播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

真夏の水分補給を快適に:ハイドレーションシステム




暑くなってくると、熱中症やバテを防ぐために水分補給が大切になります。

山でよく見かけるのは、バックパックのサイドポケットに500mlのペットボトルを入れる方法ですが、歩きながらだと飲んだ後のボトルをサイドポケットに差し込むのが大変そうです。

私の場合は、病気ではないかと思うほど大量の水を飲むので、出し入れが面倒な方法を使いたくありません。

それに、バックパックの外側に入れたボトルの水は日光で温められているはず。暑いときにぬるま湯を飲む気にはなりません。

中身を凍らせたペットボトルを使うアイディアもありますが、結露で周りが濡れますし、溶けた分だけ少しずつ飲むのはじれったい。

そこで使うようになったのが、ハイドレーションシステムと呼ばれる、ビニール製タンクとホースを組み合わせた水分補給システムです。バックパック内にタンク(リザーバと呼ばれ、プラティパスのように中身が減ると薄くなる)を入れ、そこから伸びるホースをショルダーストラップに固定しておけば、バックパックを下ろしたり何かを出し入れすることもなく水を飲むことが出来ます。

初期のモデルはリザーバ内の水が背中からの体温で温まり、ホース内の水は直射日光で温まり、ぬるま湯をホースの先からチューチューと吸って飲むというシロモノで、とても人に勧められる物ではありませんでした。

しかし、最近の軍用モデルではリザーバとホースが断熱材で覆われており、朝冷たい水を入れておけば、昼過ぎでもまだまだ冷たいままの水を飲むことが出来ます。民間用モデルでも、リザーバにだけは断熱材が使われるようになっています。(注:民間向けのハイドレーションでもホースに断熱材が巻かれている製品はありますが、スキー/ボード用の一部のハイドレーションシステムだけです(低温で水が凍るのを防ぐため))。

私が使っているのは、米軍向けに作られているCamelbak社製 Thermobak Omega 100 oz.(容量3リットル、US定価:$66、日本国内販売価格\13,000程度)という商品です。
(海外の安い店から個人輸入すれば、送料を含めても国内で買うより安く手に入ります)

これ単体を背負って使うことも出来ますし、ショルダーストラップを収納すれば、バックパックの中にセットできます。バックパック内の荷物が多いときは、コンプレッションストラップを使ってバックパックの外側に取り付けることも出来ます。注水口も含めてリザーバ全体が断熱材に覆われている(断熱材入りのカバーに収まっている)ため保冷力が高く、ホースも断熱材に覆われているため、いつでも冷たい水が飲めます。

飲み口には水の流れを止めるスイッチもついているため、車にバックパックを積んで走っているときに、飲み口が開いて水が漏れる心配がありません。(以前、スイッチのない民間向けモデルで車の座席を濡らしたことがあります。)

水に変なニオイが着くと言ってハイドレーションシステムを嫌っている人もいますが、それは古いタイプの製品か、Camelbak社以外のメーカーのハイドレーションシステムを使った人でしょう。Camelbak社の製品はリザーバやホースに特殊な処理をしており、水にニオイが着くことはまずありません。

Camelbak製品を褒めちぎっている私ですが、Camelbak社製でも民間向けモデルは使いません。
私が民間用ハイドレーションシステムを使わない理由は次の2つです。

(1)Camelbak社製品の場合、民間向けモデルのホースやバルブは青色です。この色は目立ちますし、おもちゃのような安っぽさを感じるのです。軍用モデルなら、ホースも飲み口も黒色です。バックパックのショルダーストラップも黒色なので、黒いホースをショルダーストラップに留めていても、ほとんど目立ちません。

(2)最近の軍用キャメルバックは、リザーバとホースの接続方法がしっかりしています。ボタンを押してロックを解除しないと、ホースがリザーバから抜けません(ハイドロリンクと呼ばれる接続方法です)。また、接続部にO-リング(パッキン)が利用されていて、水が漏れる心配がありません。それに対し、民間向けハイドレーションでは、ホースをリザーバから出ているプラスチックパイプに差し込んでいるだけです。そのため、バックパック内に入れたリザーバに強い圧力が加わると、パイプとホースの隙間から水がしみ出すことがあるのです。(最新の民間向けモデルではどうなっているか分かりませんが、カタログにハイドロリンクという言葉が出ていないので、おそらく従来通り摩擦だけでホースを固定していると思います。)

なかなか便利なハイドレーションシステムですが、欠点もあります。それは、メンテナンスが面倒だということです。

プラティパスを使っている方なら分かると思いますが、あのタイプの容器を乾燥させるには時間がかかります。ハイドレーションシステムは、リザーバがプラティパスのようなもので、さらに、そこからホースが伸びています。このホース内の水もなかなか乾いてくれません。

Camelbak以外の製品の場合、残った水のせいで内部にカビが生えることもあるようです。(Camelbak製品は、細菌やカビの繁殖を抑える加工がされています。)

リザーバを乾かすための製品がいろいろなメーカーから出ていますが、基本的にはリザーバの両面がぴったりくっついて乾きにくくなるのを防ぐためのスペーサーです。これらの製品は「リザーバドライヤー」などと呼ばれています。ハンガーを曲げて自作する人もいるようです。

山から帰ってきたらすぐに中をすすぎ、リザーバドライヤーを入れて部屋の中につるしておきます。1~2日でリザーバ内はきれいに乾いてくれますが、ホース内の水分はなかなか乾いてくれません。

他にも欠点があります。
ハイドレーションシステムを快適に使うには、ハイドレーションに対応したバックパックを使う必要があるのです。ハイドレーション対応とは、リザーバを入れるためのポケットがバックパック内にあり、ホースを引き出すための穴が開いているということです。

メンテナンスが大変で、使用できるバックパックも限られますが、よく水を飲むという人にはその価値が十分にある道具だと思います。歩きながらいつでも冷たい水が飲めるのは快適です。

ちなみに私の場合、山で用を足した後や食事前など、ハイドレーションシステムの飲み口から水を出して手を洗っています。擦り傷や切り傷が出来たときは、傷口の洗浄にも使えます。