播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。原則として更新は週に1回です。広告は表示しません!

地図マニアでもほとんど知らない:一等磁気点(点名:姫路)

概要

地図を作るための基準点として三角点や水準点をご存知の方は多いと思いますが、測量に興味がある方にもあまり知られていない基準点として「磁気点」があります。

磁気点は、時間の経過とともに変化する地磁気を調べる「地磁気測量」で使われる基準点。

方位磁石が示す北(磁北)と地図の北(真北:しんぽく)の間には8度前後のズレがあり、そのズレは場所や時期によって異なります。その変化を調査するのが地磁気測量で、地磁気を測定するための場所が磁気点なのです。


▲一等磁気点「姫路」標石と周囲の様子(標石周囲の黒い棒は、測定用機器の三脚を載せるための台)。標石北面にはこの磁気点に与えられた番号「57」が刻まれている。

 一等磁気測量は1948年に開始された。全国に105点の一等磁気点(第1図)があり,それぞれに標石が埋設されている。このうち,20点の一等磁気点を「基準磁気点」と位置づけて2年に1回測定し,この他の点は約5年に1回の繰り返し測定を行っている。
(出典:藤原 智, 海津 優, 大滝 三夫.一等磁気測量よりえられた地磁気永年変化(1980-1990).Conductivity Anomaly研究会論文集.1993.1993.p.154-160.)

今回は、私が住む姫路市からもっとも近い一等磁気点(点名:姫路)を見てきました。

一等磁気点「姫路」の位置

一等磁気点「姫路」は、兵庫県加西市若井町の清水池北東の堰堤脇に埋設されています。


https://maps.app.goo.gl/Di5uCeRUrgZFvv9t9


▲清水池の堰堤


▲堰堤の東端、指が指している場所に標石がある


▲標石の近くに車を1台置けるスペース*1がある

集落内や堰堤周辺の道路は1~1.5車線幅しかありません。
ここへの訪問を考えられている方は、運転にご注意ください。

一等磁気点「姫路」について

この磁気点は、「一等磁気点の記」によると平成5年10月21日に選点され、翌22日に埋設。その二日後の10月24日に観測が行われました。

元々その北西およそ700mの位置に昭和49年9月に埋設・観測されていましたが、何らかの理由があって現在の位置に移設されたことも点の記には記載されています。

旧選点 昭和49年9月10日
旧埋石 昭和49年9月11日
旧観測 昭和49年9月12日
旧位置より南東へ約700mの位置に再設
(出典:一等磁気点の記)

磁気点の外観

一等磁気点「姫路」の標石周囲に刻まれている文字を北面から時計回りで紹介します。


▲北面には磁気点の番号(姫路は57番)が刻まれている


▲東面には基本測量*2の標石であることを示す「基本」の文字がある


▲南面には「磁氣点」の文字(氣は気の旧字体)


▲西面には「地理調」の文字*3

磁気点「姫路」の標石は、ピッタリと磁北を向いて埋設されています。


▲磁気点標石は磁北と向きが揃っていた

私が初めて一等磁気点「姫路」を見に行ったのは2006年6月。その時は、下の画像のように磁気点周辺は薮になっていました。

指のアイコンが指しているのは、磁気点があることを示す巨大な木製の標柱です。
今回見に行ったときは、この標柱は跡形もありませんでした。


▲参考資料:かつて磁気点の脇には巨大な標柱が立っていた(2006年6月撮影)

最後に

磁気点はWebで「点の記」が公開されていないためか、ほとんど情報を見つけられません。

全国に105の一等磁気点が作られたそうですから、ひょっとすると皆さんのお住まいの近くにもあるかもしれません。

興味のある方は、最寄りの地方測量部に測量成果・測量記録の謄抄本交付申請(有料)をしてみてください。

交通アクセス

自家用車で行かれる場合は、集落内や磁気点周辺の道路が狭いため運転にはご注意ください。大型の車では苦労すると思います。

公共交通機関では、北条鉄道の「北条町」駅前にある「アスティアかさい」バス停を出る加西市のコミュニティバス「ねっぴ~号」「中富口」バス停へ移動し、「中富口」バス停からコミュニティバス「はっぴーバス」に乗って「農業倉庫前」または「下所」バス停で下車すると、清水池のすぐ北に行くことができます。

磁気点までの距離は、いずれのバス停からも250~300mほどです。

重要:当ブログ記事掲載時点の情報です。コミュニティバスは突然廃止されたり、減便される場合があります。最新の情報を各自でご確認ください。

例:10:35「アスティアかさい」バス停でねっぴ~号に乗車
  10:56「中富口」バス停で乗り換えのため下車
  11:00「中富口」バス停ではっぴーバスに乗車
  11:24「農業倉庫前」または「下所」バス停で下車
     磁気点や周辺の神社仏閣見学(70分)
  12:34「農業倉庫前」または「下所」バス停ではっぴーバスに乗車
  12:47「中富口」バス停で乗り換えのため下車
  13:03「中富口」バス停でねっぴ~号に乗車
  13:26「アスティアかさい」バス停で下車

※コミュニティバスは平日しか運航していませんし、本数が少ないため前述の例のように磁気点で長時間過ごさないといけませんから、ご注意ください。

あるいは、コミュニティバスで磁気点を見に行った後、およそ3km南の峠から小谷城跡へ散策し、そのまま歩いて北条町駅へ戻るという行程も考えられます。

小谷城跡と峠との間のルートについては、下の記事を参照してください。

*1:「点の記」で「自動車到達地点」とされている場所です。

*2:測量法の第4条では「この法律において「基本測量」とは、すべての測量の基礎となる測量で、国土地理院の行うものをいう。」とされています。

*3:地理調は地理調査所の略で、1960年に国土地理院に改称されました。国土地理院に変わってから作られた各種標石には「国地院」と刻まれています。