播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。原則として更新は週に1回です。広告は表示しません!

イギリス製の固形燃料ストーブ:FireDragon Mini Cooker

購入の経緯

以前、イギリス軍が採用した折り畳み式のポケットストーブを当ブログで紹介しました。

湯沸かし性能を実験してみましたが、期待外れの性能でその後は使うこともなく忘却の彼方へ。

そんなある日、神戸にあるアウトドアショップの店内でFireDragonの小型ストーブと純正固形燃料を発見。

「純正固形燃料ならFireDragonのストーブは本来の性能を発揮できるのかな?」と気になり、そのストーブと固形燃料を購入してしまいました。

概要

イギリス軍にも製品を納入しているBCB International社が販売する、折り畳み式ではない小型の固形燃料ストーブです。
(注:このストーブは、イギリス軍の装備品ではありません。)

仕様


▲FireDragon Mini Cookerのパッケージ

製品名: FireDragon Mini Cooker
メーカー: BCB International Ltd(イギリス)
サイズ: 70mm×50mm×40mm(カタログ値)
重量: 40g(カタログ値)
材質: 公式サイトではアルミと記載。しかし、磁石が付きますし、輸入代理店が貼付したステッカーにはステンレスと記載されています。
生産国: イギリス
定価: 3.59ポンド
購入価格: ¥880(税込)
購入先: ハイマートベルク ジェームスマウンテン アウトドアショップ(神戸市)

外観

公式サイトとパッケージの表記が異なるため正しい情報が不明ですが、FireDragon Mini Cookerは磁石が付く素材でできた箱型の固形燃料ストーブです。

折り畳み機構はありません。

箱状の燃焼部の上に、折り曲げられる形状のゴトク兼風防が付いています。

箱から出すと、未使用新品なのに傷だらけだし、縁はメッキが剥がれているし、中華製の怪しげな商品のような見た目をしています。


▲FireDragon Mini Cooker(新品でも画像の通り傷やメッキの剥がれなどがある)

下半分を占める燃焼部は、通気口も何もない本当にシンプルな箱型です。

FireDragon燃料は、火をつけると液状化して周辺に燃え広がるため、燃焼部を箱型にしておかないと危険なのです。


▲燃焼部はただの箱(とても未使用新品とは思えない状態)

使用する燃料

FireDragon Mini Cookerは、FireDragon固形燃料用に作られています

主な原料はエタノールのため、発売当初メーカーのサイトでは「調理前に固形燃料を手に擦り付けて消毒ができる」という宣伝文が書かれていました。

FireDragon固形燃料はイギリス軍に採用されており、イギリス軍兵士に支給されています。

彼らが実際にこの固形燃料を使ったとき、宣伝を信じて固形燃料で手を消毒した直後にストーブに点火したら、手の表面にわずかに残ったエタノールに引火するという事例が多発し、それ以降メーカーサイトから「手の消毒に使える」という文言は削除されたそうです。嘘か本当か知りませんが…


▲FireDragon固形燃料(14g×12個入パッケージ)税込¥1,210


▲上のパッケージには14gの固形燃料が12個入っている(燃料一つあたり約¥100)

各FireDragon固形燃料は、カップ入りゼリーのような容器に入っています


▲FireDragon固形燃料はゼリーのようなパッケージ(左は上面、右は下面)


▲日本のカップ入り固形燃料とのサイズ比較

FireDragon固形燃料を使用するときは、フタを剥がして中身をMini Cookerの中に入れます


▲フタを剥がしたFireDragon固形燃料(中身だけをストーブにセットする)

FireDragon固形燃料は、燃焼後に下の画像のような白い物質が残ります。


▲FireDragon固形燃料の燃えカス

FireDragon固形燃料を試そうと考えておられる方は、使用するクッカーにご注意ください。

この固形燃料は大きな炎を上げて燃えるため、取っ手に断熱材が付いているクッカーの場合は断熱材が焼ける可能性があります。

さらに言うと、炎はクッカー底面から大きく外へ広がったり、クッカーが細い場合は上方にも立ち上ります。炎が見えにくい昼間にFireDragon固形燃料を使う場合は、火傷に注意しないといけません。

Mini Cookerの性能

このストーブの湯沸かし性能を確認するため、カップヌードルを作るという想定で300mlの水が沸騰するまでの時間を計ってみました。

FireDragon固形燃料の他にEsbit固形燃料(1個4g)を3個使った検証も行い、性能を比較することにします。

4gのEsbit固形燃料を3個(合計12g)使ったのは、1つ14gのFireDragon固形燃料と重量を合わせようと思ったから。

検証に使用した燃料

(1)FireDragon純正固形燃料(14g)×1個
(2)Esbit固形燃料(4g)×3個(計12g)

実験環境
(1)の燃料は気温約13℃、湿度約50%、微風の屋外。風防は使用せず。
(2)の燃料は気温約9℃、湿度約60%、微風の屋外。風防は使用せず。

使用するクッカーはエバニューのTi 400FD Cup、水の量は300mlです。


▲検証の様子


▲FireDragon固形燃料で加熱したクッカー底面には多少のススが付く


▲Esbit固形燃料を使うと多くのススが付着する

では、300mlの水を沸騰させるのにかかる時間の検証結果をお見せします。


▲300mlの水を沸かすのにかかった時間(2種類の燃料の比較)

FireDragon固形燃料の場合、水温が60度に達することなく燃料が燃え尽きました。

Esbit固形燃料(4g×3個)の場合、時間はかかりましたが300mlの水を沸かすことが出来ました。

私の山歩きでは、カップラーメンや袋ラーメンを調理したり、レトルトパックを温めたりするといった火の使い方をします。しかし(FireDragonを気に入っている方には申し訳ありませんが)FireDragonシリーズは、ストーブも燃料も私の使い方では満足できる性能ではありませんでした。

エスビットポケットストーブと日本製固形燃料やパック燃料の組み合わせであればラーメンを作ることは可能ですから、FireDragonシリーズの性能には不満を感じます。

YouTubeにFireDragon Mini Cookerと27gの燃料(上記の検証では14gのもの)を使った海外のレビュー動画がありましたので、参考のために掲載します。

この方も300mlの水を沸かそうとしていますが、27gの燃料を使って7分待っても沸騰しなかったとのことです。


www.youtube.com

最後に

FireDragon固形燃料は、廃棄される野菜などを原料に製造されたという「環境負荷の低さ」が売りです。

そういった考えに賛同されるのであれば、FireDragonシリーズの製品を使っても良いかも知れません。

時間を気にせずコーヒー1杯程度、あるいはアルファ米やフリーズドライ食品を戻すための少量のお湯を沸かしたり、魔法瓶に熱湯を入れて持って行き、山の上で再沸騰させるといった使い方であれば、FireDragonシリーズの製品を活用できるかな。

ネットにはFireDragon固形燃料のレビュー記事や動画が多くありますが、ほとんどの方が純正ストーブを使わずに「エスビット固形燃料より良い」とか「火力が強い」といった「今回の検証結果と正反対の評価」をされているようです。

FireDragon固形燃料は、純正ストーブと組み合わせると実力を発揮できない(純正ストーブの作りが悪い)ということかも知れません。

それにしても、FireDragonシリーズのストーブは燃焼効率が悪いし、固形燃料は値段が高いし、液状化するから使えるストーブが限られるし、少ないながらもススが出るし、「どうせ液状化するなら(ススが全く出なくて燃料の量を調整しやすい)普通のアルコールストーブとメタノールの組み合わせでいいじゃないか」と思ってしまうし、私の感覚では特に利点を感じられませんでした。