概要
前々回の「新型MRE(外観編)」ではMREの外観を、前回の「新型MRE(内容編)」ではパッケージの中身を紹介しました。
今回の「実食編」ではメニュー番号1「Chili with Beans(チリコンカン)」を例に、MREを実際に食べる手順を紹介します。

▲「Talisman Sabre 23」(2023年に実施された米豪主催の多国間共同訓練)でMREを食べるM1戦車の搭乗員、William Scott特技兵(Photo by Richard Carlisi特技兵 2023年7月23日撮影)パブリックドメイン VIRIN*1:230723-A-NQ680-1007(出典元サイトの規約による注意事項:The appearance of U.S. Department of Defense (DoD) visual information does not imply or constitute DoD endorsement.)
MRE(Chili with Beans)の食べ方
※当ブログ管理人が実際に山に登って食べた際の手順です。メニューによって、あるいは環境によって食べ方は変化します。
ここでは、私がメニュー番号1番「Chili with Beans(チリコンカン)」を山の上で食べた時の手順を、順を追って紹介します。
主菜の準備
大半のメニューの主菜は、化学反応式の糧食加熱具(Flameless Ration Heater。略称はFRH。)で温めてから食べることが想定されています。
そこで、まずは主菜が入ったレトルトパウチと、FRH、そして断熱ケースとなる厚紙製のスリーブをMREのパッケージから取り出します。

▲主菜を食べるために必要なもの(左からFRH、スリーブ、レトルトパウチ)
FRHの上端を破って開封し、レトルトパウチと白いシート状の発熱体を重ねてFRHの袋に入れます。ただし、底まで落としてはいけません。袋の中ほどで保持しておきます。

▲FRHの中にレトルトパウチと発熱体(白いシート)を重ねて入れる(発熱体が下になるようにする)
次にFRHの袋を立てて持ち、袋の下端付近に書かれた2本の線の間に水面が来るように水を入れます。この時は、水が発熱体になるべくかからないように注意が必要。
なお、ちょうど良い水の量は、当ブログ管理人が試したところでは25~30mlです。

▲FRHの袋に25~30mlの水を入れる
適量の水を入れたら、レトルトパウチと発熱体を袋の底まで落とし、袋の口をレトルトパウチがある面に折りたたんでから、FRHの袋をスリーブに入れます。
そのまま全体を水平に寝かせ、水が発熱体にしみ込むまで1分ほど待ちますが、発熱が始まらない場合は軽く揉んでやります。

▲FRH全体をスリーブに入れて水平に寝かせる(水を発熱体に吸わせるため)
スリーブ越しに発熱体の温度を確認し、熱くなっていたら岩などに斜めに立てかけます。
この時重要なのは、発熱体がレトルトパウチの下になっており、FRHの袋の口が上を向いていることです。

▲発熱が始まったら斜めに立てかける
このまま10~15分待てば、ホカホカに温まった主菜を食べられるようになります。
クラッカー
主菜が温まるのを待っている間に、クラッカーを食べます。
用意するのは、クラッカーとチーズスプレッド(ピーナツバターやジャムが付属するメニューもあります)。

▲クラッカーとチーズスプレッド
開封前にしっかり揉むと、チーズスプレッドはクラッカーに塗りやすくなります。
チーズスプレッドは非常に濃厚で美味。

▲クラッカーにチーズスプレッドを塗った様子
コーヒーの準備(Part 1)
クラッカーを食べ終わってもまだ主菜が温まるまでの待ち時間があるので、その間に食後のコーヒーの準備をしておきましょう。
ホットドリンク用袋(Hot Beverage Bag)に6オンス(約180ml)の水を入れます。
袋には6オンス、8オンス、12オンスの位置に目盛りが付いているので、道具が無くてもある程度正確に水の量を測れて便利。

▲6オンスの位置まで水を入れた様子

▲なるべく空気を抜いて袋のジッパーを閉じる
このように事前に準備をしておくのは、FRHが高温を出せる時間が限られているから。
FRHが元気よく発熱している時間は1分たりとも無駄にできないので、入念な準備が大切です。
主菜
主菜が温まったら、FRHの中央付近にある切り口からFRHの袋を破り、レトルトパウチを取り出します。

▲温まったレトルトパウチ(切り口から点線の方向へ切り取って開封する)
レトルトパウチは、長辺に沿って切り取れるようになっています。つまり、レトルトパウチを横向きに持って食べることになります。
横向きに開けると開口部が大きくなり、パウチが浅くなるため食べやすいというわけ。
昔は短辺に沿ってパウチを切り、中身が減ってきたら中央付近の切り口からパウチをもう一度切るという形になっていましたが、いつの頃からか今のような方式に変わっています。

▲レトルトパウチを大きく開いてスプーンで食べる
コーヒーの準備(Part 2)
主菜のレトルトパウチを取り出した直後のFRHは、まだ熱々です。
今度はそこにホットドリンク用袋を入れ、スリーブに入れてしばらく待つと、水が温まってホットコーヒーを飲めるようになるわけです。

▲FRHに飲料用袋をいれた様子(熱効率を高めるため、これをスリーブに入れる)
コーンブレッド
日本人としては、主食を食べながら主菜を食べたくなるわけです。
そこで私は(今回のメニューの場合)主食としてコーンブレッド(トウモロコシで作ったパン)を頂きました。

▲コーンブレッド
単体で食べてもトウモロコシの風味が口に広がって美味しいですが、今回の主菜であるチリコンカンを塗って食べても美味しいです。
アメリカの食事は日本の常識を気にせず、自分が美味しいと感じる方法で好きなように食べるのが一番。

▲チリコンカンをコーンブレッドに塗って食べてみた
コーヒー
主菜とクラッカー、コーンブレッドを食べ終わったら、食後のコーヒーを頂きます。
主菜などを食べている間にホットドリンク用袋の中の水が温まるので、そこにコーヒーとミルク(粉末)、砂糖を投入して袋を振り、よく混ぜます。

▲一部のMREに付属するインスタントコーヒー、ミルク(粉末)、砂糖

▲ホットドリンク用袋にインスタントコーヒーなどを入れて混ぜた後の様子
ナイロン袋から直接コーヒーを飲むのは至難の業。
その点はしっかり考えられており、この袋は厚紙製スリーブに入る大きさですから、スリーブで型崩れを防いで飲むよう袋には説明が書かれています。

▲スリーブに入れた袋のジッパーを開け、袋の口とスリーブの上端をそろえて口を付けて飲めば、ナイロン袋の形が保持されて飲みやすい(ただし、厚紙の味を感じる)
最後はミント味のガムを噛んで口の中をさっぱりさせれば、食事は終了です。

▲MREに付属するガム
スポーツドリンク粉末
今回紹介したMREには、スポーツドリンク粉末(グレープ味)が付属しています。
これは食事の時というよりも、行動中の休憩時に飲むのが良いと思います。
飲料は粉末で付属していますから、飲むには水が必要。

▲スポーツドリンク粉末(グレープ味)と360mlの水(必要な水の分量は12オンス≒355ml)

▲袋に印刷された水位線(Fill Line)まで水を入れれば12オンスの水が入る
水を入れた後は、袋の口にあるジッパーをしっかり閉じてよく振って混ぜ、袋の口を開いてそのまま飲みます。
袋の素材はコシがありますし、クビレがあるため握りやすく、そのままでも簡単に飲めます。

▲水を入れた袋は握りやすい形になる
果汁は全く入っていませんから、人工的な味です。

▲スポーツドリンク(グレープ味)の色
ペパロニピザ風チーズ入りクラッカー
今回紹介したMREには、チーズ入りクラッカーが付属しています。
これもスポーツドリンクと同様、食事の時ではなく行動食として食べるのが良さそう。
山で食べずに持って帰り、ビールのおつまみにしても良いかも。

▲ペパロニピザ風チーズ入りクラッカー

▲円筒形のクラッカーの中心に穴があってチーズが入っている
FRHの使い方
MREに付属するFRHの表面には、注意事項や使い方がびっしりと印刷されています。

▲FRHの表面の印刷内容(「外観編」で紹介したユリウス日付コード(8354)が下端に印刷されています。それによると、このFRHは2018年12月20日製造です。)
まずは最上部の注意事項の内容を紹介します。

▲上部に印刷されている注意書き
MRE加熱具
合衆国
8970-01-321-9153*2
警告1.反応中の発熱体からは、可燃性気体である水素を含む水蒸気が出る。水蒸気に火を近づけないこと。
2.発熱体から出る水素は、酸素と置き換わる。車両や狭い空間などで10個以上の発熱体を使用する際は、換気システムを作動させるか、車両のハッチ(あるいは部屋の扉)を開けること。
3.熱湯が漏れ出すと火傷をしたり、濡れることで凍傷になりやすくなる。したがって、発熱中のFRHをポケットに入れる際は注意すること。
4.使用後のFRHとレトルトパウチは高温になっている。レトルトパウチを取り出す際は、注意すること。
5.使用後のFRHは廃棄すること。FRH内に残った液体を飲んだり、調理に使用してはならない。
発熱体、およびその使用によって発生する副産物は、人間が摂取することを想定していない。
(出典:FRHの外袋。当ブログ管理人が意訳した。)
FRHの操作方法は手順1~6までありますが、まずは前半である手順1~3の内容を紹介します。

▲FRHの使用方法(手順1~3)
使用方法
1.レトルトパウチ(主菜)と厚紙製のスリーブをMREのパッケージから取り出す。
2.FRHの袋の上端を切り口から破り取る。レトルトパウチ(POUCH)と発熱体(HEATER)をFRHの袋(BAG)に入れる。
3.レトルトパウチと発熱体を袋下端の2本の線(LINES)より上の位置で保持し、2本の線の間に水面が来る程度の量の水を入れる。レトルトパウチと発熱体を袋の底まで落とし、袋の口をレトルトパウチのある側へ折り曲げる。
(出典:FRHの外袋。当ブログ管理人が意訳した。)
レトルトパウチと発熱体(ヒーター)を袋の中ほどに保持した状態で水を入れるように書かれていて、最初は不思議な感じがありましたが、よくよく考えるとその理由がなんとなく分かりました。
最初に水を袋に入れてから発熱体を入れる場合、袋の内側に付着した水を吸った発熱体を、(そうと気づかずに位置を調整するため)直接手でさわる可能性があります。また、水を入れる時に手が濡れた場合、濡れた手で発熱体をさわると火傷をしかねません。
そういった危険を避けるため、最初にレトルトパウチと発熱体を袋の中ほどに入れた状態のまま水を注ぐように指示されているのでしょう。(当ブログ管理人の推測です。正確な理由はどこにも書かれていません。)
続いては手順の後半である4~6です。

▲FRHの使用方法(手順4~6)
4.準備ができたFRHを厚紙製のスリーブに押し込む。袋の口はレトルトパウチ側に折り返されており、発熱体はレトルトパウチの下になっていること。
5.発熱体がレトルトパウチの下にある状態のまま、発熱体の反応が始まるまで、あるいは1分間スリーブを水平に保つ。
6.発熱体の熱エネルギーを最大限に活用するため、発熱体は常にレトルトパウチの下にし、袋の口はレトルトパウチ側に折り返し、袋の口が上になるようスリーブを斜めに立てかける。
10~15分(気温によって調整する)経過後、FRHの袋の中央部にある切り口から袋を破り、レトルトパウチを取り出す。
レトルトパウチの中身の温度を均一にするため、パウチを揉むこと。注意:火傷に注意。
(出典:FRHの外袋。当ブログ管理人が意訳した。)
ホットドリンク用袋の使い方
温かいコーヒー等が飲めるよう、MREには水を温めるための袋が付属しています。
こちらも表面に色々書かれているので、その内容を簡単に紹介します。

▲ホットドリンク用袋の注意事項と使い方(当ブログ管理人が意訳した。)
最後に
MREにはたくさんの食べ物が入っていますが、すべてを一回の食事で食べる必要はありません。
ドリンクやおやつは、行動食として消費した方が良いでしょう。
一度、MREの中身を全て一度の食事で食べたことがありますが、満腹感とお腹の中の「チャプチャプ感」が酷いことになり、それ以来MREを食べる際は最初に内容物をざっと眺め、食事として食べるべきものだけを選ぶようにしています。
今回紹介したメニュー番号1番「Chili with Beans(チリコンカン)」のカロリーと栄養成分を表にまとめてみました。

▲メニュー番号1番「Chili with Beans」の栄養成分
MREは、どのメニューもこのくらいのカロリーになるように献立が決められています。
1食分としてはカロリーや塩分が多いですが、これは運動強度が高い兵士のための食料だからです。
実際に食べてみようと考えている方は、カロリーや脂質、塩分の過剰摂取にご注意ください。