概要
アメリカ軍では、MRE(Meal, Ready-To-Eat, Individual=調理不要で食べられる個人用糧食)と呼ばれる携帯食料が使用されています。
食事に必要なものが一式まとまっていて便利なため、私も山歩きの際に時々食べています。そこで、実際に私が山で食べた時の様子を詳しく紹介することにします。

▲MREに付属する糧食加熱具の使い方を、海兵隊の新兵が軍民合同オリエンテーション会議のメンバーに説明している様子。同会議のメンバーは海兵隊の新兵訓練施設を見学し、基礎訓練の一部を体験した。(Photo by 合衆国空軍Scott F. Reed一等軍曹 2005年4月28日撮影) パブリックドメイン VIRIN:050428-D-D0439-3313*1(出典元サイトの規約による注意事項:The appearance of U.S. Department of Defense (DoD) visual information does not imply or constitute DoD endorsement.)
2025年10月18日に、当ブログではアメリカ軍の戦闘糧食「MRE」のメニュー番号1「Chili with Beans(チリコンカン)」を紹介しました。
今回は、メニュー番号2「Chicken Stir Fry(中華風鶏肉炒め)」を紹介します。
注:紹介するのは、2024年製のMREです。MREは年によってメニューに若干の変更があります。
MRE(Chicken Stir Fry)の内容

▲Chicken Stir Fryのパッケージ
メニュー番号2「Chicken Stir Fry」の内容物は、次の通りです(記載順序は、MREの仕様書*2に従った)。
- Chicken Stir Fry(中華風鶏肉炒め)
- Fruit Puree Squeeze, Apple, Strawberry, and Carrot(フルーツピューレ)
- Trail Mix, Recovery(トレイルミックス)
- Cinnamon Bun(シナモンパン)
- Chocolate Hazelnut Protein Drink Powder(チョコレート風味プロテインドリンク粉末)
- Picante Seasoning(粉末スパイス)
- Accessory Packet B(付属品袋B)
- Spoon(スプーン)
- Flameless Ration Heater(化学反応式の糧食加熱具)
- Paperboard Sleeve(厚紙製スリーブ)
MRE(Chicken Stir Fry)の食べ方
私の場合、MREは山歩きの時に食べることにしていますから、実際に私が山で食べた時の順序で食べ方を紹介します。
トレイルミックス(Trail Mix, Recovery)
トレイルミックスは、登山者やハイカーがエネルギー補給のために歩きながら食べる行動食の一種。内容としては、ナッツ類やレーズン、マーブルチョコレート等が入っているのが一般的。
「Trail」は登山道や小径を意味する単語ですから、そういった場所で食べるためのものということです。
山道を歩きながら食べられるように、まずは登山口でMREのパッケージを開封してトレイルミックスを取り出しました。

▲Trail Mix, Recoveryのパッケージ
MREに入っていたトレイルミックスの内容は、細かく折ったプレッツェル、ピーナッツ、アーモンド、カシューナッツです。

▲Trail Mix, Recoveryの内容
パッケージは厚手のアルミのため、口を折りたたむと自然に閉じたままの状態になり、開封後であっても口を折り曲げてポケットに入れておけば中身がこぼれません。
この時は、山道を歩きながら数十分かけて中身を食べつくしました。
チョコレート風味プロテインドリンク粉末(Chocolate Hazelnut Protein Drink Powder)
MREにはドリンク類(水と混ぜる粉末)も付属します。
メニュー番号2のMREに入っているのは、ヘーゼルナッツ風味のココア味プロテインドリンクの粉末です。

▲Chocolate Hazelnut Protein Drink Powderのパッケージ
細長いアルミパウチで上端にはジッパーが付いているため、飲み残してもジッパーを閉じれば安全に持ち運べます。
これは登山中に出会った展望の良い場所で休憩をする際、水を入れてシャカシャカと振り、景色を楽しみながら大半を飲みました。
味は、まさに名前の通りヘーゼルナッツの風味が漂うチョコレートドリンクで、プロテイン感はあまり感じません。

▲水を入れた状態。中央がくびれたボトルのような形状になり、握って飲みやすい。
ドロッとしているため、ジッパーを開けて底を持ち上げてもなかなか口に入ってこず、「もっと持ち上げないといけないかな?」と思って角度を変えたらドバっと流れてきました。
飲むときは慎重に傾けないといけません。
飲み残した分はその後、小休止の度に少しずつ飲み、山頂に着くころには飲み干していました。
中華風鶏肉炒め(Chicken Stir Fry)
山頂に到着したら、メインディッシュで昼食です。
冷たいまま食べても美味しくありませんから、まずは温めましょう。
MREに付属するFRH(Flameless Ration Heater=化学反応式の糧食加熱具)に少量の水を入れ、メインディッシュのレトルトパウチと重ねて厚紙製のスリーブに入れたら、15~20分程度待ちます。

▲FRHでChicken Stir Fryのレトルトパウチを温めている様子
温まったらレトルトパウチから直接食べるのが作法ですが、私にとって初めて見るメニューなので、器に移し替えて観察しながら食べることにしました。

▲出来上がったChicken Stir Fryと味変用のスパイス(Picante Seasoning)
Chicken Stir Fryを日本語にすると、Chickenは「鶏肉」、Stirは「混ぜる」*3、Fryは「炒める」となります。
「Stir Fry」で「混ぜ炒め」、つまり「炒め物」という意味になるので、訳語は「鶏肉炒め」とするのが適当でしょう。
主な原材料は鶏肉、米、ピーマン、タケノコ、赤ピーマン、醤油、ごま油、ニンニク、玉ねぎ、香辛料となっていますから、中華風の味付けだと分かります。
また、分量的には鶏肉の次に米が多く含まれています。
ということで、MREのChicken Stir Fryに限っては「鶏肉たっぷりチャーハン」と呼んだ方が良いかも知れません。

▲付属の粉末スパイス(Picante Seasoning)をかけると、さらに食欲が増す味に変わった(Picanteは「ピリ辛」という意味)
ただし、日本の中華料理に慣れた方が想像するチャーハンとは別物で、いわゆるアメリカンチャイニーズの味です。
シナモンパン(Cinnamon Bun)
メインディッシュを食べ終わったら、甘いデザートを頂きましょう。
このメニューに含まれているデザート代わりの食べ物は、シナモンパンとフルーツピューレの2種類。
ピューレは名前に「Apple, Strawberry, and Carrot」と書かれていることから野菜ジュースっぽい味に思えたので、シナモンパンを食べることにしました。

▲Cinnamon Bunのパッケージ
名前の通りシナモンの風味が強く、中にはトロッとしたシナモンフィリングが入っています。

▲Cinnamon Bun
シナモン感が強烈ですが、私は美味しくいただけました。
これでお腹がいっぱいになったので、山の上でのMREの食事は終了。
フルーツピューレ(Fruit Puree Squeeze, Apple, Strawberry, and Carrot)
フルーツピューレは、自宅でおやつ代わりに食べてみました。

▲Fruit Puree Squeeze, Apple, Strawberry, and Carrotのパッケージ(右は原材料や栄養成分が書かれたカード)

▲お皿に出したフルーツピューレ
カゴメなどの野菜ジュースをドロッとさせたような味で、美味しいというよりも身体に良さそうな味だと感じました。
付属品袋B(Accessory Packet B)
Accessory Packet Bは「付属品袋B」という意味で、「B」があるわけですから「A」もあります。
付属品袋Aの内容については、次のリンク先でご覧いただけます。
付属品袋Bの内容は、次の通りです。

▲付属品袋Bの外観

▲付属品袋Bの内容
この中で付属品袋Aに入っていないものは、紙マッチ。

▲紙マッチは20本入り
MREに付属する紙マッチには、昔から次の文言が印刷されています。

▲MREの紙マッチに印刷された文章
These matches are designed especially for damp climates but they will not light when wet or after long exposure (several weeks) to very damp air.
<当ブログ管理人による意訳>
このマッチは多湿な気候に耐えられるように作られているが、濡れていたり、長期間(数週間)にわたって非常に湿度の高い環境で保管した場合は着火しない。(出典:MREに付属する紙マッチの表面)
多湿な環境で使えるマッチとはどのようなものでしょうか。
気になったので、仕様書を調べてみました。
見つかったのは「A-A-59489B」という仕様書で、米軍を含む連邦政府機関で使用する安全マッチの仕様が書かれています。
MREに付属するマッチは、正式には「MATCHES, SAFETY(安全マッチ)Type Ⅰ Class B」と呼ばれるもので、Type Ⅰは軸が紙のマッチを、Class Bは20本入りを表しています*4。
性能試験については仕様書の3.7に書かれており、100本中5本以上着火しない(または折れる)場合は、ロット全体が不良品として弾かれます。
肝心の耐湿性ですが、これは仕様書の3.8に「Humidity resistance test.(耐湿性試験)」として求められる性能が書かれています。
3.8 Humidity resistance test. One hundred matches shall be placed in a saturated humidity chamber maintained at approximately 39℃ (105℉). Matches shall be conditioned in the chamber for 6 hours. Immediately upon removal from the chamber, each match shall be struck on the striking surface until it ignites or becomes damaged. Thirty or more failures shall result in rejection of the lot.
<当ブログ管理人による意訳>
3.8 耐湿性試験 内部温度およそ39℃、相対湿度100%の容器内に試験対象のマッチ100本を6時間入れておく。容器から取り出した直後のマッチで点火を試み、着火しない、あるいは折れるマッチが30本以上ある場合は、そのロット全体を不良品とする。(出典:仕様書「A-A-59489B」)
ガムの袋が赤色になっているのは、シナモン味であることを表しているそうです。
なお、透明な袋だとミント味。
付属品袋Aにはインスタントコーヒー一式が入っていますから、Bの質素さには驚きました。
最後に
MREは1食分の食料というより、食事時間と食間の空腹を満たすためのものが一式揃ったものです。
一度に中身を全部食べ切るのではなく、山歩きでは行動中に食べられるものを食べてシャリバテを防ぎ、食事時間には時間をかけてメインディッシュを温め、美味しくいただくという食べ方が良いでしょう。
最後にメニュー番号2番「Chicken Stir Fry」のカロリーと栄養成分を紹介します。

▲メニュー番号2番「Chicken Stir Fry」の栄養成分
*1:VIRIN は(Visual Information Record Identification Number)の略。アメリカ国防総省が公開する画像や動画等に対して付与される一意の識別番号。
*2:ここでいう仕様書は「ACR-M-044」のことです。
*3:バーテンダーさんがカクテルを作る時などに「ステア」という用語が使われますが、「stir」に由来します。本来の発音は「stɜː」なので、「ステア」はかなり無理のある読み方です。
*4:軸が木のマッチはType Ⅱです。ClassはType Ⅰの場合Aが30本、Bが20本、Cが10本入りを意味します。Type ⅡのClassはAが長さ60mm、Bが50mm、Cが44mm(それぞれ±3mmの誤差が許容されている)となっています。