播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。原則として更新は週に1回です。広告は表示しません!

岡山県備前市の旧閑谷学校(しずたにがっこう)

本日は、岡山県備前市にある閑谷(しずたに)学校を見てきました。

施設名称: 旧閑谷学校
所在地: 岡山県備前市閑谷784
開門時間: 9:00~17:00
休館日: 12月29日~12月31日
入場料: 大人一人 ¥400
アクセス: <電車の場合>JR山陽本線吉永駅からタクシーで8分、<車の場合>山陽自動車道備前ICから約15分。和気ICから約7分。

▲旧閑谷学校(赤いマークの場所)と岡山、相生など周辺都市との位置関係


▲旧閑谷学校案内図(出典:駐車場に設置されている案内板)拡大表示出来ます。今回は案内図左上、トンネルのある道から閑谷学校に来ました。

特別史跡 旧閑谷学校
 旧閑谷学校は、岡山藩主池田光政が、庶民の教育を目的として寛文十年(1670)に設立した郷学である。(中略)
 現在目にすることのできる閑谷学校の姿が完成したのは、光政没後の元禄十四年(1701)、二代目藩主綱政の治政のもとで、創建当時の姿をほぼ完全に残しているものとして特別史跡に指定されている。さらに、建造物等二十五件が重要文化財に指定されており、中でも、講堂は学校建築として唯一国宝に指定されている。
(以下略)
出典:現地の案内板

車で行っても良いのですが、疲れたら寝て帰れる電車の方が魅力的なので、電車を使いました。

10:07
JR姫路駅から播州赤穂行の普通電車で出発。

10:26
相生駅に到着。
ここで山陽本線岡山行の普通電車に乗り換えます。

10:30
岡山行の普通電車が相生駅を出発。

11:00
吉永駅に到着。
運賃は、姫路駅から吉永駅までが¥970。

木造の旅客上屋があるレトロな雰囲気の駅です。


▲JR山陽本線 吉永駅下り方面の旅客上屋(うわや)

食べログで吉永駅周辺の飲食店を調べると、駅から500mほど東にセンロカフェというお店があることが分かったので、まずは徒歩でそのカフェへ移動して昼食。

sennro cafeのWebサイト

古い米穀店を改装して作られたカフェで、おしゃれな雰囲気。
線路がすぐ目の前にあるため列車が走る度にゴトゴトと揺れますし、お客さんが車でやってきて店の前に駐めようとすると、窓枠がガタガタと振動します。でも、それがなんだか面白い。

出される料理は美味しいし、併設されている文房具などの小さな販売コーナーでは珍しい筆記具などが売られており、目的を達したらすぐに帰る私ですが、このお店には長居をしてしまいました。

12:50
センロカフェを出ました。

センロカフェから閑谷学校への距離は、3kmほど。
普段山歩きを楽しんでいる人にとっては何でも無い距離ですし、腹ごなしにもなるので、徒歩で移動することにしました。

吉永駅の東、県道261号線を南下して道なりに歩くだけなので、迷う心配はありません。

吉永駅前にタクシーが待機している(タクシー会社がある)ので、徒歩移動がイヤという人はタクシーを使うと良いでしょう。

つりぼり公園や大池を右手に見ながら緩やかな上り坂を進んでいると、道が東へ向きを変えてしばらくたった頃、トンネルの手前で自転車と歩行者は左の道へ入るよう案内する標識に出会いました。
それに従って自転車・歩行者専用道路へ。

間もなく、また二股の分岐に出会いました。
左の上り坂には入口に鎖がかかっていて、右の道路には車止めが立っており、その向こうにはトンネルが見えます。


▲自転車・歩行者専用道路入口の様子(右)

「本当にこの道でいいのかな」と思ながら右の道を進み、視線を左上に移して左側の道の行き先を確認すると、どうやら山の中の貯水タンクへの道だったらしく、やはり右側の道で正解でした。

大正13年竣工の閑谷隧道(しずたにずいどう。隧道はトンネルの意)を抜けると、丸みを持った独特の形状をした石塀(せきへい)が道の左側に現れ、すぐにピンク色の閑谷学校資料館が眼に入ります。

どこから石塀の向こうへ入るのかな?と思いながらどんどん進みますが、入れそうな場所がありません。


▲トンネルから緩やかに下ってきた石塀沿いの道を振り返る(奥の屋根は資料館。中央の土塁は火除山(ひよけやま))

やがて塀の向こうに大きな建物の屋根が見えてきました。
どうやら講堂の屋根のようです。


▲昭和天皇御手植えの楠(公門(校門ではない)の向こうに講堂の屋根が見える)


▲石塀と駐車場の間にある泮池(はんち)と石橋

左に石塀を見ながら東へ進んでいくと、修復工事中の校門の前を通過したところに受付の門がありました。

案内図は駐車場から来た人向けのものしかなく、今回の私のように北から来た人は、受付の前で初めて案内図を見ることになります。

13:37
ようやく石塀の向こう側へ入れます。

下のURLをクリックすると、Googleマップで吉永駅からこの受付までのルートをご覧頂けます。


▲この門をくぐった右側に受付がある

門をくぐってすぐ右にある小屋で入場料(大人一人¥400)を支払い、後ろを振り返ると立派な講堂が視界に飛び込んできます。

旧閑谷学校に関する説明を聞ける小型のカセットプレーヤーを貸してもらえるので、詳しく知りたい方はそれを借りてみて下さい(無料)。

ただし、説明はカセットプレーヤーのスピーカーから流れるので、音量には注意する必要があります。プレーヤーを持っている見物客同士が近くにいると、説明の音声が入り交じって訳が分からなくなります。


▲講堂

講堂に向かう前に、講堂の東側にある閑谷神社と聖廟(せいびょう)を見ることにしましょう。

閑谷神社は、閑谷学校の創始者である池田光政を祀る神社です。
孔子を師とした教育を行っていたため、藩主を祀る神社とはいえ、孔子を祀る聖廟よりも一段低い場所に建てられています。

残念ながら閑谷神社も修復工事中で見ることが出来ないので、隣の聖廟を見学。

聖廟には孔子の像があるそうですが、像が納められている場所は扉が閉まっていて、孔子像を見ることはできません。


▲聖廟(大きな木は「楷(かい)の木」と呼ばれるもので、中国の孔林から種を持ち帰って育てられた木)


▲聖廟(孔子を祀る施設)中には入れない

聖廟から隣の閑谷神社を覗いてみると、瓦に姫路城の瓦でも見かける揚羽蝶の紋(池田家の家紋)がありました。


▲閑谷神社の瓦(池田家の家紋である揚羽蝶)

旧閑谷学校の建物に使われている瓦は赤い色をしていますが、これらは全て備前焼だそうです。

いよいよ講堂へ入ります。

基壇上で靴を脱いで廻縁に上がると、内側の部屋の入口には「入室御遠慮ください」の表示が。
講堂内部は、廻縁から見ることしか出来ないようです。


▲廻縁から講堂内を見る

全天球パノラマを撮影できるリコーのTheta Sを持ってきていたので、障子の溝に立ててパノラマ撮影をしてみました。

講堂内で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2016年3月26日)

https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/shizutani20160326/virtualtour.html

パノラマでご覧頂いた通り、講堂の中は廻縁の内側が大きな部屋になっているのですが、さらにその部屋の中央部分に柱で囲まれた内室があります。

講堂内部と廻縁を仕切る壁には火灯窓(かとうまど)が並び、周囲四辺全ての中央には桟唐戸(さんからと)が設置されています。


▲開いた状態の桟唐戸

床はぴかぴかに磨き上げられていて、火灯窓や開いた桟唐戸から入ってきた光が床に反射して幻想的な雰囲気。

講堂の南側には小さな建物が付属していますが、これは藩主が勉強をする際に使用する小斎(しょうさい)と呼ばれる建物。

内部には雪隠(せっちん。トイレのこと)や風呂まで備わっています。


▲小斎(内部は立入禁止)

講堂の西には習芸斎(しゅうげいさい)と呼ばれる建物(決められた日だけ農民でも聴講できる授業が行われた場所)があり、その西半分は囲炉裏のある飲室(いんしつ)、東半分が習芸斎です。

飲室は文字通り湯茶を楽しむ場所で、火事を怖れてか、炉では薪を使ってはいけないと炉の縁に刻まれています。


▲習芸斎(左半分は飲室)


▲飲室から習芸斎の方向を見る(炉は炭火専用であることが縁に刻まれている)

これで旧閑谷学校は一通り見終わったので、引き続き、来るときに最初に見かけたピンク色のレトロな資料館を見に行くことにします。

資料館へは、習芸斎に向かって左側、文庫の左に見える火除山と石塀の間の細い道を通ります。


▲左端に写っている石塀と火除山の間にある細い通路を通って資料館へ向かった


▲閑谷学校資料館

閑谷学校資料館は、明治38年に建てられた閑谷中学校の建物を利用したもので、登録有形文化財に指定されています。

淡いピンク色とレトロなデザインが印象的な建物で、中には閑谷学校やその創設者、閑谷学校での教育内容などに関する資料が大量に展示されており、一つずつじっくり見ていると、1時間では足りません。

展示室内は撮影禁止ですが、館内の雰囲気を知っていただくため、廊下の写真を掲載しておきます。


▲閑谷学校資料館内の様子

15:20
閑谷学校資料館の展示を一通り見終わりました。

ここへ来てから2時間近く経過していますが、閑谷神社の東にある椿山や、閑谷川沿いに500m東へ入った所にある紅葉亭など、まだ見ていない所もあります。

しかし、15:40発、閑谷学校からJR日生駅への無料バス(※)に乗りたかったので、旧閑谷学校を後にしました。
※2015年度は3月27日(日)で運行終了。

売店の自販機で買ったコーヒーを飲んで一息つき、さてバスに乗ろうと思ったのですが、無料バスの乗り場が分かりません。

ウロウロしている間に15:40を過ぎてしまいました。結局、駐車場からさらに南へ進んで橋を渡った先に閑谷学校バス停があるのを見つけましたが、時既に遅し。

やはり、バスは電車よりも利用するのが難しい上級者向けの移動手段ですね。
というか、事前にきっちり調べておかなかった(現地に行けば分かるだろうと安易に考えていた)のが悪かったか。

仕方ないので、タクシーを呼んで吉永駅へ戻りました。

16:18
吉永駅を相生行の普通電車で出発。

16:47
相生駅に到着。普通電車の姫路行に乗り換えます。

16:49
姫路行普通列車が相生駅を出発。

17:08
JR姫路駅に到着。。。と思ったら、強烈なブレーキがかかって列車が非常停止しました。
しばらくすると、オーバーランしたのでバックするとの案内放送があり、バック。

オーバーランした距離はなかなかのもので、車両数台分の距離を戻りました。
停止位置を大幅に超えたため、自動的に非常ブレーキがかかったようです。

旧閑谷学校はそれほど観光客がおらず、静かにたっぷり楽しめましたし、最後の最後に列車のオーバーランという珍しい経験も出来て大満足の一日でした。