播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。原則として更新は週に1回です。広告は表示しません!

姫路城 春の特別公開「東小天守・乾小天守・西小天守・イの渡櫓・ロの渡櫓・ハの渡櫓」

概要

姫路城では、年に数回「特別公開」(普段は公開していない場所を有料で公開するイベント)を行っています。

2025年度(令和7年度)春の特別公開の対象は、姫路城の大天守の周囲にある3つの小天守全てと、それらをつなぐ渡櫓(わたりやぐら)です。

姫路城 春の特別公開について


▲南西から見た姫路城


▲北から見た姫路城(東小天守と大天守の間が「イの渡櫓」)

イベント名称: 姫路城 春の特別公開
期間: 2025年4月12日(土)~4月25日(金)
時間: 9:00~16:00(最終受付)
公開場所: 東小天守・乾小天守・西小天守・イの渡櫓・ロの渡櫓・ハの渡櫓
観覧料: 大人:1,000円(姫路城の入城料¥1,000が別途必要)、小人:300円(姫路城の入城料¥300が別途必要)

注意事項

  • 姫路城は築城当初の姿を守っており、バリアフリーは一切考慮されていません。車いすの場合、熟練した介助者が2~3名程度ついたうえで、大天守を経由せず備前丸まで行くことは可能です(大天守内や小天守内の見学は、車いすでは不可能です)。
  • ペット(小型の動物に限る)は、ペットの体全体が収まるケージ(車輪のついたものは不可)に入れていれば、同伴が可能です。ただし、ケージを持ったまま大天守や小天守内の急な階段を移動するのは危険が伴いますし、混雑状況によっては長時間ケージに入れておくことになり、ペットの心身に大きな負担がかかる可能性があります。ペットを大切にされる方は、連れて行かない方が無難です。
  • 介助犬は、城内の急角度の階段等で怯えて動けなくなることがあるため(実例があるようです)、介助犬を同伴した入城については、慎重な判断が必要です。
  • 姫路城内にエアコンはありません。気温が高い場合は、体調管理にご注意ください。
  • 大天守や小天守内にお手洗いはありません。有料観覧エリア内でお手洗いがあるのは、三国堀・西の丸庭園・備前丸の三カ所だけです。
  • 三脚や一脚、自撮り棒の使用は禁止されています。
  • フラッシュ撮影は禁止されています。
  • 城内では喫煙、飲食が禁止されています。
  • 再入城はできません。

※その他の注意事項が追加される可能性もありますので、姫路城へ行かれる方は事前に各自で注意事項をご確認ください。

特別公開の様子

特別公開のルートは、次の通りです。

  1. 登城口で入城券(大人ひとり¥1,000)を購入して城内に入る。
  2. 大天守内を順路に沿って見学する。
  3. 大天守の見学が終わって下ったら、「イの渡櫓」の入口にある受付で観覧料を支払う。
  4. 係員の案内に従って「イの渡櫓」の階段を上がる。
  5. 東小天守、ロの渡櫓、乾小天守、ハの渡櫓、西小天守の順に見学する。
  6. 西小天守から階段を下り、一般の見学者用出口から備前丸に出る。

ゆっくり小天守を見学しようと思って朝一番で入城し、早足で大天守最上階まで登り、展望を楽しむこともなくすぐに順路に従って階段を下りました。

鉄板が張られた頑丈な扉から大天守を出て、イの渡櫓に入ったところで「特別見学を実施中です」と呼び込みの声が聞こえました。

受付で観覧料を支払い、チケットとA4サイズの案内を受け取ってから階段を上がりました。

そこは「イの渡櫓」の2階で、そこからさらに階段を上がったところが東小天守です。


▲イの渡櫓2階の南端(設置された柵に従ってUターンし、北へ進む)


▲東小天守内部(右は北向きの千鳥破風の内側。左の壁は西面。)高い位置の窓は、火縄銃使用時の煙を抜くためのものかな。

東小天守
「うしとらのすみやぐら」が当初の呼び名でした。東小天守は高さ9mの石垣の上に建つ三重櫓です。
石垣の石材は主に広嶺や増位山系で採取された凝灰岩を使用しています。外観上は二重の多聞櫓で、北向きに妻の千鳥破風があります。三重目は、多聞櫓の二重屋根の上に乗せられた望楼で、外観からはイの渡櫓とロの渡櫓に一体化した望楼付きの多聞櫓にみえます。実際、1階から2階への階段はイの渡櫓の中にあり、東小天守内での昇降はできません。
また、東小天守は3階の窓も格子付きの土戸だけで、火灯窓もありません。ほかの小天守にはある唐破風もなく、全体として装飾的な設備がありません。
室内は地階を含め4階建てとなっていて、地階は塩の貯蔵庫として使われました。
3階は東西5.8m×南北4.8mの広さを持つ1室で、棹縁天井となっています。ロの渡櫓に接する西側には高窓しかなく、北側は千鳥破風の内側を破風の間とし、破風中央に格子窓がつき、北側への眺望を確保しています。
(出典:現地のパネル)

各小天守の階段は狭いため、階段の上下におられる係員さんの指示に従って上り下りをするようになっていました。

例えば、上から下りて来る方がおられるときは、上がろうとする客を下の係員が止め、上がろうとする方がおられるときは、上の係員が下ろうとする客を止めるという具合です。

質素な東小天守の見学を終えたら、階段を下って「ロの渡櫓」に入ります。
そこは広々として気持ち良い空間。


▲ロの渡櫓2階の様子(左が大天守側)

ロの渡櫓
東小天守と乾小天守をつなぐ天守曲輪では一番長い渡櫓です。明障子の部材に「北の長やニちうめ~」という墨書が見つかり、当初は「北の長屋」と呼ばれていたことがわかりました。
外観上の特徴は、一重目の中央に大きな軒唐破風がつくことです。破風の下は横長の出格子窓となり、石落としになっています。
1階は、内庭側に台所櫓につながる扉があり、北側は軒唐破風下の出格子窓と石落しがあり、北腰曲輪の方向への備えとなっています。北面(城外側)の窓は土戸で、その外側に鉄格子がはめられています。
2階も1階と同様に東西に長大な一室構成となっています。2階の内庭(城内)側には24連の素木の格子窓が連なっていて、外から見ると壮観です。北面の窓は漆喰塗の縦格子窓になっています。北面の窓は2階と1階で作りが異なっています。
(出典:現地のパネル)

ロの渡櫓の武具掛けには火縄銃火縄火薬入れが掛けられており、姫路城が戦うための場所だということを実感できるようになっています。


▲ロの渡櫓の武具掛けにあった火縄銃


▲ロの渡櫓の天井近くにぶら下げられていたのは、火縄と火薬入れ(複製)


▲乾小天守付近から見たイの渡櫓、東小天守、ロの渡櫓

次に見学するのは乾小天守

ロの渡櫓から階段を一つ登ったところに天井の低い3階があり、そこからさらに階段を登ったところが最上階です。


▲乾小天守の3階は天井が低い(破風の間から撮影)


▲乾小天守の4階は展望台のように窓が大きな部屋

乾小天守
「いぬいやぐら」が当初の呼び名でした。このことから、3つの小天守はある時期からやぐら(櫓)が小天守に読み替えられるようになったようです。その時期は不明ですが、酒井時代には小天守で通用しています。
 乾小天守は3つの天守の中で平面も高さも最も規模が大きく、西側に大きく張り出した石垣の上に建てられています。張り出し部の出隅とロの渡櫓との接続部の入隅の上に建物を石垣天端際まで建てています。こうしてちょうど天守曲輪・備前丸にアプローチする西側唯一の虎口であるほノ門と、天守入口への最短コースとなる水曲輪に対して横矢が形成され、天守曲輪の西側を扼える役割を果たしています。
外観は、軒唐破風、千鳥破風と三重目の火灯窓が建物を飾り、装飾性の乏しい東小天守とは対照的です。
室内は地階を含めて5階建てです。1階と2階はほぼ同じ平面規模で、ほかの小天守と同様、地階と1階は行き来不可能な構造になっています。最上階の4階には棹縁天井が張られ、東西南北の各面に窓が設けられています。
どの窓も格子が無く開放的なのが特徴です。
(出典:現地のパネル)


▲乾小天守西側の火灯窓(他の小天守と異なり格子が無い)


▲西小天守から見た乾小天守の火灯窓

乾小天守の次は、ハの渡櫓を通って西小天守へ進みます。


▲ハの渡櫓内の様子


▲ロの渡櫓から見たハの渡櫓と西小天守


▲ハの渡櫓から見た大天守の鬼瓦(池田氏の家紋である揚羽蝶)


▲西小天守の入口にある跳ね上げ式の扉(他の小天守にも同様の扉がついている)


▲西小天守3階の様子

西小天守の構造
 西小天守は望楼式の三重櫓で、内部は地上3階、地下2階となっている。地下2階は水の六門と大天守入口への通路となっている。その通路の頭上には地下1階が設けられている。地下1階は水六門の上に載った櫓とみなすことができるので、地下1階は水の五門から六門への通路を監視することが目的で設けられたのであろう。水の五門と六門の2門で構成される桝形に対して至近距離から狙い撃ちが可能である。
 西小天守の三重目には南面に火灯窓が付いている。乾小天守にも火灯窓が付くが、西小天守の火灯窓には縦格子が入っている。また、三重目の外壁には、瓦片が塗り込められていた。床板と根太を切り取って、あとから階段を設置されたとみられる。築城当初は「ひつじさるやぐら」と呼ばれていた。(墨書より)
(出典:現地のパネル)


▲西小天守南面の火灯窓(格子があって分かりづらいが、火灯窓の輪郭が見える)


▲備前丸から見た西小天守の火灯窓(格子がある)

小天守やそれらをつなぐ渡櫓の窓からは、間近に大天守を見ることができます。ただ、その大天守の壁面には、狭間や武者窓がこちらに向けて設置されているのが不思議。

大天守から狙われている気分になります。
万一小天守が制圧された時に、大天守から小天守や渡櫓に攻撃を加えるためのものなのかな。


▲西小天守から間近に見た大天守

西小天守の見学を終えると、大天守の見学を終えた観覧客と同じ出口へ続く通路を進みますが、その途中で「ニの渡櫓」を見られます。

立ち入り禁止の短い渡櫓ですが、その向こうは大天守。重要な場所ですね。


▲ニの渡櫓(奥は大天守)

千姫ぼたん祭りと観光和船

特別公開を見終えて姫路城の有料観覧エリアを出た後、千姫ぼたん園へ向かいました。

小天守内の係員さんに「今日はぼたん園でお祭りをやっているので、ぜひ見て行ってください」と声を掛けられたのです。


▲千姫ぼたん祭りの看板


▲展示されていたぼたんの花


▲和太鼓演奏のステージも準備されていた

千姫ぼたん園から濠を見下ろすと、ちょうど観光和船が通ったところでした。


▲濠を進む観光和船


▲観光和船乗り場

観光和船の運航は、2025年3月20日(木)~12月7日(日)の期間(ただし、7月、8月、9月5日~9月7日、9月12日は運休)で、乗船料は大人ひとり¥1,500、小人ひとり¥500。40分間隔(9:30~、10:10~、10:50~、11:30~、12:10~、12:50~、13:30~、14:10~、14:50~、15:30~。3/20~5/6はさらに16:10~、16:50~の2便が増発。)で運行しています*1

受付は現地で予約する方法のみ対応。ネット予約や電話予約はありません。

参考情報

今回公開されたのは、2022年夏の特別公開の範囲と大部分が重複しているため、私にとっては2回目の見学。

そのため早足でざっと見学を終えましたが、初めて見学した時にもブログ記事を公開していますので、お時間があればそちらもご覧ください。東小天守と乾小天守、ロの渡櫓で撮影した全天球パノラマも掲載しています。

*1:天候や水位により、欠航の場合があります。臨時便が出ることもあるようです。