジで結合されたものですが、このネジ留め部分が弱いため、蓋の開け閉めの際には注意が必要です。

性能

特定小電力トランシーバーの送信出力は法律で決められているため、安価な物も高価な物も出力は同じ。
違いが出るのは、受信回路の出来やアンテナの品質の影響を受ける受信性能です。
 
FC-CO20RWの受信感度は-8dB以下(@12dB SINAD)ですが、1台1万円程度の有名メーカー製品であれば-14dB以下 (12dB SINAD)となっていたりします(値が小さい方が感度が良い)。

つまりFC-CO20RWは、高級機よりも受信性能が劣っていることがカタログスペックからでも分かるわけです。
受信性能が悪いと、電波を受けられる距離も短くなってしまいます。
 
では、その「電波を受けられる距離(電波が届く距離)」ですが、一概には答えられません。

特小に限らず無線機を使っていると、無線を知らない人から「何メートルくらい届くの?」と聞かれることがよくありますが、電波の届く距離なんて、使用する環境で大きく変わるため答えることは不可能です。
 
周りに何の障害物もない見通しの良い山の上で、近くの稜線上にいる相手と通信するなら、特小でも1キロ程度離れた相手に電波が届くことがありますが、尾根の上とその麓との間で通信する場合は、距離は短くても全然つながらなかったりします。

街中なら建物などで電波が遮られてしまうため、100mも届きません。市街地であっても、高速道路上で車同士で通信する場合は、数百メートル離れていても通信できることがあります。
 
要するに、見通しがあるのとないのとでは電波が届く距離が大きく変わり、極端な話、無線機のアンテナを立てているか倒しているかによっても結果は変わります。
 
というわけで、メーカーの製品紹介サイトを見ても電波の届く距離は書かれていません。
書かれていないというより、書けないのです(目安としておおざっぱな距離がかかれている場合はあります)。
 
特小の通信可能な距離を知りたい場合は、実際に使おうと思っている環境で実機を使って実験するしかありません。
 
とは言っても、「特小を持ってるなら、通信可能な距離の目安くらい書いてくれよ」という意見も出そうなので、以下のような実験を行ってみました。
 
実験方法
FC-CO20RWとアルインコのDJ-P20をそれぞれ異なるチャンネルを受信するようにして並べて置き、その2台が写るようにビデオカメラをセット。
 
 
▲実験のために並べた2台の特小(左はアルインコのDJ-P20、右がFC-CO20RW)
 
<見通しの無い平地の住宅街での実験>
自宅1階の道路に面した窓際に2機種2台の特小とビデオカメラを設置し、家を出て直線距離で200mほど離れた場所、100mほど離れた場所、70mほど離れた場所、50mほど離れた場所、20mほど離れた場所の5箇所(いずれも住宅街の道路上)でFC-CO20RWから2つの周波数(屋内の2台の特小それぞれの受信チャンネル)で電波を発射。後でビデオカメラの映像で音声を確認しました。
 
その結果、200mほど離れた場所から電波を出した際は、2台ともノイズすら鳴らず。100mと70m離れた2つの地点は、FC-CO20RWもDJ-P20もザーッという音が鳴るだけで声は聞き取れず。50mと20mの地点は間に駐車場を挟む形で家屋がなく、FC-CO20RWもDJ-P20も電波をしっかり受信できました。
 
<見通しのある場所での実験>
自宅のバルコニーに2機種2台の特小とビデオカメラを設置し、バルコニーを見通せる場所(500m離れた地点(※)と100m離れた地点)から電波を発射して帰宅後、ビデオカメラの録画映像で音声を確認。
※近くの山の上。完全に見通しのある場所を見つけられなかったので、自宅と500m地点の間の障害物が最小限になる場所を選びました。
 
100mほど離れた場所で電波を発射した場合は、2機種とも明瞭に音声を聞き取れました。
前述の住宅街での実験では、100m離れるとノイズしか聞こえなかったのに対し、見通しがあれば全く問題なく通話ができます。
 
500mほど離れた場所から送信した場合には、2つの機種で差が出ました。
FC-CO20RWはザーッというノイズが鳴るだけで、声は聞き取れず。
DJ-P20はノイズ混じりで小さな声でしたが、何をしゃべっているのかを聞き取れました。
 
その他の使い勝手もみていきます。
 
液晶画面ですが、お世辞にも見やすいとは言えません。特定の角度から見ればくっきり見えるというレベルです。
 
 
▲FC-CO20RWの液晶画面(左はPTTを押して電波を送信してる状態。右は受信状態。液晶画面で送信/受信状態を確認できる)
 
FC-CO20RWには様々な機能がありますが、それらをいじるための設定画面に行くには、液晶画面の下にある「M(メニュー)」ボタンを繰り返し押す必要があります。
 
例えば、初期状態ではボタンを押す度に電子音が鳴るのですが、それを止めるための設定画面に行くには「M」ボタンを10回押さないといけません。
 
「M」ボタンを押す度に機能が切り替わっていくのですが、行きすぎた場合は戻れません。いったん設定を中止してもう一度「M」ボタンを押していく必要があるのです。
 
各種機能はめったに設定を変更しないのであまり気にならないかも知れませんが、こういった使い勝手の悪さも安価な製品なので諦めるしかないでしょう。

気になる点

FC-CO20RWを使っていて気になったのは、上にも書きましたが電池蓋です。

新品の電池を入れて電源をオンにすると、バッテリー残量ゲージは満タン表示(3目盛り)になるはずが、突然ゲージの目盛りが1つになり、バッテリー残量警告が出ることがあります。

こんな場合は、電池蓋を少し緩めたり締め直したりしているうちに直ります。
 
電池蓋自体が一つの大きな電極になっていて、電池収納部内側のネジ溝を介して電気を回路に送るようになっているのですが、そのネジ溝部分で接触不良が起きやすいのかな。
 
この電池蓋ですが、締め込んだときに外側になる部分が樹脂部品で、それが金属製の電極と2本のネジで接続されています。
ところが、このネジ部分の強度が低く、無理に電池蓋を回すといとも簡単に折れてしまいます。

そうなると、本体内に残った金属製の電極をラジオペンチか何かで回して開け閉めしないといけませんし、修理も不可能です(私も電池蓋を一度壊し、メーカーから新品を取り寄せました。)
 
電池蓋はコインなどで開け閉めできるようなデザインになっていますが、一度壊してからはコインなどを使わず、(締めすぎる心配が無いように)指先で電池蓋を開け閉めしています。
 
FC-CO20RWには、電池関連でもう一つ問題があります。
電源を切っていても微量の電流が流れているらしく、電池を入れっぱなしにしておくと次回利用時に電池残量の目盛りが一気に減っているという状態になるのです。

使い終わったら電池を抜いておくのが良さそう。

最後に

「携帯電話やスマホがある時代に、なんで特小?」と思う人も多いでしょうが、ちょっと山奥へ行けば圏外で通信も通話もできないところはまだまだあります。
 
そんな場所では、電波の届く距離が短くても特小が役立つことがあります。

例えば登山時に先頭と最後尾の登山者が連絡を取り合って歩くペースを整えたり、非常時に素早い対応をとることが出来ます。実際、しっかりした登山グループだと、グループ内で複数のメンバーが肩に特小を付けて(高い位置に装着する方が電波を拾いやすい)歩いているのを見ることがあります。
 
電話は1対1でしか通話ができませんし(今ならLine等のメッセージアプリで1対多の文字のやりとりは出来ます)、操作が面倒、通話料金やバッテリー残量を気にしないといけないという欠点がありますが、特小はその欠点を補えます。
 
特小は、一人が何かを送信すれば、同じチャンネルを受信している人全員にその内容が聞こえますし、ボタンを押してしゃべるだけなので、緊急事態でも即座に他の人に伝えることが出来ます(携帯電話だと、電話帳から相手を選んで発信ボタンを押して、相手が出るまで待つ必要がある。しかも、それだけ時間をかけても伝えられる相手は一人だけ)。

こういった特徴は、サービス業では大きな利点になります(ご存じの通り、飲食店などではスタッフ全員が特小を身に着けていたりします)。
 
作業現場などで離れた場所にそれぞれスタッフがいる場合も、携帯電話だといちいち電話をかけるのが面倒だったり、バッテリー残量が気になったり、作業用の手袋をはめているとスマホのタッチパネルが操作できなかったりと不便なことが多く、こまめなやりとりが出来なかったりしますが、特小だと簡単にコミュニケーションがとれます。
 
電波の届く距離による制限はありますが、特小が活躍できる状況はまだまだあるのです。
 
FC-CO20RWは、使いづらいところもありますが、値段とランニングコストの安さ、防水・防塵性能により、他の安価な製品よりも魅力的になっていると思います。
 
ただ、安い物には安いなりの理由があります。逆に、高い製品にもそれなりの理由があります。
使い勝手や受信性能の良さを求める場合は、少なくともこれの2倍程度の金額の有名メーカーの特小を購入してください。

注意事項

特小は、電波が弱いため店舗内やビルの同一フロア内といった狭い範囲内での通信に向いています。

特小に限りませんが、無線機は送信者のチャンネルと同じチャンネルに合わせた無線機を持っていれば、(何かしらの対策をしない限り)通信内容を聞き取ることが出来るため、聞かれたくない内容の通話には不適です。

特小は、無免許・無資格で操作できる上、無線機自体も比較的安価なので、数をそろえるのには便利。こういった特徴を活かせる使い方にのみ、お勧めします。
 
「特小のパワーは弱すぎる。コストは掛かってもいいので、もっとパワーのある無線機が欲しい」という場合は、アマチュア無線機ではなく、簡易無線(申請が通れば使えて免許不要)を検討してみて下さい。

アマチュア無線は国家試験を受けて免許を取る必要があり、使い道にも制限があって仕事に使うことは禁止されています。