播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。原則として更新は週に1回です。広告は表示しません!

姫路城 夏の特別公開「トの櫓(やぐら)・との一門」及び「搦手(からめて)周辺」

概要

姫路城では、年に数回「特別公開」(普段は公開していない場所を有料で公開するイベント)を行っています。

2024年度(令和6年度)夏の特別公開は、2022年3月(2021年度(令和3年度)春の特別公開)と同じで「『トの櫓(やぐら)・との一門』及び『搦手(からめて)周辺』」です。

2022年3月は「トの櫓」から「との一門」、「との二門」を経て「長壁神社跡」までしか公開されませんでしたが、今回はそこからさらに下、「との四門」までが公開され、「との四門」からお城の外へ出られます

今の姫路城は三の丸広場北西の入城門からしかお城に入れませんが、昔に姫路城を訪れたことがある方なら、東側にも券売所があってそこからお城に入った記憶があるかもしれません。

その当時、東側の入城門になっていたのが「との四門」なのです。

今回の特別公開を利用し、現在は通ることが出来ない「ちの門」から「との四門」までの搦め手道を歩いてきました。

姫路城 夏の特別公開について


▲かつては入城門の一つとして機能していた姫路城「との四門」

イベント名称: 姫路城 夏の特別公開
期間: 2024年9月1日(日)~9月30日(月)
時間: 9:00~16:30(最終入城)
公開場所: 「トの櫓(やぐら)・との一門」及び「搦手(からめて)周辺」
観覧料: 200円(姫路城の入城料¥1,000が別途必要)


https://maps.app.goo.gl/XDS9uZfSVP7xEiN96
▲特別公開される「との一門」の位置

注意事項

  • 姫路城は築城当初の姿を守っており、バリアフリーは一切考慮されていません。車いすの場合、熟練した介助者が2~3名程度ついたうえで*1、大天守を経由せず備前丸まで行くことは可能です。
  • ペットは、ペットの体全体が収まるケージ(車輪のついたものは不可)に入れていれば、同伴が可能です。
  • 介助犬は、城内の急角度の階段等で怯えて動けなくなることがあるため(実例があるようです)、介助犬を同伴した入城については、慎重な判断が必要です。
  • 姫路城内にエアコンはありません。今回の夏の特別公開も気温が高いことが予想されますし、実際、私も搦め手道を下っただけで汗だくになりました。体調管理にご注意ください。
  • 三脚や一脚、自撮り棒の使用は禁止されています。
  • フラッシュ撮影は禁止されています。
  • 城内では喫煙、飲食が禁止されています。
  • 再入城はできません。

※その他の注意事項が追加される可能性もありますので、姫路城へ行かれる方は事前に各自で注意事項をご確認ください。

特別公開の様子

特別公開の場所へ行くための通常のルートは、次の通りです。

  1. 登城口で入城券(大人ひとり¥1,000)を購入して城内に入る。
  2. 大天守を見終えて備前丸(大天守を見上げる広場)に出る。
  3. 備前丸の東端にある備前門を出る。
  4. 備前門を出てすぐ左に曲がる。
  5. 旧番所で観覧料(大人ひとり¥200)を支払う。


▲備前門を出たところに特別公開エリアの看板がある


▲旧番所が受付になっている

200円の観覧料を支払って(現金のみ)「ちの門」をくぐると、北は「への門」と土塀、西は大天守の石垣、南は折廻り櫓、東は「との一門」と「ちの門」で守られた小さな郭に出ました。

さらに城外側からとの一門を入ると、正面に天守台石垣が立ち塞がり、折廻り櫓とへの門東方土塀で囲まれた小さな曲輪となっています。折廻り櫓の室内は書院造りになっているにもかかわらず、この小曲輪に面した室内壁面には狭間が設けられているという特殊さで、この小曲輪に対する防御意識の高さが窺われます。
(出典:現地の「搦手周辺」の案内看板から抜粋)

特別公開される「トの櫓」は「ちの門」を抜けてすぐ右にあります。


▲「トの櫓」と「ちの門」


▲「トの櫓」は「との一門」(奥)と一体になっている

トの櫓
 トの櫓は、との一門の続櫓でとの一門の2階への入口になります。建物の平面は菱形で、室内は1室で床は土間になっています。床面は水平でなく、東側に傾斜しています。
 城内側(西側)に窓はありませんが、東側と南側に格子窓が1カ所ずつ開いています。この櫓の下に搦手道が通っていますが、下を狙える石落しがないので、その方向を攻撃するには、この2つの格子窓を使わなくてはなりません。とくに窓の直下にはとの二門があるので、格子窓からは真下に向けてとの二門を射撃する必要があります。そのため、窓の下に床板を張って高くして、有効な射撃ができるようにしているとみられます。
(出典:現地の「トの櫓」の案内看板)


▲「トの櫓」内部(左は「との一門」2階への入口(立入禁止)


▲「トの櫓」東側の格子窓からの視界(中央は「との二門」の屋根。「との二門」の外と内の両方を火縄銃で狙える。)

「トの櫓」の見学が終わったら、「との一門」をくぐって搦め手道を下ります。


▲「との一門」(城内側)(扉の上半分が格子になっており、閉じても視界が確保される点に注目)


▲「との一門」(城外側)

との一門
 姫路城に残る櫓門で白漆喰(しろしっくい)の塗っていない唯一の門です。「昭和の大修理工事」までは白漆喰が塗ってありましたが、解体してみると当初は塗ってなかったことがわかったため、元のとおり素木造り(しらきづくり)に戻しました。
 1階の門部では、門扉の上半分を格子、下半分を板張りとした透かし門となっています。透かし門は門扉を閉めていても城の外と内が見えるもので、姫路城ではこれも唯一の事例です。また、饅頭金物には菊座や樽口がない古いタイプのものが使われています。
 2階の櫓部では、正面の武者窓が突上げ窓になっていて、ほかの櫓門が引戸であるのに比べて古式な造りになっています。そのため、置塩城から移築されたものとの説があります。
(出典:現地の看板)


▲「との一門」2階内部(立ち入り禁止。右が突上げ窓のある城外側。)

「との一門」を抜けると道はすぐ直角に右へ曲がり、そこには「との二門」があります。
つまり、ここは桝形(ますがた)になっています。

搦手道には、との一門・との二門で構成された枡形が残っています。姫路城では枡形の2つの城門と土塀が残っている唯一の例です。
(出典:現地の「搦手周辺」の案内看板から抜粋)

桝形は塀と門で囲まれた小さな空間で、攻め込んできた敵を効果的に迎撃するための仕掛け。

敵にとっては、「との二門」を打ち破って進めたとしてもまたすぐ「との一門」があるため狭い空間で足止めをくらい、もたもたしている間に周囲の櫓の窓や狭間から十字砲火を浴びてしまうというわけです。


▲「との一門」と「との二門」の間は桝形になっている(「トの櫓」東の格子窓から撮影)

姫路城に限りませんが、お城はこういった防御の工夫が凝らされているため、攻める側、守る側の視点でキョロキョロしながら歩くことをお勧めします。
狭間から外を覗くのも、個人的にはお勧め。

「との二門」も内開きで、開いた扉を雨などから守るための屋根が城内側に付いています。


▲との二門(城内側)


▲との二門(城外側)


▲城外側から見た「との二門」(開いた扉が屋根で守られていることが分かる)

「との二門」を抜けて下ってすぐ左には、長壁(おさかべ)神社跡があります。
避雷設備があるとのことで、立ち入り禁止。


▲長壁神社跡(神社跡地への立ち入りはできません)

長壁神社跡
 長壁(刑部)神社は、姫路城の建つ姫山の地主神として古くから崇められてきました。神社は城の鬼門に建てられ、城を守護する物と信じられていました。
 池田輝政が姫路城築城を行っていた頃、子の刻(午前2時頃)太鼓を打つと悪鬼が現れて人を殺すとか、数々の怪異の話が広まり姫山から城下に移されていた刑部社の祟りに違いないと噂されました。同じころ、「城の艮に八天塔を建てないと、輝政夫妻が呪い殺される」という内容の書状が発見されました。はたして輝政は原因不明の病に侵されたので、円満寺の明覚を招いて護摩の修法を行い、この場所に刑部社を戻すとともに同じ境内に八天塔も建てました。やがて怪異は鎮まり、輝政の病状も回復したといいます。
(出典:現地の看板)

2022年3月の特別公開範囲はここまででしたが、今回はさらに下へ進むことができます。

搦手道を進むと、姫路城東側の高低差や道の険しさを実感できますし、攻める側であれば身を隠す場所がない環境で高い位置から射撃をされる恐怖を想像できます(石垣に張り付いても、石落とし*2から下向きに撃たれる)。


▲長壁神社跡のすぐ下の様子(右上、日傘を差した方のいる場所が長壁神社跡の入口)


▲「との三門」跡付近から「との四門」方面の様子

搦め手道は山歩きの雰囲気があり、運動不足の方なら登るのは大変そうです。

今回の特別公開は下りの一方通行(「との四門」から外へ出て見学終了)ですから、「写真を取り損ねた!」と何度も上り下りしない限りは、体力が無くても問題ないと思います。


▲「との三門」跡の下には、かつて土塀が乗っていた石垣が残る(土塀の厚みを実感できる)

「との二門」と同じような構造の「との四門」が見えてきました。
いよいよ特別公開される範囲の終点です。


▲との四門(城内側)


▲「との四門」城外側から見て左側には、土塀に埋め込まれた排水口がある


▲「との四門」を出た後で振り返って見た姫路城

こちらから姫路城に登ったことのある方なら懐かしい思い出が蘇るかも知れませんし、昔の姫路城を知らない方も、普段は公開されていない搦め手道を歩ける貴重な機会です。

搦め手道のバーチャルツアー

今回の特別公開範囲で全天球パノラマを撮影し、バーチャルツアーを作成しました。
大手道に比べて距離は短いですが、地形を活用した搦め手道の防御力を味わってみてください。

画面左上のリストで12箇所を切り替えられますし、画面内に矢印が表示されている場合は、それをクリック/タップしてその先で撮影した全天球パノラマに切り替えることもできます。


https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/himejijo20240901/index.html
▲姫路城 トの櫓・搦手周辺で撮影した全天球パノラマによるバーチャルツアー(撮影日:2024年9月1日)

*1:門などの段差を乗り越える必要があり、介助者1名では通行できない場所があります。

*2:「石落とし」は石を落とすための穴ではなく、真下に向けて銃を撃つための銃眼(下向きに扇形の射界を得られる)です。本当に石を落とすための穴なら、石垣の幅全体に作らないと簡単に石垣をよじ登られてしまいます。