播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

カシミール3Dで「見える山のリスト」を作る

山歩きをしている人の多数がお使いであろうフリーソフト「カシミール3D」(以下カシミール)。
 
基本的には、地形図の閲覧、印刷、GPS軌跡の表示やルート作成が主な用途だと思いますが、カシミールにはそれ以外にも便利な機能が備わっています。
 
それらの機能の内、私が山歩きの時に使用していて、周りのハイカーさんがあまり活用していない「見える山のリスト」を紹介します。
 
そもそも見える山のリストとはなんぞやというと、下の画像のようなものです。
 
 
▲私が使っている「見える山のリスト」(このサンプルは桶居山山頂から見える山のリストの一部)
 
上の画像はExcelの画面をキャプチャしただけですが、山にはこれをプリントアウトしたものを持っていきます。
 
山頂から見えている山で名前が気になるものがあればコンパスで方位を測定し、その方位に近い方位が書かれている山をリストから探し出せば、山座同定が容易に行えるわけです(方位だけではなく距離や標高も判断材料にします)。
 
逆に、「○○山は見えるかな」と思った場合は、リストから山の名前を探し、その山の方位をリストで確認したら(リストに載っていなければ見えないということ)、コンパスを使ってその方位を見て目的の山を簡単に見つけ出せます。
 
山でこのリストを使っていると、「どうやって作るの?」と聞かれることがよくあります。
カシミールで作っていると答えると「そんなことができるのか」と感心されることが多いので、案外知られていない印象です。
 
そこで、今回は見える山のリストの作り方を簡単に紹介します。
 
必要なのは、標高データと地名データの二つ。
 
標高データがないとカシミールは地形を再現できず、ある地点から別の地点が見えるかどうかの判定が出来ません(地形データがないと地面がすべて海面と同じ平面して扱われ、見えるかどうかの判定結果がすべて「見える」になってしまいます)。
 
基準点から地名データに登録されている各地点を見通せるかどうかをカシミールが計算しますから、地名データも必須。
 
標高データに関しては、「基盤地図情報(標高)プラグイン」をインストールし、マニュアルを見て操作ができる方なら、無料で入手できます。(見える山を調べたい範囲すべての標高データをカシミールに登録しておく必要があります)
「基盤地図情報(標高)プラグイン」のマニュアルは、「基盤地図情報(標高)プラグイン」のダウンロードページにあります。
 
標高データは本当に単なる標高データで、これをカシミールで開いても地形が表示されるだけ(道路や地名、等高線等は表示されない)。
 
そこで、カシミールの「編集」メニュー内にある「標高データを重ねる(MATの作成)」機能を使用し、国土地理院の地形図等、標高データを持たない地図と標高データを重ね合わせた地図を作成する必要があります。(標高データを選択する際は、「一覧から選択」ボタンから「基盤地図情報(○m標高)」を選んでください。)
 
「山旅倶楽部」という有料サービス(年会費3,080円)を使うという手もあります。
山旅倶楽部を使うと、あらかじめビットマップ画像(地形図)と標高データが重ね合わされている地図を見られます。
 
山旅倶楽部のデータを使用して正確に見える山を調べる(計算する)には、カシミールの「ツール」メニューの『山旅倶楽部」から「日本地図一括ダウンロード」を使用し、見える山を調べたい範囲の地図と標高データを事前にダウンロードしておく必要があります(一度にダウンロードできる地図の数が少ないので、多少手間がかかります)。
 
山旅倶楽部のユーザとしてそれなりの期間カシミールを使ってきた方なら、カシミールで今まで見た範囲の地図や標高データがカシミールに保存(キャッシュ)されているので、改めて地図や標高データをダウンロードする必要はないかも知れません。
後述する計算結果の山のリストの中に淡色表示が多い場合のみ、標高データのダウンロードすれば良いでしょう。
 
カシミールで利用できる標高データについては、カシミールのWebサイト(http://www.kashmir3d.com/)内にある「カシミール3Dで使える地図一覧」ページに色々掲載されていますので、そちらも参考にしてみてください。
 
 
▲「カシミール3Dで使える地図一覧」へ飛ぶためのリンクの場所(カシミールのWebサイトはトップページのみリンクが自由なため、「カシミール3Dで使える地図一覧」への直接リンクは記載できません。トップページからこの画像を参考に、「カシミール3Dで使える地図一覧」へ移動してください)
 
地名データは、既に大半の方がお使いだと思います。
 
では、見える山のリストの作り方を説明します。
 
(1)基準点(どこから見える山を調べるか)が地名としてカシミールに登録されていることを確認し、登録されていなければ、その地点を右クリックして「新規作成」→「地名作成」で新たに登録してください。
 
 
▲基準点が地名として登録されていることを確認する(この例では桶居山を基準点にしている)
 
(2)基準点が地名として登録されているのを確認したら、「ツール」メニューから「可視マップ」→「一発判定」とたどります。
 
 
▲「一発判定」をクリックする
 
(3)「一発判定」ウィンドウが表示されるので、左下付近の「検索」ボタン右の欄に基準点の地名を入力し、「検索」ボタンをクリックしてください。
基準点となる場所が正しく地名として登録されていれば、その名前を含む地名が一覧で表示されます。正しいものをクリックしてください。すると、左上の名称欄に基準点の名前が表示されます。
 
 
▲基準点の地名を検索し、検索結果から正しいものをクリックする
 
(4)「一発判定」ウィンドウの中央付近にある「見える山」ボタンをクリックします。すると、「見える山のリスト」ウィンドウが表示されます。右上の「計算開始」ボタンをクリックしてください。
 
 
▲「見える山のリスト」ウィンドウ
 
(5)ウィンドウの右端中央付近の進捗状況を表す数字が増えていき、白い欄内に山や峠の名前が次々と現れてきます。
 
(6)計算が終了したら、表の上部にある項目名「距離」をクリックしてみてください。押す度に距離を基準として昇順/降順に並び変わります。

表示されている山の名前の内、距離30~40km以内を目安に、その範囲の山の中に淡色表示のものがないことを確認してください(40km以上離れている山がはっきり見えることはあまりないので、近場の山の名前さえ黒色で表示されていれば、実用的な見える山のリストになると思います)。
淡色表示の山が多ければ、標高データのダウンロードからやり直してください。
 
問題がなさそうであれば「コピー」ボタンをクリックします。
 
 
▲計算結果の画面(一部標高データが欠落し、笠松山、飯盛山等淡色の山名がある状態。)
 
 
▲計算結果の画面(標高データがすべて揃っている状態。上のリストと、画面右側に表示されている見える山の数が異なっていることに注目。標高データが揃っていない場合は、その場所が海面と同様に扱われる(見通しの障害として扱われない)ため、見える山が増える。)
 
画面にも表示されますが、名前が淡色表示になっている山は、基準点からその山の間の標高データが一部(または全部)欠落していることを表しています。見えるかどうか正確に計算されていないので、要注意です。
 
(7)Excelを起動し、セルA1を選んでから「貼り付け」を実行します。コピーされているデータはカンマ区切りのCSV形式ですが、Excelに貼り付けると何故か列ごとに分割されないので、次の操作で項目毎に列を分ける必要があります。
 
 
▲貼り付け実行直後の状態
 
(8)A列を選択した状態のまま、Excelの「データ」タブにある「区切り位置」をクリックしてください。
 
 
▲「データ」タブの「区切り位置」ボタン
 
(9)「区切り位置指定ウィザード」が開きます。最初の画面は特に何もせず「カンマやタブなどの・・・」が選ばれた状態で「次へ」をクリックします。
 
(10)次の画面では、「カンマ」にチェックを入れてください。すると、画面下部のプレビュー内で、各項目が列に分かれる様子が示されます。そうしたら、「次へ」をクリックしてください。
 
 
▲「カンマ」にチェックを入れる
 
(11)次がウィザードの最終画面です。ここも何も触る必要はありません。「完了」をクリックしてください。
 
 
▲区切り位置の設定を完了した状態
 
後は、この表をExcelの機能を利用して自分好みのレイアウト、デザインに編集し直せば「見える山のリスト」は完成です。
 
私の見える山のリスト(1枚目の画像)には磁方位の列を作っていますが、その中には以下の式を入れています。

(例)セルE3内の数式 =IF(D3+7>360,D3+7-360,D3+7)
「D3」は、カシミールが算出した真方位の値が入っているセルです。
 
偏差の調整をしていないコンパスが示す磁方位は、真方位に約7度を足した値になるため*1、このような計算をさせています。
また、360度を超える方位は存在しないので、7度を足した後360を越える場合は、和から360を引かせています。
偏差を調整したコンパスをお使いの方は、磁方位を算出してリスト内に表示する必要はありません。
 
山頂がわずかに見えるだけでも「見える山」として判定され、名前がリストに現れます。

「どうもおかしい(リストでは○○山がこの方位に見えるはずだが、あんな形ではなかったはず)」という場合は、リストに書かれている距離も判断材料にし、各自で考えて対応してください。
 
前後に並んで複数の山頂が見えている場合、空気がかすんでいると一つの山のシルエットにしか見えないとか、別の山の鞍部に山頂がわずかに見えているだけという場合があります。
 
「見える山のリスト」に掲載されている山が、必ず基準点から見えるとは限りません。
基準点の周囲に木が茂っていたらアウトです。

カシミールは、あくまでも地形だけを元に、山が見えるかどうかを判断します。
 
私の場合、「見える山のリスト」は、昼食のインスタント食品が出来上がるまで(お湯を入れてからの待ち時間)の暇つぶしや、他のハイカーさんからの質問対応(○○山はどれですか?等)に役立っています。
 
標高データがあれば利用できる「カシバード」も便利。
リストを作成した後は、基準点を右クリックし、「カシバード」→「カシバード起動」をクリックしてみてください。
 
基準点の周囲に木々等の障害物がない場合、どのような風景が見えるかをシミュレーションできます。
 
▲カシバードの画面(高御位山山頂から南方面の展望のシミュレーションを、実際に現地で撮影した写真と並べたもの)
 
これで予習をしておくだけでも山座同定が楽になりますし、とりあえず山頂で風景を撮影しておき、帰宅後にカシバードでどれがどの山かを判定するといった使い方も出来ます。

*1:磁針偏差(磁気偏差)は年々変化しています。約7度という偏差は、この記事の掲載時点のものです。