携帯電話で救助を要請するときは、正確に現在地を相手に伝えると救助要員の負担を減らすことが出来ます。
以前、或る山の岩場(山頂ではない)で昼食を食べていると、ウインチ付きの県警のヘリが飛来し、私のいる山の周囲を低空で巡回し始めました。ずいぶん長い時間巡回していましたが、やがて高度を下げ、負傷者を運び上げて飛び去っていきました。(翌日の新聞によると、幸い命に別状はなかったようです。)
山頂の真上を何度か往復していたので、ひょっとすると非常識なハイカーが山頂でヘリに向かって手を振ったのかも知れません。
救助される側も、ヘリに向かって何らかの合図を送ればもっと早く見つけてもらえたかも知れないし、通報する段階で正確な位置を知らせておけば、ヘリが非常識なハイカーの行動に惑わされずに済んだかも知れません。
単独で山に登る人なら、常に現在地を大まかに意識しながら歩いているはずですが、いざ救助を要請する必要が生じたとき、パニックを起こさずに正確な現在地をつかめるかは分かりません。地形図に道が載っておらず、尾根や谷が何本も同じ方向に伸びている地形では、パラレルエラーで自分の居場所を勘違いする可能性もあります。
そこで、GPSが役に立ってくれます。私の場合は、自分の歩いた軌跡をPCに保存するために、GPSの電源を入れたままバックパックの雨蓋に入れています。そのため、いざというときはすぐにGPSで正確な現在地を知ることが出来ます。
本当に救助の必要がある状況で携帯電話が通じるのであれば、測地系と緯度・経度を伝え、ヘリの音が聞こえたら目立つ合図を出し、救助隊に不必要な苦労をかけずに済むよう努めましょう。
[私の使っているGPS]
写真のGPSは、GARMIN社のMAP60シリーズの中で最も安いモデルで、パソコンとUSB接続はできるものの、ディスプレイは白黒、しかも地図の表示が出来ません。
しかし、緯度と経度はすぐに読み取れる画面構成になっているので、緯線と経線を引いた地形図を持っていれば、地図上での位置が簡単に分かります。
長所は安さ(US$180)と操作の簡単さです。パソコンや最近の携帯電話の操作になれていれば、数十ページある取説を見なくても、操作の早見表を見るだけで使えます。
もっと安い製品もありますが、画面構成のカスタマイズが出来なかったり、受信感度がイマイチだったりします。
短所は、大きくて重いことと、(すべてのGPSに当てはまることですが)谷間や樹林帯では電波を受信しづらいこと。
ある日の下山後、駐車場でGPSのトラックログと地形図を見比べていた時に、見知らぬ登山者に声をかけられました。その登山者にGPSのことを説明したらずいぶんとGPSに興味を持っていましたが、試しに手に持ってもらうと、「重いな」とのことでした。私にとっては何とも思わない重さ(電池込みで200g強)ですが、装備の重さに敏感な方にとってはかなりの重量なのでしょう。
この機種のもう一つの欠点は、英語版しかないこと。私は学生時代英語を専門に勉強していたので、英語の画面に抵抗はありませんが、たいていの人にとっては、英語の画面など見る気も起こらないかも知れません。
私のように個人輸入すれば、当然取説も英語版しかありません。
GARMINの輸入代理店経由で購入すれば(\25,000程度)、代理店が作成した日本語取説が付くようです。
日本語版のGPSは、英語版の倍ほどの値段になってしまいます。日本の地形図を格納できるGPSは高価な日本語版に限られるので、どうしてもGPSの画面上で地形図を見たいという場合を除いて、安い英語版GPSと補助線を引いた地形図(無料のソフト「カシミール3D」で作れます)の組み合わせで使うことをお勧めします。