概要
兵庫県西脇市の角尾山(つのおざん)は山城跡で山頂からの展望が良く、いつか歩いてみたいと考えていました。

▲水尾橋付近から見た角尾山
ただ、一般的なルートは南の光明寺方面からのもので、距離は往復7kmほど、累積標高差も500mあります。
私はドローンやらパノラマ撮影機材、昼食用の機材を担いで歩くため荷物が重く、一般ルートはきつそう。
楽なルートは無いかなと探していたら、朝日新聞Webサイトで「360度の展望復活 兵庫・西脇の角尾山、地域住民らが登山道も整備」という記事(2024年11月30日10:00付)を見つけました。
それによると、西の芳田(ほうた)地区から登れる短距離のルートが整備されたとのこと。調べてみると、途中までは林道歩きで楽に山頂にたどり着けそうです。
というわけで、本日はその楽ちんなルートで角尾山に登ってきました。
本日の行程は、次の通りです。
- 芳田の里ふれあい館に駐車
- 林道と登山道を経て角尾山山頂へ
- 山頂で昼食
- ピストンで下山

▲対応する地形図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図「西脇」

▲カシミール3Dで作成したルートの断面図
姫路市街から駐車場へ
9:00
姫路市街の自宅を車で出発。
国道372号線を加西方面へ進みます。
「法華口」交差点を左折して県道716号線に入ったら道なりに約10km北へ走り(途中の「玉野」交差点から先は県道24号線になる)、「別所北」交差点(丁字路)に突き当たったら右折。ここからも県道24号線です。
「別所北」交差点からおよそ3.6km、「明楽寺(みょうらくじ)」交差点を右折。
「明楽寺」交差点から東へ進むこと約1.3km、野間川を渡る直前の三叉路を右折して山際を700mほど走ったところで、「芳田の里ふれあい館→」の看板が立つ二股の分岐(左は下り坂、右は上り坂)に出会うので、看板に従って右上へ登る坂へ入ります。
坂を100m上ったところが「芳田の里ふれあい館」で、その駐車場が登山者用に開放されています。
ふれあい館が閉まっている時でも、奥の駐車場(今回私が止めた場所)は開放されているようです。
https://maps.app.goo.gl/LHExAtcdwNu42kto8
▲芳田の里ふれあい館の位置
10:15
芳田の里ふれあい館の駐車場に到着(地図中「P」)。
「ふれあい館&角尾山駐車場」と書かれた看板が設置されているので、登山者が車を置いても問題なさそうです。

▲駐車場の様子(注:この駐車場はふれあい館の奥にある広い駐車場で、ふれあい館が閉館している時でも利用できます。)
駐車場から山頂へ
10:23
準備が整ったので出発。
坂を下って車道に突き当たったら右に曲がり、道なりに南東へ進みます。

▲芳田の里ふれあい館から坂を下って集落内を南東へ進む
10:28
道なりに歩いて行くと、ふれあい館の坂の下からおよそ240mで、下の画像の擁壁(道標が付いている)に出会います(地図中「道標」)。
道標に従って、緩やかな上り坂になった林道に入りました。

▲擁壁の道標に従って林道に入る
10:30
林道の左側に「芳田の里 角尾山登山案内」と書かれたハイキングマップと、「角尾山登山口 駐車場」と書かれた看板を見つけました(地図中「駐車場」)。
私はふれあい館に車を置きましたが、少しでも楽をしたい方は、ここに車を止めれば良いでしょう。

▲角尾山登山案内と駐車場の看板が立つ空き地(芳田の里ふれあい館の駐車場より小さい)
駐車場になっている空き地のすぐ先には、防獣ゲートがありました。
一見すると閂(かんぬき)を開け閉めしないといけない、大掛かりなゲートに見えますが、よく見れば人が通るための扉が右に付いているのが分かります。

▲防獣ゲート(右に人が通るための扉がある)
ここからは、路面がやや荒れた林道歩きが始まります。
轍が残っており、最近まで車の通行があったような雰囲気ですが、ところどころで小規模な土砂崩れの痕跡が見られますし、路面の状態があまり良くないため、軽トラックやオフロード用の車でなければ通行できないと思われます。
仮にそういう車で入ったところで、方向転換や駐車できるスペースがないため、進退窮まることでしょう。

▲林道の様子
10:48
路肩が崩落した場所を通過(地図中「崩落地点」)。

▲林道の路盤が崩れて擁壁が割れ、ガードレールも曲がっている
林道は展望が無く、路面が固くて足腰に負担がかかりますし、小動物がカサコソと動き回る音に加えて、何やら大きめの動物(イノシシ?)もいるような気配があり、怖くてキョロキョロしながら歩かざるを得ませんでした。
10:54
林道の終点に到着。(地図中「林道終点」)。
(私の個人的な感覚では)林道の終点には転回スペースがあるのが一般的だと思いますが、ここは唐突に林道が途切れ、登山道が始まっています。
設置されている道標によると、ここから角尾山山頂までは700mとのこと。

▲林道終点の様子(道標の右から登山道が始まる)
今まではなだらかな林道*1だったのが、細い山道に変わります。
普段の私ならいきなりバテるはずですが、1.5km近い林道歩きのおかげでウォームアップができたのか、山道が全く苦になりませんでした。

▲登山道の様子
10:56
稜線上の鞍部に出ました(地図中「鞍部」)。

▲鞍部の様子
林道の後半から南向きに進んでこの尾根に乗りましたが、ここからは北東に進路が変わります。

▲ここからは尾根歩き
11:00
登山道が二股に分かれる場所に出会いました(地図中「新旧登山道分岐」)。
道標が立っており、左前を指して「角尾山山頂」、右前を指して「滝野方面」となっています。
どちらに進んでも、南の光明寺方面と角尾山を結ぶ縦走路に出られそうですが、道標に「角尾山山頂」と書かれている方(おそらく朝日新聞に書かれていた新しい登山道)へ入ってみました。

▲分岐の様子(左へ進んだ)
地形図で等高線が詰まっていることから分かる通り、この斜面の角度は強烈です。
その急斜面を、トラロープを頼りに登るように新登山道は付けられていました。

▲新登山道は急斜面
11:09
光明寺方面からの縦走路と合流しました(地図中「縦走路合流」)。

▲南北方向に走る縦走路に西から合流する地点の様子
下山時はここで縦走路を外れて新道に入らないといけませんが、道標がしっかり整備されているので問題なさそう。

▲合流地点の道標(下山時は「ふれあい館P→」の方向へ進む)
縦走路に合流してからは、城跡と思われる地形に出会えます。
例えば、縦走路に合流した後すぐに通る小ピーク。
削平地になっています。

▲小ピークは曲輪跡(?)*2と思われる削平地
11:14
「頂上まで あと200m」と書かれたプレートのある場所を通過(地図中「頂上まで200m地点」)。

▲「頂上まであと200m」地点の様子
頂上まであと100mほどになると、登山道に露岩が多くなり、岩を迂回するようにカクカクと折れ曲がりながら進むところもあります。
これも山城があった時の名残(敵の侵攻を遅らせつつ、守りやすくするための工夫)かも知れません。

▲岩を迂回して小さな削平地に上がる道(虎口跡?*3)
巨岩の脇をすり抜けるような道もありますし、山頂の直前では右に小さな曲輪跡が階段状に並んでいるのを見ながら登ることになります。

▲薮になっているが右は階段状の曲輪跡
木で組まれた骨組みだけの休憩所の横を登ると、角尾山の最高地点です。

▲骨組みだけの休憩所(中はベンチになっている)
山頂
11:21
角尾山の山頂に到着しました(地図中「角尾山」)。

▲山頂の看板

▲山頂には三等三角点標石(点名:熊ノ尾)が埋設されている*4
山頂には石を積んで作られた櫓台(やぐらだい)のような土台があり、その上に山頂を示す看板や三角点標石が埋設されています。
かつてここに山城があったときは、この上に見張り小屋か小さな塔があって、周囲を見張っていたのかな。

▲山頂の櫓台跡(?)
角尾山(岡崎町ほか)
芳田地域を代表する秀峰である角尾山。山頂は標高344メートル、平地との比高は約260メートルあります。山城はその山頂に築かれ、芳田全域を眼下におさめることができます。
山頂の主郭から南へ続く尾根に延長90メートルにわたって9段の曲輪(くるわ)が階段状に築かれ、その西側の縁に沿って通路が通っています。特徴的なのは、山頂の主郭に築かれた石垣積みの櫓台状の高台です。
南北朝時代に原形が作られ、戦国時代に櫓台や通路が作られたものと考えられます。このころの山城は合戦のときにこもるための城で、普段は見張り番がいるだけでした。そのため、建物も粗末な小屋程度でしかなかったようです。
(出典:西脇市Webサイト)

▲山頂は木々が無く、展望は抜群(西からドローンで撮影)
山頂からの眺め(全天球パノラマ)
角尾山は展望が良いことが分かっていたため、本日は一眼レフカメラ用のパノラマ撮影機材を持ってきました。一発撮りできるパノラマカメラとは違う、高画質な全天球パノラマをご覧ください。
パノラマ画面内左上のリストから、地上で撮影したパノラマと空撮を切り替えられます。空撮パノラマでは、山頂がどのような場所なのか、鳥の目線で確認できます。
https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/tsunoozan20250503/index.html
▲角尾山山頂で撮影した全天球パノラマ(撮影機材 カメラ:Nikon D7100、レンズ:AF DX Fisheye Nikkor ED 10.5mm F2.8G 空撮パノラマはMavic 2 Pro搭載カメラで撮影)
昼食
この絶景の中で食べる本日の昼食は、アメリカ軍の戦闘糧食「MRE」のメニュー番号10「Chili and Macaroni」です。

▲本日の昼食はアメリカ軍の戦闘糧食

▲メインディッシュは「チリソースで和えたマカロニ」
山頂から見える山々
食後は山座同定*5を楽しみました。
見える山をいくつか紹介します。
北方面で目立っているのは、3kmしか離れていない矢筈山。先月登りました。

▲矢筈山(北北東、約3km)
矢筈山から視線を左に動かすと、今年3月に登った黒木山が他の山と重なりつつも、はっきりと見えました。

▲黒木山(北、約7km)
三草山も見る方向によっては形が特徴的で分かりやすい。

▲三草山(南東、約10km)
名前が面白い三角点山もしっかりと見えました。

▲三角点山(北東、約10km)
南西を見ると、霞んでいて分かりにくかったですが、善防山と高山が見えました。

▲善防山(南西、約13km)と高山(高山の右下にピョコっと桶居山が山頂を覗かせている)
西光寺山や笠形山は、存在感があって分かりやすい。

▲西光寺山(東、約13km)

▲笠形山(北東、約14km)
七種山塊と明神山は、形ですぐに分かります。

▲七種山塊(西、約21km)と明神山(西、約26km)
特徴がないのは千ヶ峰。

▲千ヶ峰(北、約21km)
下山
12:53
ドローン操縦と昼食、山座同定をひとしきり楽しみ、すっかり気分がリフレッシュできたので下山開始。
往路で歩いたルートをそのまま引き返して下山します。
下りで山城の縄張り内を歩いていると、城を守る立場の視点になれるため、登りで苦労した岩だらけの急斜面が防衛側にとっては戦いやすい地形だったことが分かりやすい。
林道に入ると、山側から小石がパラパラと転がってくることがあり、「昨日の雨で地盤が緩んだかな?」と心配になって上ばかり気にしながら歩くことになりました。
途中で動物の声(低い声だったのでイノシシかな?)のようなものも聞こえ、足元と前方のみならず、上を見上げたり斜面の下を見下ろしたり、動物が後をつけてきていないかと後ろを振り返りながら*6、一人でビビり散らかす羽目に…
林道入口の防獣ゲートを出れば一安心。
13:40
駐車地点である「芳田の里ふれあい館」に戻ってきました。
交通アクセス
- 自家用車の利用が一般的です。駐車場は、「芳田の里ふれあい館」と林道入口付近の2箇所があります。
- 最寄りの鉄道駅はJRの西脇市駅ですが、駅から芳田の里ふれあい館までの距離はおよそ5kmあります。
参考情報
- 芳田の里ふれあい館は、常時開館している施設ではありません。したがって、ふれあい館のお手洗いは利用できないと考えておくべきです。
- 登山口周辺にお手洗いや飲み物の自動販売機はありません。
- コンビニは登山口周辺にないため、JRの駅周辺まで行く必要があります。
- 角尾山では、年間を通して有害鳥獣駆除が行われています。私は今回見つけられませんでしたが、罠が仕掛けられているところもあるようです。
- 今回歩いた林道と、新登山道ではない方の登山道は、南側を通る送電塔の巡視路を兼ねています(巡視路標識が立っています)。
- 兵庫県立考古博物館のWebサイトにある「兵庫県遺跡地図」では、下図の青枠で囲った範囲の稜線上が城域となっており、同Webサイトで公開されている「遺跡地名表では、備考として「曲輪10箇所以上、通路、石積櫓台、南方尾根に大堀切」と記載されています。
<角尾山城のおおよその範囲と地形>
角尾山周辺の地形データを見ると、山頂が削平地になっており、中央付近が櫓台で盛り上がっていることや、山頂の南側に比較的大きめの曲輪が階段状に並んでいることが分かります。
南側の稜線上は削平が甘く、地形データでは城跡らしさが感じられませんが、南端付近に堀切状の地形がみられます。

▲出典:この図は、以下の著作物を改変して利用しています。 [兵庫県CS立体図]、[兵庫県]
*1:約1.5kmの林道歩きで標高差およそ130mを登りました(道標のある擁壁付近の標高が約85m、林道終点の標高が約215m)から、単純計算で斜度は9%弱、角度に直すと約5度です。
*2:曲輪(くるわ)は、郭とも書きます。斜面を削って平らにした空間。広いものは居住空間や倉庫などで、狭いものは見張りや戦闘用に使われたと考えられます。
*3:虎口(こぐち)はお城に設置された門のこと。敵が突撃しづらいように道が折れ曲がっていたり、守りやすくするため道が狭くなっていたりする。
*4:三角点は山頂を示す標石ではありません。昔、地形図を作るために日本全国のたくさんの地点の緯度経度を正確に測量しました。その測量の基準点が三角点であり、平地や建物の屋上にもあります。登山とは無関係です。
*5:さんざどうてい。どれがどの山なのかを、方角や距離をもとに調べること。
*6:別の山でイノシシに付いてこられたことがあり、それ以来、動物がいそうなときは背後も気にすることにしています。