播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

APRS:Webに現在地が表示されるサービス(要アマ無線免許)

今日紹介するのは、形のある道具ではなく、山歩きにも使えそうなサービスです。

 


▲APRSのWebサイト(URL:aprs.fi)に表示された私の移動軌跡

 

サービス名:APRS (Automatic Packet Reporting System)
利用料:無料
備考:APRSに対応したアマチュア無線機と、それを操作するための免許が必要

 

APRSとは、様々なデータをアマチュア無線の電波とインターネットを通じてやり取りできるサービスです。
様々な情報と言っても、現在はGPSを使用した位置情報のやり取りがメインになっているようです。

 

たとえば、上の図には私が山歩きをしているときの位置が表示されていますが、これはGPSによって得られた位置情報を、私が持っている無線機からAPRS機能を使って発信したもの(ビーコンと呼びます)を他の無線局が受信し、それをインターネットを通じてWebサイトに送信してくれた結果です。(ほぼリアルタイムでWeb上に位置が表示されます。)

 

上に掲載している画像は、私が兵庫県北部の三室山~竹呂山を歩いた時に、APRSでビーコンを10分おきに発信し続けた結果ですが、このときは私の無線機から出た信号を、小豆島の局が中継して四国や姫路近辺の局が受信してくれたおかげで、Webサイトに私の位置が表示されました。

 

受信した信号を無線で再送信する中継局はデジピータ、受信した信号をインターネットへ送信してくれる中継局はI-GATEと呼ばれています。
自分が発射した信号が最終的にI-GATE局に受信されれば、インターネット上に自分の位置が表示されることになります。

 

APRSに対応している無線機を持っているユーザ同士の場合は、お互いの位置を無線機で確認することができます。
英数字のみの短文しか無理ですが、相手を指定してメッセージを送受信することも可能です(受信確認機能があるので、相手が受信したかどうかが分かる)。
気温や湿度、風向、風速などの気象情報を発信している局(ウェザーステーションと呼ばれる)もあります。

 

無線機のAPRSモデム機能をONにして山を歩いていると、ピーギャラという、昔のパソコン用アナログモデムのような音が頻繁に聞こえ、無線機の画面上にコールサインが表示されます。(VX-8の場合は、コールサインを選んで現在地など詳細情報を表示できます。)
地図表示が出来るハンディGPSを持っていれば、無線機に表示された座標を入力し、相手の位置をハンディGPSの地図画面で確認できます。
受信したビーコンの中に知っているコールサインがあれば、相手がどこにいるか正確に分かるので面白いと思います。

 

Web上で誰が今どこにいるのかを確認するには、「aprs.fi」というサイトにアクセスします。
ログイン用のIDの入力を求められますが、ここは自分のコールサインを入力しておけば良いでしょう。
(ログインIDをコールサインにしておけば、自分がAPRSで位置情報を発信した時、自分の居場所が中心になるように地図が表示されるので便利です。)

 

現在地を知りたい局のコールサインを検索窓に入力して検索を実行すれば、画面上にその局の位置や移動軌跡が表示されます(当然ですが、APRS対応の無線機から位置の信号を出している局に限ります)。
特定の無線局を検索しない場合は、表示されている地図範囲内の全無線局が表示されます。
何も表示されない場合は、表示する地図の範囲を変えたり、「最新表示:」ドロップダウンリストから「24時間」を選んでみて下さい。

 

表示される局のアイコンや移動軌跡中の点をクリックすると吹き出しが表示され、その中の「情報」をクリックすれば、その信号を発信した主の詳細を見ることが出来ます。
元の地図画面に戻るには、詳細画面内の「地図表示」をクリックします。



このサイトに自分の居場所を載せるもっとも手軽な方法は、APRSに初めから対応している無線機を使うことでしょう。
私が持っているVX-8という無線機は、オプションのGPSレシーバ(FGPS-2)と、それを無線機本体に接続するためのアダプタ(CT-136)(またはレシーバを接続できるハンドマイク(MH-74A7A))を購入すれば、APRSが利用できます。
(ちょっと難しそうですが、APRSに無線機が対応していなくても、TinyTrakという製品を接続すればAPRSが利用できるようです。)

 

VX-8でAPRS機能をONにするには、Bチャンネルを144.640Mhzに合わせ、メインメニューの79番「SAVE RX」をOFFにして、さらにGPSメニューの4番「APRS MODEM」を1200bpsに設定します。そして、STATION LIST画面の左上に丸が表示されているかどうか確認し、表示されていなければ「MODE」ボタンを押します。(丸が表示されていれば自動的に位置情報を発信する)
これだけで、(ビーコンを受信さえしてもらえれば)冒頭の図のように自分の位置がWeb上に載ります。

 

面倒なようですが、周波数はメモリーに登録しておけば良いですし、この程度の操作はすぐに慣れます。

 

初めて利用するときは、無線機に自分のコールサイン等を設定する必要がありますが、一度設定すればそうそう変更することはあり得ません。

 

インターネット上に自分の居場所が載るのはイヤという場合は、仲間内だけで周波数を決めて(もちろんバンドプランに従って)ビーコンのやり取りをすれば良いでしょう。



マニア好みのサービスで取っつきにくいかも知れませんが、やってみると案外面白いものです。

 

山の中で万一の状況になったときは、無線機の電源が入っていれば、本人の意識が無くてもビーコンが出されるので、救助する側の負担軽減になるでしょう。(標高が高い尾根上でないと、デジピータやI-GATEに電波を拾ってもらえませんが・・・)



こんなに面白くて実用的なサービスが無料で提供されているわけですから、利用しない手はありません。
アマチュア無線の免許をお持ちでまだAPRSに手を出していない方は、挑戦してみてはいかがでしょうか。