播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

マニアックなコンパス

山歩きの基本装備の一つであるコンパスですが、ちょっと変わったものを紹介します。

 

まずは、私が山歩きを始めた頃に使っていたコンパスから。

 

これはレンザティックコンパス(正しい英語読みは「レンティック」ですが、日本国内では「サ」が濁る日本語読みが主流。)と呼ばれる米軍の放出品で、本体はアルミ合金で非常に頑丈です。レンズを倒すと磁針がロックされるので、激しい衝撃を与えても針がはずれる心配がありません。

 

レンサティックは、レンズの上にある細いスリットを覗き、その中央にフタのワイヤーを捉え、そのワイヤーを目標物に合わせることで精密に方位を測定することが出来ます。

 

ワイヤーに目標物を捉えた状態で視線を落とすと、レンズ越しに方位を読み取れるようになっています。この写真の場合、目標の方位は25度です。

(赤い度数目盛りは5度刻みですが、その外側の黒い目盛りはより精密なミルという単位に基づいて刻まれたもので、20ミル刻みになっています。
ミルとは、1周(360度)を6,400に分割したもので、内角が1ミルになるよう2本の直線を引くと、1km先で直線の間隔が1mになります。ちなみに、内角が1度の2本の直線は、1km先で17m開きます。ミルという単位は一般にはなじみがないため、はっきり言って役に立ちません。)

 

レンサティックコンパスには、専用のナイロン製ポーチが付属しています。

 

精密な測定が出来て非常に頑丈なレンサティックコンパスですが、地形図と組み合わせて使うには向いていません。目標の角度は精密に測れるのに、シルバコンパスと構造が全く異なるため、目的の角度の線を地形図に引く(コンパスを地形図の上に置く)際に精度が低下してしまいます。
そのため、米軍ではプロトラクターと呼ばれる分度器が支給されています。

 

以前はレンサティックで目標の方位を測定し、安いシルバを分度器代わりに地形図に線を引いて現在地を知るという作業をしていましたが、すごく面倒です。(↑こんなことをするのは、子供の頃のプチ遭難で道迷い恐怖症になっている私以外にいないと思います。)

 

地形図と組み合わせて使うのは、やはりシルバコンパスが一番です。
とは言うものの、シルバには目標を捉える照準器がないため、目標の方位を正確に測ることは出来ません(かなり熟練が必要です)。

 



そこで購入したのが下のコンパス。
レンサティックとシルバ、それぞれの長所を兼ね備えています。

メーカー:SILVA
商品名:コンパスNo.15TDCL
定価:¥13,965

 

鏡の付いているコンパスなら何でも良かったのですが、どうせなら長く使える良いものを買おうと考え、このコンパスに決めて愛用しています。
カナダ軍が使用しているということも、ミリタリー好きの私にとっては大きな購入動機になっています。

 

肝心の使い方ですが、フタの上端にあるV字型切れ込みの中に目標物を捉え、鏡の中央に描かれた線と鏡に映った磁針の中央が重なるようにしたまま、鏡を見ながらダイヤルを回し、磁針とダイヤルの矢印を平行に合わせます(下の写真参照)。

 

(山歩きにはそこまでの精度は必要ありませんが)かなり高い精度で目標の方位を測定することが出来ます。山座同定にも便利。

 

このコンパスは、変わった機能を持っています。それが傾斜計。下の写真を見てください。磁針の中央から左下に小さな赤い矢印があります。これが傾斜計の針です。

コンパスの定規を傾斜に沿わせてコンパスを置き、赤い針が指し示す数字を読めば、傾斜の角度が分かるというものです。

 

このコンパスNo.15TDCLは、レンサティック並の測定精度を持ち、シルバ並の使いやすさを持った、私にとってはすばらしいコンパスです。

 

ちなみに、コンパスを海外の店から買うときはベースプレートに印刷された目盛り(定規)に注意しなくてはいけません。
アメリカの店から通販で購入したコンパスは、日本で一般的な2万5千分の1用の目盛りが付いていませんでした。代わりに2万4千分の1や、62500分の1なんていう定規が印刷されていました。しかも、単位はマイルです。