注:今回の記事は、当ブログでは珍しいAV(オーディオ・ヴィジュアル)系の内容です。音響に関する多少の知識がないと意味不明な内容だと思いますので、山歩きや山道具の記事を求めて当ブログに来られている方は、この記事を無視してください。
かくいう私も、それほど知識はありません。記事やここで紹介する製品に関する質問はご遠慮ください。
コロナ禍の影響で、私の職場でもオンラインイベントの開催が急激に増えました。
私はとある組織の情報システム部門(いわゆる「情シス」)で働いていますが、「パソコンが分かるならAV機器も分かるだろう」というむちゃくちゃな理屈により、オンラインイベントの準備や実施にも関わっています。
そこで問題になったのは、映像よりも音声。
映像は特に問題なく送受信できるのに、相手の声が聞こえない、あるいはこちらの声が相手側で鳴らないといったトラブルがたまに発生するのです。
ネットワークの障害対応用機器は持っていますが、オーディオ機器のテスター類は何も持っていません。
というわけで、オーディオテスターを購入することに。
「安物買いの銭失い」がイヤだったのと早急にテスターが欲しかったということもあり、よく調べもせず、プロが現場で使うレベルの製品「Sound Bullet」を購入。
職場の備品としてではなく、個人で買いました。
備品として買うなら「同じようなことができるもっと安い製品があるだろう」という理由で、自分が欲しいものを買ってもらえないこともありますが、私物なら好きなものを買えて、自宅や職場以外でも使えて、備品と違って壊そうが無くそうが怒られることもありません。
概要
スピーカーが音を正しく鳴らせるかどうかや、ファンタム電源の電圧が正常かどうか、オーディオ機器から音声信号が出ているかどうか、業務用のオーディオケーブルが断線、またはショートしていないかどうかを確認できるテスターです。
▲コンパクトで使いやすいSound Bullet
仕様
▲Sound Bulletの化粧箱
製品名: SOUND BULLET(サウンドバレット*1)
メーカー: Sonnect S.r.l.(イタリア)
輸入販売元: 株式会社エレクトリ(東京都)
メーカー直販価格: 250ユーロ(2023年3月時点)
国内定価: ¥39,600(税込)(2023年3月時点)
購入価格: ¥36,300(税込)(購入時の定価)
購入先: amazon.co.jp
※輸入代理店によるカタカナ表記は「サウンドバレット」ですが、明らかな誤読である「バレット」*2を使うことが個人的に嫌いなため、この記事内ではアルファベットで製品名を表記します。
パッケージ内容
Sound Bulletの箱の中には、下の画像の物品が入っています。
▲Sound Bulletのパッケージ内容(左からSound Bullet本体、取扱説明書(英文)、日本語の簡易取扱説明書、充電用microUSBケーブル、専用ケース、チェック用フォーンプラグ)
外観
Sound Bulletは、金属製の箱型筐体の両端にXLR端子のオスとメスがくっついた、XLR延長アダプタかXLRケーブルテスターのような形状をしています。
▲Sound Bullet本体の外観
各部の名称は、次の通りです。
※同梱されている日本語版取扱説明書の記載を元にしました。
▲正面
▲右側面
▲左側面
▲背面
▲上端
▲下端
使い方
※機能の名称は、輸入販売元のWebサイトの日本語表記を使用しています。
Sound Bulletにはシグナルジェネレーター、ファンタム電源の検査、オーディオケーブルを流れる音声を聞く機能、XLRケーブルを流れる信号強度の測定、そしてXLRケーブルテスターという5つの機能があります。
それぞれの機能は、次の通りです。
ジェネレーター(Signal Generator)
Sound Bulletには、ピンクノイズ(ザーッという音)と、1kHzのトーン信号(プーという音)の2種類の音声信号を出力する機能が備わっています。
出力される音は「SEL」ボタン(ピンクノイズ、トーン切替ボタン)を押す度に切り替わり、LEDが点灯しているときはピンクノイズ、ゆっくり点滅しているときはトーンが送出されています。
このLEDは、XLRオス端子に信号を送出しているときは橙色で、1/4"フォーンジャックとスピーカー、イヤホンジャックに信号を送出しているときは青色になります。
例えば、オーディオミキサーが正しく動作しているかどうかを確認する時は、次のようにします。
▲ミキサーのXLRメス端子にSound Bulletを差し込んだ様子(LEDの色が橙色であれば、Sound BulletのXLRオス端子から信号が出ているため、ミキサーが正常に動作していればSignalランプが点灯する)
ミキサーにスピーカーをつなぎ、スピーカーからピンクノイズ、またはトーンが鳴ることを確認することで、配線や途中の機器、ケーブルに異常がないかを確認できます。
1/4"フォーンジャックに「チェック用フォーンプラグ」を接続すれば、入力端子が1/4"フォーンジャックの機器でも同様の確認ができます。
この場合は、「TO」ボタン(ルーティングボタン)を押してLEDを青色にしなくてはいけません。
1/4"フォーンジャックから信号が送出されるのは、LEDが青色の時だけです。
▲チェック用フォーンプラグをセットしたSound Bullet
▲ミキサーの1/4"フォーンジャックにSound Bulletを差し込んだ様子
ピンクノイズまたはトーンの出力レベルは、「アウトプットレベルスイッチ」で-40、-20、-10dBuのいずれかを選択できます。
ファンタムパワーチェック(48V check)
オーディオ機器のXLR端子からファンタム電源がきちんと送出されているかどうか、Sound Bulletで確認できます。
▲ミキサーのファンタム電源をONにした様子(画像のミキサーから出力されるファンタム電源の電圧は低いため、実際はLEDが点滅しています)
電圧が48V ±4Vの範囲内であれば、ファンタム電源チェック用LEDは点灯します。
電圧がそれよりも低い(24V~44V)場合は、LEDが点滅します。
LEDが片方しか点灯/点滅しない場合は、点灯/点滅していない番号のピンに電流が流れていないことを意味し、全くLEDがつかない場合は電流がまったく流れていないか非常に弱い、あるいは1番ピンが断線していることを表します。
内蔵スピーカーモニタリング(Speaker/Mini-Jack)
オーディオ機器の出力側にあるXLR端子、または1/4"フォーンジャックからどんな音声信号が出ているのか、Sound Bulletをスピーカー代わりにして確認できます。
Sound Bulletの「TO」ボタン(ルーティングボタン)を押し、LEDを青色に変えてから目的の端子にSound Bulletを差し込み、「スピーカーボリューム」ダイヤルを回して音量を調整すると、スピーカーから音声が鳴ります。
▲オーディオ機器の出力端子につないだケーブルを、Sound Bulletの1/4"フォーンジャックに接続した様子(スピーカーから音が鳴る)
イヤホンジャックにイヤホン(ヘッドホン)を接続すると自動的にスピーカーがミュートされ、イヤホン(ヘッドホン)から音が鳴ります。
XLR入力測定(XLR Input Metering)
Sound BulletのXLRメス端子にケーブルを接続すると、そのケーブルに音声信号が流れていれば(-25dBuを超えていれば)Signalインジケーターが点灯し、信号が強すぎれば(+10dBuを超えていれば)Peakインジケーターが点灯します。
▲XLRケーブルを接続した様子(Signalインジケーターが点灯している)
XLRケーブルテスター(XLR Cable Tester)
Sound Bulletの両端に1本のXLRケーブルの両端を接続すると、ケーブルの導通確認ができます。
まずはケーブルをSound Bulletの両端に差し、続いて「SEL」ボタンを長押ししてください。
すると、Sound Bulletの左側面にある「ケーブルテスター用LED」のうち「1」のLEDが点灯します(ケーブルチェックモードに切り替わる)。
同じ番号のLEDが左右両方点灯すれば、その番号のピンにつながっている線は断線していないことになります。
断線している場合は片側のLEDだけが点灯しますし、片側のLEDが複数点灯すると、ショートしている可能性が考えられます。
▲「1」のLEDが両方点灯した様子
「TO」ボタン(ルーティングボタン)を押す度に2番、3番とチェック対象のピンが変更されます。
▲2番のピンがチェックされている様子
▲3番のピンがチェックされている様子
再度「SEL」ボタンを長押しすると、ケーブルチェックモードが終了します。
充電方法
Sound Bulletに付属のUSBケーブルをUSBポート(充電用)に接続し、パソコンやACアダプター、モバイルバッテリーなどから充電します。
充電中はUSBポートの左にあるLEDが赤く点灯し、充電が終わると消灯します。
▲Sound Bulletを充電している様子
なお、バッテリー残量が少なくなると「SEL」ボタンの左にあるLEDが6秒おきに3回白く点滅します。
Sound Bulletが機能できないほどバッテリー残量が少なくなると、前述のLEDが2秒おきに6回点滅します。
利用頻度が低い私の場合、購入直後に満充電にしてからまだ一度も充電をしていません。
Sound Bulletの消費電力は非常に小さいのかも。
専用ケース
Sound Bulletには、専用のケースが付属しています。
▲専用ケースとチェック用フォーンプラグ
専用ケースの外側には1/4"フォーンジャックが埋め込まれたポケットがあり、チェック用フォーンプラグはそこに差し込んで携帯できます。
▲1/4"フォーンジャックが埋め込まれたポケットにチェック用フォーンプラグを差し込んだ様子
フタの開閉にはスナップボタンやベルクロではなく磁石が使われているため、見た目がスッキリしていますし、開閉も簡単。
▲フタは磁石の力で閉じた状態に保たれる
専用ケースの背面にはカラビナが縫い付けられています。
カラビナですから、ズボンのベルトループへの取り付けも簡単。
▲ケースの背面
このケースはSound Bulletの出し入れがスムーズなちょうど良い大きさですし、背面のカラビナが使いやすく、磁石で開閉できるフタも便利。
付属のケースがこんなに高品質な製品は、珍しいと思います。
ただ、フタの固定に使う磁石がケースの中で動くのは気に入りません。
何かの拍子にケースに衝撃が加わると磁石の位置が大きく移動し、フタが閉じなくなってしまうことがあるのです。
磁石は簡単に元の位置に戻せますが、ちょっと不便。
細かい欠点はありますが、現場で作業をする技術者さんなら、Sound Bulletを常時身に着けられるこのケースはすごく便利だと思います。
最後に
私の職場ではXLRケーブルや1/4"フォーンケーブルを利用するようなイベント会場は少数派で、大抵の会議室やオープンスペースはRCAケーブルや3.5mmミニプラグのケーブルで動作する機器が設置されています。
「私の職場では役に立たないかな、早まったなぁ」と後悔しましたが、RCAや3.5mmミニプラグをXLRに変換するケーブルが売られているのを見つけて各種変換ケーブルを買いあさったため、今はどこの設備でもSound Bulletが使えるようになりました。
オンラインイベント実施前の検証で会場のスピーカーから音が出ないときは、そもそも配信用パソコンのヘッドホン端子から音が出ているのかどうか、あるいはオンライン受信者に音が聞こえないと言われたときは、配信用パソコンのマイク端子につないでいるケーブルの音声をSound Bulletの「内蔵スピーカーモニタリング」で確認すれば、原因が会場の機器なのかパソコンなのかすぐに分かります。
パソコン側が原因であれば設定を見直せばいいですし、機器側が原因の場合は、途中の機器に順番にSound Bulletをつないでいき、どこまで音声が来ているのかを確認すれば、トラブルの原因となっている機器またはケーブルを特定できます。
オンラインイベントかどうかに関係ありませんが、会場のマイクを通した声にノイズが乗るときは、Sound Bulletをマイクの入力端子に挿して「ジェネレーター」機能でトーン信号を流せば、マイクが原因なのかそれ以外の機器が原因なのかもすぐに分かります。
検証の時は問題がなかったのに、リハーサルをするとマイクの音声が途切れるということもありました。そんな時もジェネレーターが便利で、有線マイク本体をXLRケーブルから抜いてSound Bulletに差し換え、トーンを出しながらケーブルを触りまくると、ケーブルに異常があればトーンが途切れるわけです。
「ケーブルの特定の場所が曲がった時だけ音が途切れる」という事象は、一定の音声を出し続けながらケーブルを触らないと確認できません。
私の環境では今のところ「内蔵スピーカーモニタリング」と「ジェネレーター」機能しか使っていませんが、トラブル対応で節約できる時間を考えれば、Sound Bulletの価格は高くはないと思います…と言いたいところですが…利用頻度を考えると全く元を取った気がしません。
やはりプロの音響屋さん(PAさん)のような方でないと、Sound Bulletを有効に使いこなして元を取るのは難しそうです。