播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

護衛艦くらま(DDH144)一般公開@神戸ポートターミナル

最近、休日は家の事情で出かけられなかったのですが、今日は久しぶりに昼間は自由の身。
運良く神戸のポートターミナルで海上自衛隊の護衛艦くらま(DDH144)が一般公開される日だったので、見学に行ってきました。
 
くらまは以前鳥取で公開されたときにも見学しましたが、その時は甲板とヘリ格納庫のみの公開でした。
 
どの程度の範囲が公開されるのか分かれば、行っても無駄足になりません。
というわけで、今日の午前中、見学にいった人たちのTwitterのつぶやきを探してみました。すると、艦内にも入れそうな様子。
 
中に入れるなら行かないわけにはいきません。

JRで三ノ宮へ向かい、三ノ宮駅からポートライナーでポートターミナル駅へ。
ポートライナーからでも護衛艦くらまの姿がよく見えます。
 
ポートターミナル駅を出てターミナルビルの中へ入ると、自衛隊員の方が要所要所に立ち、私たち見学者を誘導してくれます。
 
ターミナルビル1階で金属探知機によるチェックと手荷物検査を受け、護衛艦くらまと2度目の対面を果たしました。
 
 
▲護衛艦くらま(DDH144)
 
「くらま」の概要
昭和56年3月27日就役
「しらね」型2番艦 京都の鞍馬山から命名
全長 159m
全幅 17.5m
基準排水量 5,200t
主機械 蒸気タービン2基、2軸
最大速力 31kt(約57.4km/h)
乗員 約360名
最近の主要な行動
 H23.3.13~4.18 東日本大震災派遣
 H21.10.25 自衛隊観艦式
 H17.1.14~3.22 インドネシア・スマトラ沖大規模地震国際緊急援助海上派遣
(出典:海上自衛隊 護衛艦くらまの三つ折りパンフレット)
 
隊員さんの案内に従い、2番砲塔の横にある舷梯から乗艦し、まずは艦首から見学します。
 
 
▲1番砲塔横から2番砲塔と艦橋を見る
 
艦首には2つの5インチ砲塔が並んでいますが、見学者の大半が興味津々。
近くの隊員さんを捕まえて写真を撮ってもらったり質問攻めにしていました。
 
この砲は54口径5インチ単装速射砲と呼ばれていますが、この口径という言葉が分かりにくいんです。
拳銃や小銃の場合は、たとえば44マグナムといえば弾丸の直径が0.44インチ(1インチは約2.54cm)、30口径といえば0.30インチということになりますが、大きな砲では意味が変わります。
 
このような砲では、砲身長が砲弾の直径の何倍あるのかを口径の数字が表します。つまり、54口径5インチ砲であれば、砲弾の直径は5インチで、砲身の長さが5インチ×54=270インチ(約6.9m)ということになります。
 
 
▲2番砲塔の薬莢排出部
 
艦首付近に立つとどのような光景が見えるのか、昨年鳥取で公開されたときに撮影した360度パノラマを載せておきます。
 
 

鳥取での一般公開時に護衛艦くらまの前甲板と後甲板で撮影した全球パノラマ(撮影日:2012年7月29日)

https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/tottori20120729-3/virtualtour.html

 
パノラマ画面左上のリストから、前甲板と後甲板のパノラマを切り換えてご覧いただけます。
 
2番砲塔と艦橋の間にはアスロックランチャーがあり、これもなかなかの人気。
 
 
▲アスロックランチャー
 
アスロックはアルファベットでASROCと表記しますが、これはAnti Submarine ROCketの頭文字を並べたものです。

Antiが「対」、Submarineは「潜水艦」、ROCketは「ロケット弾」ということで、対潜水艦用のロケット弾(魚雷の後ろにロケットモーターを付けたもの)を発射する装置です。
 
上の写真はランチャーの後部で、黒い丸い部分からは発射時に炎や煙が吹き出します。
ロケット弾が出て行く正面には観音開きの扉が付いていて、それがパカッと開いてからロケット弾が飛び出します。
 
発射されたロケット(魚雷)は敵潜水艦近くで海に落ち、ロケットモーターを切り離して魚雷は敵潜水艦を目指すというわけです。
 
最近の護衛艦にはこのような発射機はなく、代わりにVLSと呼ばれる垂直発射装置が搭載されています。
54口径5インチ単装速射砲もアスロックも、かなりの年代物なのです。
 
右舷から乗艦し、艦首を反時計回りに見たら、左舷の通路を艦尾へ向けて進み、ヘリ格納庫に入ります。
昨年鳥取で見学したときと違うのは、ヘリ格納庫に一旦入った後、格納庫最前部の階段を登って艦橋に行けたことです。
 
狭くて急な階段(ラッタル)を慎重に登って指示通りに進むと、艦橋上部の塔と煙突の間、艦橋と同じ高さの場所に出てきました。

上を見上げると、艦橋上部の構造物の迫力に圧倒されます。
 
 
▲艦橋後部から上部の構造物を見上げる
 
さらに、左右後方にはCIWSが間近に見えますし、下を見下ろすとチャフロケットランチャーもあります。
 
 
▲左舷のCIWS
 
CIWSはClose In Weapon Systemの頭文字をとったもので、シウスと読みます。
日本の場合は写真のようなレーダーと高性能20mm機関砲の組み合わせですが、本来は名前の通り、自分を狙って飛翔する敵兵器を撃ち落とすための「最後の手段」(Closeは「閉じる」ではなく「近い」という意味)となる兵器全般を指します。
 
日本のCIWSは毎秒50発の20mm砲弾を発射して弾幕をつくり、その中に敵の兵器を突っ込ませて破壊する仕組みです。
 
Wikipediaによると、このタイプのCIWSが搭載されたのは、護衛艦くらまが最初だそうです。
 
先ほど見上げた巨大な塔のようなものを回り込んで艦首の方へ進むと、艦橋に入れます。
 
 
▲艦橋内の様子
 
艦橋に入ってまず驚いたのは、上の写真にも写っていますが、伝声管があったこと。
昭和50年代に就役した船でも装備されているとは、結構最近まで使われていたんですね。
 
もう一つ驚いたのは、艦橋内に民生用エアコンがあったこと。
熱帯地域へ派遣されることがあるため、このような装備は欠かせないようです。
 
 
▲艦橋には不似合いな民生用エアコン
 
艦橋を見終わると、操舵席後ろの階段を下りるのが順路になっていました。
頭を打たないように、荷物が引っかからないように注意しながらラッタルを下ると、ヘリコプター格納庫の中に出てきました。
 
 
▲ヘリコプター格納庫内の様子
 
ここにはSH-60Jが1機格納されていました。
 
 
▲ローターを折りたたんで格納されているSH-60J
 
格納庫を出て後部の飛行甲板に行くと、SH-60Kが展示されていて、見学者が中をのぞき込んでいました。
 
 
▲飛行甲板に展示されていたSH-60K
 
後部ドアが開放されて内部が公開されていましたが、念のため写真を撮って良いか確認すると「もちろん!どうぞ!」との事だったので、安心して内部を撮影。
 
 
▲機内右後部にあるディッピングソナー(ヘリからつり下げて海中に下ろし、敵潜水艦の音を拾う装置)
 
機体の左に回ると、コクピットのドアも開放されていました。
 
 
▲SH-60Kのコクピット
 
機体の下を覗くと、ありました。着艦拘束装置です。

揺れている船の飛行甲板にヘリコプターをそのまま着艦させるのは危険なので、ヘリコプターの「お腹」にある棒を挟み込む機械が飛行甲板にありますが、それがこの板状の機械。
 
飛行甲板のレールは、この装置を移動させるためのものです。
 
 
▲着艦拘束装置がSH-60K底部の棒を挟み込んでいる
 
ヘリコプター後部のタイヤは空気が抜けてベコベコでした。
こんなのでいいのかと思っていたら、隊員さんによると「空気を入れすぎると、着艦時の衝撃でパンクしてしまうので、これくらいがちょうどいい」とのことでした。
 
 
▲SH-60Kの車輪
 
艦首と艦橋、ヘリ格納庫、飛行甲板を一通り見学し終えたのは、乗艦してから30分ほど経ってからでした。
下艦はヘリコプター格納庫横の舷梯から。
 
 
▲下艦後、艦尾からくらまを見る
 
この後はターミナルビルの3階送迎デッキからくらまの各部を眺めました。
 
鳥取で公開されたときは周囲に高い建物が無かったので、艦の上部にあるCIWSやシースパロー発射機がろくに見えませんでしたが、ターミナルビルからであればよく見えます。
 
 
▲ターミナルビルの送迎デッキからくらまの全体を見る
 
 
▲ターミナルビルの送迎デッキから2つの砲塔を見る
 
 
▲ターミナルビルの送迎デッキからシースパロー発射機(右上)と飛行甲板を見る
 
今日の一般公開も案内係の自衛隊員さん達は非常に丁寧で、話しかけると詳しく説明していただきました。
 
毎度思いますが、任務や訓練で忙しい中、一般公開をしていただけることに感謝です。