播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

手軽に360度パノラマが撮れる:RICOH THETA

当ブログ記事の内容は、2013年12月時点の情報を基に書かれたものです。ソフトウェア等のバージョンアップにより、機能の追加・削除・向上がなされる場合があります。
趣味で360度パノラマ写真を撮影していますが、その撮影方法は魚眼レンズとデジタル一眼レフカメラ、そしてパノラマ雲台を使用するというものです。
 
パノラマ雲台を使ってカメラを60度回してパシャリ、さらに60度回してパシャリと繰り返し、水平方向は6枚撮ります。続いて上を撮って最後に地面を撮るのですが、この方法だと歩行者や自動車、風が強い日の雲や木々など、動くものが多い環境でパノラマ写真を撮るのは非常に難しい。
 
周囲全体を同じ瞬間に撮影するわけではないので、カメラを回しながら撮影している間も、動く被写体の状態はどんどん変化し続けるからです。
 
この方法では高画質なパノラマ写真が撮れる代わりに、現場では準備、撮影、片付け、帰宅後は画像の結合(動く被写体があると特に面倒)、FlashやHTML5形式での出力という作業の必要があり、手間が膨大です。
 
もっと手軽に、スマホで写真を撮るような感じで360度パノラマ写真が撮影できる機材の登場を待ち望んでいましたが、ついに発売されました。
 
それも日本のメーカーからで、国内メーカー製品でも中国等アジア圏で作られている製品が多い中、「Made in Japan」の表記付き。
 
予約していたので、発売日(2013年11月8日)に自宅宛に配送されてきました。
 
 
▲THETA本体と専用ケース(パッケージにはこれにUSBケーブルも含まれる)
 
製品名: THETA(シータ)
メーカー: リコーイメージング株式会社(日本)
サイズ: 42mm×129mm×22.8mm
重量: 約95g
撮影距離: 約10cm~無限遠(レンズ先端より)
露出制御モード: オート(手動設定不可)
露出補正: マニュアル補正(-2.0~+2.0EV 1/3EVステップ)
ISO感度: オート100~1600(手動設定不可)
シャッタースピード: オート 1/8000~1/7.5秒(手動設定不可)
記録媒体: 内蔵メモリー(約4GB)
記録可能枚数: 約1200枚
電源: リチウムイオンバッテリー(内蔵)(交換不可。マイクロUSBポートから充電)
電池寿命: 200枚
画像ファイル形式: JPEG(EXIF Ver.2.3)DCF2.0準拠(3584ピクセル×1792ピクセル)
生産国: 日本
購入価格: ¥44,800
購入先: Ricoh Imaging Online Store(メーカー直販サイト)
 
箱から取り出すとき、その手触りに感動しました。ラバーコーティングされているのでしょうか。
ツルツルテカテカな安っぽいプラスチックの質感とはほど遠い、高級感のある外装です。
 
外観を見ていきましょう。
 
大きさですが、iPhoneより幅は狭いものの全長が長く、厚みがあります。
 
 
▲iPhone4Sとのサイズ比較
 
目立っているのは、やはり両面に1つずつ、計2つ付いている大きな魚眼レンズ。

片方のレンズの下にはシャッターボタンが付いていて、写真ではほとんど分かりませんがその下には膨らみがあり、指を当てると自然に指にフィットして持ちやすい。
 
片方の側面には無線LANボタンと電源ボタンが付いていて、これら3つのボタン(シャッター、無線LAN、電源)は、右手に持つと右親指だけですべて簡単に操作できる配置になっています。
 
 
▲電源ボタンと無線LANボタン
 
底面には三脚穴と充電/データ転送用のマイクロUSBポートがあり、USBポートには簡易的なカバーが付いています。
 
 
▲底面の三脚穴とマイクロUSBポート
 
 
▲マイクロUSBポートのカバーを開けた様子(カバーは本体とつながっているので紛失の心配はない)
 
飛び出した魚眼レンズを保護しつつ持ち歩く必要があるため、ネオプレン生地(?)で出来た専用のソフトケースが付属しています。
 
片方の端がジッパーで開閉できるようになっていますが、開口部分の形状がなんだか不思議。
色々試した結果出来上がった形状だと思いますが、スリーブ(鞘)のようなケースの方が出し入れしやすくて便利だと思います。
 
このケースですが、色や質感は個人的に気に入っています。
 
 
▲付属の専用ケース
 
 
▲ケースの裏には、ヒモ等を通すためのループとベルトループがある
 
外観についてはこれくらいにして、操作を見ていきましょう。
 
天地も含む360度全天球パノラマを撮影できる、今までに無いカメラですが、操作自体は非常に単純です。
パノラマ写真やカメラに関する知識は全く不要。スマホをある程度使いこなせる人なら問題ありません。
 
撮影手順は以下の通り2つの操作だけ。

(1)Thetaの電源ボタンを押して電源を入れる。
(2)どのような写真になるか想像しながらThetaを構え、シャッターボタンを押す。
 
撮影後は、アプリを使用してThetaから写真をスマホへ転送して自分だけで閲覧するか、SNSサイトへ投稿して公開します。
※Thetaで撮影した画像を公開するための専用サイト(theta360.com)に画像をアップロードするためには、Facebookアカウントが必須です。
 
Theta本体のシャッターボタンを使用したり、撮影後に自動で転送しない設定にしてアプリから撮影した場合に、Thetaからスマホへ画像を転送する方法は以下の通りです。
 
準備:スマホとThetaの無線LAN機能を有効にしておき、接続可能な無線LANアクセスポイントがTheta以外にもある場合は、Thetaを選択して通信を確立しておく。
(1)Thetaアプリのアルバム画面から「カメラ内」をタップ
(2)転送したい画像をタップ
(3)1枚あたり十数秒で画像がスマホに転送される
(4)必要に応じて(2)~(3)を繰り返す
 
ピントや露出について考える必要はありません。ホワイトバランスも含めてすべて自動で決定され、撮影されます。セルフタイマー機能すらありません。
 
人にもよるでしょうが、手持ちで撮影すると、どうしても自分自身が映り込んでしまうのも問題。(記念撮影で自分も写りたい場合は問題になりませんが)

かといって、三脚を使うと手軽さが犠牲になってしまいます。
 
映り込みたくない場合は、テーブル上など平らな場所にThetaを立て、テーブルの下や物陰に隠れたり、周囲の人たちに紛れてiPhoneでシャッターを切ればさほど気にならないかも知れません。
 
いつも平らな場所が利用できるとは限らないので、自分が写るのが嫌という人は、小さな三脚は持っておいた方が良いでしょう。(底面に三脚用のネジ穴があります)
 
 
▲Thetaに小型の三脚を取り付けた様子
 
指でシャッターボタンを押す代わりに、専用の無償アプリを使用して無線LANでiPhoneやAndroid端末とThetaを接続し、iPhone等の画面に表示されるシャッターボタンをタップしても撮影できます。
 
この場合は、撮影後に写真をiPhone等に転送するかどうかあらかじめ設定することが可能で、転送する選択をすればiPhone等のThetaアプリに写真が転送されます(1枚で十数秒かかる)。

本体のシャッターボタンを使う場合と異なり、アプリからの遠隔撮影の場合は露出補正も可能です。
 
撮影後に自動的に写真を転送する場合は、画面中央のシャッターボタンの上にある表示を「Postview」にし、転送が不要な場合は「No Postview」にします(タップするとこの2種類の表示が切り替わる)。
 
シャッターボタンの下のスライダは、露出補正用のものです。
 
 
▲遠隔操作時のアプリの画面(左が撮影後に転送する場合の画面、右は転送しない場合の画面)
 
私の場合、速射する必要に出会ったことはありませんが、アプリから撮影する場合、撮影後にパノラマ写真の合成のために5秒ほど待たされます。
 
つまり、本体の操作で撮影すればパシャパシャと比較的素早くパノラマを撮れますが、アプリから撮影すると、1枚撮影してから次に撮影するまで、少なくとも5秒は待たないといけません。
 
続いて、撮影されたパノラマ写真の公開の仕方を簡単に説明します。
 
Thetaで撮影した写真は、SNSで共有(Facebookアカウントを用いてThetaのサイトにアップロード)するか、(自分だけで楽しむ場合は)iPhone等のThetaアプリで開く(PCで見る場合も無償の専用アプリが必要)かいずれかの方法でないと、全天球パノラマとして表示されません。
 
Theta本体内メモリに記録される画像は、正距円筒図法(equirectangular)で全天球パノラマが展開された単なるJPEGファイルです。
正距円筒図法は、要するに我々が一般的に目にする世界地図の形式。

丸い地球を平面の地図で表現するための投影方法の一種で、360度パノラマ写真の場合は、縦横の比率が1:2(上下180度:水平360度)になります(Thetaの撮影画像は横3584ピクセル×縦1792ピクセル)。
つまり、Theta内のJPEG画像をPCやスマホで表示するだけでは、上下が大きく引き延ばされた「ただの写真」になってしまいます。
 
今までに全天球パノラマ撮影を楽しんでいたパノラマ好きの方なら、そのようなファイルをどうすればパノラマとして表示出来るか分かっているので、Thetaから取り出したJPEGファイルを編集し、映り込んでしまった無関係な人の顔にモザイクをかけたり、補正をかけてから自分のブログやWebページで公開するといったことは簡単に行えるでしょう。
(注)Android端末では試していないので分かりませんが、iPhone用アプリの場合、パノラマ画像はアプリの記憶領域に保存されるため、PCからiPhone内のパノラマ画像を見ることは不可能です。自分でパノラマの編集を行う場合は、Theta本体内メモリからJPEG画像を取り出して下さい。
 
しかし、Thetaで初めてパノラマに挑戦するという方には、パノラマ編集用ソフトの購入やパノラマのオーサリングという作業には手を出しにくいと思います。
 
Thetaを購入した方でFacebookアカウントを持っている方は、とりあえずSNSに投稿してパノラマを公開するのが手っ取り早くて良いでしょう。(撮影した画像を加工するのは難しいので、撮影時、周囲に写ってはマズイものがないことを十分に確認してください。)
 
SNSに投稿すると言っても、直接パノラマをSNSの書き込み内に埋め込めるわけでは無く、theta360.comというTheta専用サイトに登録されたパノラマ画像へのリンクが投稿される仕組みです。
 
投稿する手順
(1)Thetaアプリから「アプリ内」をタップ
(2)転送したい画像をタップ
 
▲「アプリ内」をタップしてから写真を選ぶ
 
(3)右上のアイコンをタップ
(4)投稿したいSNSの右側のスイッチを有効にし、適宜コメントを入力して「投稿」をタップ
 
▲写真を選んだら右上のボタンを押し、投稿先を選択する
 
(5)パノラマ画像がtheta360.comにアップロードされて公開され、(4)で入力したコメントとパノラマのURLが選択したSNSに投稿される
 
▲画像のアップロード中は進捗バーが表示され(左)、完了すると「Safariで確認」ボタンが表示される(右)
 
SNSをいずれか選択してアップロードした場合は、SNSの自分の投稿を見ればパノラマのURLが分かりますが、SNSをすべて無効にしてtheta360.comのみに投稿した場合は、最後に一手間が必要です。
 
それは、アップロード完了後に「Safariで確認」をタップし、パノラマのURLをコピーすること。
 
URLを確認せずにアプリを終了させてしまうと、theta360.comにログインしなければ自分がアップロードしたパノラマのURLが分からなくなってしまい、不便です。
 
Thetaのサイトにアップロードしてパノラマ化と公開をするのには、手軽で無料ということ以外に、もう一つ利点があります。

それは、写真の傾き補正。
 
Thetaには傾きを検知するセンサーが入っていて、撮影時の傾きはパノラマ画像(JPEGファイル)にEXIF情報(写真に記録される撮影日時や露出の設定などの情報)の一部として書き込まれています。
 
SNS投稿時にパノラマがアップロードされるThetaのサイトやアプリは、この傾き情報を読み取り、パノラマ画像内の水平・垂直が正しくなるように表示してくれるのです。
 
Thetaは本来手持ちで気軽にスナップ感覚でパノラマを撮るための道具で、Theta本体が垂直に保持されたまま撮影されることは稀ですから、傾きの情報を持たせるようになっているのでしょう。
 
手軽に撮影できて簡単にSNSで公開出来る反面、注意も必要です。それは閲覧権限の設定。
 
初期設定のままFacebookを有効にしてアプリからパノラマを投稿すると、自動的に公開設定になってしまうため、不特定多数に見られるとまずいパノラマを公開したい場合は、何らかの対策が必要になります。
 
例えばSNSを何も選択せずにアプリで共有を行い、Thetaのサイト(theta360.com)に登録されたパノラマのURLを、適切な閲覧制限をかけた投稿に載せるという方法。
 
もう一つはFacebookのアプリ設定で、Thetaアプリからの投稿の公開範囲を変更しておくという方法。こちらの方が簡単ですね。
 
 
▲Facebookの「アプリ設定」画面で、Thetaアプリの投稿時の公開設定を変更できる
 
パノラマ初心者には、全天球パノラマが自分で手軽に撮影できる点が魅力的ですし、従来からパノラマ撮影を楽しんでいた方には、狭い空間など今までに無い視点からのパノラマや、一脚を使った高所パノラマを簡単に撮影できる便利な機材だと思います。
 
レンズとセンサーの小ささから、画質には限界がありますが、人混みの中でも、三脚利用禁止の場所でも簡単に、わずかな時間でパノラマが撮影できるのは魅力的。
 
普通の写真でも記憶を呼び起こすには役に立ちますが、周囲全体を撮影したパノラマ写真だと、その場所の様子がありありと頭の中に蘇りますよ。
 
最後に、画質を比較するため、同じ場所を一眼レフとThetaで撮影した2つのパノラマを掲載しておきます。
 
一眼レフ+パノラマ雲台
▲一眼レフとパノラマ雲台で撮影した全天球パノラマ
 
RICOH THETA
▲Thetaで撮影した全天球パノラマ