播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

浜の宮天満宮の台場差し@姫路市飾磨区須加

祭りが盛んな我が街、姫路。
今がまさに祭りの時期のまっただ中です。

本日は、姫路市重要無形民俗文化財に指定されている「浜の宮天満宮 台場差し」を見学に行ってきました。

浜の宮天満宮の氏子になっている地区はたくさんありますが、その中で「須加」「宮」「天神」「西細江」の4つの地区の屋台が台場差しを行います。

そもそも「台場差し」とはなんぞや?と思われるかも知れませんが、それは後ほど。

今日は午前中、午後、夜に1回ずつ、合計3回の台場差しが披露されるのですが、朝はグデ~っとしている間に時間が過ぎてしまったので、午後3時の台場差しを見ることに。

午前中と夜は浜の宮天満宮で行われる台場差しですが、午後3時からの分は、浜の宮天満宮から直線距離でおよそ400m北東に離れた御蔵前公園(姫路藩の米蔵があった場所なので、この名前になっています)で実施されます。


▲午後3時~浜の宮天満宮 台場差しが行われた御蔵前公園の位置


公園から南の道路は車両通行止めで、歩行者専用になっていました。


▲「宮堀橋」交差点から南へ進む道路は車両通行止め

私が現地に到着したのは3時少し前でしたが、その時点で公園に屋台は1台もなく、担ぎ手の身内の方と思われる人たちが「遅いなぁ。あの人ら休んでばっかりやからなぁ。」等と愚痴をこぼしていていました。

そうこうしている内に屋台が公園内に次々と入ってきました。


▲公園内に入ってきた須加の屋台

私は宮という地域の屋台の勢いに押されて公園の南東隅へ追いやられ、担ぎ手さんと公園のフェンス際にある立木の間に挟まれそうになりましたが、担ぎ手さんは歴戦の強者です。
見物客に衝突することなく所定の位置にぴったりと屋台を下ろしました。

目の前に置かれた屋台の迫力には圧倒されます。
Youtubeや画像で事前に見てはいましたが、やはり実物のもつ空気は全く違いますね。


▲宮の屋台の飾り(どの屋台も狭間の彫刻は見事)

3時半を回って屋台が公園内に揃っても全く台場差しが始まる気配がなく、子供達も「いつ始まるの?」と口々に言い始めました。

そろそろ4時になろうかという時に、いよいよ台場差しが始まりました。
この頃には公園内が人でいっぱい。


▲台場差しがまさに始まろうとしている御蔵前公園の様子

まずは須加の屋台から台場差しを行いました。

屋台本体の下には台場(泥台)と呼ばれる脚が付いています。


▲屋台本体の下にある台場(泥台)。下のX字型の部品は単なる台で、台場とは別です。

普通は担ぎ棒を使って屋台を持ち上げるわけですが、台場差しでは、名前の通り台場(泥台)だけで屋台を高く差し上げるのです。

台場(泥台)は小さいので、必然的にそれを担げる人の数が少なくなります。
最大で2トンほどもある屋台を、台場(泥台)の下に入れるたった24人の担ぎ手だけで支え、支えた時間の長さを競うのが台場差しです。

須加に続いて、私の目の前にあった宮の屋台が台場差しを行うため公園の中央に向かいました。


▲台場差しに向かう直前、士気を高めるために太鼓を打つ宮の屋台のたたき手

腹に響く太鼓の音、担ぎ手の熱気、汗の臭い、どれもYoutube動画やネットで見つけた画像では想像も出来なかったものです。

どんなに記録手段が進歩しても、やはり「百聞は一見にしかず」ですね。

台場差しでは、まず担ぎ手が全員腕を真上に伸ばして屋台を高くかかげます。
この状態で、担ぎ手のとりまとめ役が屋台のバランスや、台場を支えるメンバーの様子などを確認しているようです。


▲屋台を担ぎ棒で目一杯高くかかげた様子

「行ける!」とリーダーが判断したら、「サイテバチョーサー!」のかけ声と共に、台場(泥台)の下に入った担ぎ手がさらに屋台を持ち上げます。

その状態で「サイテバチョーサー」のかけ声をかけながら太鼓を打ち、何回かけ声を言えたかで時間を計るというのが、台場差しのルールのようです。


▲台場差しの状態(担ぎ棒から手が離れているのが分かる)

誰か一人でも力尽きてバランスが崩れると屋台は大きく傾きますが、周りの担ぎ手がそれを支え、すぐに体勢を整えるのが見事。

私が見た宮の1回目(2回やるそうです)の台場差しは、持ち上げた状態がずいぶんと長く続き、見物客から感嘆の声が上がりました。

戻ってきた担ぎ手の表情を見ると、台場差しがいかに過酷なのかがよく分かります。


▲台場差しを終えて所定の位置に戻ってきた宮の屋台

他の台場差しを見ていると、屋台が倒れるんじゃないかと思うような終わり方をするところもありましたが、それでも絶対に担ぎ手は屋台を倒しません。

迫力というかスリルたっぷりです。


▲これだけ傾いても倒れない

昨日(2016年10月8日)の宵宮で撮影された宮の屋台の様子がYoutubeにあったので、転載します。


次は昨年の動画ですが、屋台の下の様子がよく分かる映像がYoutubeにあったので、転載します。


他の屋台が台場差しをしている間は、担ぎ手の皆さんは家族と記念撮影をしたり、家族との会話を楽しんでいる様子。

高校生くらいの男の子達も鉢巻きを巻いて参加していましたが、クラスメイトなのか後輩なのか分かりませんが、女の子を屋台の前に連れてきて一緒に写真を撮っているのも「青春っていいなぁ」という感じ。

小さい子供達が汗だくの担ぎ手(父親)に抱きついたり、嬉しそうな笑顔を見せているのも印象的でした。
屋台を担いでいる姿が格好良かったんでしょうね。

小さな男の子達は、大人が遠慮して触らない屋台に平気で触って指紋や手垢を付け放題、飾りを握って屋台に乗り込んだり好き放題にしていますが、そうやって祭り好きになり、この伝統が代々受け継がれていくんでしょう。

祭りが地域や家族、人と人のつながりを強めるというのがよく分かります。

私も姫路に何十年も住んでいて初めて見ましたが、祭りに興味があるとかないとか関係無く楽しめると思います。

当然ですが浜の宮天満宮や御蔵前公園に駐車場はありませんので、来年以降に見に行かれる場合は、山陽電鉄の飾磨駅から徒歩で行くか、私のように自転車で出かけることをお勧めします。